ゆるっと読書

気ままな読書感想文

【ボクには世界がこう見えていた】ある障がい者の経験の記録

2011-11-21 20:29:36 | Weblog
ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

 

小林和彦さんの「ボクには世界がこう見えていた 統合失調症闘病記」(新潮文庫)は、

早稲田大学を卒業して、アニメのお仕事をされていた小林さんが、精神に障がいをきたしたときの体験、入院生活や治療のこと、お仕事のことなどについて記録した本です。

 

発症したとき、小林さん自身の目に、何が、どのように見えたのか。

どんなことを考えたのか。

どんな行動をしたのか。

統合失調症と診断されて、病について考えたことなどが盛り込まれています。

 

とても辛く、苦しい体験が書かれている箇所は、読んでいるほうも苦しい感じがしてきます。しかし、辛い経験をされた後、現在も治療を続けながら生活されている著者が、最終章に書かれていることは、とても素敵です。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『一番わからないのは、みんな“この一線を越えてしまったら帰ってこれなくなる”という、正気と狂気の境で踏みとどまった経験があるのかないのか、ということだ。そこから一歩踏み込んだらどうなるのか、ということを知っているのだろうか。(中略)』

『でも、本当に越えてはいけない一線を越えて、何とか人格までは破壊されずに生還できた人間として、その先に見えた世界を克明に書き記すことは、僕の責務であるような気がする。精神科医や専門家でも、病気のリアルな体験はしていないだろうし、一般の人たちにとっても参考になるはずだ』

 

『統合失調症は、どんなに辛い幻覚妄想に襲われても、死に至る病ではない。全ての統合失調症患者にとっての一番大きな使命は「生きていく」ことであると思う』

 

『“普通に生きる”ことが健常者でも難しいご時世ならば、必ずしもノーマルな生き方をしなくったっていいのだ。病気とうまくつきあいながら、飼いながらしながら、個性的に生きていけばいいと思う』

(最終章 「障害があっても」より引用)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

幻覚や妄想の状態は、障がいのない人には、なかなか分からない部分が多く、家族にとっても同様かもしれません。

障がいを抱えたご本人は、たった一人でその状態を向き合わなくてならず、深い孤独を想像します。

 

それでも「生きていく」。

力強い言葉です。

 

障がいのある・なしに関わらず、どんなに辛く、たいへんなことがあっても、

とにかく「生きていく」こと。

 

最近、本当にそう思うことが多くなりました。

 

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする