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利休にたずねよ 山本 兼一 PHP研究所 このアイテムの詳細を見る |
直木賞受賞作品、山本兼一著の「利休にたずねよ」は、茶の湯を追求した千利休の恋を描いている。
利休の周りにいる人物、秀吉や家康、利休の妻・宗恩などの視点から、利休の人物像を浮き彫りにしていく構成になっているが、正直なところ、もうひとつ工夫がほしい作品だった。
利休の茶の湯が、他の茶人とは異なる、特別なものとなった理由が、利休が恋した女を自らの手で殺したことにあったという点は、面白そうと思わせるのだが、それが比較的早い段階で読者に紹介されてしまうのは、もったいない気がする。
「起承転結」でいえば、「転」の予測がつく状態で延々と「承」が引っ張られる感じがした。
利休を取り巻く人物のなかで、私が興味をもったのは、山上宗ニ。
本当のことを不用意に口にしてしまう性格で、自身でもそのことを反省している。しかし、許しをもらおうとして出かけた場で、再び、秀吉に本当のことを言ってしまい、怒りをかって、首をはねられてしまう。
頑固で、不器用。なかなかうまく世の中を渡っていけない人。
信念があって、譲れないところは、譲らない人。
こういう人を、私は、好きだな。私自身、山上宗ニに、少し似たところがあるかもしれない。