「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

魔笛視聴コーナー~DVDの部~まとめ

2007年06月02日 | 魔笛視聴コーナー~DVDの部~

1971年収録のシュタイン盤から、2006年収録のムーティ盤まで13セットのDVD盤の視聴が終了したのでまとめてみる。

①格差の激しいDVD盤

21セットのCD盤も玉石混交だったが、DVD盤はそれ以上だった。音質はCDの方が良いのに決まっている(我が家の装置では)ので、DVDに求めるのは、音質はそこそこの範囲で演劇としての舞台装置、歌手達の歌い方や演技などだが、これは使用されている歌劇場によって格差が激しかった。

地方の音楽祭のまるで学芸会みたいな小さな会場から国を代表する歌劇場まで実にピンからキリまであり、舞台装置も歌手達の熟度もその会場のレベルに見事に付随していた。実際に観劇するのならともかくDVD 化して販売するのが非常識と思われる盤も見受けられた。CD盤に比べて随分高価なので要注意である。

例を挙げると、レスキー盤(1999)、トロタン盤(2000)などがそうである。


②パパゲーノの役柄

やや細かい話になるが、CD盤に比べて映像付きのDVD盤になるとパパゲーノ役が魔笛に欠かせないコミカルな役柄として実に印象が深かった。歌唱力はさほど必要とされない(?)役だが、演劇という面からみると主役にはなれないけれども実に重要な役なのだと再認識した。これが映像の持つ説得力だと納得。

③ベストDVD

最後にベストDVD盤だが、デイヴィス盤(2003)とメスト盤(2000年)の二つが抜きんでている。詳細はレポートのとおり。このどちらかがあればCD盤、DVD盤全てを合わせても十分にカバーできると思う。あとのDVD盤は横一線で好みになるが次点として、シュタイン盤(1971)、サバリッシュ盤(1983)、ゲンネンヴァイン盤(1992)といったところだろうか。特にシュタイン盤のザラストロ役ハンス・ゾーティン(バス)の歌唱と映像はこれだけなので実に貴重な盤。

                         
            13セットのDVD
 


 


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魔笛視聴コーナー~DVDの部~♯13

2007年05月29日 | 魔笛視聴コーナー~DVDの部~

DVD番号       UCBD1047/8(2枚セット)
収録年         2006年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合     A-    
荘厳 、華麗ではあるが盛り上がりに欠ける魔笛      

指揮者      A-     リッカルド・ムーティ(1941~    )

管弦楽団     A-     ウィーンフィルハーモニー管弦楽団

合唱団      A-     ウィーン国立歌劇場合唱団

ザラストロ     A+    ルネ・パーペ

夜の女王     A+     ディアナ・ダムラウ

タミーノ      A-     ポール・グローヴス

パミーナ      A-    ゲニア・キューマイアー

パパゲーノ    A-     
クリスティアン・ゲアハウアー

演出・舞台装置  A+

音    質    A+ 

上映時間     本編176分、特典約10分

2006年7月、ザルツブルク音楽祭におけるライブ収録である。

手持ちの43セット中、最新の魔笛ということで、一流の歌劇場、音質、舞台装置、演出は申し分のないもので、ウィーン・フィルもいつもどおり。

歌手陣のうちザラストロ役(バス)のパーペはアバド盤、そして夜の女王役(コロラトゥーラ・ソプラノ)のダムラウもデイヴィス盤でそれぞれ実力を証明済みでこの二人は今のところ最高の配役だろう。

なお、DVD盤のジャケットの配役紹介でパパゲーノ役が最上位に記載されていたがこういう例は珍しい。よほどネーム・バリューのある歌手なのだろうか。それともこの歌劇で一番重要な役どころとして暗示したのだろうか。

そういえば、タミーノ役とパミーナ役は初めて聞く名前で両方とも歌唱力にそれほど不足はないのだがどうも経験不足のせいか余裕が感じられない。しかもマッチングが理想的とは言えず視覚的にもピタリとこないし何よりも劇中での役どころの存在感が希薄な印象を受ける。

ある本に「ムーティは大したことのない歌手を使いたがる」とあり、「有名歌手を意のままに従わせるのが難しいのだろう」とあった。

とにかく、この歌劇の主役中の主役であるべきこの二人が劇の展開の中で華として脚光を浴びる存在になっていないのがこのDVD盤の最大の弱点。したがってどうしてもクライマックス感に乏しい。これ以外にもメルヘン的要素と楽しさがもっと欲しい気がする。

