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ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫) |
クリエーター情報なし | |
新潮社 |
小林和彦さんの「ボクには世界がこう見えていた 統合失調症闘病記」(新潮文庫)は、
早稲田大学を卒業して、アニメのお仕事をされていた小林さんが、精神に障がいをきたしたときの体験、入院生活や治療のこと、お仕事のことなどについて記録した本です。
発症したとき、小林さん自身の目に、何が、どのように見えたのか。
どんなことを考えたのか。
どんな行動をしたのか。
統合失調症と診断されて、病について考えたことなどが盛り込まれています。
とても辛く、苦しい体験が書かれている箇所は、読んでいるほうも苦しい感じがしてきます。しかし、辛い経験をされた後、現在も治療を続けながら生活されている著者が、最終章に書かれていることは、とても素敵です。
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『一番わからないのは、みんな“この一線を越えてしまったら帰ってこれなくなる”という、正気と狂気の境で踏みとどまった経験があるのかないのか、ということだ。そこから一歩踏み込んだらどうなるのか、ということを知っているのだろうか。(中略)』
『でも、本当に越えてはいけない一線を越えて、何とか人格までは破壊されずに生還できた人間として、その先に見えた世界を克明に書き記すことは、僕の責務であるような気がする。精神科医や専門家でも、病気のリアルな体験はしていないだろうし、一般の人たちにとっても参考になるはずだ』
『統合失調症は、どんなに辛い幻覚妄想に襲われても、死に至る病ではない。全ての統合失調症患者にとっての一番大きな使命は「生きていく」ことであると思う』
『“普通に生きる”ことが健常者でも難しいご時世ならば、必ずしもノーマルな生き方をしなくったっていいのだ。病気とうまくつきあいながら、飼いながらしながら、個性的に生きていけばいいと思う』
(最終章 「障害があっても」より引用)
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幻覚や妄想の状態は、障がいのない人には、なかなか分からない部分が多く、家族にとっても同様かもしれません。
障がいを抱えたご本人は、たった一人でその状態を向き合わなくてならず、深い孤独を想像します。
それでも「生きていく」。
力強い言葉です。
障がいのある・なしに関わらず、どんなに辛く、たいへんなことがあっても、
とにかく「生きていく」こと。
最近、本当にそう思うことが多くなりました。