「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

魔笛視聴コーナー~CDの部~まとめ2

2007年04月14日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

あくまでも、好みの範囲内に過ぎないのだが魔笛演奏の評価の基準となったのは、やはり、歌手の歌唱力が一番でそのほかには劇の進行のリズムとテンポ、「演奏、歌声、台詞」のバランスなどだが、結局、21セット中総合A+は次の4セットだった。

♯5 ベーム盤(1955年)

ベーム指揮のもとでウィーンフィルが実に良く鳴っており、約50年も前なのにデッカの録音は実に聴きやすい。解像力は別にしても包み込むような豊かさを感じさせ、どこまでもイメージを広げてくれる魔笛である。この盤を聴くと故郷に戻ったようでほっとする。

♯10 サバリッシュ盤(1972年)

ペーター・シュライアーをはじめ、歌手陣の粒がそろっており、伸び伸びと実力をフルに発揮した印象。荘厳さ、華麗さ、情熱、メルヘン・・・。全ての要素が感じられる魔笛。

♯12 ハイティンク盤(1981年)

全ての科目でまんべんなく高得点を重ねる印象。優等生タイプで心が温かくなる穏やかな魔笛。グルベローヴァをはじめ歌手陣も高い水準。録音も秀逸でバランスがとれている。

♯13 デービス盤(1984年)

雄大なスケールのもとで、正統派、本格派といった言葉がピッタリする魔笛。シュライアーをはじめ歌手陣の充実度も十分で、特に主役のタミーノ役とパミーナ役の相性が抜群で欠点が何ら見当たらない魔笛。

しかし、総合A+に近年の古楽器使用の魔笛が入っていないのは少し残念。クリスティ指揮は洗練の極みでいい線をいっているのだがやや肌触りが冷たすぎる気がする。それと1964年のベーム盤は不世出のテノール歌手ヴンダーリッヒの貴重な遺産として記憶に残る。

次に夢のベストメンバーとして個別のA+評価を列挙してみよう。

指揮者(4名)
カール・ベーム ウォルフガング・サバリッシュ ベルナルト・ハイティンク コリン・デービス

管弦楽団(2) 
ウィーン・フィルハーモニー ベルリン・フィルハーモニー

ザラストロ役(2名)~バス~
ヨーゼフ・グラインドル(フリッチャイ盤、カイルベルト盤)ルネ・パーペ(アバド盤)
          
夜の女王役(6名)~コロラトゥーラ・ソプラノ~
ロバータ・ピータース(ベーム1955年盤) 
クリスティーナ・ドイテコム(ショルティ盤1969) エディタ・グルベローヴァ(ハイティンク盤、アーノンク-ル盤) チェリル・スチューダー(マリナー盤) ナタリー・デッセイ(クリスティ盤) シンディア・ジーデン(ガーディナー盤)

タミーノ役(4名)~テノール~
ヘルゲ・ロスヴェンゲ(ビーチャム盤) アントン・デルモータ(カラヤン盤1950年) フリッツ・ヴンダーリッヒ(ベーム盤1964年盤) ペーター・シュライアー(サバリッシュ盤、スイトナー盤、デービス盤)
                  
パミーナ役(9名)~ソプラノ~
テレサ・スティヒ・ランダル(カイルベルト盤) ヒルデ・ギューデン(ベーム盤) グゥンドラ・ヤノヴィッツ(クレンパラー盤) ヘレン・ドーナト(スイチナー盤) マーガレット・プライス(デービス盤) エディット・マティス(カラヤン盤1980) バーバラ・ボニー(アーノンクール盤、エストマン盤) ローザ・マニオン(クリスティ盤)
クリスティアーネ・エルツェ(ガーディナー盤)
         
パパゲーノ役(2名)~バリトン~
ゲルハルド・ヒッシュ(ビーチャム盤) ワルター・ベリー(ベーム盤1955年、クレンペラー盤、サバリッシュ盤)

以上の結果は自分の好みを反映しているに過ぎないが、こうやって見てみると、男性歌手に対して辛い評価になってしまった。

特にザラストラ役の本格的な超低音は極めて難度が高く夜の女王役のコロラトゥーラの比ではないようで、その意味で現役のルネ・パーペ(アバド盤)は貴重な存在だ。

また、このオペラの主役中の主役であるタミーノ役
がペーター・シュライアー以降、人を得ていないのも近年の魔笛を寂しいものにしている。

                        
          21セットのCD盤
        






 


 







 


