夢七雑録

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稲荷百社詣その三十三

2008-03-22 12:13:37 | 稲荷百社詣

【33】
(92)花園稲荷 (台東区上野公園)★

 上野公園に行き、五條天神と敷地を共有する花園稲荷神社に詣でる。この稲荷、正式名称を忍岡稲荷といい、古い稲荷であるらしい。稲荷社の裏手に回ると、妖気漂う穴稲荷があった。寛永寺造営に際し、この地に生息する狐を追い出し、その代わり洞を造って稲荷社を建てたものという。今更狐に謝っても仕方がないが、一応は頭を下げておいて、神社の裏口から外に出た。その途端、サラリーマン風の黒背広の男に声を掛けられた。
『時の鐘が鳴ってますね。急がないと』『あぁ、今鳴っているのが、そうなんですか』
 しかし男は何も答えずに足早に行ってしまった。何だあいつ、と思ったが、独り言だったのかもしれない。

(93)太郎稲荷 (台東区入谷2)★

 上野から歩いて入谷に行く。落語に登場する浅草田圃の稲荷に行こうとしたのだが、見つかりそうで見つからない。あちこち歩き回りながら、ふと考えた。陰陽五行説によると、木は火を生み、火は土を生み、土は金を生み、金は水を生み、水は木を生むという。この間、品川神社で会った老人が話していたのは、狩猟中心の火の時代が稲作中心の土の時代になり、今は経済中心の金の時代になっているということか。とすると、水の時代とは何なのだ。分らぬまま思考を停止した途端、建物の間に挟まれた太郎稲荷に行き当たった。

太郎稲荷は、立花左近将監下屋敷内にあった稲荷で、一時は大いに流行るが、しばらくすると廃れる流行神の典型として知られた稲荷である。現在は流行っているとは思えないが、手入れもされて、きちんと祭られているように見える。中に入ろうとして、猫の集団が待ち構えているのに気がついた。まるで、この稲荷は開店休業中ゆえ、中に入るなと言っているみたいにである。それもそうだと思い、軽く頭を下げただけで通り過ぎる。

(94)吉原神社(台東区千束3)★

 太郎稲荷に行ったついでに吉原神社にまで足を伸ばす。吉原神社は新吉原遊郭に祭られていた、九郎助稲荷、明石稲荷、開運稲荷、榎本稲荷の四社と、地主神である玄徳稲荷、それに吉原弁才天を合祀した神社である。稲荷を五社も祭ったので五倍の能力になったのか、それとも相互に牽制して無能力になったのかは分からないが、一見したところ普通の神社のように見える。それ故、普通の神社として頭を下げ、それで終わり。


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