7月の読書備忘録です。
忘れてしまわないためのMy記録です。
全て図書館本ですのですでに返却、私の手元にはないためうまくまとめられるかあやしい限り。
簡単に読後感を記しておきたいと思います。読後感などと言えるほどの感想でもありませんが。
次の三冊です。
原田マハ著「奇跡の人」と「デトロイト美術館の奇跡」、そして重松清の「とんび」。
同じ奇跡でも「奇跡」の対象が全く違い、同じ作家でありながらまるで違った分野の本です。
「奇跡の人」と言えば、私たちの世代には三重苦の障害を克服したあのヘレンケラーと、
彼女に奇跡を起こした家庭教師アニーサリバンを思い起こさせます。
原田マハさんの「奇跡の人」はその日本版とも言えるでしょう。舞台は明治の津軽地方です。
家庭教師として雇われるアメリカ帰りの弱視の女性 去場安(さりば あん)と盲聾啞の少女 介良れん(けられん)。
三重苦の「れん」を一人の人間として自立させるための壮絶な戦いが繰り広げられます。
読んでいて胸が苦しくなるほどでした。
またこの小説にはもう一人の主人公ともいえる人物が登場します。
後に「人間国宝」となる三味線弾きの少女「キワ」。「キワ」と「れん」の70年ぶりの再会には感涙。
地方の文化風習を取り入れる辺りは、流石「原田マハ」さんと思わせる所でした。
そしてユニークに思ったのが名前!
去場 安(さりばあん)はサリバン、介良 れん(けられん)はヘレンケラーのケラー!
遊びごころも感じさせる彼女の手法です。以前に読んだ「まぐだら屋のマリア」にも似たようなことが。
次に読んだのが同じく原田マハさん著「デトロイト美術館の奇跡」。
デトロイト市の財政破綻でデトロイト美術館の名画の数々の保持が危ぶまれてくる中、
ある一般市民の老人の言葉一つで奇跡が起こる。
原田マハさんらしい、美術への愛とリスペクトを感じる優しい小説でした。
私個人としてはやはり彼女の小説は美術関連小説が一番ですね。
長くなりましたので重松清の「とんび」の感想はまたいずれとしたいですが、少しだけ。
主人公や周囲の人々の訛りの広島弁が、広島出身の私にはとても懐かしく、親しみを持って読めました。
昭和の不器用な荒らしい父親とその男手ひとつで育てられる優等生の息子の物語。
これぞ重松ワールド。最初から最後まで涙腺緩みっぱなしでした。
同級生の父親海雲和尚の言葉が今も深く脳裏に刻まれています。
「おまえは海になれ。雪は悲しみじゃ、なんぼ雪が降っても、
それを黙って知らん顔して呑み込んでいく海にならんといけん。アキラが泣いとったらおまえは笑え」
親とはそういうものでしょう。