あとはパーフェクトといっても良い印象だったが、結局、盛り上がり感に欠けるのが致命的だと思ったので総合A-。

なお、ムーティ指揮のモーツァルトのオペラは、フィガロの結婚、ドンジョバンニ、コシ・ファン・トィッテを持っているがいずれのオペラとも自分の心に響いてくるものがなかったのでもともとこの指揮者とは相性が悪いのかもしれない。

                        

                                      パミーナ役




 

     

 

 

 

 


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魔笛視聴コーナー~DVDの部~♯12

2007年05月26日 | 魔笛視聴コーナー~DVDの部~

DVD番号     OA0886D
収録年       2003年

評価
(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合     A+   音楽、演劇、豪華な舞台装置による上質の魔笛

指揮者       A+   
コリン・デイヴィス(1927~  )

管弦楽団     A-    コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団

合唱団       A-       同上 合唱団

ザラストロ     A-   フランツ=ヨーゼフ・ゼリヒ

夜の女王     A+    ディアーナ・ダムラウ

タミーノ       A-   ヴィル・ハルトマン

パミーナ      A-    ドロティア・レシュマン

パパゲーノ     A-    サイモン キーンリーサイド

演出・舞台装置  A+

音    質     A-

上映時間     185分(本編164分、字幕英語)

ロンドンのコヴェント・ガーデン王立歌劇場でのライブ収録で、演劇の面からも音楽性の面からも上質の魔笛だった。

音質の方はややこもった印象を受けるのが玉に瑕だが、セパレーション、奥行き、清澄感いずれも及第点で、加えてこの歌劇場にふさわしい豪華な舞台装置と非常に手の込んだ演出によりまるで夢のようなメルヘンの世界に誘われる。

序曲の最初の和音が鳴り響いたときに、1984年のCDの音が蘇ったが、指揮者デイヴィスは19年間のブランクを感じさせず、むしろ上回るほどの出来栄えで、リズムとテンポが実に快調でオケも大編成で良く鳴っており、厚み、多彩な管楽器(使い方が実にうまい!)、大太鼓の迫力、スケール感いずれも会心の仕上がりだろう。

近年の古楽器的演奏に影響を受けることもなく、まったく彼独自のスケールの大きい堂々とした魔笛ワールドともいうべき世界を築いていて、円熟の境地に達しておりやはり当代最高のモーツァルト指揮者といわれるだけのことはある。

歌手陣も、現代最高の歌手達がそれぞれの役柄にピタリと収まって最高の力量を発揮した印象だ。DVDの場合、容姿の面が無視できないので歌唱力が二の次になるケースが多いがこれほど粒がそろった歌手陣も珍しい。

パミーナ役のレシュマンはアバド盤(CD)では感情過多が目立ち、この盤でもややオーバー気味のところもあるが抒情味溢れる歌唱だった。魅力を引き出すのも指揮者の手腕だろう。

魔笛のDVD盤は本当にピンからキリまであるが、これはベストの部類に入り映像、音質、演出、舞台装置、音楽性のいずれをとっても今のところこれ以上の魔笛は必要がないと思うほど。

なお、このデービス指揮の魔笛は2007年4月30日未明にNHKBS2の「クラシック・ロイヤルシート」で0:55~4:30まで放映された。もちろん、自宅で最高画質・音質のXP(32)のハイスピードでDVD3枚に亘って録画したので早速このDVD盤との比較試聴を行った。

画質の差はそれほど感じなかったが、音質の差は歴然としていた。1枚に収録した市販のものと3枚に分けて収録したものとの差は明白でBS放映を録画した方がずっと良かった。

事前に放映が分っていれば高いお金を出してDVD盤を購入することもなかったのに!

