「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

読書コーナー~小説の一行目~

2006年11月30日 | 読書コーナー

前回の「独り言~スロー・リーディング~」の中で小説の冒頭の一文は主題に直結することが多いので極めて重要ということを紹介したが、(同様に作家は書き出しの一文にものすごく神経を使うとのこと)タイミングを合わせたように、過去の芥川賞、直木賞を受賞した作品の書き出しの一行目だけを紹介した本が出版された。

本の題名は「小説の一行目」(’6.10.10、(株)しょういん、編者「小説の一行目研究会」)である。出版の趣旨は読者が小説を選ぶ基準のひとつとして「一行目」を提案すること。また、想像力だけで楽しんでもらうために、作品の並び順はコンピューターによるランダム並列とのこと。

ここでは、304作品の中から自然描写に関する一行目にしぼっていくつか紹介しよう。なお、原本では受賞区分や題名、著者名は別記になっていたが、題名との関連でイマジネーションがより豊かになるように同時記載した。

星ひとつ見えぬ冬の夜の闇もこれほど黒くはあるまい
→昭和11年上半期直木賞「天正女合戦}海音寺潮五郎

陸奥国霊山(りょうせん)の山巓(さんてん)をかすめて、白いちぎれ雲が東の方に飛んで行った
→昭和13年下半期直木賞「兜首」大池唯雄

ーーー明治四十二年十月○日ーーー曇
→昭和15年上半期直木賞「軍事郵便」河内仙介

冬の曇り空の下に巨大な水面が、にぶい光沢を放ちながら、茫漠たる感じで拡がっている
 →昭和57年上半期
直木賞「炎熱商人」深田祐介

なまあたたかい夜だった
→昭和58年下半期直木賞「私生活」神吉拓郎

十月の川風が八ツ口から胸もとにしのびこむ
→昭和61年上半期直木賞「恋紅」皆川博子

その日は夕暮れ頃から、急に北寄りの風が強くなった
→平成8年上半期直木賞「凍える牙」乃南アサ

吹き降りが屋根を激しく叩き、中空をくぐもった陰気な音が走っている
→平成13年上半期直木賞「愛の領分」藤田宣水

どこかでは既に雨が降っているのか、白く光って見上げるようにむくむくともりあがった入道雲の方向で、かすかな遠雷のとどろきがして居る
→昭和12年下半期芥川賞「糞尿譚」火野葦平

きょうも、きのうもずっとこの頃は朝から風立っていた
→昭和13年下半期芥川賞「乗合馬車」中里恒子

雨は霙(みぞれ)となり、いつの間にか雪に変わった
→昭和14年下半期芥川賞「密猟者」寒川光太郎

どんよりした曇空でまだ明けきらないような朝あけに、風が立ちはじめた
→昭和16年下半期芥川賞「青果の市」芝木好子

海は乳色の霧の中でまだ静かな寝息を立てていた
→昭和43年上半期
芥川賞「三匹の蟹」大庭みな子

青白い夜が波のように寄せてはかえしている。
→昭和54年上半期
芥川賞「愚者の夜」青野聡

屋根すれすれに飛んできた黒い小さな鳥が、見えない空気のかたまりをひょいと乗り越え、校舎の向こう側に落ち込んだ
→昭和58年下半期
芥川賞「光抱く友よ」高樹のぶ子

雪どけの水がいく筋もの細い濁流をつくって流れる日々が過ぎても、路は黒っぽく湿って乾かない
 
→昭和63年下半期
芥川賞「ダイヤモンドダスト」南木佳士

以上、直木賞(大衆文芸作品)、芥川賞(純文学短編作品)それぞれ8作品を時系列に並べてみた。省略したものもいくつかあるが、両賞ともに近年は自然描写からの入りは少なくなってきている。

