「日の丸・君が代」問題等全国学習・交流集会が行った文科省交渉の様子が、渡部秀清さんからメールで送られて来ました。
教育行政に携わるからには、憲法遵守こそが最も大きな判断軸であるはずです。全国で起こっている地域教育行政のあり方について、地域教育行政を重んじるような言い方をしながら、その実、文科省も目指すところは国家や強いものにおもねる公教育体制であることは明瞭です。
以下、渡部さんのメールを転載します。
昨日(8月26日)に行われた「文科省交渉」の素晴らしい報告を<根津公子さん>が書いてくれました。少し長くなりますが、内容は明瞭・簡潔・正確で、これを読めば文科省の体質(一言で言えば「無知で無責任」)が、いかにひどいものであるかがかがよくわかります。
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「日の丸・君が代」問題等全国学習交流集会文科省交渉の簡単な報告です。
文科省側は8名、一人を除いては20代だろう、若い職員ばかり。官僚としての研修なのかと思ってしまう。こちらの参加者は42名。
1)「日の丸・君が代」
2)国際人権
3)大阪府・市条例及び教育施策
4)教科書採択
に関して予め質問書を提出し、それに対する回答を受けてやりとりをした。
(⇒の回答・発言は文科省)
1)「日の丸・君が代」について。
①学習指導要領は国旗国歌法制定のはるか以前から「日の丸」を「国旗」、「君が代」を「国歌」と表記してきたことは、国会の立法権の侵害ではないか。何を根拠に「国旗」「国歌」としたのか
⇒長年の慣習による。立法権の侵害ではない。
②国旗国歌の「適正な取り扱い」とはどのような取り扱いを指すか。
⇒校長の判断によること。
③日本のように「卒業式・入学式での国旗掲揚・国歌斉唱の義務付け」をしている国が世界中にどれだけあると文科省は把握しているか
⇒韓国、中国は国旗法で義務づけている。アメリカは卒業式で義務づけている。独・仏・英では卒業式がない。
④「日の丸・君が代」についての文科省の教育委員会への指導・助言・援助について
⇒地方教育行政法48条1項に基づき、行なう。
適切に行われるよう、文科省は通知をしている。
通知・指導に強制力はない。学習指導要領に基づき適切に教育委員会がやっている。
中身のない回答に対し、参加者から再質問や意見、そして間違いの指摘が続いた。
・「日の丸・君が代」は東京では慣習ではない。
・韓国では、国歌とは言わない。愛国歌というのだ。
⇒改めて確認する。
・アメリカのバーネット判決を知っているか
⇒知らない。
・中国では義務づけていない。学校の判断で行っているのだ。
⇒知らなかった。
・日本のように処分している国が他にあるか
⇒知らない。
2)国際人権について
①朝鮮学校の無償化からの排除は無差別・平等原則を掲げた規定や
「無償教育の漸進的導入」が「すべての者に対して機会を与えられるものとすること」
の規定(社会権規約13条2b)に違反しないか。
⇒排除は人種による差別ではない。
②従軍慰安婦問題について「公衆を教育する」「あらゆる歴史教科書にこれらの事件を含めること」と、日本政府に示された勧告に対し、どう対応していくか。
⇒教科書への記述については、発行者、執筆者の判断。解説で、アジアの人への加害を書いている(から事足りるという意か?)
参加者から、「国際規約では、敬意を強制して自由を侵害してはいけない、 と書いているが、知っているか。」と聞かれ、文科省側は、「知らない。確認する」。
3)大阪府・市条例及び教育施策
①大阪府・市職員基本条例の免職規定、累積加重処分規定は、2012年1・16最高裁判決に反するか否か、文科省の見解を明らかにされたい。
⇒直接コメントする立場にない。司法の判断だ。
②中原教育長は9月までに、「起立と斉唱を確認する客観基準」を作成すると発表している。このような強制について文科省の見解を明らかにされたい。
⇒任命権者の責任と権限としてすべき。教員は職務命令に基づき、起立斉唱する責を負う。
③大阪市教委は、全国学力テストの学校別結果の報告を各学校に義務付け、校長が学校協議会の意見を聞いて公表・非公表を決め、各校のHP等で公表するよう指示した。これに対する文科省の見解を明らかにされたい。
⇒過度な競争にならぬよう注意すべきだが、説明責任を果たすために、市教委は指示して問題ない。公表は各学校の判断によるべき。
さらに参加者からの質問と発言。
・2条例は憲法19条違反、さらに98条に抵触すると思うがどうか。
⇒コメントする立場にない。
・ 1・16最高裁判決の、「不起立前後の態度等」を使い、3回で免職。これを適正と考えるか
⇒司法の判断を尊重する。文科省は判断する立場にない。ただし、処分が不適切ならば、文科省は検討する。
・ 1・16最高裁判決に基づき、府教委を指導してほしい。これは要望です。
4)教科書採択について
①教科書の選定に当たっては、調査・選定の委員会が地教委や学校に置かれているが、それらの調査・選定の作業をどこまで把握しているか。
⇒教育委員会の権限がある。適切に作業がされている。
採択権限は、地方教育行政法23条
(=教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で、次に掲げるものを管理し、及び執行する。…6 教科書その他の教材の取扱に関すること)により、教育委員会にある。
②都教委の教科書採択介入に関して。
実教出版社教科書の「一部の自治体で公務員への強制がある」
という記述は事実か、事実に反しているか。
⇒検定では、事実として許容された。
③「見解」に反するという理由で採択を禁止することは許されるのか。また、それは「検閲」に当たるのではないか。
⇒検定を否定したとは考えない。「検閲」に当たらない。
参加者からの質問が続いた。
・神奈川県教委は「採択した学校には街宣車が来る」と脅した。知っているか。
⇒学校を脅したことは知っている。住民が質せばいい。自治事務の問題。住民と県との間の問題だ。
・「生徒の実態に即し」た採択と言えるか
⇒専門的な教員の判断と教育委員会の権限の問題だ。文科省が言うべきことではない。
・大阪府教委は「一面的」な教科書を事実上採用すべきでないとして、教育委員会にかけることなく、「専決事項」と言った。それが許されるのか。
⇒自治事務だ。
ざっと追うと、このようなものだった。地方教育行政法を盾に、
「コメントする立場にない」を繰り返す。
そもそも、「日の丸・君が代」の強制徹底は
文部省による通知と悉皆調査によって始めたことなのに、
そんなことはどこ吹く風。
東京、大阪、神奈川の実教出版社「高校日本史A」「高校日本史B」不採択は、文科省にとっては、検定制度を否定され、侮辱されたこと。ここでこそ、教育委員会を指導すべきなのに、「教育委員会の権限」と言う。
事実を示す教科書を子どもたちに使わせたくないのは文科省も一緒、3教委にやってもらおうじゃないかという文科省の本音が見え隠れする。
「来年からの文科省交渉は、偏った法令の読み方を教えられた若い官僚たちに、 私たちがレクチャーする機会としたらいいのではないか」という声が、2日間の最後のまとめの集会で参加者から上がった。
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