![]() | 精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける (シリーズCura)想田和弘中央法規出版このアイテムの詳細を見る |
【精神病とモザイク】「タブー」を撮る監督の心情
観察映画「精神」を観た後で、監督の想田和弘さんが書いた「精神病とモザイク」を読むことをお勧めする。この本には、映画「精神」を撮る際に監督が抱えていた悩み、恐れ、覚悟が記されている。
テレビ番組などでは、精神病患者に個人が分からないようにする「モザイク」をかけることが多い。
想田さんによると、これは、当事者を守るためではなく、制作する側を守るためのもので、物事を伝えることに対する責任を放棄させるという。
見る側に立っている私自身、「モザイク」は幾度となく目にする機会があり、当たり前のように受け止めていた。疑いもなく「プライバシーの保護」だと考えていた。
しかし、改めて考えてみると、「モザイク」は、人間を非人間的にするものだと感じる。
隠すことが、より差別を助長する側面もあるということも理解できる。
映画「精神」で、想田監督はモザイクを使用しないと決めていた。
ナレーションも音楽も使っていない。映画では、精神病の人たちが、自らの言葉で語る。
精神病患者に対する余計な意味づけをはずす努力をして、対象に迫った作品だ。
映画に登場し、完成した映画を観た患者さんたちの感想は、興味深い。
また、この本の最も良いところは、映画「精神」で描ききれなかった部分に触れている点だろう。
映画「精神」は「入り口」「予告編」のようなものだと位置づけられる。
精神病患者に対して、この「入り口」から、どこまで深く迫れるのだろう?。
相当の覚悟と「良い加減さ」を持つことが求められる仕事だと思う。