                     
                      王立歌劇場        パパゲーノとパミーナ     

                 
        夜の女王の登場      ザラストロの登場       エンディング
         










 

 


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魔笛視聴コーナー~DVDの部~♯11

2007年05月22日 | 魔笛視聴コーナー~DVDの部~

DVD番号        DLVC1182
収録年          2000年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合    B-   全て亘って今ひとつで、DVDによる販売資格を有していない

指揮者      B-   ドミニク・トロタン

管弦楽団     B-  フランス歌劇青年管弦楽団

合唱        B-  サン・セレ・フェスティバル合唱団

ザラストロ     B-  マルコス・プジョル

夜の女王     A-  アリーヌ・クタン

タミーノ      B-   アンヘル・パソス

パミーナ      A-  イザベル・ブルナール

パパゲーノ    B+   アルノー・マルゾラーティ

演出・舞台装置  
B-

音    質    B-

上映時間    149分

2000年のフランス・サン・セレ音楽祭でライブ収録されたもので非常に小規模なオーケストラに加えて狭い舞台と簡素な装いによる魔笛だった。

ところで、気になるのが何故2000年に収録したものが6年も経って2006年の12月にDVD化されて発売になったのかということで、今ひとつよく分からないが、商魂たくましくモーツァルト生誕250年に便乗したのかと勘ぐりたくなるほどこの盤は出来が良くなかった。

音質は何しろホールみたいな狭い会場に何もかもがひとかたまりになっているため、こもった響きでオーケストラの技量ともどもとても聴けるものではない。

歌手陣は玉石混交で、男性陣がお粗末だった。
ザラストロ役はバスではなくバリトンに近いうえに声量不足でどうしようもない。
タミーノ役は演技、歌唱ともにこのオペラの主役を張るには力量不足。また、現代風のTシャツみたいな衣装は何とかならないものか。観客に親近感を持たせる意図だろうが感心できない。
その反面、夜の女王とパミ-ナ役は役柄にふさわしい歌唱力でなかなかの熱演だった。

この魔笛は、観客席と舞台、オーケストラが手が届く範囲で同じ目線で近接しており、実際に観劇した場合には、オペラの中に溶けこんだような気持ちになって臨場感が味わえるかもしれない。

しかし、中途半端な会場、舞台装置、歌手達といった条件のもとで、あえてDVD化して広く鑑賞の対象になる資格を持った魔笛とは到底思えない。フランス人の芸術感覚を疑いたくなるし、それに価格の方も内容と不相応に高すぎる。

               
                        タミーノ役           パミーナ役



 


 



 

 


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魔笛視聴コーナー~DVDの部~♯10

2007年05月19日 | 魔笛視聴コーナー~DVDの部~

DVD番号          TDBA-0023(2枚組)
収録年            2000年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総合      A+     優れた音質、軽快なテンポ、楽しさ溢れる魔笛     

指揮者     A+     フランツ・ヴェルザー=メスト(1960年~   )

管弦楽団   A-     チューリヒ歌劇場管弦楽団

合唱団     A-          
同 合唱団

ザラストロ    A-    マッティ・サルミネン

夜の女王    A+    エレーナ・モシュク

タミーノ      A-    ピョートル・ベッチャーラ

パミーナ     A-    マリン・ハルテリウス

パパゲーノ    A+    
アントン・シャリンガー

演出・舞台装置 A-

音    質    A+    CD盤に引けをとらない素晴らしい音質

上映時間    151分

チューリヒ歌劇場におけるライブの収録である。メストは指揮者にしては40代とまだ若いが1995年からチューリヒ歌劇場の主席指揮者、2002年からはクリーブランド管弦楽団の音楽監督を務めるなど順調に階段を上っているようだ。

音質は文句のつけようがないほど良かった。これも2枚組みのセットの余裕だろう。
演出の方は衣装、舞台装置ともども一口で言って現代風の魔笛ということだろうが、新鮮味があって手を抜いた感じもしない。

歌手の選定も全体に好調で、特に夜の女王役は、超難度のアリアを楽々とこなす余裕と貫禄にびっくり仰天。初めて聴く歌手だが世の中は本当に広い。これまで聴いてきた夜の女王役でも五指に入る。

タミーノ役はポーランドの新鋭だそうでアイスクリームのように甘そうなマスクと演技にもっと王子らしい知性と気品が欲しい気がするが、歌唱力にはなかなか魅せるものがある。

パミーナ役はドイツ語圏で注目されている美人ソプラノとのことで、歌唱力にあまり不足はないが、少し急ぎすぎのようでもっとしっとりとした叙情性があれば素晴らしいのにと思った。

パパゲーノ役のシャリンガーはCDのアーノンクール盤とクリスティ盤に出演しており、まず同役の当代第一人者といってよいだろう。歌唱力、演技力ともに申し分がなく十分精彩を放っていた。