 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛視聴コーナー~CDの部~まとめ1

2007年04月10日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

1937年のビーチャム盤から2005年のアバド盤まで、21セットのCD盤(教会、ホール、スタジオ録音等)の試聴が終了したが、今のところまだ下記の7セットのCD盤が未試聴となっている。

クイケン2004、クェンツ1994年、ハラッシュ1993年、ショルティ1990年、ジョルダン1989年、コープマン1982年、レヴァイン1980年

どうやら、ネットなどで気長に探すほかは手立てがないようだが、今更ながら魔笛の指揮者がこれだけ多いことに驚かされる。おそらくあらゆる作品の中でもトップクラスではないだろうか。

さて、不完全ながら延べ21人の指揮者を通じておよそ、70年間の魔笛の演奏の移り変わりを見てきたことになるが、当然、楽譜は不変なので基本的な部分はそのままなのだが連続試聴を通じて感じたことを記してみよう。

♯13のデービス盤(1984年)を境にして、以降の魔笛は演奏がスリムになってきている印象を受けた。編成の大きなオーケストラから古楽器を使用したこじんまりとした魔笛へと流れが変わっている。

これは、魔笛創作当時(1791年)のジングシュピール(台詞に音楽を組み込んだ大衆向けの歌芝居)への回帰なのだが、何だか大河小説から私小説へと移っていく印象を受けた。

したがって、指揮者の方もやや近視眼的な傾向になってきており、その思い入れと鑑賞者の感性が合致しない場合は好き嫌いの落差が大きくなる。

バス、バリトン、テノールの男性陣で歌唱力が落ちてきている印象を受けた。過去の大歌手達と比べて人材が枯渇気味の感がする。一方、ソプラノ、ハイソプラノは百花繚乱気味でこれもやや小粒の感はするが女性陣の方がむしろ元気がいい。

極論だが、魔笛は歌手のレベル次第である程度完成度が決まる。指揮者の役割も大きいが歌手の出来具合に比べればそれほどでもない。

しかも、このオペラの性格から推して、女性歌手よりも男性歌手の方が成否の鍵を握っている。その意味で近年において質的には決して演奏が向上している傾向にはない。

録音技術の変遷については1980年頃を境にアナログ録音の時代(♯1~♯10)前期とデジタル録音の時代(♯11~♯21)後期との二つに大別される。

前期のCD盤(レコードの音源からの焼き直し)は玉石混交だが、後期のそれは確かに粒がそろって一定のレベルを確保している。しかし、デジタル録音が万能ではないことも確認できた。アナログ録音もいいものはいい。むしろベーム盤(1955年)などは、近年の録音と比べても聴きやすさにおいてそれほど遜色は無い。

主役級の登場人物が多いことから、とらえどころが無いと評されるこのオペラだが、完成度を測るものさしの一つを自分なりに見付けた気でいる。

そのものさしとは、タミーノ役(テノール)とパミーナ役(ソプラノ)の2人で、この二人が本来の主役としてしっかりした歌唱力を発揮し、釣り合いがとれ、相性がよければこのオペラはまず、きちんと成立する。逆に言えば、この二人のうちどちらかでもミスキャストがあればかなりダメージは大きい。ベームの1964年盤はその最たる例だ。

以上の四点について主として感じるところがあった。次のまとめ2(最終)では総合A+、個別の歌手達のA+を拾い出してみよう。


                       
            21セットの魔笛





  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛視聴コーナー~CDの部~♯21

2007年04月07日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号      ドイツグラモフォン00289 477 5789 (2枚組)
収録年       2005年

評    価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総    合    B+    歌手陣にぎこちなさ、統一感のないピンボケの魔笛

指揮者       B+   クラウディオ・アバド(1933~   )

管弦楽団     B+    マーラー室内管弦楽団

合唱団       B+   アーノルド シェーンベルグ合唱団

ザラストロ     A+    ルネ・パーペ

夜の女王     B+    エリカ・ミクローサ

タミーノ       A-    クリストフ・ストレール

パミーナ      A-    ドロシア・レシュマン

パパゲーノ     B+    ハンノ・ミラー・ブラッハマン

音    質     A-    
ライブ録音のためか音源が遠すぎて感度が低い

アバドは、ご存知のようにイタリア出身の世界的大指揮者でベルリン・フィルハーモニーの常任指揮者を長年務めていた。魔笛の録音はこれが始めてで72歳時の録音となる。

なお、この盤はスタジオ録音と思っていたが、よく聴き込んでみると時折聴衆のざわめきが入っており、どうもライブ録音のようである。しかし、実に静かなもので、録音の方もスタジオ録音並であり、カテゴリーはあえてCDの部に入れた。

