「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

仁義なき戦い

2014年11月29日 | オーディオ談義

我が家のスピーカー「AXIOM80」(以下「80」)を鳴らすのに一番相性がいい真空管は「1920年代製」のもの。

同じ「80」仲間のKさん、Sさんたちが口を揃えて「音の切れ味、スピード感など申し分ありません。ダントツです。」と太鼓判を押されるほどだから間違いなし(笑)。

難点は90年前の製品なので、程度のいいものが少なく、しかもオークション市場にも滅多に出回らないこと。これまで国内で稀少管の在庫を豊富に持っているめぼしいショップをいろいろ当たってみたり、個人の収集マニアを当たってみたりしたがまったくの在庫なし。

もう完全にお手上げの状態で、仲間たちともども気長に根気よく探すしかなかったが、このたびその「古典管」を運よく9本ゲットすることに成功した。まさに僥倖としか言いようがないので、その経緯を記してみよう。

11月初旬にT県の「O」さんという方から非常に程度のいい整流管(アーチュラス)を落札した。こういう1930年代の稀少管をオークションに出すほどの方だから相当のマニアだなという印象を持っていたところ2~3日後に我が家に届いた小包の中にご丁寧にも1通の文書が添付されていた。

文面は次のとおり。

「このたびはアーチュラスの真空管を落札していただき御礼申し上げます。私のオークションは荷物整理のために始めました。自分でも呆れかえりますが所有している真空管は数千本に及びます。また一生かかっても使用しきれないパーツ類など
多数あります。

それらの品物は随時整理しながら出品いたします。最低落札価格は極力低く設定いたしますのでお時間のあるときにでもご覧いただければ幸いです。改めて、このたびはまことにありがとうございました。」

ワァ~、数千本の在庫とは恐れ入ります!

当然のごとく「1920年代製の古典管を血眼になって探してますが、もしかしてお持ちではないですか?」と藁(わら)をもすがる思いでメールしたのは言うまでもない。

すると、「3年以上も前にかなりの本数をオークションに出して処分しましたが、まだ在庫があります。調べてみます。」とのご返事。

まだ値段も何も決まっていないのに、「どうしても手に入れるぞ」と久しぶりに血が湧きたった(笑)。とにかくいくらお金を積んでも市場に出回っていないのだから少々の無理難題を吹っ掛けられても仕方がないという覚悟を決めた。

しばらく調査されたのちに「9本あります。」とのご返事。どうやら外国暮らしが長い方のようで、現地で手に入れられたご様子。

幻に近い存在の真空管が9本もあるのだから早く手に入れた方が勝ち。「余人には絶対に渡したくないなあ、いい音を独り占めするぞ~」。これじゃあまるで「仁義なき戦い」だ(笑)。

「9本すべて購入したいです。1本当たりの販売価格をお知らせください。」とすかさずメールした。

ここからOさんとの丁々発止の価格交渉に入った。Oさんの立場にしてみると、一面識もない人間を相手にするのだから義理とか人情があるわけではなし、はたしてオークションに出した方が得なのか、それともこの自分に売った方が得なのかの二者択一でしかない。

オークションだと稀少管とあって天井知らずの価格になる可能性もあるので、よほどのご厚意に“すがる”しかないとやや悲観的な見方をしていたところ「私は悪徳商人になる積もりはありません!」とのありがたいご返事で、格安の価格で見事に妥結。これからOさんがお住いのT県の方には足を向けて寝られません~(笑)。

ほどなく3台もの真空管測定器によって慎重に測定された数値付きの古典管が9本我が家に到着した。

           

このうち3本は喉から手が出るほど欲しがっている仲間たちに配布するので手元に残るのは6本。

まあ、これだけあれば大丈夫だろう。これから球切れを心配することなく毎日気持ちよく使えるのでうれしい限り。

存命中に娘によく言って聞かせねばなるまいて。

「お父さんが死んだ後でもこの球だけは“たいへんな思い”が籠っているので簡単に手放すことがないようにな!」(笑)。
 


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とうとうやりましたね!

2014年11月27日 | オーディオ談義

昨日(26日)は「乾坤一擲」の勝負の日なので朝から緊張しっぱなし。

なぜなら東京から我が家の「AXIOM80」(以下、「80」)を試聴にSさんがお見えになる日。

Sさんは福岡市にお住いの方だが現在は東京に単身赴任中。久しぶりに帰省とのことで、大分空港経由で我が家にお立ち寄りになり、2時間ほどの試聴を終えて高速バスで福岡へ帰られる予定で、同じ「最初期の80」の愛好家として切磋琢磨する強力なライバルであり、また良きオーディオ仲間である。

この日は大分空港14時10分着の飛行機の予定なのでお迎えに行ったところ、羽田空港のあいにくの天候不順で何と飛行機が30分遅れの表示。

1時間ほどの待ち時間はちょっと長すぎるので暇つぶしのため空港内の売店に入って週刊誌を物色。

映画俳優「高倉 健」の死が明らかにされておよそ1週間あまり。「幸福の黄色いハンカチ」をシアターで鑑賞して以来の隠れファンなのでNHKの追悼特集番組はすべて観たが、当然のごとく「死者に鞭打つ」ことはあり得ないので美談ばかりだが、ちょっと物足りない。生身の人間なんだからもっと隠された話もあるはずだが・・・。

というわけで、ふと目に入ったのが週刊誌の表紙にあったタイトル「高倉健と山口組」~本誌しか書けない40年の交流秘話~、不器用すぎた「女遍歴」。いかにも週刊誌らしい仰々しい見出しだが随分購買意欲をそそってくれるわいなあ(笑)。

まあ、週刊誌だから話半分としても何だか面白そうなので迷わず購入してフムフムと読み進むうちに「飛行機が到着しました」というアナウンス。

「やあ、お元気でしたか!」と、8月末以来の再会をお互いに祝福した。自宅に到着したのは15時半ごろでいよいよ「80」の試聴に入った。

この日に聴いていただいたシステムの概要は次のとおり。

CDトランスポート「dCSのラ・スカラ」 → DAコンバーター「ワディア27ixVer.3.0」 → トランス式アッテネーター「カンノのKCU-64WB) → 「1920年代製の古典管シングルアンプ」。