台詞から歌唱に入るときのテンポとオーケストラの呼吸がピタリと合っており、全般に亘って楽しさが横溢し、しかも緩んだところが見受けられない。指揮者メストの手腕は見るべきものがあってなかなかのもので、豊かな将来性を感じる。

総合A+かA-か随分迷ったが結局、音質、夜の女王役とパパゲーノ役が決め手でA+。

                      
                                 パミーナとタミーノ





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魔笛視聴コーナー~DVDの部~♯9

2007年05月15日 | 魔笛視聴コーナー~DVDの部~

DVD番号         80019
収録年           1999年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合    C   ハイライト盤であり音楽鑑賞の対象となる魔笛ではない
  
指揮者          Michael Lessky(マイケル・レスキー)
管弦楽団         Junge Bundeslander Philharmonie
合唱団           Stagione dOpera Italiana
ザラストロ         Maxim Mihailov
夜の女王         Erika Miklosa
タミーノ           Michael Kurz
パミーナ          Birgit Beer
パパゲーノ         Sebastian Holecek
演出・舞台装置
音   質
上映時間         100分

上映時間が100分ということで分かるように通常の全体時間から約50分ほどカットされたハイライト盤である。

そのカットも部分的にまとめてカットされたものではなく、全編に亘って歌や科白の途中でいきなり細かくカットされたもので、大変荒っぽい編集であり、この盤はとても鑑賞用としての対象にはならない。

収録の方は、ライブで野外の城のような施設を利用したもので、音質は感度が低くこもったモノラル録音のように聞こえ、これも良くない。

歌手陣も平々凡々で特筆するに価せず、とても評価の対象にはならない。この盤の販売目的がよく分からないがおそらくハイライトによる紹介用に作成されたものであろう。とにかく、多言を要しないDVD盤である。定価が極端に安かったので無理もないが、それにしても・・・・。

                    
                       野外施設            パミーナ役





 



 

 


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魔笛視聴コーナー~DVDの部~♯8

2007年05月12日 | 魔笛視聴コーナー~DVDの部~

DVD番号         A-100189
収録年           1992年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総     合  A-     予算節約型の舞台装置だが、音楽性の高い魔笛

指揮者      A-     ヴォルフガング・ゲンネンヴァイン

管弦楽団    A-     ルートヴィヒスブルク音楽祭管弦楽団

合唱団      A-         同 合唱団

ザラストロ    A-     コルネーリウス・ハウプトマン

夜の女王    A+     アンドレア・フライ

タミーノ      A-    デオン・ファン・デル・ヴァルト

パミーナ     A-     ウルリーケ ゾンターク

パパゲーノ    A-     トーマス・モール

演出・舞台装置  A-    豪華ではないがよく考えられている

音    質    A-    優れた音質で心地よい響きに満たされる
  
上映時間    
147分

ドイツのルートヴィヒスブルク城内劇場でのライブ収録である。

透き通った奥行きのある音質が耳に心地よい響きを与えてくれてライブ録音のメリットを生かした出来栄えだった。オーケストラも弦が厚く切れ味が鋭い。おそらく、余程音響効果に優れた劇場だろう。

演出は随所に無駄なお金を掛けない工夫がいろいろとなされており、シンプルで素朴な舞台装置、現代と古代とをミックスした衣装、色彩感覚豊かなイメージでこれまでにない独創的な魔笛で映像の方も満足できるものだった。

歌手ではザラストロ役は聖者にふさわしい威厳を表現した歌唱力で十分な出来栄え。

夜の女王役も超難度の2つのアリアを余裕をもってこなしており、華麗さも伺えて言うことなし。

タミーノ役は声の張り、艶ともにあのシュライアーの系統に属するが残念ながらもっと情感に訴えかける歌唱力がほしい。

パミーナ役のソプラノもなかなか良かったが、王女役としてのイメージはいまひとつの感があり、衣装ももっと考えた方がよい。

パパゲーノ役は歌唱力、演技とも申し分なし。

指揮者をはじめ歌手陣も始めて聞く名前ばかりで全然期待していなかったが予想を上回る出来栄えだった。

アリアや重唱などあらゆる歌唱に場面に応じた情感がきれいに表現されており、劇の運びも快調で演技も含めて全てに神経が行き届いている印象だ。

指揮者のゲンネンヴァインは、ネットで調べても生年が分からないほどマイナーだがどうやら宗教音楽を主に指揮しているようでその純粋さがこの魔笛にも生かされていると思った。

