アニメーションで描いたドキュメンタリー的映画。
テーマはとても重い。パレスチナ難民虐殺。
主人公は、その時、現場の近くにいたはずだが、すっぽり記憶が抜け落ちている。
関係者に会い、話を聞きながら、記憶を掘り起こしていくストーリーになっている。
私にとって印象的だったのは、心理学者が語ったアマチュアカメラマンの話。
従軍していたアマチュアカメラマンは、悲惨な現場を見ても「旅行気分になれるから平気だ」と言っていた。カメラのレンズを通して見ることで、現実から一定の距離を保つことができたからだ。
しかし、ある時、カメラが壊れた。カメラマンは、現実を直視しなければならなくなった。現実に「素手で触れる」ことになり、耐えられなくなった。そういう話だった。
この映画で、アニメーションという手法を採用したのは、「映画として見れる」ものにするためだったのではないだろうか。
人は、辛く、苦しく、悲惨なものからは目を背けたいものだと思う。
あまりに重いテーマをそのまま取り扱うと、「見たくない」映画になってしまう。
アニメという手法は、アマチュアカメラマンにとってのカメラと同じように、フィルターのような役目を果たしているように感じた。