ザラストロ役は久しぶりに本格的なバスを披露してもらった。パーペの他を圧する堂々たる歌唱力は役柄にふさわしい。

その他の歌手は、ややぎこちなさが目だって感心できなかった。若手の積極的な起用には賛成だが、オペラに溶け込んでいないし歌唱力も伴っていない感じ。パミーナ役のレシュマンは張り切りすぎてややオーバー気味。デービス盤(DVD)の方がよかった。

最新の録音で指揮者がアバドということで期待していたのだが、正直いってかなりの失望感を味わった。ザラストロ役を除いて歌手陣にやや物足りなさが残るし、どうも訴えかけるものがない。

アバドは何故今頃になって魔笛を指揮する気になったのだろうか。


                     

 


 

 



 


 

  


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛視聴コーナー~CDの部~♯20

2007年04月03日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号         アルヒーフPOCA1123/4
収録年          1995年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合    A-       敬虔深くて抒情性豊かな魔笛    

指揮者     A-    ジョン・エリオット・ガーディナー(1943~  )

管弦楽団    A-    イングリッシュ・バロック・ソロイスツ

合唱団     A-    モンテヴェルディ合唱団

ザラストロ    B+   ハーリー・ピータース

夜の女王    A+    シンディア・ジーデン

タミーノ     A-    ミヒャエル・シャーデ

パミーナ     A+   クリスティアーネ・エルツェ

パパゲーノ   A-    ジェラルド・フィンレイ

音   質    A+    ドイツ・グラモフォンの4Dレコーデンング

”聴きどころ”

夜の女王役とパミーナ役が好演、全体的に敬虔深くて抒情性豊か。

ガーディナーはイギリス出身の指揮者で、バッハ等の宗教音楽に定評がある。この魔笛も宗教的な雰囲気が横溢している。

解説書に清新なメンバーとあったが、たしかに大向こうをうならせる歌手はいないが水準は高い。特にタミーノ役とパミーナ役の新人がこれほどの出来栄えなら、ケチのつけようがない。

夜の女王、パパゲーノもいいが、ザラストロだけはやや不満。荘厳さが感じられない。これは他の盤にもいえることだが、古楽器使用の魔笛はザラストロ役がいまひとつで、指揮者の方針かもしれないがやや物足りなさを覚える。

ただし、キビキビしたテンポとリズムは、退屈さを感じさせない。勇気を持って起用した若手歌手の起用も成功している。さすがにガーディナーの目は確かであり、並みの手腕ではない。

                    

 

        


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛視聴コーナー~CDの部~♯19

2007年03月31日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号        エラート0630-12705-2(2枚組)
収録年         1995年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合    A-    洗練の極みに達しているが、もっと温もりが欲しい魔笛

指揮者      A-    ウィリアム・クリスティ(1944~   )

管弦楽団    A-     レザール・フロリサン

合唱団      A-       同上合唱団

ザラストロ    A-     レインハード・ハーゲン

夜の女王    A+     ナタリー・デッセイ

タミーノ      A-     ハンス・ピーター・プロホヴィッツ

パミーナ     A+     ローザ・マニオン(MANNION)

パパゲーノ    A-     アントン・シャリンガー

音    質    A+

"聴きどころ”

夜の女王役、パミーナ役の女性陣が極めて充実

指揮者クリスティはニューヨーク生まれで大学で美術史やチェンバロを専攻した後、欧州に移り’79年にフランスでレザール・フロリサン(古楽器による演奏団体)を創設しバロックブームを巻き起こした。この録音はパリで収録されたものである。

評価を見て分るように全員A-以上ということで粒ぞろいの印象を受けた。
夜の女王役デッセイはこの超難度の二つのアリアを決して大げさではなく、さりげなく歌いこなして情感も表現できるところに好感がもてるしセンスの良さを感じた。

タミーノ役とパパゲーノ役は♯14のアーノンクール盤と共通だがこれも、好演だった。ブロホヴィッツは歌唱力に不足はないが、この盤では意識して感情を抑えた印象だが淡白すぎる。シャリンガーのバリトンは声量豊かで当代一流のパパゲーノ役だろう。

パミーナ役のマニオンも透き通った可憐なソプラノで、水準を突き抜けている。
3人の侍女の重唱もよく工夫されていた。

全体的に歌手の選定が見事にツボにはまっており帰するところクリスティの手腕だろう。リズムとテンポが非常に良くて緩んだところが見られない。台詞の抑揚にまでも細かいところに神経を使っている。