どちらかといえば、舞台装置や演出よりも音楽の美しさに比重を置いた魔笛でこういう趣向の魔笛はDVDといえども大歓迎で、録音もいいし、歌手もいいし、オーケストラもいいし目を閉じて映像を見なくても聴覚だけで十分に楽しめる域に達している。

さすがに、ドイツはワーグナーの楽劇できたえられているだけに魔笛にしてもレベルが高い印象。

                  
                  舞台装置            パミーナとタミーノ
                                    

 

 

          


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魔笛視聴コーナー~DVDの部~♯7

2007年05月08日 | 魔笛視聴コーナー~DVDの部~

DVD番号          UCBG-9008(1枚)
収録年            1991年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合     A-       コクが足りず、やや軽い印象を受ける魔笛

指揮者       A-       ジェームズ・レヴァイン(1943年~   )

管弦楽団     A-       メトロポリタン歌劇場管弦楽団

合唱団       A-           同 合唱団

ザラストロ     A-       
クルト・モル

夜の女王     A+       ルチアーナ・セッラ

タミーノ       B+       フランシスコ・アライサ

パミーナ      A-       キャスリーン・バトル

パパゲーノ     A-       マンフレート・ヘム

演出・舞台装置  
A-

音     質    A-

上映時間     166分

指揮者レヴァインの2度目のDVD収録(新盤)で、前回(旧盤)のザルツブルク音楽祭から9年経過した今回はニューヨークのメトロポリタン歌劇場におけるライブ収録である。彼が48才時の録音となる。

なお、この盤の解説書によると、旧盤(1982年)のザルツブルグでのレヴァイン起用は大抜擢で39歳という年齢は史上最年少だったそうだ。結果も大好評で以後の彼の躍進の礎となり、ウィーンフィルとも良好な関係を続けているそうだ。


音質は旧盤よりも着実に良くなっていると感じた。ライブ収録もこの程度までくれば合格点だろう。映像も良く舞台装置も劇場にふさわしい豪華さだった。

それに超一流の歌劇場にふさわしい歌手陣といってよいだろう。
ザラストロ役のモルは相変わらずしっかりした歌唱力を示しており、役柄にふさわしい堂々とした聖者ぶりだった。

夜の女王セッラも良かった。超難度の第一幕と第二幕のアリアともにパーフェクトの出来で、十二分に存在感を示した。観衆のどよめきと盛大な拍手が何よりも証明している。

なお、モルとセッラは二人ともコンビでデービス盤(CDの部♯13:1984年)にも起用されている。

タミーノ役は前回のサバリッシュ盤にも登場したアライサである。しかし、ここでもあのおとなしそうな張りのない声にガッカリ。彼の持ち味として理解してあげる寛容さが必要なのだろうが・・・。

パミーナ役はなかなかの熱演だった。第二幕のタミーノとの二重唱はなかなか聴かせるものがあった。ただし、王女役としてのイメージには少しばかり違和感を持った。

パパゲーノ役は歌唱、演技ともに熱演だったが、何物にもしばられない自然人らしい伸び伸びとした雰囲気がもっと欲しい。

全体的な印象だが、残念なことにレヴァインとオーケストラの相乗効果だろうか全体的にドライな傾向があって、しっとりとした情感やメルヘン的な楽しさ、夢のような世界空間とはやや距離があるように感じた。

なお、旧盤(1982年DVD盤)との比較をあえて述べれば、一長一短があるがレヴァインの初々しさ、タミーノ役のシュライアー、ウィーンフィルをとって旧盤の方に心が傾く。
          

                        
                             パミーナ役→キャスリーン バトル

 

 


 


 





 

 


    


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魔笛視聴コーナー~DVDの部~♯6

2007年05月05日 | 魔笛視聴コーナー~DVDの部~

DVD番号        UCBP-9022(1枚)
収録年          1983年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合     A-    歌手陣、指揮者、演出のバランスが取れた万全の魔笛

指揮者       A-    ウォルフガング・サバリッシュ(1923年~   )

