不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Capodanno Fiorentino

2005-03-25 03:30:00 | うんちく・小ネタ
今年は復活祭がこの時期になったので、
3月25日金曜日はVenerdi Santo(聖なる金曜日)。
イエス・キリストが十字架にかけられた日。
そしてこの日から数えて三日目に復活するのです。

しかし、マリア信仰の強いフィレンツェは
3月25日は別の意味で重要。
フィレンツェの「元旦」なのです。

古くからカトリック教世界では
聖母マリアがイエスキリストを身ごもったことを知らされる
「受胎告知」の日をとても大事な日として捉えています。
因みに映画コンスタンティンのエントリでも触れましたが、
この受胎の告知をしにやってくる大天使がガブリエレです。

7世紀頃から、受胎告知の日は3月35日と設定されています。
イエスキリストが生まれた12月25日から逆算してちょうど9ヶ月前。
(なぜ十月十日じゃないのだ?)
受胎告知が3月25日と設定されたそのときから
フィレンツェではこの日をお祝いする慣わし。

この祝日と絡めてフィレンツェでは1750年まで
「一年の始まり」は3月25日ということになっていました。
(これを考慮して古文書を読まないと
西暦年数を一年、間違えちゃったりするわけです)
因みに全イタリアの他の都市では
1582年にはグレゴリオ暦に移行しているので
フィレンツェは随分頑固に伝統を守り続けていたのです。

いずれにしてもフィレンツェ市民にとっては
3月25日は民間のお祭りでもあり、宗教的な祭日でもあり
春の訪れを祝う日でもあったのです。
で、その昔、この日には、フィレンツェ市民はこぞって
サンティッシマ・アンヌンツィアータ教会へ詣でたのです。
同教会内の「受胎告知の礼拝堂」には
作者不明の「受胎告知」が保存されていますが、
この作品の中の聖母マリアの顔は
作者が上手に描けなくて悩んでいたときに
一夜にして天使が描き上げたと伝えられています。
みんなでその絵を拝みに行ったのです。

遠くから詣でてくる人々をねぎらうために
教会では一日をオルガンコンサートで締めくくったそうです。
で、今年はこの習慣に倣って(数日遅れですが)
4月4日月曜日21時より
サンティッシマ・アンヌンツィアータ教会で
「フィレンツェの元旦を祝うコンサート」が無料で行われます。

世界的にグレゴリオ暦に移行してもなお
頑固に168年も守り続けた伝統。
色々と公文書やら商業上に支障が出ていたに違いありません。
当事のトスカーナ大公だった
ロレーナ家のフランチェスコ2世が1749年11月20日付けで
「そろそろ世界に足並みを揃えます」と宣言。
これを受けて1750年からは1月1日が年の始まり。
で、これを記念した碑文が今でも
シニョーリア広場のランツィのロッジャの壁に残っています。
碑文はGiovanni Lami(ジョヴァンニ・ラーミ)によって
大理石に刻まれたもの。
それほどまでにフィレンツェを揺るがした出来事だったわけです。


このブログ内では恒例になってきましたが、
もちろんこうしたフィレンツェゆかりの伝統のお祭りの際には
街中を「フィレンツェ共和国時代風仮装行列」が練り歩きます。
今回はPalazzo Vecchio(ヴェッキオ宮殿)から
Chisa di SS.Annunziata
(サンティッシマ・アンヌンツィアータ教会)まで。
また25日には一日中
サンティッシマ・アンヌンツィアータ教会前広場に
青空市が立ちます。



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