「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

ピンチはチャンス

2016年02月28日 | オーディオ談義

長いことオーディオをやっているといろんなトラブルが起こる。耐久性を重視する工業製品とは違って、オーディオ機器ははるかに繊細だし、繊細なツクリであればあるほど音がいいので仕方がない一面もあるが、振り返ってみるとそういったトラブルのたびに何かしら得るところがあり、結果的に成長したことに気付く。

つまり、ピンチはチャンス。今回もそうだった。

「171シングルアンプ」と並んで、愛用している「Px25シングルアンプ」だが、真空管の抜き差しをしていたところ磁器製のソケットにヒビが入ってしまった。こういう小さな事故が大切な古典管を台無しにしてしまうきっかけになるので、早急に修繕をしなければならない。

まず思い浮かぶのが優れた腕前を持つ馴染みのアンプ・ビルダーさんだが、現在はあいにく腰痛の治療でリハビリの真っ最中。じぶんも腰痛の経験があるが、屈んでの作業なんて厳禁でもってのほかである。現時点ではそういう非常識なことを頼むわけにはいかないので「さあ、困った!」。

ふと思い浮かんだのが「北国の真空管博士」(以下、「博士」)。先日「71Aプッシュプルアンプ」を見事なまでに蘇生していただいたのはまだ記憶に新しいところ。

「ソケットにヒビが入ってしまったので交換をお願いできませんか。併せて、現在ボリュームが一つ付いているのですが、不便なので左右単独のボリュームにしていただけませんか?」と、博士にお願いしてみたところ、「いいですよ。診て差し上げましょう」と、快く引き受けていただいた。

待つこと10日あまり、この間博士独自のノウハウをいかしたアレンジメントもしていただいたようで昨日27日(土)のお昼時に無事アンプが戻ってきた。

         

アンプの基本構成は変わらずドライバー管に「471B」(デフォレ)、UTCのインターステージトランス(内蔵)を経由し出力管は「PX25」(ナス管)、そして一番右側の整流管はレイセオンの「VT244」(軍用管)。スピーカーは「AXIOM80」(最初期版)

さっそく、結線して聴いてみたところ「う~む、この音は!」と、思わず唸ったねえ(笑)。

一人で聴くのはもったいないとばかり、近所にお住いのYさんに来ていただいた。

「音の立ち上がり、立ち下りが早いのでとてもクリヤーに聴こえます。艶のある音色といい、音の粒立ちといい、素晴らしいですね。それに人肌の温もりまで感じさせます。これまでこの家で聴かせていただいた中ではこの音がベストです。凄い人がいるもんですね~。」と、大絶賛。

一言でいえば、「とても品が良くてヨーロッパの上流社会の貴婦人を思わせるような音」だ。

つい先日のブログにも掲載したが「171アンプ」(アメリカ)が「素顔美人」だとすると、「PX25アンプ」(イギリス)は大舞台にふさわしい「お化粧美人」ともいえる。今や我が家の両雄である

しばらくCDの音を目を瞑って聴かれていたYさん、やおらポケットからどっさりUSBメモリを取り出されて、「ひとつ、これを聴かせていただけませんか。」

久しぶりに「ネットワーク オーディオ プレイヤー」の「NA-11S1」(マランツ)の出番となった。

      

システムの流れは「NAー11S1」 → (サエクのデジタルコード) → DAコンバーター「エルガー プラス」(dCS) → 「大西プリ」 → 「PX25パワーアンプ」 → スピーカー「AXIOM80」。

以後、クラシック、ジャズ、歌謡曲のオンパレードが始まった。

「これまで石川さゆりの飢餓海峡(ステレオサウンド誌特別録音)を、いろんなところで聴かせていただきましたが、この音がベストです。」と、Yさん。今日はベストという言葉がしきりに横行する(笑)。

以下、続く。
 


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素人の生兵法

2016年02月25日 | オーディオ談義

これまでの長~いオーディオ人生の中でいろんな方と接触してきたが、大きく分けると2つのタイプがあるように思う。

一つはメーカーがつくった製品に絶大の信頼を置き、あちこち弄ることなくオリジナルのまま終生大切に使うタイプ。これを「オリジナル至上派」としよう。

もう一つはメーカーがつくった製品に初めから疑いの眼を向けるタイプ。どうせメーカーなんて儲けることを至上の目的にしているんだから、目に見えないところでコストダウンを図っており該当するとおぼしき箇所を弄ればもっと音が良くなるだろうと信じ込む輩でこれを「改造派」としよう。

もう言わずもがなだが、じぶんは明らかにずっと「改造派」を通してきた。しかし来し方を振り返ってみてはたしてこれで正しかったのかどうか、いまだに確信が持てないところがあるのも事実。

まあ、音響ひいてはオーディオなんてすべて科学的に解明されているわけではないので、断定的な物言いや思考は厳に慎むべきことであることもたしかだ。

ただ、一つ確実に言えることは、オリジナルを改造した製品をオークションに出した場合、確実に相場より値が下がることだけは請け合っておこう(笑)。

それではここで「最たる改造派」の失敗例を具体的に上げてみることにしよう。なにしろタンノイのフラッグシップモデル「ウェストミンスター」の中身を改造してユニットを入れ替えるほどの無茶をやる男だから「最たる改造派」といってもおかしくはないだろう。

☆ 「AXIOM80」のARUについて

「ARU」とは「Acoustic Resistance Unit」の略で、音響的にユニットに負荷をかけて低い音を平坦に伸ばす役目を持っている。

これだけではサッパリだろうからもっと立ち入ると、コーン型ユニットは前に出る音(正相)と同時に後ろにも音を出す(逆相)。この両者が混じり合うと音を打ち消し合うので仕方なくユニットを箱に納めているわけだが、この逆相の音(背圧)をうまく利用してユニットに負荷をかけるのがARUというわけ。

           

画像中央部分のお粗末で小さな桟で囲まれた部分がARUの実体である。普通のバスレフタイプみたいに簡単に背圧を逃がすことなく、いわゆるタメをつくってユニットに負荷をかけて低音域を伸ばそうという天才的な着想である。

実を言うと、我が家の場合これまでこの部分に細かなメッシュ(網の目)状の金網をずっと被せてきた。背圧をさらに逃がさないようにすると、もっと低音域が伸びるかもしれないという期待からである。今思うと、これぞまさしく「素人の生兵法」だった。

さすがにオーディオ仲間のSさん(福岡)からは見るに見かねて、「早く元通りにした方がいいと思いますよ」というアドバイスをいただいたものの、それほど違和感を感じることもなく「まあいいか」と、半信半疑ながらこれで通してきた。

しかし、このたびの中低音域に豊かな響きを持つ「71APP」アンプの出現がオーディオ環境を一変させた。大いに刺激を受けてようやく「金網を外してみるとどうなるかな」という思いに至った。

昨日(24日)の早朝、起き抜けにスピーカーボックスを裏返しにして左右両方のARUの部分に釘を打って取り付けていた金網を難なく取り払った。時間にして20分あまり。

工事終了後、さあ、どのくらい音が変わったのだろうかと興味津々で機器のスイッチをオン。

ウ~ン、参った!音の豊饒さとともに鮮度が向上しヴァイオリンの音色が一段と冴えわたってきた。中低音域の物足りなさはスピーカーではなくてアンプに責任を求めるべきだったのだ。

「グッドマンさん、信用しなくてどうも申し訳ありませんでした。」と深々と頭を垂れたことだった(笑)。


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「素顔美人」と「化粧美人」

2016年02月23日 | オーディオ談義

3日前の20日(土)のこと、3週間ぶりに我が家にお見えになったYさん(別府市)が2時間ほどの試聴を終えてお帰り際にボツリと洩らされた。

「来るたんびに鳴らすアンプが変わっているけど、音の方は着実に良くなってる。2~3年前と比べると大違い。」

「うん、うん、その通り。」と、珍しく謙遜をせずに素直に応じてしまった(笑)。

日頃からフルートを愛好され、生の楽器の音に鍛えられているYさんはご自宅のオーディオシステムも電源をバッテリー駆動にするなどとても(音に)うるさい方なのでそのご意見はいつも傾聴に値すると思っている。

それにしても、こんなに自他ともに許すほど音が良くなった原因はいったい何だろうか?

例によって我田引水はいつものとおりだが、以下、誰はばかることなく思うままに率直に述べてみよう~。

気に入った音を手に入れるためにはシステム全体のレベルアップが不可欠なので、dCSがらみの前段機器、大西工房のプリアンプの導入も無視できないが、何といっても一番の功績は新たな真空管アンプに尽きる。

現在、我が家には8台のパワーアンプが暗躍(?)している。

「171シングル」3台、「71Aプッシュプル」2台、「PP5/400(PX25)シングル」1台、「WE300Bシングル」1台、「2A3シングル」1台

つまり「171系統」のアンプが5台もある!

そう、すっかり「171系統」の出力管に惚れ込んでしまったのである。あえて「171系統」と表現したのにはちゃんとした“わけ”があって、このところすっかりお世話になっている「北国の真空管博士」による分類はこうである。

「171系はフィラメント電流のバリエーションが豊富で、私が知っているだけでもこれだけあります。」 

「471B  0.125A」 「171A  0.25A」 「071A  0.25A」 「171  0.5A」 「071 0.5A」 「AC171 0.5A」 「171AC 0.5A」 「171AC(Hytron)1.25A」 「C182  0.75A」 「C183(481) 1.25A」 「C182B(482B) 1.25A」 

基本的なツクリがしっかりしているので類似球が多くなるのだろうが、なにしろ90年ほど前の1920年代に製造された球だから、おいそれと型番を狙って手に入る類のものではない。

ほとんどがたまたまオークションに出品された球を運良く落札出来るケースに限られているのが難儀といえば難儀。トラブルだって日常茶飯事だが、そういう欠点を補って余りあるほどの音質の良さがある。

現在使っているのはシングル型式(2本)には「171」(ナス管:トリタン仕様)を、プッシュプル型式(4本)には071Aを使っている。ST管もかなり持っているが、真空管全般に言えることだが、ナス管と比べるとちょっと音質が味気ない。

なお、この「171系統」はうかつに人に勧めたりすると恨みを買うこと必定である。出力がたかだか1ワット未満だし、プッシュプル型式でもせいぜい2ワット未満なので能率の低いスピーカーにはまず合わない。それに古典管の扱いに精通したアンプビルダーの出番も必須の条件となる。

音にパワー感を求める向きには不適の171系統だが、「アンプに必要以上のパワーとお金をかけないこと」という金言もある。「くっきり爽やかで音が澄んでます。これぞまさしく直熱三極管の音ですね。」というのが、この日「171系統」を聴かれたYさんの第一声だった。たしかにじぶんもそう思う。

また、同じ「171」系統を愛する仲間のKさん曰く「171系統の音の良さを一言でいえば素の音にありますね。」と仰っていたのが耳に焼き付いている。

思わず「そうなんです!仰々しいところがいっさい無いし、録音された音をありのままに素直に出してくれますね。この球はまったく奥が深くて飽きがきませんよ。」と、快哉を叫んだことだった(笑)。

ふと、「素顔美人」と「化粧美人」という対比が思い浮かんだ。

「素顔美人」が「171系」の飾らない朴訥な音だとすると、「化粧美人」とはまさに「PP5/400」の音が該当する。「PP5/400」(初期版:イギリス)といえば、持ち主が言うのもおかしいが、大型直熱三極管の最高峰としてつとに有名な球。

中高音域の艶に独特の趣があって大きな舞台向きの「演出系の音」といった印象をいつも受ける。もちろん、どちらがいいとか悪いとかいう話ではなく、システムにおける適材適所の持ち味を発揮してくれればそれでいい話なのだが、この個人的な感想は分かる人にはきっと分かってもらえると思う。

まあ、日頃付き合いたいのは肩の凝らない「171系統」で、大向こうを唸らせたいときは「PP5/400」の出番かなあ~(笑)。

というわけで、我が家の本妻の位置は今のところ次の「71Aプッシュプルアンプ」が占めている。

           

整流管「5Y3G」(レイセオン)を除いてオール・ナス管8本(うちメッシュプレート4本)で構成されたこのアンプはグッドマンの「AXIOM300」と「AXIOM80」をまるで水を得た魚のように朗々と鳴らしてくれるのだからこたえられない。 


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モーツァルトの新作発見?

2016年02月20日 | 音楽談義

長年に亘って購読してきた朝日新聞だが購読を止めて地元紙だけにしてからもう2年ほど経つかなあ。何故止めたかは、私怨などではなくて義憤にかられてのことである。詳述しなくてももうお分かりのことだろう(笑)。

しかし、購読を止めたのはいいものの薄っぺらな地方紙だけでは正直言って味気無いに尽きる。地元の情報はともかく、国際的なテーマや社会問題の深い掘り下げとなるともはや望むべくもない。ほかにも「毎日新聞」や「読売新聞」などの全国紙もあるわけだが、前者は朝日と同類だし後者は強引な勧誘が目に余るのであえて取らない。

今では毎朝のそういった枯渇感をネット情報でカバーしているようなものだが、一昨日(18日)の朝刊を見ていたら、ふと目に留まったのが次の記事。こういう国際的な芸術情報も載せてくれるんだと、ついうれしくなった。

         

モーツァルトが作曲したものの、これまで闇に埋もれていた楽譜が発見されたという記事。映画「アマデウス」で一躍有名になった宮廷音楽家サリエリとの共作らしい。しかし、どうやら小品のようでガッカリ。

35歳で早世したモーツァルトがあと1年でも長生きしてくれたら人類は「魔笛」以上のオペラを手にしたかもしれないのにと、今でもときどき思う。

そういえば、ふと2年ほど前に「近未来、モーツァルトの新作オペラが聴ける」と題した過去記事を思い出した。忘却の彼方にある方が大半だろうから要所を抜粋してみよう。

「評判のミステリー<ノックス・マシン>だが、その内容をかいつまんで報告しておくと、

近未来の話で2058年の出来事が舞台になっている。主人公は中国人で「数理文学解析」の研究に打ち込む青年である。(なぜ中国人が主人公なのかは非常に面白い理由があるのだが、ここでは触れない。)

「数理文学解析」とは、もともと詩や小説作品に用いられる単語や成句の頻度分析から始まった学問で、計算機テクノロジーの飛躍的な進歩にともなって、その対象は語句のレベルから始まって、文章の成り立ち、さらには作品構造の解析にまで引き上げられ、作家固有の文体を統計学の手法によって記述することが可能になった。

そして、人間の手を借りない完全に自動化された物語の創作、すなわち「コンピューター文学」の制作が開始されるようになり、シェイクスピアやドストエフスキーの新作が次々に発表されて権威ある評論家たちが渋々、その質の高さを認めざるを得なくなったというのがこの物語の設定となっている。
 

以上のとおりだが、実に面白い着想である。

世界文学史上最高の傑作とされるが、惜しくも未完に終わった「カラマーゾフの兄弟」の続編が、ドストエフスキーになりきったコンピューターによって制作されるかもしれないなんて、まるで想像もできない夢物語のようだが、現在のように留まることを知らないコンピューターの進化を考えると何だか実現しそうな気もする。

さあ、そこで我らがモーツァルトの登場である。

わずか35年の短い生涯に600曲以上も作曲した多作家だが、あと少しでも長生きさえしてくれたら人類は「魔笛」以上のオペラを手にしたかもしれないと思うのは自分だけだろうか。

オペラには幸い脚本というものがある。登場人物の台詞と動作と心理描写などがこと細かく記載されているが、これらを手掛かりにコンピューターがモーツァルトになりきって音符の流れを解析し旋律を作って、新作のオペラを作曲するってのはどうだろう!

ちなみに、ここでモーツァルトが残したオペラを挙げてみよう。(あいうえお順)

「アポロとヒャアキントス」「イドメネオ」「劇場支配人」「賢者の石、又は魔法の島」「後宮からの誘拐」「皇帝ティートの慈悲」「コシ・ファン・トゥッテ」「第一戒律の責務」「ドン・ジョバンニ」「偽の女庭師」「バスティアンとバスティエンヌ」「羊飼いの王様」「フィガロの結婚」「ポントの王ミトリダーテ」「魔笛」

馴染みのないオペラを含めて、何と15ものオペラを作曲しておりコンピューターの解析材料(音符、台詞、登場人物の描写など)としては十分な量である。

また、その昔、モーツァルト関連のエッセイで(たしかドイツ文学者の「小塩 節」氏だったと思うが)、8歳の頃に作曲した一節が、亡くなる年(1791年)に作曲された「魔笛」の中にそのまま使われており、「彼の頭の中でそのメロディが円環となってずっと流れていたのでしょう。」とあって、それを読んでとても深~い感銘を受けたことを覚えている。

<三つ子の魂百までも>で天才モーツァルトなら、その“曲風”は生涯を通して変わらなかったに相違ない。まさにコンピューターによって解析するには最適の作曲家ではなかろうか。

こうしてみると、音符は文字と同様に記号の一種なのだから「数理文学解析」と「数理音符解析」(?)とを合体して、モーツァルトになりきったコンピューターが新作オペラを作曲するなんてことが何だか夢物語ではないような気になってくるから不思議。

まあ、自分が存命中は無理な相談だろうが(笑)。」

という内容だった。

最後に、折しも「光テレビ」(NTT)で2月16日(火)に映画「アマデウス」(1984年製作、2002年ディレクターズ・カット版で20分追加)が放映されていたのですぐに録画した。もう何度繰り返して観たか分からないほどの名画だが、こうして久しぶりに観てみるとやはり感動した。

監督は「カッコーの巣の上で」のミロス・フォアマン、音楽はネヴィル・マリナー指揮、アカデミー賞「作品賞」とくればお膳立てはそろっている。モーツァルトの才能と音楽の素晴らしさがひしひしと伝わってくる名作である。

まだご覧になっていない方は機会があれば是非~。


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「毎日が日曜日」の強味

2016年02月18日 | 独り言

およそ2週間前のこと、「釣り友達の来訪」(2016.2.6)と題した記事をupした。

「年賀状のやり取り」のおかげで、かっての職場仲間で釣り友達のA君(大分市)との交流が復活した旨を登載したわけだが、一昨日(16日)再び動きがあった。

早朝のこと、そのA君から電話があって「釣具ショップ(大分市)で26日から年度末の格安セールがある予定だけど、お目当ての竿が随分安くなるようなのでこの機会に検討してみてはいかがですか。」

「あっ、そうだね。ちょっと考えてみようかな。善は急げで、今日の10時半ごろに釣具ショップで落ち合おうよ。それから一緒に昼飯でも食べて我が家にジャズを聴きに来たらどう?」

「賛成!」

お互いに「毎日が日曜日」の人間同士なのですぐに話がまとまった。がんじがらめだった37年間の宮仕えがまるでウソみたいで、自由になる時間を沢山持っているほどこの世で贅沢なものはないとつくづく痛感する今日この頃(笑)。

なお、ここでちょっと竿の値段のことに触れておこう。一般的な相場はメーカーが付けた定価の20%引きというのが慣例で、これが25%引きともなると破格の値段になるが、A君によると今回のセールではその25%引きになる可能性があるという。

たったわずか5%の違いじゃないかと思う向きもあろうが、定価が9万円の竿ともなるとわずか5%でも4500円の差になるからその浮いたお金で真空管「227」のメッシュプレートだと4本も買えるからバカにならない。

釣具店で無事落ち合って、店員さんに断ったうえでさっそくお目当ての竿をケースから引っ張り出した。最新の糸絡み防止ガイドがついており、細身で持ち重りがしなくてとても軽い。同じ竿を所有しているA君が「この前、五島列島でこの竿で48センチの尾長グレを仕留めたよ。」と言うので益々欲しくなる。

ベテランの釣り師がなぜ「いい竿」に固執するかというと、釣り針にかかった魚が暴れることなくすんなり手元に寄ってくることが挙げられる。剛直かつ柔軟な竿ともなると、極限まで美しい弧を描きながらその弾力でもって海中の魚が違和感を覚えることなくまるで空中遊泳をしているみたいに浮き上がってきてすっぽりタモに収まるという算段である。

釣り道具では1に竿、2がリールといったところだが、オーディオに喩えると1にスピーカー、2がアンプといったところかな(笑)。釣りシーズン突入の5月中旬ごろからA君とクロ釣りに行くことになっているので、位(くらい)負けしないように
良竿を2本ほど調達したいところ。

釣り談義に花を咲かせながら、近くの「回転寿司」で昼食を済ませて一路我が家へ。

ジャズ好きのA君が2枚のCDを持ってきていた。そのうちの一枚がこれ。

         

ジャズピアニストの辛島文雄さんのファンだそうで、大分公演の際にCDにサインをしてもらったというからA君は釣り一辺倒かと思っていたが、なかなか隅に置けない。

よく聞いてみると、辛島さんはすい臓がんで現在闘病中とかで一日も早いご回復を祈りたい。たっぷり辛島ジャズを楽しんでから、次にA君が取り出したのがキース・ジャレットの「ケルン・コンサート」。

          

ジャズファンでこのアルバムを知らない人はモグリだと言われても仕方がないほどの名盤とされており、モーツァルト一辺倒の自分でも一度は聴いてみたいと思っていたのでもってこいの機会だとじっと耳を澄ました。

A君によると自宅ではどうしてもうまく鳴ってくれず、我が家ではいったいどういう音がするかと興味津々で持参した由。

一聴するとまるでクラシックを思わせるような演奏で、これが即興演奏ですかと驚いた。「ジャズ喫茶」が「ケルンお断り」という張り紙を出した逸話が残っているそうだが、たしかに頷けるところがある。

しかもときどきグレン・グールド並みに声を張り上げたり、床を踏み鳴らしたりでとてもユニーク。さらに1975年の演奏だからアナログ録音だがとても澄み切った音が出ていて感心した。開催地がケルンだからマイクなどを含めてドイツの録音機材を使ったのかもねえと想像が膨らんだ。

「やっぱり想像に違わずいい音がするなあ!」と感嘆しきりだったA君。

この日は、3系統のすべてのスピーカーを聴いてもらったが、前回のときとは評価が様変わりだった。

「フィリップスのユニットは総花的で録音された音はあっけらかんと何でも出すという感じ、AXIOM80はちょっと神経質で音が細か過ぎる、それに量感がもっと欲しい、それに比べてAXIOM300が一番バランスが取れて聴きやすいね。音を整理して音楽として提供してくれる感じがする。使うアンプによってこれだけ変わるなんてオーディオってほんとうに面白いね。」

「真空管アンプがプリもパワーも余っているので持って帰って鳴らしてみたらどう。貸してあげるよ。」

「いや、そこまでしなくても。当面釣りに専念したいので・・・。」

オーディオの果てしない泥沼にどっぷり浸かるのを警戒するA君。その方が明らかに健全だよねえ(笑)。
 


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我が家の「三姉妹」

2016年02月16日 | オーディオ談義

このところ古典管に陽が当たりっぱなしなので、久しぶりに我が家の賑やかな「三姉妹」を紹介しよう。

        

一番左側に位置する長女はおとなしくて親の言うことを素直にきく真面目なタイプ。箱はタンノイ・ウェストミンスターなのに容れてあるユニットは「フィリップスの口径30センチのダブルコーン型(アルニコ・マグネット」)だが、うまく協調してくれている。

さすがに世界各地の放送局でモニタースピーカーとして使用されていた流れを汲むユニットだけあって自己主張が幾分控え目なのが好ましい。

ときどき気分転換も必要だろうと伴侶(アンプ)を入れ替えてやっているが、あまりえり好みせずそれぞれにうまく対応してくれる。我が家の安全パイとしてとても頼りになる存在。

次に一番右側がグッドマンの「AXIOM80」といって、末っ子のじゃじゃ馬娘である。親の言うことには無頓着で、しかもよく小理屈を言う。

このCDは録音が悪いだの、この伴侶とは相性が合わないなどと文句の言いたい放題なので、対面するときはいつも何らかの緊張感を強いられる。しかし、気分が乗ったときには信じられないようなファインプレーを連発するのでなかなか外せない存在。

問題は画像の真ん中に位置する次女である。

「出来のいい長女とやんちゃな三女に挟まれて個性を発揮できない次女」という構図が浮かび上がる。実は誕生の経緯そのものからして不純だった。ネットオークションにユニットとエンクロージャーがたまたま信じられない価格で出ていたのでダボハゼのように飛び付いたというのが真相だ(笑)。

アンプと違って図体が大きくて目立つエンクロージャーが我が家に到着したときに、家内が眉を顰めたのは言うまでもない。

しかし、イギリスの由緒あるグッドマンの正統派のユニットで「AXIOM300」(口径30センチのダブルコーン、アルニコ・マグネット型)。もっと存在感を主張してもいいはずだが、何だか冴えない。

「タフでなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」とは、有名な私立探偵フィリップ・マーロウの言葉だが優しさはあるものの、もっとタフさが欲しいところ。

とりわけ高音域の伸びに不満があったのでつい最近JBLの075ツィーターを付け加えたが、所詮はグッドマンとJBLの組み合わせだから、内向的なイギリス人と開放的なアメリカ人を一緒くたにしたようなものだから合うはずもなく、そのうち結線を外した。

しかし、古人はいいことを言う。「周波数が1万ヘルツ以上を保証されているユニットを使っていながら、ツィーターが欲しくなるときはそれはスピーカーではなくアンプの方に責任がある。中音域に透明感さえ確保されていればツィーターは要らないはずだ。」

まったくそのとおりだった。このたび新装なった「71APP」アンプをあてがってやると、まるで水を得た魚のように元気になったのだからたまらない。

         

これでようやく「我が家の三姉妹」の揃い踏みが実現!

やっぱり、この世にはアンプ狂いが沢山いるはずですねえ(笑)。


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整流管の「球転がし」

2016年02月13日 | オーディオ談義

日頃から愛してやまない真空管アンプ。周知のとおり用途によっていろんな種類の球が挿してあるが、種類ごとブランドごとに違う音の傾向を楽しめるのも醍醐味の一つ。

何といっても花形なのは出力管、野球でいえばピッチャーみたいなもので、その個性次第でアンプの音決めが大きく左右される。そして整流管はといえば「家庭で使っている交流を直流に変える役目を担っている」だけでどちらかといえば縁の下の力持ち的存在で、まあキャッチャーみたいなものかな。

ところが、先日SPARTONのメッシュプレート型「480」整流管を手に入れて差し替えたところアンプの音が信じられないくらい変わった、とりわけ透明感と鮮度が激変したのを身をもって体験したので、それ以来「整流管の品定め」に病み付きになってしまった。

去る9日(火)はその延長でオーディオ仲間のKさん(福岡)が駆けつけてきてくれたので、二人で2台の真空管アンプによる「整流管の球転がし」を実験したのでその経過を報告しておこう。

その前にシステムの概要について紹介しておくと、

CDトランスポート 「ヴェルディ・ラ・スカラ」(dCS)

DAコンバーター 「エルガー プラス」(dCS)

プリアンプ「真空管式大西プリ」(12AU7のPP方式、ファインメットコアの出力トランス付き)

スピーカー グッドマン「AXIOM80」

試聴盤 「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲第二楽章」(モーツァルト)、ボーカル「藤田恵美」「リンダロンシュタット」

まず、はじめに、


☆ 71APPアンプの整流管「5Y3G」について

       

左側の画像が「71APP」アンプで一番左端に整流管が挿してある。右側の画像は試してみた3本の整流管で左から「ナショナル ユニオン」(ST管)、「レイセオン」(GT管)、そしてKさんが持参された「レイセオン」(ST管)。

「それほど大きな差はありませんが、さすがにレイセオンですね。音がよく締まっていて低音域の弾み方が違います。これが原音に近い音だと思いますよ」と、レイセオン党のKさん。

じぶんではレイセオンのGT管よりもナショナル・ユニオンのST管の方が好きだが、レイセオンのST管ともなるとやはり一枚上だと思った。「この球いいですねえ」と眺めていたら、「このST管はもう使うことがないので進呈しますよ。」と、Kさん。

良かった!(笑)

それにしても、「北国の真空管博士」によって新装なった「71APP」アンプの音質に感心することしきりだったKさん。「古典管の博識ぶりは驚異的だし、アンプづくりの腕もたしかだし、この両方が並び立つ人はそうそうはいませんよ。まったく鬼に金棒的な人ですね。」

やっぱり世間は広い。しかも東京とか大阪とかの大都会ではなくて「文化果つる地」というと怒られそうだが、北国在住というところがひときわ凄い(笑)。

次の「球転がし」がこれ。

☆ 「371」シングルアンプの整流管「80」

          

けっして自慢するわけではないが、国内で「71」系の整流管「80」のうちこれほどの稀少管を勢ぞろいさせて試聴テストした例は皆無に違いない。

左から「UX213」(メッシュプレート)、レイセオンの「ER280」、某メーカーの「280」、SRARTONの「480」(メッシュプレート)、「青球180」(ARCTURAS)と、いずれもほぼ未使用に近い状態。

メッシュプレートの2本はじぶんのもので、残る3本はKさんが持参されたもの。これらの球を挿し込んで実験したアンプがこれ。

          

ドライバー管は「471B」(デフォレ)、出力管は「371トリタン」(カニンガム)といずれも「71」系。トランス類は電源トランスを除いてオール「UTC」。

「もうこのクラスになると音がどうのこうのと言ってられないですね。どれもこれも凄いの一言です!」。

こう書くと身も蓋もないのであえて贔屓目に言わせてもらうと、音の鮮度という面で「メッシュプレート管」は独特の味わいを持っていた。

こうして、真空管アンプの魅力をとことん味わいつくした一日となったが、最後にKさん曰く「この二つのアンプがあればもう十分ですよ。」

「そうですね。シングルアンプの透明感と分解能の良さ、そしてプッシュプル・アンプの力感と厚み、それぞれ捨てがたい味わいがあります。どうやらようやく我がオーディオもゴールに近づいてきた感じです。」

おいおい、そんなご大層なことを言っていいのかな・・(笑)。


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真空管アンプの「熱男」

2016年02月09日 | オーディオ談義

2年連続日本一に輝いたプロ野球「福岡ソフトバンク・ホークス」のキャッチフレーズは「熱男」(あつお)

「熱い思いで野球に取り組む」という意味らしいが、南国九州の片田舎にもまるで“熱に浮かされたように”真空管アンプに取り組む「熱男」がいる(笑)。


新たに生まれ変わった「71APP」アンプが我が家に到着してから早くも10日が経過した。

今のままでも家庭で楽しむには十分な音だと思うが、もっと良くなるかもしれないという欲望は果てしない。このアンプをベストの状態に持って行くためにどうすればいいのか・・・。出力管「71A」のグレードアップはもう手の施しようがないので残るは相性のいい「ドライバー管」と「整流管」を探すしかない。どちらも音の透明感、情報量に影響してくるのでおろそかにできない。

まずドライバー管。

☆ 電圧増幅管「127」

ドライバー管としてアンプに使用している球は「227」(ナス管:メッシュプレート)4本だが、内訳は両チャンネル用として「第一次増幅管」の2本、そして同じく「第二次増幅管」の2本となるが、前者の方が「初段」だけあってより重要だ。

このキーポイントとなる「初段」にいろんな球を試してみたいので、オークションでチェックを入れていたところ目についたのが次の青球。

              

「ARCTURAS」(アメリカ)の真空管「127」。

空前の好景気に沸いていた1920年代のアメリカ。当時の電気製品のキーデバイスは真空管だったので、幾多の真空管製造メーカーが群雄割拠して凌ぎを削っていた時代だが、「ARCTURAS」もきっとその一角を占めていたに違いない。

古典管の相談は「北国の真空管博士」に限る。さっそく教えてもらった。

「ARCTURUSはアメリカで初めて受信用5極管を開発するなど技術力には定評があります。傍熱型も初期の頃から積極的に開発し42や2A5の元になったPZHはARCTURUSの製品です。WEの球をOEM生産していた時期もあったようです。 

一枚プレートの2A3はRCAのものよりARCTURUSの方が高品質と思います。 ARCTURUSの127は初期の球はカーボンヒーターというARCTURUS独自のものを採用しています。製造に手間がかかるのと省電力化が困難であったことからパンチングタイプのプレートになると通常の折返しヒーターになったようです。
 
カーボンヒーターの127は入手が難しくなってきました。ARCTURUSは非常に高い技術力がありましたがRCAの生産合理化による低価格競争には勝てずTUNGSOLと合併したようです。青球は音質もさることながらその雰囲気の良さからコレクターにも人気があります。

以上のとおりだが、「大メーカーの低価格競争の前に撤退を余儀なくされる中小メーカー」の構図は昔も今もちっとも変わりはしない。「ARCTURAS」にもそっくり当てはまるようだ。

「悪貨は良貨を駆逐する」(グレシャムの法則)というわけだが、いささかなりとも同情の念を込めて落札してあげた。入札者はじぶん独りだけ(笑)。

次は整流管。

☆ 整流管「5Y3G」

博士のご指定でこのアンプの整流管には「5Y3Gを使用してください」ということだったが、出力管「71A」用の「80」はかなり手元にあるものの「5Y3G」は博士からいただいたST管の1本だけ。そこで、これまたオークションで物色。

               

真空管の形状が寸胴(ずんどう)のGT管というわけだが、レイセオン・ファンのオーディオ仲間に評判を聞いてみたところ「昔、レイセオンの5Y3Gを使ったことがありますが他のブランドと比べて低音域の伸びが一桁違いましたよ。」

「レイセオン ブランド」の信憑性も初期~中期のうちだけだが、一度試してみようかと、かなりの数の競争者を尻目に見事落札。

これらの「127」と「5Y3G」がほぼ同時に我が家に到着したので、すかさず装着して試聴してみた。

              

この青球「127」が「第一次増幅管」として合格するかどうか、ノイズが発生しないだろうかとハラハラドキドキだったが、とても澄み切った音が出てくれてほっと一息。しかもたいへん上質な音には参った。

それに、これまで左チャンネルからごくかすかに「ジー」というノイズが出ていたのだが、差し替えたとたんに完全に「無音」の状態になったのには驚いた。SN比も抜群で、さすがは「ARCTURAS」!

残るはレイセオンの整流管「5Y3G」だ。はたして良くなったのかどうかどうもよくわからない。実を言うと、これまでGT管を使ってきていい思いをしたことが一度もない。6SL7GTや6SN7GTを使ったことがあるがガッカリした思い出だけ。

オーディオという感性の世界では先入観の持つ影響もバカにならない。いかにレイセオンといえども、GT管とST管との聴き比べにはどうやら仲間を動員した方が良さそうだ。

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釣り友達の来訪

2016年02月06日 | 独り言

去る3日(水)、およそ10年ぶりに釣り友達のA君(大分市)が来てくれた。

A君とは現役時代に、たまたま同じ職場となりお互いに「釣り好き」と分かってたびたび一緒に釣行した仲良し。

お互いに退職した後も欠かさず年賀状のやり取りを続けていたが、今年の賀状に「第二の就職先を退職しました。現在は釣り三昧です。ほかにも最近は倉庫から昔のステレオ装置を引っ張り出してジャズを聴いてます。」と、あった。

すぐに電話して「ジャズが好きなら聴きにお出で~。まあまあの音を聴かせられると思うよ。」

「1月いっぱいは〇〇学園の果樹の剪定の仕事が入っているので、2月に入ったらまた電話するからよろしく~。」とA君。

そして、1か月後の2月3日(水)の早朝、電話があって「今日の午後はご都合がいいですか?」「いいよ~」と一つ返事。

現役時代ともなると「生活の糧」を凌ぐためのマキャヴェリズムの世界なので、あまり思い出したくない顔が多いが(笑)、趣味を通じての付き合いとなるとその絆は海のように深い。

A君がカーナビに誘導されて我が家にたどり着いたのは13時50分ごろだった。

オーディオルームに入るなり「ワ~ッ」。持ち主にはいつも見慣れている光景なのでどうということはないが、他人からするとスピーカーが3台、真空管アンプが8台ズラリと並ぶと一種異様な光景に映るものらしい。

ジャズがお好きというので、日頃滅多に聴かないマイルス・デヴィスに始まって、「エラ&ルイ」や「J・コルトレーン&J・ハートマン」などを聴かせてあげた。

鳴らしたスピーカーの順番は次のとおり。

 「フィリップスの口径30センチ・ダブルコーン」(アルニコマグネット:ウェストミンスターの箱入り)、アンプはWE300Bシングル(モノ×2台)

 「AXIOM80」(最初期版)、アンプは新装なった「71APP」

 「AXIOM300」、アンプは「同上」

ひととおり試聴後に感想を聴いてみた。どうせ「1」が見てくれからいって一番気に入ったというに違いないと思っていたところ次のようなコメントがあった。

「2はとてもクリヤで音に浸透力があるね。ちょっとスピーカーのツクリが違うような気がする。あまりに(音が)良すぎて、ほかの二つがちょっと聴き劣りするよ。こんな音を聴かされると我が家で聴くのがイヤになるな~。」

上から目線で言っては何だが、A君は素人にしておくには勿体ない(笑)。

オーディオマニアは現在ではとても珍しい人種のひとつになったが、それになるきっかけとなると、他所の音を聴いたときに「我が家ではどうしてこんな音が出ないのだろうか」という素朴な疑問から出発するのがほとんどである。

A君がこれから深みにはまるかどうか、奥様の理解度も非常に影響してくるが今後注視することにしよう(笑)。

それにしてもA君からは最新の釣理事情などが聞けて楽しかった。釣り道具も随分進化しているようで、たとえば釣り糸がまとわりつかない竿のガイドの開発や、糸のヨレがかかりにくいリールの開発など欲しいものがいっぱいあった。ただし、いずれもちょっとした真空管アンプほどのお値段がするのでうかつに飛び付けない。

それでも釣りはオーディオと違って「魚」という獲物があるので家庭の食卓への貢献度はバカにならないし、それに家内の友達にはいつも(釣れた魚を)配って感謝されている。「半分くらい出してもらおうかな~」と不埒な考えがチラリと脳裡をよぎる(笑)。

最後に、A君が(2日に)釣りに行ったお土産としてクロ(メジナ)を持ってきてくれた。

        

目印に置いた携帯の長さが11センチだから45センチクラスの大物だ。この時期のクロは「寒グロ」といって年間で一番美味とされているが、すべて刺身にして残りのアラはお吸い物に。

家内曰く「こんなに脂が乗っておいしいクロは初めて!お父さんもこのクラスを釣ってこないと~」

これは悲しい現実だが釣れた魚のサイズは不思議に釣り人の器量に比例する。じぶんのような小心翼々としてチマチマした人間に大きな魚は釣れないのだ(笑)。

まあ、実を言うと、こういうサイズは波止場から釣るのはちょっと無理。渡し船に乗って荒磯場に行かないと釣れない。実際、A君によると釣れたのはウキ下7m前後の深場だったそうだし、しかも好ポイントに上礁するためには出船の時刻が午前3時頃だから、ほとんど徹夜同然の釣行となる。この冬の寒い時期に虚弱体質のじぶんにはとうてい無理な相談。

美味しい魚は食べたいし、身体はとても付いていかないし、ヤレヤレ。
 


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朝令暮改

2016年02月04日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

久しぶりに胸を高鳴らせながら新装なった「71APP」アンプのスイッチをオン。モーツァルトのCDはかけ流しの状態なので、すぐに音が出た。しかし、左側のチャンネルからだけ!


アレッ、右側からは音が出ないのかと、一瞬青くなったが10秒ほど経ってからようやく音が鳴り出したのでホット一息。もう、心臓に悪いんだから~(笑)。音の出遅れの原因は後ほど判明するが、ドライバー管「227」のプレートの暖まり具合いの個体差だった。古典管はバラツキが多いことを再確認。

ひと山越えてふた山へ。無事に音が出ることは分かったので今度は音質である。しばらく全神経を耳に集中させて聴き入った。

よしっ、合格!

「真空管71Aに限ってはプッシュプル型式でもシングル形式に十分太刀打ちできますよ」と仲間から聞いていたが、音の抜けや粒立ちはシングルと変わらず、さらにはプッシュプル形式が持つ中低音域の独特の厚みが存分に発揮されていてとても心地よい。それに、音が消え入るときの静寂感が素晴らしい。SN比がメチャ良くなっている!

回路の配線の全面的な見直しとドライバー管を「27」(ST管)
から「227」(ナス管:メッシュプレート型)へ変更したことがとても利いているようだ。

ホトホト感心しつつ、安心してスピーカーを「AXIOM80」に繋ぎ替えた。

目を瞑ってモーツァルトに聴き耽りながら「これでようやく音を気にしないで音楽に専念できるようになったかなあ~。ここまで来るのに50年近くもかかったか・・・」と、思うと感無量で何だか胸にこみ上げてくるものがあった。

しばらく聴いているうちに、ふと近所にお住まいのYさんのことを思い出して連絡をとってみた。丁度14時ごろだった。

すぐにお見えになったYさんと心地よく聴いていたところ、いきなりザザーッという音がスピーカーから出だした。「あっ、これはヤバそう」とYさん。慌ててスイッチ オフ。いったい、どうしたんだろう?

「やっぱり古典管は難しいですねえ。」との声を背に受けながら、すべての真空管をいったん引き抜き、改めて祈るような気持ちでソケットに挿し込んで再びスイッチ オン。以後、幸いなことにこういう事象は起きなかった。

Yさんの帰宅後に、「北国の真空管博士」に原因をお伺いしたところ「ドライバー管のハンダ不良が原因でしょう。再度起こる可能性がありますね。古典管にリスクはつきものですよ。」

何せ90年前の球だから人間ではとっくにオシャカ様のはず。寛容の精神を持って許してあげることにしよう(笑)。

前回のブログで「北国の真空管博士」のコメント「現代管の開発は増幅効率の向上と低雑音化の歴史だった。」と紹介したが、これは厳密には「音質は二の次にして」という補足が要る。

「安心はできるけど音の冴えない現代管で我慢するか」、それとも「いつ何どきノイズが発生するか分からない不安におののきながら音質に秀でた古典管に固執するか」、これはまことに個人ごとの選択に帰する問題だが、自分ならためらうことなく後者を採る。なにしろスペアを大量に準備すればいいんだから(笑)。

それにしてもYさんは感嘆しきりだった。「背筋がゾクゾクするような音ですね。広大な空間に音が響きわたっていく様子がよく分かりますよ」と、どうやらたいへん気に入っていただいたご様子。ただし、ホスト役の前でケチをつけるお客さんはいないので割り引いて聞いておく必要があるのはもちろんのこと(笑)。

そのうち、Yさんが切り出してきたのが「新しく購入したアッテネーターをクルマの中に置いてます。よろしかったら繋ぎ替えて試聴させてもらっていいですか?」。

「ええ、いいですよ。面白そうですね。」

         

現在お気に入りの「大西プリ」の上に置いてあるのがこのアッテネーター。ファインメットコアの出力トランスが入っている高級品である。

試聴結果からいくと、スッキリ爽やかそのものでYさん曰く「広々した高原でサイダーを呑んだような印象です。ただし、中低音域の押し出す力がちょっと足りないようですね。」

「我が家の場合、使っている真空管アンプが小出力なのでプリアンプを使った方が相性がいいのでしょう。しかし、Yさん宅のように強力な出力を持ったTRアンプなら状況が変わってくるかもしれませんよ。」

いずれにしてもオーディオの場合、機器単体の評価はとても難しい。周辺機器との相性次第で豹変するので早計は禁物。

今回の「71APP」もドライバー管にどういう球を使うかで千変万化しそうな気配が十分ある。それだけ変化に鋭敏ということは、すべてに亘って研ぎ澄まされているわけで完成度が高い証拠である。

これからいろいろ実験してみることにするが、さしあたりレイセオンの「27」(ST管)が2本あるので、これを左右両チャンネルの「第一次増幅管」に使ってどう音が変化するかが目下の関心事項。「さすがはレイセオン」といきたいところだし、早急に新しいブランドの球も手に入れたいところで、もう既にオークションでしっかりと照準を定めた古典管がある。

「アレッ、お前はこれから音楽に専念するのじゃなかったのか!」

しまった、舌の根も乾かないうちに馬脚を現してしまった。これを「朝令暮改」というのだろうか?(笑)


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北国から帰ってきたアンプ

2016年02月02日 | オーディオ談義

「北国の真空管博士」(以下「博士」)に改造していただいた「71Aプッシュプルアンプ」(以下「71APP」)が我が家に到着したのは30日(土)の丁度お昼時だった。

開梱の真っ最中に「ご飯ですよ~」という声を背に受けたものの、「そんなものは後回しだ!」と、思わず声を荒げてしまった(笑)。

慎重に小包から取り出すと、所定の位置に真空管を挿し込んでRCAコード、SPコードの結線を完了。
          

この「71APP」の概略を述べておこう。まず出力トランス(画像右上)からだが博士から次のような情報提供があった。

「ピアレスのオープンコアタイプ(通称バンド型)が使われていたのでもしやと思い調べてみました。型番の一部が判読不明で難儀しましたが16166X型であることがわかりました。

このトランスは元々ライントランスで主にアルテックのモニタースピーカーに内蔵されていたようです。ハイインピーダンス側に中点が引き出されているのでPPであればOPT(出力トランス)に流用することができます。

新さんがラジオ技術にこのトランスを使用したアンプを発表されたような記憶があります。モニタースピーカーに使用されたトランスですので音が悪かろうはずがありません。」

あの有名なピアレス製(アメリカ)だから、なかなか由緒ある出力トランスなのである(笑)。ノイズ対策なのか、見てくれなのか、当初の位置からすると斜めに配置替えしてあった。

次に整流管は「5Y3G」を使うように指定があった。一般的に使われる「5U4G」あたりと比べると随分控え目な球である。しかし、「71A」を使うときには「80」と並んで定番である。

次に出力管はナス型の「71A」が4本(画像左側)で手前側2本が左チャンネル用、後方2本が右チャンネル用でこれは不変。

そして最後に今回の改造のハイライトとなった電圧増幅管「227」が4本(画像右側)。出力管と同様に手前側2本が左チャンネル用、後方2本が右チャンネル用。

そして、ここからが今回の改造のキモとなった部分である。平行に並んだ2本のうち右側が第一次増幅管となり左側が第二次増幅管となる。ノイズ対策上、第一次増幅管には厳しく選別した球を使う必要があり、その結果6本中3本が合格し、残り3本は少々のノイズが出ても許される第二次増幅管へと回された。同じ型式の球でもそれほどシビヤな選別をしなければならないのかと驚いた!

「古典管」のバラツキというリスクには後ほど、つくづく思い知らされることになるがそのときは知る由もなかった。

なお、博士によると「古典管のノイズ対策」は格別のようで次のようなコメントがあった。

古典管のアンプの設計にあたっては現代管にない難しさがあります。特にアンプの残留雑音を低く抑える難しさは現代管の比ではありません。言い換えれば現代管の開発は増幅効率の向上と低雑音化の歴史であったとも言えます。

雑音の多い古典管を上手に使うためには、先人がどのような工夫をしてこれを乗り越えていたかを学ぶ必要があります。私は古典管アンプ製作のバイブルと言われる名著「魅惑の真空管アンプ」の上・下巻を暗記するほど読み込みました。

USAよりも真空管関連の技術が発達していたドイツのアンプの回路図にも多くを学びました。安直に直流点火を採用するのはなるべく避けたいのです。その方が自分のアンプ製作技術の向上につながります。

むろん私など名だたるアンプビルダーの前では“ひよっこ”に過ぎませんが日々研鑽を積みたいと考えています。〇〇様のアンプをお引き受けしたのもそんな考えがあってのことです。最後に
、今回71APPアンプに施した裏ワザですが三段アンプの初段で発生するノイズを低減するために実施しましたが、古典電圧増幅管の寿命にとっても有効です。」とのことだった。

さ~て、いよいよ71APPの音出しで緊張の一瞬である。

テストソースは大好きな「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 K364」(モーツァルト)で、「五嶋みどり」さん会心の一枚である。音響空間の中央やや左側にヴァイオリンが定位し、やや右側にヴィオラ(今井信子さん)が定位してその掛け合いともなるとモーツァルトの音楽ここに極まれり、その興趣たるや筆舌に尽くしがたい。ヴィオリンとヴィオラの音色の違いがどこまで鮮明に聴こえるかもハイライトである。

ちなみに、音楽評論家の「中野 雄」氏によると(「クラシックCDの名盤」419頁)、現在、世界に超一流として通用する日本の音楽家は4人、「小澤征爾」「内田光子」「五嶋みどり」「今井信子」だそうで、そのうちのお二人さんの「そろい踏み」なので悪い演奏のはずがない!

繋いだスピーカーはグッドマンの「AXIOM300」(アルニコ型口径30センチのダブルコーン)。繊細で壊れやすい「AXIOM80」に最初から繋ぐほどの度胸はとても持ち合わせていない(笑)。

さあ、思い切ってスイッチオン!

以下、続く。


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