管弦楽団     A-     バイエルン国立歌劇場

合唱団       A-    バイエルン国立歌劇場合唱団

ザラストロ     A-     クルト・モル

夜の女王     A+     エディタ・グルベローヴァ

タミーノ       A-     フランシスコ・アライサ

パミーナ      A+     ルチア・ポップ

パパゲーノ     A+     ヴォルフガング・ブレンデル

演出・舞台装置  A+

音    質     A-       
    
上映時間     160分

バイエルン国立歌劇場でのライブ収録である。サバリッシュは11年前の1972年に魔笛をCDでスタジオ録音をしている。

音質の方はセパレーション、奥行き感いずれも、ライブにしては上出来だと思う。ややこもった音質なのでボリュームを少し上げ気味のほうが聴きやすい。演出・舞台装置も手を抜いたところがない。

歌手陣は当時考えられる限りの一流の顔ぶれをそろえているといってよい。

ザラストロ役のモルは定評どおりで、役柄にふさわしい堂々とした歌唱力である。

夜の女王役のグルベローヴァはレヴァイン盤に続いての出演で当時第一人者として引っ張りだこだったことがよく分かる。相変わらず言うことなしの出来栄え。

タミーノ役はカラヤン盤(1980年)で俎上に上げたあのアライサである。シュライアーと比較するのは酷だが相変わらずやや声量不足で声の張りと艶に乏しく線が細い感じ。ただし、映像が加わると王子らしい演技と気品が伺われたのでまあ、総合的には良しとしなければならないだろう。

パミーナ役のポップは19年前のクレンペラー盤(CD:1964年)で夜の女王役を務めていたほどで演技、歌唱力とも申し分がない。実に息が長い歌手で安心して可憐なソプラノが聴けた。

パパゲーノ役のブレンデルはあまり馴染みがないが演技、歌唱力とも十分。

全体的に大変好感が持てて、安心して聴ける魔笛だった。サバリッシュは相変わらずオーソドックスな指揮ぶりでリズムとテンポもよく、CD盤と同様にやはり熟練の技を発揮している。

総合A+に極めて近いがタミーノ役が今ひとつ物足りないのでA-に留める。

                        
                                  パミーナ役→ルチア・ポップ

  

  


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魔笛視聴コーナー~DVDの部~♯5

2007年05月01日 | 魔笛視聴コーナー~DVDの部~

DVD番号       TDBAー0094(2枚組)
収録年         1982年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合     A-     
豪華な歌手陣なのにやや軽薄な印象     

指揮者       A-     ジェームズ・レヴァイン(1943年~    )

管弦楽団     A-      ウィーン・フィルハーモニー

合唱団       A-     ウィーン国立歌劇場合唱団

ザラストロ     A-     マルッティ・タルヴェラ

夜の女王     A+     エディタ・グルベローヴァ 

タミーノ       A+     ペーター・シュライアー

パミーナ      A-     イレアーナ・コトルバス

パパゲーノ     A-     クリスティアン・ベッシュ

演出・舞台装置  A+

音    質     B+     セパレーションと解像度不足気味。ややSNが悪い

上映時間     188分(全プログラム)

指揮者のレヴァインはアメリカのシンシナティ生まれで幼い頃から音楽に才能を発揮し、2004年にはボストン交響楽団の音楽監督に就任している。

この魔笛は1982年8月ザルツブルグの劇場におけるライブ収録で、若干39歳で抜擢されたわけだ。続いて1991年に再度DVDで魔笛を収録している。また、CDでは1980年にスタジオ録音をしている。

音質の方は広くて天井の高い大劇場でのライブ収録ということで、反響音が豊かで臨場感があるが、欲を言えばセパレーションと解像度がもっと欲しい。それにややノイズ(背景にジーといった音が一緒に録音されている)が目立つ。
映像、舞台装置、演出についてはこれで十分だと思う。

歌手についてはタミーノ役シュライアーの舞台姿は最初で最後だが相変わらずの歌唱力には惚れ惚れする。

夜の女王役はこれまたあのグルベロ-ヴァで十分な存在感を示し、彼女の登場で舞台が一気に盛り上がり、超難度の2つのアリアに観衆の感嘆が伝わってくる。鳥肌が立つようなコロラトゥーラで絶好調といってよい。

ただし、ザラストロ役にはもっと声量の豊かさ、パミーナ役にはもっと透き通った歌声が欲しいが欲を言えばきりがないだろう。パパゲーノ役は熱演でこれで十分である。

これだけの歌手陣をそろえ、しかも不世出の演出家ポネルが手がけた豪華な衣装と華麗な舞台装置と充実した演出、これで総合A+でないとおかしいぐらいだが指揮者のレヴァインはどうも性に合わない。やや軽くてドライすぎる印象を受けてしようがない。

                        
                                    タミーノとパミーナ

 

        


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魔笛視聴コーナー~DVDの部~♯4

2007年04月28日 | 魔笛視聴コーナー~DVDの部~

DVD番号      GNBC-5007
収録年        1978年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合     A-     音楽性と観劇性とが調和した佳作

指揮者       A-     レオナルド・ハイティンク(1929年~    )

管弦楽団     A-      ロンドン・フィルハーモニー

合唱団       A-      グラインドボーン音楽祭合唱団

ザラストロ     B+      トーマス・トマシュケ

夜の女王      A-     マイ・サンド

タミーノ       A-      レオ・ゲーク

パミーナ      A-      フェリシティ・ロット

パパゲーノ     B+      ベンジャミン・ラクソン

演出・舞台装置  A-

音    質     B+     奥行き感とセパレーションが物足りない

上映時間     164分(カラー)

グラインドボーン音楽祭における実況録音である。ハイティンクが49歳のときの収録となるが、3年後の1981年にはCDによりスタジオ録音を行っている。

CD盤の収録と違って舞台での実況録音となると、実際に台詞を言い、演技をし、しかも歌わねばということで一人三役で大変忙しいだろうと歌手には同情する。

その割には、無名の歌手が多いにもかかわらずよく歌い、よく演技している印象。これもハイティンクの手腕だろう。

実際に舞台を観ながら鑑賞するともっと良さが分かるのだろうが、DVD盤になると音質がいまひとつの印象。演出や舞台装置で十分カバーできればとも思うがどうも中途半端のようで、このDVD盤ならではというセールスポイントに欠けるようだ。

しかし、ハイティンクの指揮はやはりさすがと思わせるものがあり、音楽性は高い。


                        
     パミーナ役→フェリシティ ロット


 


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魔笛視聴コーナー~DVDの部~♯3

2007年04月24日 | 魔笛視聴コーナー~DVDの部~

DVD番号      DLVC-8003
収録年        1976年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総    合   A-   演出・舞台装置が華やかで映像優先の魔笛   
 
指揮者      A-   ゲルト・バ-ナー

管弦楽団     A-   ライプツィヒ・ゲバントハウス管弦楽団

合唱団      A-   ライプツィヒ歌劇場オペラ合唱団

ザラストロ     A-   ヘルマン・クリスティアン ポルスター

夜の女王     A-   インゲ・ウィーベル

タミーノ       A-   ホルスト・ ゲプハルト

パミーナ      A-   マグダレーナ・ファレビッチ

パパゲーノ     B+   ディーター・ショルツ

演出・舞台装置  A+

音    質     B+   セパレーション不足でやや歪っぽい音質
    
上映時間   158分(カラー)

ライプツィヒ市立歌劇場での実況録音だが、音声はDVD化の際に別に吹き込み直しているようだが、それにしては音質があまり良くない。

カバーにはステレオと記載してあるがモノラルに近い印象で、大きな音声になるとやや歪っぽくなる。

ザラストラ役は役柄に合った容姿ではないが、しっかりしたバスを披露している。
夜の女王役もなかなか好演である。
タミーノ役は歌唱力、演技ともに熱演で過不足なしの印象。
パミーナ役は配役の中で傑出しており、このオペラの華となってきれいなソプラノを披露しているがもっと艶っぽさがほしい。パパゲーノ役は歌唱力、演技、容姿にメルヘン的な雰囲気がほしい。

音質がもっと良ければと残念だが、歌手達以外にも全ての端役に出番を与えて隅々まで気を配っている印象を受けた。演技、演出、舞台装置には大いに観るべきものがあった。

観劇する方に重点をおいたオペラであり、音楽には期待しない方がいいが、DVDだからそれでいいのかもしれない。存在価値あり。

                      

    パミーナ役→マグダレーナ ファレビッチ

 



 


 


 


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魔笛視聴コーナー~DVDの部~♯2

2007年04月21日 | 魔笛視聴コーナー~DVDの部~

DVD番号      KKDS-61
収録年        1974年
映画監督      イングマル・ベルイマン(1918年~  ) 

評価
(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総    合      B+    音楽ではなく、劇映画として鑑賞すべき魔笛

指揮者        B+    
エリック エリクソン(1918年~    )

管弦楽団       B+    スウェーデン放送交響楽団

合唱団        B+      同上合唱団

ザラストロ       B+    ウールリグ・コール

夜の女王       B+    ビルギット・ノールディン

タミーノ        B-     ヨーゼフ・ケストリンガー

パミーナ        A-    イルマ・ウッリラ

パパゲーノ       A-    
ホーカン・ハーゲゴード

演出・舞台装置    B+

音    質       B-    クリアーさに欠けた音質


上映時間      135分(カラー)

監督、指揮者、歌手をはじめ歌詞も台詞も含め、全てがスウェーデン仕込の魔笛である。ベルイマン監督が少年時代から愛した「魔笛」を念願かなって映像化したものである。

音質の方はケースにはステレオとあるが、モノラルに近い。吹き替えなのにあまり良い録音とはいえず、こもった音質で映像付きでなければとても聴けない。録音機器に神経を使った形跡がない印象。

全ての歌手が可もなく不可もなくといったところだが、いまひとつ魅力に乏しい。特にタミーノ役がこれでは物足りない。

このDVDはあくまでも巨匠ベルイマン監督の映画として鑑賞すべき作品で音楽・音質に期待すべきではない。観劇する少女の表情を細かく追いかけてアップするシーンが度々あり映像に芸術的な意義を求めているようだ。そう思って割り切って鑑賞していると味のある魔笛になる。 

しかし、第2幕で20分ほどカットしており、そのせい(?)で映像と音が度々途切れているのはいただけない。

                                    
       パミーナ役→イルマ ウッリラ
 






 


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魔笛視聴コーナー~DVDの部~♯1

2007年04月17日 | 魔笛視聴コーナー~DVDの部~

DVD番号        DLVC-8023
収録年          1971年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合     A-
     一流の歌手達による極めて上質の魔笛

指揮者       A-    ホルスト・シュタイン(1928年~   )

管弦楽団     A-     ハンブルク・フィルハーモニー

合唱団       A-        同上合唱団

ザラストロ     A+     ハンス・ゾーティン

夜の女王     A+     クリスティーナ・ドイテコム

タミーノ       A-     
ニコライ・ゲッダ

パミーナ      A+     エディット・マティス

パパゲーノ     A-     ウィリアム・ワークマン

演出・舞台装置  A-     オペラ映画として充実している

音    質     A-     惜しいことにモノラルだが鮮明な録音

上映時間     154分(カラー)
              
このDVD盤は、映画としてスタジオで作成されており、いわゆる「オペラ映画」と称されるもので、音声と映像が別々に収録されている。

指揮者シュタインはドイツ出身であのヴァントに指揮法を学び、1969年からはバイロイト音楽祭の指揮者としても活躍していた。

歌手陣の豪華さには目を見張るものがあり、ザラストロ役のゾーティンは容姿、音声ともに申し分なく役柄のイメージを十分発揮しており、CD盤の録音が無いのが実に惜しい程の実力。

夜の女王は、CDの部でも存分の実力を発揮したドイテコム(ショルティ盤)であり、ここでも安定感のあるコロラツゥーラを披露してくれた。

タミーノ役はやや歌唱力に不満があるものの、許容範囲だろう。パパゲーノ役も適役であり、パミーナとの二重唱も相性がよくなかなか聴かせる。

パミーナ役はあのエディット・マティス(カラヤン盤)である。天は彼女に美貌と美声という二物を与えたようで、とにかく映画俳優以上の容姿端麗さには驚いた。映像付きだと真価が倍以上になる感じで、彼女のためだけにこの盤を購入してもいいほど。

DVD視聴の場合は、CDの試聴と違って、音楽と音質に加えて演劇と画質が加わり、オペラ本来の大事なポイントになるが、このDVD盤はこの4つのポイントがそろった良好な盤であり、最初から幸先が良い。

154分の上映時間があっという間に過ぎ去ってしまうほどの密度の濃い魔笛で、ステレオに越したことはないがモノラル録音のハンディもそれほど気にならならない。

歌手陣が伸び伸びと実力を発揮した印象でこの豪華メンバーで是非CD録音をして欲しかったほど。指揮者シュタインの緩急自在の指揮も好ましい。

                         
     パミーナ役→エディット マティス



  

 

       

 


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