それでは、最後に平成18年の上半期の両賞を紹介しよう

直木賞
「あんたはきっと、来年は忙しくなる」→「まほろ駅前多田便利軒」三浦しをん

「ビニールシートが風に舞う」→「風に舞い上がるビニールシート」森絵都

芥川賞
「黙々と仕事を続ける水城さんに見入っていた」→「八月の路上に捨てる」伊藤たかみ

                        



 


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読書コーナー~スロー・リーディング~

2006年11月26日 | 読書コーナー

「本を早く読みたい!それは忙しい現代人の切実な願いである。だが、速読は本当に効果があるのか?10冊の本を闇雲に読むよりも1冊を丹念に読んだ方が、人生にとってはるかに有益である。」

こうした巻頭言(表紙の裏)のもとに出版された本が
「本の読み方」~スロー・リーディングの実践~(’06.9.1PHP新書刊、著者平野啓一郎氏、99年に芥川賞受賞)である。

日ごろ濫読気味で飛ばし読みをする癖がある自分にとって、まったく頂門の一針となる極めて有益な本だった。

この本は「基礎編」「テクニック編」「実践編」に分かれている。とりあえず、印象に残ったポイントをアトランダムに紹介しよう。

・ 遅読こそ知読
・ 作者になったつもりでその意図を考えながら読む
・ 書き手の仕掛けや工夫を見落とさない
・ 冒頭の一文は極めて重要で作品の主題に直接触れるものが多い

・ 常に何故という疑問を持つ
・ より先にではなく、より奥に

・ 人に話すことを想定して読むと理解力が高まる

以上羅列してみたがこの本は決してノウハウ本ではない。実践的な手法の数々を古今東西の名作を題材にして教えてくれるところが実にいい。

夏目漱石「こころ」、森鴎外「高瀬舟」、三島由紀夫「金閣寺」、川端康成「伊豆の踊り子」、カフカ「橋」など

もっと早くこの本に出会っておけば読解力が増して、読書の楽しみが何倍も増えたかもしれないと少々残念!
 

なお、最後に著者に期待したいのはスロー・・・の趣旨はよく分かったので、次にはスロー・・・に値する本の素早い見分け方を是非教えてもらいたい。現実問題としてこれだけ、書籍が多いと全てをスロー・・・というわけにもいかないので。

                         




 


 


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健康コーナー~健康管理~

2006年11月09日 | 健康コーナー

身体はあまり頑健ではない方なので、健康管理にはかなり気をつかっている。特に健康食品や薬品は、宣伝文句につられてつい手を出してしまうが、残念なことに長続きしたことはない。

その理由は1~2週間で効果が出るはずがないのに、つい即効性を期待するためである。また、その食品(薬品)が自分の体質に合っているかよく分からないという不安もその一因だ。

ずっと以前、健康管理の本を読んでいたら、連続して服用したときに自分の体質に合うかどうかを判断する目安が載っていた。メモしていたので紹介しておこう。

 通じがよくなる

 小便の出が良くなる

 体が温まる感じがする

 なんとなく気分が良い(免疫力が高まっている証拠だそうだ)

以上の4点だった。個人差があるかもしれないが自分の経験では、これはかなり当てはまった。

しかし、健康食品よりも効果をより自覚したのはやはり定期的な運動だった。近くの公立の施設で約3ヶ月間続けたところ、先日の人間ドックでコレステロールが適正値に収まり、中性脂肪が激減したのには驚いた。

ただし、やり過ぎは逆効果なので自分の体力に応じてその辺の見極めが大切だ。中高年になると特にそうだが、これが意外と難しい。むしろ、やり過ぎよりもやり足りない方がよい。自分の場合かなりの期間、試行錯誤を要した。

その結果、落ち着いた現在のメニューは、ゆっくりとした有酸素運動が40分、ストレッチが20分、筋トレが20分である。これを1週間に4日以上、時間帯は人間の体温が一番高くなる午後4時前後に当てている。

あまり長生きしても世の中のお役にたてそうにないが、病気になって医療費が増えるよりはマシだろうと思って現在も継続している。

                 

 



 


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独り言その1~話し相手~

2006年11月07日 | 独り言

現在、妻と90歳になる母親との3人暮らしである。(ひとり娘は大阪在住)。妻は日中、仕事に出かけており自分はフリー(髪結いの亭主?)なので昼間は母親と2人きりの毎日だ。

この状況は、この7月から続いているのだが、仕方がない(2人きりしか居ない!)ので時々母の話し相手になってやっていたところ、驚くなかれこの6月まで少しばかりおかしなことを言っていた母親のごく軽い痴呆症状が良くなってきたのである。

介護というのは、肉体的なお世話のことばかりが頭にあったので、ちょっと認識を改めた。会話をすることは、かなりアタマを使う作業だとは聞いてはいたが、時にはいきなり質問を投げかけたり、親子の間なので腹を立てるような事をわざと言っていたのだが、これが良かったのかもしれない。

時には面倒くさく感じることもあるが、話し相手になるぐらいで親孝行ができるのなら、これくらいありがたいことはない。この4ヶ月でこれまでの長年の不孝をかなり挽回できたのではないかと内心ほっとしている。

とにかく、「孝行しようと思ったときは親は無し」ということわざもあるし、「どんな贅沢な環境よりも、親子の会話に勝るものなし」と自分自身に勝手に言い聞かせて、せっせと安上がりで手軽な介護を続けている。

                  

 


 


 


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オーディオ談義~オーディオ評論家~

2006年11月05日 | オーディオ談義

オーディオに興味のある方ならご存知と思うが、新製品の購入に当たってオーディオ評論家の意見をどのように参考にするかは、無駄な出費を防ぐ意味でも極めて大きなものがある。

若い頃の経験で言えば、全ての製品を試聴できるわけでもないので、特定メーカーへの信頼性や日ごろから自分と肌合いの合いそうな評論家の試聴記事を参考にして、エイヤッと購入し、しばらくしてこんなはずではなかったと涙を呑むことになる。

次の製品を購入するときにはもう中古になってしまうので、下取りで3割程度しかとってくれない。こうした無駄とも思える出費を、まるで夢遊病者のように2年~3年おきに繰り返し、その都度、家庭内冷戦が勃発した。

つまるところは全て自分の判断ミスが最大の原因とは思うが、やはり誘因になったのは評論家による新製品の絶賛記事だろう。

今になると、ゆとりを持って苦笑できるが、評論家も人の子でメーカーとの付き合いもあるだろうから、製品をあからさまにけなすわけにもいかず、試聴記事のやっと最後の部分で本音をチラリと見せることが多いと聞いた事もある。

振り返ってみて、自分の反省をこめて言うのだが、ほとんどのオーディオ製品は、部屋にポンと置いただけではいい音はしない。現場の状況に応じて少なからずいろんな工夫が要る。そして、メーカーも利潤追求が基本だから、コスト面から妥協して製品の一部に手を抜いている部分が必ずある。

したがって、中途半端な新製品を購入する前に(どうせ若い頃の懐はしれている)自分が購入した製品を簡単にあきらめないで、まずシステム全体での弱点の部分、次に個別の製品の弱点部分を把握して、その辺の改良を時間をかけて気長に取り組むのが一番いい方法だと思う。

とにかく、あまりあせらないことが肝心。その意味では、ネットワークの改良などは比較的簡単な仕組みで、お金もあまりかからず効果も大きいので楽しめると思う。ただし、ネットワークは随分と奥が深いので専門的知識を持った人のアドバイスが必要だが・・・。

そして、もし中高年になってオーディオ熱がずっと続いていれば、それは本物なので50才台以降で本格的な大勝負をかけるとよい。それまでは、せっせとノウハウや知識を蓄えいろんな人の音を聴いて自分の耳をきたえておくほうが賢いやり方だと思う。

ただし、以上の話は自分のように財力に限界がある人間向けの内容なので念のため。

                    


 


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