したがって演奏と歌声と台詞が自然なままに渾然一体となった感じで、これでやっと古楽器を使用する意味が納得できた。これなら、確かに大げさなオーケストラは必要がないと思わせる出来栄えだった。

洗練の極みに達した魔笛といっていい。

                   

 

 


 

 

 

 


 







 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛視聴コーナー~CDの部~♯18

2007年03月29日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号         デッカ 470 056-2(2枚組)
収録年          1992年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合   B+    深夜ボリュームを絞ってひっそりと聴く魔笛

指揮者     B+   アルノルト エストマン(1939~   )

管弦楽団   B+    ドロットニングホルム宮廷歌劇場管弦楽団

合唱団     B+        同  上合唱団

ザラストロ   B+    クリスティン・ジグムンドソン

夜の女王    B+   スミ・ジョー

タミーノ     B+    カート・ストレイト

パミーナ     A+   バーバラ・ボニー

パパゲーノ   B+    ギレス・カッチャメイレ

音   質    A+

”聴きどころ”
第二幕パミーナのアリア「愛の喜びは露と消え」
パミーナ役のボニーが孤軍奮闘!

この盤はストックホルムで録音されたもので、古楽器による実にこじんまりとしたオーケストラである。当然雄大なスケール感を望むと裏切られる。

歌手陣には総じてやや不満が残る。とにかく線が細いのである。

ザラストロ役(バス)はもっと声量が欲しい。夜の女王も、はっきり言って声量不足。このオペラの華には到底なれない。タミーノ役もこれまたやや線が細くて神経質な感じを受ける。

パミーナ役はあの♯14のアーノンクール盤のバーバラ・ボニーで、これは実にキレイなソプラノでここでもしっかりとした実力を見せてくれた。

パパゲーノはアリア、重唱ともに無難にという印象だが、やや元気が欲しい。

とにかく実に清楚で可憐な魔笛の印象を受けた。聞き流す分にはこれはこれで悪くはないのだが、自分にはベーム盤やデービス盤のあの重量級のイメージが耳に焼き付いているので、いい悪いは別にしてどうしても馴染みがたい。

この盤はどうも、深夜ボリュームを絞ってひっそりと聴くときにピッタリの魔笛という気がする。

                     






 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛視聴コーナー~CDの部~♯17

2007年03月27日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号       テラーク 99726/1-2(2枚組)
収録年        1991年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合   B+    
学究肌のていねいな魔笛だが、歌手陣が物足りない   

指揮者     B+    テャールズ マッケラス(1925~  )

管弦楽団   B+     スコットランド室内管弦楽団

合唱団     B+        同 上合唱団

ザラストロ   B+    ロバート・ロイド

夜の女王   A-    
ジューン・アンダ-ソン

タミーノ     B+    ジェリー・ハドレー

パミーナ    A-    バーバラ・ヘンドリックス

パパゲーノ   B+    トーマス・アレン

音   質    A+    反響が綺麗に響き、不自然さがない素晴らしい録音

マッケラスはオーストラリア出身の指揮者で、オーボエ奏者を経て指揮者に転身している。レパートリーはバッハをはじめ大変広く、特にヤナーチェクのエキスパートとして知られている。

反響音がきれいに響き渡り、何だか広くて高い洞窟の中で聴いているような感じで実に心地よい。過不足のない実に素晴らしい録音

ただし、総じて歌手陣にはいまひとつ不満が残った。個別に見ていくと、次のとおり。

ザラストロ役(バス)はバスというよりもテノールに近い感じがしてクリアーすぎる。もっと、役柄のイメージにふさわしい重量感、野太い声量がほしい。

夜の女王のアンダーソンはやや声質が軽すぎる感もあるが熱演。

タミーノ役は不満。もっと歌唱力が欲しい。

パミーナ役は欲をいえばもっと柔らかさと抒情感がほしい。

パパゲーノ役は、きちんとした歌唱力だが、控えめすぎてメルヘン的な野性味が感じられない。


一言で言うと学究肌のていねいな魔笛という印象で、きちんと正面から真面目に取り組んで隅々まで考証が行き届いた演奏だと思う。しかし、はっきりいってそれ以上のものを求めても得るものはない。

室内管弦楽団なのでスケール感を望むのは無理な注文だが、やはり何か物足りない。

もっと歌手陣がしっかりしていたらこの盤の魅力も増してくるのだが・・・・・・。

                   




 

 

 

 


 

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛視聴コーナー~CDの部~♯16

2007年03月25日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号      EMI TOCE-7565-66(2枚組)
収録年       1990年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合    A-   
軽妙かつ洒脱だがコクが足りない魔笛

指揮者     A-    ロジャー・ノリントン(1934~  )

管弦楽団    A-   ザ・ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ
 
合唱団     A-    ロンドン・シュッツ合唱団

ザラストロ    B+   コーネリアウ・ハウプトマン

夜の女王    B+    ビヴァリー・ホッホ

タミーノ      A-   アンソニー・ロルフ・ジョンソン

パミーナ     A-    ドーン・アップショウ

パパゲーノ    A-   アンドレアス・シュミット

音    質    A+

”聴きどころ”

随所に新しい工夫が見られ、いかにも現代風の魔笛

ノリントンはイギリス出身の指揮者で1978年にオリジナル楽器の演奏団体ロンドン・クラシカル・プレイヤーズを組織している。この魔笛もオリジナル楽器による演奏に大きな特徴を持っている。なにぶん小編成の楽団なので、軽快さが身上だろう。

歌手陣は総じていずれも小粒という感じだが、タミーノ役、パミーナ役、パパゲーノ役は無難にこなしている印象。

残念なことにザラストロ役(バス)の声質に重みが足りない。また、夜の女王役(ハイソプラノ)も声質がやや軽すぎるし、最高音のハイFのところで乱れる印象。したがって、このオペラには荘厳さと華やかさのイメージがやや不足している。

全体的な印象として、オリジナル楽器によるノリントン・ファミリーのこじんまりとしてまとまりの良い魔笛の印象である。台詞にはっきりとした抑揚をつけて劇としての展開の方に重点を置いているが、どこかで何かが足りない印象が伴う。

                    
 

 

 

  


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛視聴コーナー~CDの部~♯15

2007年03月23日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号       フィリップス476 7856~7857(2枚組)
収録年        1989年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合    A-    晴朗、清々しさが特徴だが歌手陣にまとまりが欲しい

指揮者     A-    ネヴィル・マリナー(1924~   )

管弦楽団    A-    アカデミー室内管弦楽団

合唱団      A-    Ambrosian Opera Chorus

ザラストロ    A-    サミュエル・レイミー

夜の女王    A+     チェリル・スチューダー

タミーノ      A-    フランシスコ・アライザ

パミーナ     A-     
キリ・テ・カナワ

パパゲーノ    A-     オラフ・ベール

音   質     A+    静かな暗闇の中から音がスッと立ち上がる印象

”聴きどころ”

の女王役スチューダーの華麗なコロラトゥーラ・ソプラノ

マリナーはイギリス出身で専門の音楽教育を受けた後、始めのうちはバイオリニストとして活躍し、その後指揮者に転じている。これまで膨大な数の録音を遺しており、実にレパートリーも広い。

このマリナー指揮のアカデミー室内管弦楽団は、あの有名な1984年第57回アカデミー賞受賞作品「アマデウス」のサウンドトラックにも起用されている。

室内管弦楽団にしては比較的スケール感を感じさせるオーケストラである。しかも、何ら過不足のない、自然さを感じさせる録音だった。

ザラストロ(バス)は欲を言えば、もっと声量が欲しい気がしたがまあこれでいいだろう。
タミーノ役のアライザはあの♯11のカラヤン盤で俎上に上げたが随分良くなっている。これほど歌唱力があったとは。

注目すべきは、パミーナ役のカナワで、一段格上の立派なソプラノを聴かせてくれた印象がするのだが、独唱癖があるのか、どうもこのオペラの中に溶け込んでいない感じを受けるのである。独り歩きして「浮いている」といった表現になるのだろうか。

第一幕よりも第二幕の方でその印象が強くなる。抑制したときの声質はいいが、高い音がややヒス気味で聴き辛いところがある。独唱者としての歌唱力とオペラでの歌唱力とは必ずしもマッチングをしないという面白い事例かもしれないと思った。

いろいろと言ったが、この魔笛には好感を持った。全体的にテンポがやや速めでリズム感がよく実に小気味よい。また、全編を通じて澄み切った秋空のような晴朗さと清々しさを感じさせる。

堂々とした本格派の魔笛を感じさせるもので、いくつかのほころびをうまくカバーした指揮者マリナーはやはり豊富な経験を十分生かす術を知っている練達の士と思った。

                       

       
 



 

 

 














 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛視聴コーナー~CDの部~♯14

2007年03月21日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号      WPCS-5844/5(2枚組)
収録年      1987年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総    合   A-          刺激的だが冷たい温度感、こじんまりとした魔笛

指揮者      A-    ニコラス・アーノンクール(1929~   )

管弦楽団    A-     チューリヒ歌劇場管弦楽団

合唱団      A-     同 合唱団

ザラストロ    B+     マッティ・サルミネン

夜の女王     A+    エディタ・グルベローヴァ
 
タミーノ      A-     ハンス=ペーター・プロホヴィッツ

パミーナ     A+     バーバラ・ボニー

パパゲーノ    A-     アントン・シャリンガー

音   質     A-     セパレーション、解像度がいまひとつ物足りない

”聴きどころ”

パミーナ役ボニーの抒情的なソプラノにはウットリと聴き惚れさせるものがある。ボニーが絡んだアリア、重唱は全て一聴の価値あり。

アーノンクールは古楽演奏の第一人者として知られ、作曲された当時の時代考証に基づいて、音楽を忠実に再現するとともに、古楽的アプローチで旧来の音楽演奏に新風を吹き込んでいる。

古楽器による小編成のこじんまりとしたオーケストラなので、はじめのうちは何だかモノラルをデジタル録音したような趣を感じたが、聴き込むにつれて、そんなに悪い録音ではないことが分かったが、もっとクリアーな音質がほしい。

歌手陣はよくそろっていて概ね粒よりの印象を受けた。特にパミーナ役のボニーは屈指の存在。

夜の女王ゲルベローヴァは相変わらずの安定感を見せ、ハイティンク盤(1981年)よりも情感を感じさせ余裕を見せている。

タミーノ役のブロホヴィッツはたしかにいい線をいっている。水準以上で声質もあのヴンダーリヒの系統だが、残念にもややスケールが小さい印象。これではヴンダーリヒを越えることは無理だろう。

細かいことを言えばザラストロ(バス)役は明らかに声量不足で少々軽すぎて役柄のイメージである荘厳さを忠実に表現していない。

古楽器によるこじんまりとした魔笛で、歌手を前面に押し出すとともに歌劇の進行も台詞を省略してナレーションが入るもので(♯3のカイルベルト盤がそうだった)、14セット目にして、新しい試みの魔笛に出会った印象を受けた。

随所に見られるいろんな工夫がモーツァルトの時代を忠実に再現する試みの一環なのだろうが、そうであれば全体的にもっと熱気や自由気ままの奔放さ、楽しさが欲しい気がした。どこか、さめすぎた魔笛という印象を受ける。

                      





 

 


 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛視聴コーナー~CDの部~♯13

2007年03月19日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号      フィリップスCD422 543-2(3枚組)
収録年       1984年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合   A+    本格派、正統派といった表現がピッタリの魔笛

指揮者     A+    コリン・デービス(1927~    )

管弦楽団   A-     ドレスデン・シュターツカペレ

合唱団     A-    ドレスデン聖十字架・ライプツィヒ放送合唱団

ザラストロ   A-    クルト・モル

夜の女王   A+    ルチアーナ・セッラ

タミーノ     A+    ペーター・シュライアー

パミーナ    A+    マーガレット・プライス

パパゲーノ   A-    ミカエル・メルバイ

音    質   A+    ドレスデン聖ルカ教会での録音は臨場感豊かである

”聴きどころ”

豪華な歌手陣
主役(タミーノ役とパミーナ役)のバランスが完璧
第二幕タミーノとパミーナの二重唱”おお、なんという幸福”は情緒たっぷりの上に神々しさを感じる。まぁ、43セット中でNo.1
だろう。

この盤は約20年ほど前に購入したもので、遠距離通勤を利用してクルマの中で繰り返し聴いたものだった。いわば魔笛が「刷り込み現象」のように自分の頭の中に入っているCD盤だが、それが、今回のように連続試聴の中で、どういう位置づけを占めるのか興味があった。なお、デービスは2003年に再び魔笛をDVD盤で収録している。

録音場所がドレスデンの聖ルカ教会、管弦楽団がドレスデン・シュターツカペレ、そしてタミーノ役があのシュライアーということで、♯9のスイトナー盤と同様である。

まず特筆すべきことは、メインとなる5人の歌手が、レベルが高く与えられた役柄のイメージをきちんと表現している印象を持った。

特にタミーノ役のシュライアーとパミーナ役のプライスは絶妙のコンビで、これほど高い水準でそろっているのも珍しい。

また、台詞からアリアや重唱に移っていくときなどのテンポとリズム感が実にいい。こんこんと泉が自然に湧き出てくる感じだ。このヴァージョンで台詞部分をカットした2枚組のCD盤も保持しているが、何か不自然な印象を受ける。この盤ばかりは台詞入りが良い。

録音もベストだし、主役が5人ともいいし、歌劇としての盛り上がりも十分でとにかく非の打ち所がない魔笛だが、一方でやや冷たい肌触りの印象も受けた。

なお、ペーター・シュライアーは魔笛の公開録音ではこの盤が最後となり、ヴンダーリヒと並ぶ理想のタミーノ役を失うことになった。

風の便りだが、1935年生まれで当年71歳となるシュライアーは現在バッハ等を主なレパートリーにした指揮者となって故郷で活躍しているようだ。

とにかく、この盤はじぶんにとってやはり永遠の魔笛だった。

                  
 


 






 


  


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛視聴コーナー~CDの部~♯12

2007年03月17日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号      EMI CDS 7 47951 8(3枚組)
収録年       1981年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合    A+    穏やか、温かくて華やかなメルヘンの世界

指揮者      A+    ベルナルト・ハイティンク(1929~   )

管弦楽団    A-     バイエルン放送交響楽団

合唱団      A-       同合唱団

ザラストロ    A-     ローランド・ブラット

夜の女王    A+     エディタ・グルベローヴァ

タミーノ      A-     シーグフリード・エルサレム

パミーナ     A-     ルチア・ポップ

パパゲーノ    A-     ウォルフガング・ブレンデル

音   質     A+     ホール・トーンが豊かで聴きやすい

”聴きどころ”

夜の女王役グルべローヴァの卓越したコロラトゥーラ

このハイティンク盤は現在、国内では在庫切れで入手できない。

この魔笛は昔からDATテープで聴き馴染んでいたのだが、今回の視聴に当たり是非ともCD盤が必要となりオークションに参加して、かろうじて落札させてもらった。(’06.8.26落札)

在庫切れを知っている方が多いとみえて通常、魔笛盤の入札としては考えられない26件参加の大激戦だった。この数字に全国的に魔笛ファンの根強い存在が伺えて、何だかうれしくなった。なお、これは輸入盤だった。

なんといっても、史上最高との評価が高い夜の女王役の大本命グルベローヴァが注目されるが、先入観なしで聴いても、コロラトゥーラ・ソプラノを楽々とこなす安定度は抜群だった。安心して最高音(ハイF)が聴ける。ドイテコム(ショルテイ盤)とはややタイプが違うようだが、いい勝負になりそうでこれは好き好きになるのだろう。

パミーナ役のポップは17年前の♯6のクレンペラー盤では夜の女王を務めていた。実に息の長いソプラノ歌手だが、衰えを感じさせない好演だった。

そのほか、ザラストロ、タミーノ、パパゲーノ役いずれも好演。

優等生タイプの穏やかな魔笛といったらよいのだろうが、それでいて劇的な緊張感も感じさせる。その意味では♯10のサバリッシュ盤と実に良く似ている。

ハイティンクは1978年のDVD盤と比べてずっとこちらの方が良い。取り立てて欠点のない非常に好感の持てるバランスのとれた魔笛だった。

                       

 

 


        


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛視聴コーナー~CDの部~♯11

2007年03月15日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号      ドイツグラモフォン POCG-3564/6(3枚組)
収録年       1980年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合     B+    綺麗ごとだけで終わってしまっている魔笛

指揮者       B+    ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~1989)

管弦楽団     B+    ベルリンフィルハーモニー

合唱団       B+    ベルリン ドイツオペラ合唱団

ザラストロ     A-    ヨセ・ファン・ダム

夜の女王      A-    カリン・オット

タミーノ       B+    フランシスコ・アライザ

パミーナ      A+     エディット・マティス

パパゲーノ     B+    ゴットフリード・ホルニック

音    質     A+     魔笛初のデジタル録音

”聴きどころ”

パミーナ役マティスの最後の名唱

第二幕パミーナのアリア”愛の喜びは露と消え”

私    見  
  

カラヤンは公開されている範囲で5回魔笛を録音しているがこれが最後の録音である。この盤が魔笛に対する彼の集大成なのだろう。

良く言えば、テンポがゆっくりとして、全体的に落ち着いていて哲学的な雰囲気を感じさせる。悪く言えばまるで元気の出ない魔笛で、あの情熱的な1950年盤とまるで正反対の方向に位置している。

こうした印象の原因の一つは、タミーノ役にあると思う。もう少し、はつらしさが欲しい。アライザはカラヤン好みなのだろうが、この大オペラの主役を張るには、やや元気が足りない。相方のパミーナ役のマチスが透き通った声質の理想的なソプラノに近いだけに実に惜しい。

おまけに、パパゲーノ役も何だか野性味が足りない。この魔笛は何だか全体的にカラヤンの貴族趣味で統一されている印象を受ける。

タミーノ役とパパゲーノ役がこれでは楽しさ、自由奔放といった魔笛に欠かせない要素が感じられないし、庶民向けとして作曲したモーツァルトの意思にもそぐわない。

                      


 



   


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛視聴コーナー~CDの部~♯10

2007年03月13日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号     EMI7243 5 75362 2 6(2枚組)
収録年      1972年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合   A+     荘厳、華麗、情熱、メルヘン・・全ての要素を含んだ魔笛

指揮者     A+     ウォルフガング・サバリッシュ(1923~     )

管弦楽団    A-     バイエルン国立歌劇場管弦楽団

合唱団     A-         同    合唱団

ザラストロ    A-     クルト・モル

夜の女王    A-      エッダ・モーザー

タミーノ      A+     ペーター・シュライアー

パミーナ     A-     アンネリース・ローテェンベルガー

パパゲーノ   A+      ワルター・ベリー

音   質    A+      奥行き、セパレーション、解像度全てパーフェクト

”聴きどころ” 

全ての歌手が伸び伸びと実力をフルに発揮した印象
タミーノ役とパパゲーノ役が傑出している

第一幕パパゲーノのアリア”おいらは鳥刺し”
  〃 タミーノのアリア”何という素晴らしい絵姿”

現在NHK交響楽団の桂冠名誉指揮者となっているサバリッシュが49歳のときに録音したCD盤だが、DVD盤の方では再度1983年に録音している。

サバリッシュは何だか学究の徒を思わせる風貌と雰囲気だが、実にイメージどおりの魔笛である。

歌手の配役と出来栄え、演奏ともにまったく破綻のないバランスのとれた仕上がりで、全ての学科にわたって最高点を確保する優等生タイプを思わせる。しかも真面目ばかりではなくて、進んで道徳的な善行にも心がける模範的な生徒の感じ。

こういう魔笛を聴かされるとどうにもケチの付けようがない。音質も秀抜。

                      


 


  


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛視聴コーナー~CDの部~♯9

2007年03月11日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号    RCA GD86511(3枚組)
収録年     1970年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合    A-   高い水準にあるが、やや淡白で水彩画のような魔笛

指揮者      A-  オトマール・スイトナー(1922~ :’06.7.18付けで引退)

管弦楽団    A-   ドレスデン・シュターツカペレ

合唱団      A-  Rundfunkchor・Leipzig

ザラストロ    B+   テオ・アダム

夜の女王     A-  シルヴィア・ゲスツィ

タミーノ      A+   
ペーター・シュライアー

パミーナ     A+   ヘレン・ドーナト(DONATH)

パパゲーノ    B-   ギュンター・ライブ(LEIB)

音   質     A+   
奥行き、セパレーション、透明感に優れている

”聴きどころ”
タミーノ役とパミーナ役の主役2人が名コンビとして極めて充実している
教会における録音のためホール・トーンが実に鮮やか、音質抜群

第一幕タミーノのアリア”何という美しい絵姿”
第二幕パミーナのアリア”愛の喜びは露と消えて”
 〃  タミーノとパミーナの二重唱”おお何という幸福”

私   見 

大変素晴らしい録音で左右に十分広がったセパレーション、適度な奥行き、みずみずしい明瞭な音質は出色だった。

歌手陣ではタミーノ役のシュライアーはやはり好感度抜群だった。シュライアーは結局、公開録音ではこの1970年盤に加えて1972年盤、1982年盤、1984年盤の4つの魔笛に出演している。いわば、前半と後半に分けられるがどちらかといえば声質の艶で勝負するタイプではないので、経験を積み深い読みに支えられた後半の分がじぶんは好きである。

次にパミーナ役のドーナトも名唱だった。二人の主役がこれほど高い水準でそろった魔笛も珍しい。

夜の女王のゲスツィは音程は正確無比だが軽量級なので惜しくもやや凄みに欠ける。

ザラストロ役のアダムは同じ声質で比較的高音から最低音域までしっかりとカバーしたのには恐れ入ったが、もっと厚みと重々しさが欲しい。

パパゲーノ役はやや声量に物足りなさを感じる。野性味も足りない。致命傷とはいかないまでも大事な役どころなので随分のマイナス・イメージになる。

この盤は、録音もいいし、主役の二人もそろっているし、指揮者スイトナーの奇を衒わない指揮も好ましい。高い水準にあるが、パパゲーノ役の影響だろうか、やや淡白すぎる感がある。もうひとつ濃厚な色彩感がほしい気もする。

                         




 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする