![]() | ミラノ霧の風景―須賀敦子コレクション (白水Uブックス―エッセイの小径)須賀 敦子白水社このアイテムの詳細を見る |
イタリアについて書いた日本人作家といえば、誰だろう?
私は、須賀敦子さんのエッセイを1冊、手に取った。理由は、大庭みな子さんが書いている巻末の「解説」を読んで、読みたい気持ちがぐんと盛り上がったからだ。
異国について書いた作品はたくさんあるが、書き手の拠り所が「旅」か「暮らし」かによって作品の赴きは大きく異なってくる。須賀敦子さんの場合は、「暮らし」だ。
本書の中で、一押しのエッセイをあげるなら、「ガッティの背中」。
すでに日本に帰国していた著者さんのもとに、イタリアで暮らしていたときの友人ガッティが死んだという知らせが入るところから始まる。
はじめて、出会ったときのこと。
ガッティが出版社に勤務していたころのこと。
そして、晩年は、アルツハイマーとなり、友人さえ分からなくなって施設で暮らしていたガッティを訪ねたときのこと。別れ際に見たのが、ガッティの背中なのである。
話の全体は、寂しく、悲しいのだが、ガッティの背中の記述からは温かみを感じた。
著者は、イタリアで出会った友人のなかでも、ガッティを特別な存在と位置づけていたのだろう。