カンノのトランス式アッテネーターは4日ほど前にオーディオ仲間のGさん(福岡)から譲っていただいて到着したものでこのブログでは初公開だが、その性能は驚くべきもので音が一段とレベルアップした(笑)。いずれ別の機会に詳述させてもらおう。

         

最初にかけたCDはハープとヴァイオリンが織りなす「日本の歌」。

         

音が鳴りだした途端に「いやあ、思わず鳥肌が立ちました。これぞまさしく最初期の80の音です。〇〇さん、とうとうやりましたね!」とSさんが握手まで求められて大喜びされた。         

実はこの「最初期の80」をオークションで手に入れた契機になったのはSさんからの情報提供だっただけに、「もし程度の悪い80だったらどうしようか」と随分心配されたようなので、その不安が払拭されたのも喜びの一因。

「最初期の80」の特徴を挙げると、マグネットの形が丸みを帯びている、ユニットの真ん中に位置しているホーンの色が茶色になっている、カンチレバーが薄い、コーン紙が軽いといった特徴があるが、それらをすべて兼ね備えていなければならない。

「およそ60年前のユニットなのにこんなに程度のいいものが手に入ったとはまさに奇跡に近いですね。ヴァイオリンの生々しい音はこれじゃないと絶対に出ませんよ。」と感嘆されることしきりだったが、同時にトランス式アッテネーターと1920年代製の古典管アンプの実力にも目を見張られていた。

Sさん宅のアンプは専門家の間で最も音が良いとされている「PP5/400」真空管のシングル(モノ×2台)だが、これと遜色ない出来栄えの印象を持たれたようだ。

後日、このトランス式アッテネーターと1920年代製のアンプをSさん宅に持ち込んで試聴比較することをお約束したが、昨日は本当に良き一日となった。同じ「80」
仲間からこんなに喜んでもらえるなんてまったくオーディオ冥利に尽きる・・・。 


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二枚の稀少なCD

2014年11月25日 | 独り言

前回のブログで「有山麻衣子」さんのCDについて「現在は廃盤中だ」と記載していたところさっそくメール仲間のKさん(広島)からお知らせがきた。

Kさんは以前のブログで「フォステクスのスピーカー(SLE-20W)を売りたい」と記載していたところ、さっそく申し込みがあり無事商談が成立した方である。

メールの中身は次のとおり。

「以前から気になっていた『有山麻衣子 幻のコンサート』ですがネットでいろいろ検索した結果今年の5月にCD-Rに編集しなおした物が発売 されていました。共同通信社の記事によりますと次のとおりです。

音響アクセサリーなどを展開するインフラノイズ(大阪)は、CDの原盤となるオリジナルマスターと同等の音質をうたう『宇野功芳 企画・指揮 有山麻衣子 幻のコンサート』を、5月初旬に発売する。

                  INFLANOISE CD

・ 品番:INF-5001 ・ 価格/5940円(税込) ・ 制作・販売株式会社インフラノイズ

通常の市販CDが原盤を元に、編集、プレスなどの工程とそれに伴うデジタルコピーや変換処理などを経て作られるのに対して、『有山麻衣子 幻のコンサート』ではこうした量産プレスを通さず、手作業で一枚ずつ収録時間の2倍もの時間をかけてCD-Rに記録していくという工程を採り、ほぼ原盤に近い音でCD化。音質変化、劣化のない形で製作しており、「マスターCDと比較しても、プロの耳でも区別がつかない」(発表資料より)ほどの高音質が得られるという。また音質劣化の要因になるとして、レーベル印刷はされていない。

作品は先に通常のCD化されているが、内容はメゾ・ソプラノの有山麻衣子のリサイタルを収録。企画・指揮には音楽評論家の宇野功芳氏があたり、CD発売当時はクラッシックでは驚異的な約5,000枚のヒットとなっている。

共同通信社の記事は以上のとおりです。
Stereo Sound誌が美空ひばり・石川さゆり・テレサテンなどのマスターCDと銘打ったものを発売していますが有山麻衣子のCD-Rは 24曲入りだそうです。早速手配しました。ご参考まで。」

Kさんのメールは以上のとおりだが、購入されたとしても期待を裏切らない素晴らしい録音と歌唱力には間違いないが、なにぶんにも6000円近い高額商品である。万一、好みに添わないときはお気の毒なので次のような返信メールを送った。

「既に注文されたようですが、まだ間に合うようであれば一度試聴したうえでじっくり検討してみませんか。返却を前提の上でよろしかったら手元にある盤を送付してもいいですよ。」

するとKさんから次のような返信メールが届いた。

「通販先は連休のようで今現在正式受注の連絡メール(銀行口座などの振込先を含む)がまだ来ていませんので正式発注にはいたっていません。『ステサン』のCD-Rは2曲くらいしか入っていなくて8千円くらいでしたので24曲入りならマスターCD音質で妥当かと思った次第です。もし可能であるなら是非送付をお願いします。」

ああ、よかった!どうやら間に合ったようで、さっそく昨日(24日)定形外郵便で丁寧に梱包して送付した。

常に「人には親切に」をモットーにしているが、このブログの愛読者には“ことのほか”親切なのである(笑)。

次に二枚目のCDについて

一昨日(23日)の午後、我が家に試聴にお見えになった近所のYさんが持参されたのが今は亡き「テレサ・テン」のCDと「管球王国Vol・74」。

           

このテレサ・テンのCDはそんじょそこらのCDではない(笑)。

ステレオ・サウンド社の特別限定盤で何と名曲「時の流れに身をまかせ」と「つぐない」のたった2曲が収録されただけなのに価格は8640円(税込)!

なぜそんなに高いのかその理由を明かしてみよう。「管球王国Vol・74」の194頁から抜粋。ちょっとメカニックな内容になるが悪しからず。

「オリジナルスタジオマスターはAMPEXの1/4インチアナログテープである。いずれも保存状態に優れた唯一無二のマスターだ。再生にはスチューダーA820を使用。マスターはドルビーノイズリダクションを使用していたため、ドルビー361を経由させ、dCS904によってA/Dコンバートしたのち、デジタルオーディオワークステーションのSADIEに直接入力。コンソールを経由せずに限界までの可能性を追求したダイレクトな作業となっている。

ディスクは太陽誘電社製プロフェッショナル・オーディオのマスター専用CD-Rを採用。極めて低いエラーレートを実現した、フラット・トランスファー・シリーズの定番CD-Rである。CD-R化においては記録品質の高さを誇るプレクスライター・プレミアム2を使用。吉野謙志エンジニアの手によって一枚一枚が丁寧に書き込まれた。こだわり抜いた全工程がこのCD-Rを極めて忘れ難く美しいディスクにしている。以下~略~。」

以上のとおりだが、ちなみに上記に出てくる「プレクスライター・プレミアム2」は我が家でも「自分で楽しむために!」コピーCDを制作するときには必ず使用しているが、いつも試聴にお見えになるお客さんたちから「原盤と比べてあまり違和感がない」と激賞されるほどの名器である。現在はもう発売中止なので今や我が家の一番のお宝になっている(笑)。

最後に、この「管球王国」では141~161頁にかけて「直熱三極管300B現行生産品14種の聴き比べ」が掲載してあった。

ザット読んでみたが、何とかかんとか言ってみても答えはもう分かりきっている。オリジナルのWE300Bに比べると、ほかのどんな球も所詮は50歩100歩なんだから・・・。

それなのに手をかえ、品をかえ、あれこれ当たり障りのない論評を繰り広げる評論家先生たちの筆致にはほんとうに頭が下がります。どうもご苦労さまです(笑)。

 


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どうしてこんなブザマなことに!

2014年11月22日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

自分に限っての話かもしれないが、自分独りでオーディオシステムを試聴する場合と仲間と一緒に試聴するときとでは音質のアラの気付き方が随分違うように思っている。

その理由をつらつら考えてみるのに、前者の場合はつい音楽の方に聴き惚れてしまい音質への関心が薄くなる、その一方、後者の場合は他人と一緒に聴くと音楽に没入することが出来なくて、つい音質中心の聴き方になってしまい、自然と(音質の)アラが目立つというのが原因のようだ。

一般的に自分も含めて他人のシステムを聴くときはアラによく気が付くものの、それに比べて自宅の音はそれほどでもないという事例がよく見受けられるのもそのせいかな(笑)。

したがってシステムのどこかをいじったときは自ずと客観的な評価が出来る機会が増えるわけなのでこういうときのお客さんは大歓迎。

今回もグッドタイミングだった。お見えになったのはおよそ1~2か月間隔で我が家にお見えになるMさん、Oさん、そしてこのたび初めてお見えになったAさん。いずれも大分市内に居住の方々である。

MさんとOさんが前回お見えになったとき以来の我が家のシステムの変更箇所は、プリアンプの真空管を「6DJ8」から「ロング管」へ替えたこと、パワーアンプに古典管のプッシュプルを追加したこと、WE300Bアンプの初段管を「ロング管」へ変えたことなどが挙げられるが実を言うとあまり定かではない。

とにかく、いつもあちこち“いじり回している”ので、最近では自分でも何が何だか分からない状態になりつつある(笑)。

いみじくも今回の試聴にあたって初参加されたAさんがオーディオルームに入られるなり「ワァー」と驚かれて「このシステムの流れはいったいどうなっているんですか?」と首を傾げられるばかり。それはそうでしょうねえ、持ち主でさえもよく分からないのだから・・。

とまあ、これは冗談だがここで一区切りとして自分にも分かりやすいように現在のシステムの全容を整理してみよう。

全体で3系統のシステムになっている。

共通機器 CDトランスポート「dCS ラ・スカラ」 DAコンバーター「ワディア27ixVer3.0」

第一系統 「AXIOM80オリジナル」システム 

これが我が家の本命システムだが、プリアンプ1台(出力3系統)に対してパワーアンプ3台(真空管WE300B1951年製、古典管シングル、古典管プッシュプル)をその日の気分で使い分けしている。

第二系統 「AXIOM80復刻版」システム 

これはテレビを視聴するときの専用システムでプリアンプ1台(出力2系統)に対してパワーアンプ1台(真空管「VV52Bシングル」を使用している。

第三系統 「JBLとタンノイの変則マルチ3ウェイシステム」

オーケストラなどの重量級の音楽を聴くときはいつもこのシステムに落ち着く。

低音域 → SPユニット・タンノイ「HPD385」 → アッテネーター → 真空管2A3シングルアンプ・1号機

中音域 → JBL375ドライバー → プリアンプ → 真空管2A3シングルアンプ・2号機

高音域 → JBL075ツィーター → プリアンプ → 真空管71Aシングルアンプ

以上のとおりで、両チャンネル併せてSPユニット10個、プリアンプ2台、アッテネーター1台、パワーアンプ7台をそれほど広くもない部屋(6m×7m)に所狭しと並べているのだから初めての方がご覧になってビックリされるのも当然かもしれない。

どうしてこんなブザマなことになったんだろう(笑)。

この日の試聴の順番はまず本命の第一系統のシステムから開始した。

使ったアンプは「古典管シングル」、「WE300Bシングル」、「古典管プッシュプル」の順で試聴してもらった。

結論から言えば総体的に一番好評だったのはWE300Bシングルだった。「古典管シングル」に比べると重心がぐっと下がり、落ち着いた佇まいが大きく評価されたようだ。この辺は古典管をイチオシする自分の評価と違うところが非常に面白い。

正直言うと、WE300Bはやたらに高騰する相場に比べて実力以上に評価されているような気がいつもしているので、その意地っ張り的な先入観が否定的な作用として働いているのかもしれない(笑)。まあ、やはり名管として認識すべきなのだろう。

また、つい最近購入し、評価を大いに期待した「古典管プッシュプル」だったが、冷静に試聴してみると音の透明感は申し分ないがローエンドへの伸びがあと一押しあればという印象を受けた。

結局、お客さんたちの雰囲気によって、敢えて順番付をすればWE300B、古典管プッシュプル、古典管シングルの序列の印象を受けた。この日は「80」仲間たちから一番相性がいいと高評価を受けている「1920年代製の真空管」を使用しなかったことも影響している。実はギリギリの時間まで予約している歯医者に行ってきたせいでエージングの時間がとれなかったのが真相。

なお、この日はいろんCDを試聴してもらったが、次の2枚が大好評だった。

        

左側は「日本の歌」というタイトルで、ハープとヴァイオリンの協演。ヴァイオリンは有名なウィーンフィルのコンマス(コンサートマスター)のライナー・キュッヘル氏で見事な演奏である。またハープが持つ独特の膨らみ音の再生はシステムのアラを探すのにもってこいの印象を受けた。

右側は例によって「有山麻衣子」さんのソロボーカルで実際にお客さんに聴いていただくと非常に気に入られる方が多いのだが、これは残念なことに廃盤中。


Aさんがこの2枚のCD番号をメモされていたが、実際にシステムを試聴してもらって、そのときにかけたCDを購入したいと所望されるのは、そのシステムが良く鳴っているバロメーターみたいなものだから非常に歓迎すべきことではある。

最終的にこの日は2時間半ほど試聴していただいたが、最後のお帰りの際に洩らされたOさんの言葉「これまで聴かせてもらった中では今日の音がベストですよ。」には非常にうれしい限り。

我が家の音は「五里霧中」の中を着々と前進しているのだ(笑)。


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3台目のエース級アンプの登板

2014年11月20日 | オーディオ談義

現在我が家には「AXIOM80」を鳴らすのにエース級のパワーアンプが2台ある。

1台は言わずと知れた「WE300B」(1951年製)アンプで、残る1台は1940年代前後に製造された真空管のアンプ。仮に「古典管アンプ」としておこう。WE300Bのように有名な真空管ならともかく、無名に近い真空管なので型番を明かすことで「むやみやたらに煽動している」と読者から受け取られると、それは本意ではないので(型番は)敢えて明かさない方がいいと思う(笑)。

           

パワーは不足気味だが何よりも透明感が特上で「AXIOM80」(以下、「80」)を鳴らすにはうってつけの出力管である。ちなみにこのアンプは初段管が6SN7GT(12AU7系)を使ってあったので、前回のブログに登載したようにアダプターを経由して「ロング管」に差し換えたところ一段と「自然な佇まい」の音になった。

さて、プロ野球と同じでチームにエース級のピッチャーが2人いるとローテーションが大助かりなので、このところわが世の春を謳歌していたところ、オークションでふと目に留まったのが次のアンプ。

             

この古典管を4本使ったプッシュプルタイプのアンプである。

ご存知のように真空管アンプは型式を大きく分けると「シングル」タイプと「プッシュプル」タイプに分かれる。前者は「パワーは不足気味だがピュアな音が出る」、後者は「パワーはあるがピュアな音が出にくい」といった傾向がある。

まあ、スピーカーに応じて使い分けるといいわけだが、我が家の「80」はパワー感を楽しむユニットではないので必然的に現在手元にある7台のパワーアンプはすべてシングルタイプばかり。

つまり「プッシュプル・タイプのアンプは使わない」というのが我が家のモットーだったが、「こと、この古典管に限ってはシングル・タイプとプッシュプル・タイプの音質の差がもっとも少ないです。」とオーデイオ仲間から散々聞かされてきたのを想い出した。

そこで、すかさずこの出品中のアンプをウォッチリストに登録して経過観察に入った(笑)。

価格の方もおそらく部品代にも届かないような安値のスタートなので、入札価格次第では落札してみようという腹積もりだったが、不思議なことに最終日時になっても1件の入札も行われずまったく注目されていない。生き馬の目を抜くオークションの世界では珍しい現象だが、まあ、この古典管の知名度を物語っている象徴的な出来事だろう。

とうとう、落札日になっても入札無しの状態だったので半信半疑のまま入札参加したところ、結局この1件だけの入札で格安の価格によりめでたく落札(11月3日)。こういう事があるのでオークションは止められない(笑)。

もちろん、どういう音が出るか実際に聴いてみないと分からないので、万一の不具合のときに備えて事前にこの古典管の取り扱いに習熟したオーディオ仲間のGさん(福岡)に連絡しておいたところ「ええ、大丈夫ですよ。万一不具合があったときはいつでも送ってください。」という心強い返事をもらっていた。

さて、我が家に無事到着したこのアンプを試聴したところ、とても澄んだ音が出て「これは素性がいい」というのが第一印象だったが惜しいことに片チャンネルからブーンというハム音が出てくる。盛大に出てくるわけではないが、自分の場合はハム音となるともはや音楽鑑賞以前の問題となる。

(もし出品者の方がこのブログを観ていたらゴメンなさい。お値段からするとたいへんなお買い得品で大いに感謝してますからね。)

すぐにGさんに連絡してアンプを送付した結果、ヒーター用のトランスの追加や出力管にかける電圧の調整など、いろんな改造をしてもらって手元に戻ってきたのがこの18日(火)。

Gさんの事前連絡によると「これまで扱ってきたプッシュプルタイプでは一番いい音になりました。」

いやあ、実に希望に満ちた言葉を聞かされてルンルン気分!

ちなみにGさんは長年使ってきたWE300Bをこのほど追放処分してこの古典管を愛用されている真っ最中なのでその(古典管の)実力は百も承知の方。

          

3台目のエース級アンプへの期待を込めて、まず初段管と整流管を手元に所有している中で特上のものに一新した。

まず第一次増幅管の「12AX7」(1本)を前回のブログに登載した「ロング管」(1本)へ入れ替え、次に第二次増幅管の12AU7をRCA(2本、クリヤトップ)へと銘柄の入れ替え、そして音質を大きく左右する大切な整流管には秘蔵しているレイセオンの軍用管VT244(5U4G)を奮発。

これで「80」を試聴してみるとバンザーイ(笑)。この古典管の特徴である並外れた透明感を維持しつつ、パワー感もまったく不足なし。

これで3台目のエース級アンプが登板可能となって完全に駒がそろった。これからは連戦連勝だあ!

すぐにGさんに連絡して「まったく言うことありません。これならシングルタイプと互角の勝負が出来ます。どうもありがとうございました。」

自分独りで聴くには勿体無いくらいと思っていたところ、昨日(19日)の午後たまたまオーディオ仲間(大分)が3名我が家に試聴にお見えになったのでご意見を伺うのには絶好のチャンスが到来した(笑)。

以下続く。
 


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真空管の交換

2014年11月18日 | オーディオ談義

この1か月間あまり、着々と真空管の交換作業を進めてきたがようやく一段落したのでその経緯を記してみよう。

一口に真空管といってもいろんな役割があるが用途別に大きく分けると、電圧増幅管、出力管、整流管といったところになる。

今回は電圧増幅管に使っているミニチュア管の「12AU7」をある真空管、仮に「ロング管」としておくがこれに代えると抜群に音が良くなるという話。しかも差し換えるだけで回路の変更などは伴わないというから助かる。まあ、厳密に言えば少し手直ししたほうがいいのだが、それはこの際ひとまず置いておこう。

これはアンプづくりの達人ともいうべき超ベテランの方からもたらされた情報なので信頼度は100%に近い(笑)。ちなみにこの両者の真空管の互換性についてはどんな雑誌にも書かれておらず、完全に仲間同士での口コミの世界である。

「12AU7」は比較的ポピュラーな球として知られており、我が家の真空管アンプにも頻繁に使っていて、プリアンプ2台、パワーアンプ3台に使っている。全部交換するとすれば10本(5ペア)必要になる。

さあ、大変!この「ロング管」はやや値が張るし、オークションにも滅多に出ない稀少管だが何としてでも手に入れたいところ。

こういう時に助かるのが真空管を大量にストックしているMさん(別府市内)。困ったときにはいつもお世話になっている方で、まさに駆け込み寺的な存在。ときどきメール交換している間柄だが、今回ばかりは性急に電話で依頼すると「在庫ありますよ~」とありがたいご返事。

クルマで15分ほどの所なので一目散。

別にお店を構えられているわけでもなく、自宅の空き部屋に置いてあるのだが物凄い在庫量である。

           

これでもほんの一部なのだから恐れ入る。

この「ロング管」にもメーカー別に値段の差があるようで、一流ブランドものを2ペア、やや値段が落ちるブランドを2ペア、計4ペアをゲットした。一流ブランド物は最後の庫出しだそうで滑り込みセーフだった。これはプリアンプに使わせてもらうことにしよう。

久しぶりにお会いしたのでひとしきり話が弾んだが、つい最近のブログでも記載したように我が家の「AXIOM80」を鳴らすのに一番相性が良かった「1920年代製の真空管」の在庫を、“藁(わら)おもすがる思い”でお訊ねしたところ、「ああ、あれはAさんから依頼があったので売ってしまいました。今のところ在庫はありません。」

ちなみにAさんとは、真空管関係の著作では必ずと言っていいほど名前が出てくるほどの全国的にも著名な方である。

こういう地方のマニアにもちゃんと網を張っておられることに驚いた。と同時にその道ではMさんも十分に名を馳せておられることに感心。

ところで、「この1920年代製の真空管はとてももったいなくて、オーディオ仲間が来たときだけ挿し替えて聴かせてあげてます」と、言ったところMさんから次のような返答があった。

「そんな使い方をしていると逆に真空管を傷めますよ。ガラス管などは挿すたびに微妙に熱膨張しているのですから、刺激を急に与えない方がいいです。使うときは少なくとも1時間ほどは整流管を引き抜いてウォーミングアップするべきです。真空管の故障の大半は挿した瞬間に起こりますからね。古典管となると特にそうです。」

いやあ、いい話を聞きました!古典管はまるで生き物を扱うように大切に扱ってやらねば・・・。

さて、自宅に持ち帰ってさっそく「12AU7」をこのロング管と差し換えて試聴したところ、音響空間がひときわ大きくなってこれまでにない雄大なスケール感に包まれた。何よりも音に躍動感が出てきたのがありがたい。たった初段管を替えるだけでこんなに変わるんだから、これだから真空管アンプは止められない(笑)。

       

左が「12AU7」(映像はムラードの高信頼管M8136)、右がロング管。長さに比例してプレートも随分大きい。信頼度100%の仲間が言ったとおりで、期待に違わぬ性能だった。

こんなことなら残る1ペアがどうしても欲しいところで、以後毎日、暇さえあればオークションでググっていたところ3週間目ぐらいの一昨日(16日)ようやくアンテナに引っ掛かってスペアを含めて4本落札。

これでフィリップス、ヴァルボ、シーメンス、タングスラムと4つのブランドが揃ったので、聴き比べするのも面白そう。


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メールあれこれ

2014年11月16日 | 独り言

このところ配信されるメールといえば宣伝ばかりでいつもウンザリ。迷惑メールに分類していてもときどき貴重なメールが舞い込んでいることがあるので結局すべて目を通さざるを得ないのが実状。その中で興味深いメールに巡り会った。

☆ オペラ魔笛のベスト盤について

前回のブログで魔笛(モーツァルト)に触れておいたところ、さっそくTさんという見知らぬ方からメールが届いた。要は「これから魔笛を聴いてみようと思うがあなたの推奨するベスト盤はどれですか?」というもの。

これは非常に難しい問題だなあ(笑)。しかし、このブログを始めたそもそもの動機は全国の「魔笛」ファンを結集して「魔笛倶楽部」を設立しようという遠大な目的があったのでこういうメールは大歓迎。

さて、オペラを構成する要素はいろいろあるが、代表的なものを挙げれば指揮者の巧拙、オーケストラの出来栄え、歌手たちの力量といったところだろう。

魔笛の場合は2時間半に及ぶ長大なオペラなので沢山の歌手たちの出番が多いが、代表的な配役となると高僧役(バス)、王子役(テノール)、王女役(ソプラノ)、夜の女王(コロラトゥーラ)、道化役(バリトン)の5人に絞られる。

これら5人に完璧な歌手像を求めるとなるとそれはもう無理な相談というもので、何かしら瑕疵が出てくるのは当たり前。バスが良ければコロラトゥ-ラとバリトンが拙いといった調子。

しかし、これらの配役の中でテノールとソプラノの配役に恵まれれば「良しとせねばなるまい」というのが、50セット近く聴き込んできた自分の感想である。

その伝でいけば、クリスティ盤、デービス盤、ベーム盤(1950年代)、スイトナー盤、カラヤン盤(1950年代)、サバリッシュ盤、ハイティンク盤といったところだろう。

ちなみに「音楽&オーディオ」の鬼神ともいえる五味康祐さんは生涯の愛聴盤としてクラシック音楽ベスト20を個人的にメモしておられたがベスト1にはカラヤンの魔笛を挙げておられた。カラヤン嫌いの五味さんが、この頃(1950年代)のカラヤンは実に良かったと激賞されるのも何だか分かるような気がする。

まあ、最終的に初心者に推奨するとすれば録音の良さも兼ね合わせて「クリスティ盤」が無難というところかな。

        

ちなみにこのCDのレーベルは「エラート」(フランス)である。フランス人は料理もさることながら、音楽センスも非常に良くてオーディオ機器や真空管など感性が豊かなものが多いのにはいつも感心する。

それではTさん、これで返信メールに代えさせていただきます(笑)。

☆ 「きょうよう」と「きょういく」について

高校時代の同窓生たちで構成されたメールクラブ(参加者150名程度)。滅多に投稿しないが、いろんな遣り取りをいつも興味深く拝見している。そのなかで、つい先日、高齢者には“きょうよう”と“きょういく”が必要だという投稿があった。

「教養」と「教育」の必要性なら今さらの話なので堅苦しい内容かなと読み進んでみると、高齢者は暇を持て余さないように毎日の生活の張りが必要で、そのためには「今日用事がある」「今日行くところがある」というのが大切というお話。

つまり「今日用」と「今日行く」。これには、な~んだと笑ってしまった。しかし、実にうまい!

つい成る程と頷いてしまった。自分の場合は用事といってもオーディオがらみのことばかりだが仲間の所に行ったり、来てもらったり、オーディオ機器の修繕、購入、真空管の交換などは大いに「胸弾む」出来事だが、そういう刺激がないと、ついションボリ~(笑)。

このところオーディオ仲間とはご無沙汰だし、真空管の購入も一段落だしと、ずっと手持ち無沙汰なので「今日用」とばかりに半年ほど前にオークションで購入したJBLの2440ドライバーのダイヤフラムの交換作業を14日(金)にやってみた。

              

現用の「375」ドライバーが故障したときのことを考えて、スペアとして後継機種の「2440」ドライバーを購入したのだが片方のダイヤフラムが異なっていたので、同じ「ダイヤモンドカット」のものに揃えたもので、右の写真が作業後のもの。

作業のポイントはダイヤフラムの裏側に強力な磁石が控えているので、ネジを開けたり締めたりするときに用具のドライバーがつい引き寄せられてダイヤフラムを突き破らないようにすること。そのため、常に片手でダイヤフラム側を遮蔽しながらの作業となる。

もうひとつ、ダイヤフラムの8本のネジを力を入れて締めすぎないこと。均等に軽く締め付けて止まったところではい終わり。そうじゃないとデリケートなツクリのダイヤフラムが変形して音が歪んでしまう。

最後にこの裸のままの状態でホーンをつけることなく、アンプに繋いで試聴してみたところバッチリでスッキリした音質で鳴ってくれた。いやあ、ひと安心。これで375が故障したときはいつでも出番OKだ。

しかし、アンプとの結線を外すときにコンデンサー(ローカット用)をSPコードに噛まさずに試聴していたことに気付いて背筋がゾーッとした。

このドライバーはメーカー指定値で周波数500ヘルツ以下の入力はご法度になっている。小出力の真空管アンプだから事なきを得たものの、もしこれがトランジスターアンプならおそらく回復不能のダメージを受けたことだろう。

ウッカリミスには用心、用心。


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モーツァルト「伝説の録音」

2014年11月13日 | 音楽談義

このところ音信が途絶え気味だったオーディオ仲間のMさん(奈良)から久しぶりに次のようなメールが届いた。(11月7日)。いつもネタ切れのときを見計らかったかのように絶好のタイミングで情報提供してくれるので大助かり(笑)。 

「ついにオリジナルの“AXIOM80”を手に入れたそうでおめでとうございます。気になるCDが出ましたのでメールします。飛鳥新社の記念出版です。 

◎「死とはモーツアルトを聴けなくなることだ」という冒頭の言葉に象徴されるような企画

◎ オペラの全曲に「魔笛」を選んでいる 

◎ ノイズフィルターを使用せず、演奏者の音楽性、録音時の空気感まで再現 

◎ 内田光子さんの5時間に及ぶインタビュー記事を書籍にして添付 

◎ CD復刻盤に新 忠篤氏が担当 

と魅力的です。 ネットで試聴しますと購入するには迷いが出ますが・・・。カタログだけを手元でめくるだけでも価値ありと思います。(綺麗なカタログです)  

『モーツァルト・伝説の録音』飛鳥新社創立35周年記念出版 http://www.asukashinsha.jp/mozart/  

オリジナル80でSP時代の名演奏を聴くのも得難いものがあると思いますが、いかがでしょうか。」 

 いやあ、大のモーツァルトファンとしてほんとうにありがたい“お知らせ”です!

ちなみに「死とはモーツァルトを聴けなくなることだ」と言ったのは、ご存知の方も多いと思うがあの「相対性理論」で有名な物理学者アインシュタインである。

平々凡々たる人間が天才物理学者と肩を並べられるのはモーツァルトの音楽を聴くことぐらいしかない(笑)!

すぐにカタログを申し込んだところ、あっという間に届いた。(11月11日)

                         

ざっと目を通してみると、全3巻にわたってCDが36枚収納されている。書籍が3冊付き。第1巻は11月中に発売予定で、第2巻は2015年5月、第3巻は2105年11月という1年間の長丁場。お値段の方は全巻予約の場合7万円。

しかし、近代のデジタル録音に比べると音質が劣るのは間違いなし。その辺はまったく期待が持てないが何といっても演奏の中身と密度が違う。こと、芸術の格にかけては一流の演奏家たちばかりである。まあ、何も近代の演奏家たちが及ばないというわけではないが、当時の時代背景が今とはまるで違っている。

第一次、第二次世界大戦前後の荒廃したヨーロッパで当時の人々の心に潤いをもたらした数少ない手段のひとつが音楽だった。熱心な聴衆が相互作用によって優れた芸術家を育てるというのは一つの真理ではあるまいか。

カタログの中でピアニスト内田光子さんはこう述べている。(35頁)

「私がいちばん気に入ったのははっきり言ったら、ジュール・ブーシュリなんです。あれはもうダントツだと思います。アドルフ・ブッシュの物凄さというのは、これは私にとってヨーゼフ・シゲティと同様に、私は彼の音楽家としてのあり方に惹かれてきたと思います。

ティボーは私にはさほどじゃないの。素晴らしく美しいけど、だけどちょっとチャラチャラしているでしょう。ところが同じフランスのヴァイオリニストでもプーシュリにはそういうところが全然ない。」

何と、このプーシュリの演奏がCD1の第1曲目「ヴァイオリン協奏曲第5番第3楽章メヌエットより」(1907年)として収録されている。

そのほか、SPレコード時代の名演奏家たちが綺羅星のごとく集結しているので、おそらく五味康祐さんあたりがご存命ならきっと狂喜乱舞されることだろう。

もちろん同封のハガキですぐに予約申し込みをしたのは言うまでもない。

なお、モーツァルトの数あるオペラの中で完全収録されているのが「魔笛」だけというのも大いに気に入った。編集者の音楽センスはなかなかよろしい(笑)。600曲以上を作曲したモーツァルトの
35年の生涯において、このオペラは間違いなく最高峰に位置している。

あの楽聖ベートーヴェンでさえ「モーツァルトの作品の中では魔笛が最高傑作!」とのお墨付きだ(笑)。

ちなみに今回収録されているのはトーマス・ビーチャム卿(イギリス)が指揮したもので1937年版(ベルリン・フィル)。オヤッ、1937年といえばたしかトスカニーニが指揮した魔笛もそうだったはずだがと探してみたら、すぐに出てきた。

          

左がビーチャム盤、右がトスカニーニ盤(ウィーンフィル、ザルツブルグ音楽祭ライブ)。

両者の演奏がどういうものか、ある程度把握しているものの久しぶりの機会というわけで昨日(12日)は朝から聴き比べをした。なお、出演者のうち両方とも共通している歌手はタミーノ役(王子)のヘルゲ・ローズヴェンゲ(テノール)。

まずトスカニーニ盤だがライブ録音だけあってサーノイズが激しいが10分もすると気にならなくなる。楽団員にメチャ厳しかったトスカニーニだけあって歌手たちの緊張ぶりが直に伝わってくるような熱演で自然と聴き惚れてしまった。

とはいえ、当時のライブ録音はそれはそれはひどいもので、途中で歌手の声が聴こえなかったりするので鑑賞するには相当の覚悟が要る。

しかし、録音さえ良ければ手元の40数セットの魔笛の中でも屈指の出来栄えだろう。

その一方、ビーチャム盤はスタジオ録音で台詞抜きの声楽だけの演奏。そのせいか穏やかで端正なオペラの印象を受けた。トスカニーニ盤に比べるとサーノイズが目立たたないがその代わりに最低音域と最高音域の周波数がすっぱり切り落とされている。

今回の企画のように万人向けに収録するとしたら“聴きやすさ”という面でビーチャム盤に落ち着いたというのはたしかに頷ける。

後は第1巻が配送されるのを待つばかりだが、まったく知らない演奏家に出会えるのが楽しみ~。


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どちらがいい?

2014年11月11日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

最終回のテーマは「プリアンプとアッテネーターの違いと音質実験について」

4年半ほど前のブログで「プリアンプはもう要らない」と思い切ったタイトルで投稿したことがある。いまでも過去記事の閲覧アクセスの中では常にベスト3に入っているほどの名作である(笑)。

内容を“かいつまむ”と、次のとおり。

レコードからCDの時代となって、プリアンプの必要性が見直されている。

改めてプリアンプの機能を挙げてみると、

1 いろんなソースの信号の切り替え

2 フォノ入力をラインレベルへ増幅

3 ボリュームの調整

4 低音域や高音域の調整

5 入出力インピーダンスの調整

このうち、2はレコード用の機能のためCD利用者に取っては必要ない。4は余計な回路でかえって音を悪くする恐れがある。5はよほど特殊なCDプレイヤーとパワーアンプを使っていない限り必要ない。

というわけで、残る機能は1と3だけだが、そうなると電源機能が不要なアッテネーターで十分間に合うので自分はプリアンプは不要だと思っている。

それに、システムの構築に当たっては「シンプル・イズ・ベスト → 余分な電子回路は少しでも減らしたい」は、あらゆる局面にも当てはまる。

とまあ、こういう内容だった。

ところが、こういう記事を書いたクセに今でも(自分は)プリアンプを重用しているのだからほんとうに困ったことだ。ことほど左様に自分のブログはあまり当てにならない(笑)。

とはいえ、ずっとプリアンプとアッテネーターのどちらを使うか頭を悩ませているのは事実である。まさにこの課題は理論と感覚の凌ぎ合いの典型的な事例かもしれない。

今回の試聴会では「AXIOM80」を鳴らすアンプにアッテネーターを接続していたのだが、すぐにKさんが気付かれた。

「私も両者のどちらを使うか随分試行錯誤したことがあります。しかし、アッテネーターで長時間聴いていると、なぜか“聴き疲れ”するんですよねえ。そこで今ではプリアンプを重点的に使用しています。ただし、接続するパワーアンプの個性を生かせるように、あまり色付けの少ないものにしています。」

ここでも音楽感性の衝突が(笑)。

通常、この種の議論は不毛に陥りやすいとおよそ相場が決まっている。両者ともピンからキリまで価格帯があって性能も千差万別なので、ある一定の基準が定まらないため比較すること自体に無理がある。それにどういうCDプレイヤーを使っているかなどの周辺環境によっても左右されるので一概に断定できない。

この日使っていたのは、新調したばかりのアッテネーターだった。関西のとあるメーカー製だが、製品カタログにはこうあった。

「ハイエンド ボリュームコントローラー アンバランス対応」

「従来からパッシブ型プリアンプを販売させていただいておりましてご好評をたまわっております。使用しているボリュームは私共の全機種に搭載している国内で最も信頼性が高いアルプス電気製の"RK27"という二連又は四連のタイプです。
左右相互偏差(ギャングエラー)は-60dbまで絞ったときMAX3dbで殆どの場合十分な性能ですし音質的にも満足出来るものです。これ以上のものは他社には存在いたしません。
但し時として最小音量の場合(アンプのゲインによりますが)の偏差を何とかしたいと想う事も御座います。
これを解消するには抵抗の組み合わせによるロータリースイッチ方式或いはアルプス電気製の超高級真鍮削り出しの"RK50"の採用しかありません。
私共では数年の実験を繰り返した結果-"RK50"の採用に踏み切りました。
-80dbまで絞っても左右相互偏差は3dbMAX(実測してみて驚いております)という驚異的性能で、廻した時の感触も抜群です。」

      

非常に素直な人間なので宣伝文句についつられてしまった(笑)。それに人造大理石によるガッチリした筐体も気に入ったので購入したわけだが、どうやらまだエージング不足のようでまだ本調子には至っておらず説得力に乏しかったのもKさんの発言を許した背景にある。

これから当分の間、両者の併用という形になりそうだが、ここでプリアンプに使用する真空管のことでビッグニュースが入ってきた。

現在「6922」(6DJ8=ECC88)の電圧増幅管を使っているのだが、オーディオ仲間のGさん(福岡)からの耳よりの情報として、この真空管を欧州製の別の真空管に替えただけで飛躍的に音質が良くなるというのだ!

どうやらプリアンプがアッテネーターを凌駕するビッグチャンスが巡ってきたようだ。

この内容については後日ということで。

 


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正体不明のスピーカー

2014年11月06日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

最初期の「AXIOM80」(以下「80」)を手に入れたおかげですっかり出番の無くなった復刻版の「80」。それもスペアを含めて2セットも。

長年愛用してきたので可哀想だし、それにいつもの「もったいない精神」を発揮して何とか1セットをシステムの中に繰り入れることにした。それが次の画像(再掲)。

            

グッドマン社指定のエンクロージャーにオリジナルの「80」を収納してフルレンジ(全周波数帯域をカバー)で鳴らし、復刻版の「80」を自作のエンクロージャー(厚さ5センチの木)に容れて、低音域部分(およそ周波数100ヘルツ以下)を補強してやるというもの。

「80」愛好者からすると、この鳴らし方は邪道だと轟々たる非難を浴びそうだが、ま、オーディオには遊び心も必要だし~(笑)。

音楽ソースによっては効果を発揮してくれるし、別のアンプで駆動しているので不要なときはスイッチを切ればオリジナル単独で聴けるしでフレキシブルな聴き方をしているわけだが、はたして今回の試聴会でKさんはどういうご意見を洩らされるだろうかと興味津々。

テーマ「フルレンジ+低音部の補強」という我が家の鳴らし方は、はたして適切なのか」


試聴盤のムスクーリの1曲目が終わったところで、Kさんから「復刻版のアンプのスイッチを切ってもらえますか」とのご要望。

そして聴き比べられた結果「低音部の補強は要らないんじゃないですか。オリジナルだけで十分だと思いますよ。それに、低音部だけ補強するよりも、復刻版も全帯域で鳴らし、ごく小さい目立たない音でオリジナルを補完するのも一つの方法ですよ。とにかく80にコンデンサーやコイルを(SPコードに)噛ませない方がいいと思います。非常にデリケートなユニットですから音が変質しますよ。」

ここでもやっぱり否定的な意見が出て、再び両者の「音楽感性の衝突」(笑)。

ここでおとなしく引き下がるわけにはいかないが、復刻版によって全帯域を目立たないように補完するやり方は“眼からウロコ”で、独りでは絶対に浮かんでこない発想だった。

我が家ではテレビの音も光デジタルケーブルで接続してこのオーディオシステムで聴けるようにしているので、そういうときは復刻版の出番となり大いに助かる面もあるのでこれは後日の検討課題としておくことにした。

とにかく、今回はお客さんの顔を立てることにして(笑)、以後はオリジナルの「80」だけによる試聴となった。

次に4台の真空管アンプのうち最終的に「AXIOM80」とのベストマッチは?」
のテーマへ移ろう。

オーデイオシステムは音声信号の入り口から出口までいっさい手を抜かないほうがいいのは当たり前だが、それでも若干の強弱は許される。その中で重要ポイントとされるのは何といってもスピーカーとアンプである。

このブログでも再々述べているようにスピーカーは人間でいえば顔にあたり、アンプはそれに精神を吹き込む役割を持つと、あるオーディオ誌に書いてあった。

生まれつきの顔の造作を変えることは基本的に不可能だが、精神の有り様となるとそのアプローチにはいろんな手段があるわけで、そこに多様なアンプの付け込む隙がある。

現実にアンプが変わるとコロリとスピーカーの音が変わるのだからたまらない。とりわけ「80」はメチャ敏感なのでそれぞれのアンプの差をイヤというほど明らかにする。それはもう怖くなるくらいガラッと違った表情を見せる。

そのため「80」愛好者はやたらに真空管アンプをいくつも集めたがる例が多い。たとえば今回の試聴会のKさんが代表的な事例で、プリアンプとパワーアンプ合わせてたしか20台近くの大盛況。

きっと、あれこれ無差別攻撃して「80」の正体を突きとめようとしておられるのだろうが、おそらくKさんの努力は“はかない抵抗”に終わるに違いないと睨んでいる
「80」はまるで怪人20面相みたいなところがあって永久にその正体を現すことはないと思うから(笑)。

しかし、Kさんのポリシーは一貫している。直熱三極管の双璧とされる「WE300B」と「PX25」にはいっさい見向きもされず、あくまでも「71A → 45 → 50 → 2A3」の系譜に繋がる小出力の古典管群にピタリと照準を定めておられる。

その理由を一言でいえば「80」を鳴らすのにパワーは有害無益とのことで、そういえば「80」愛好者で伝説の瀬川冬樹さん(オーディオ評論家)も245(45のナス管)で愛聴されていたと聞く。


Kさんに比べると自分はまだ可愛い方だが、それでも現在「80」専用のアンプとして鳴らしているのは「WE300B(オールド)」「PX25」「刻印付き2A3」「71A」の4台の真空管アンプ。いずれも直熱三極管シングル・タイプで、その日の気分次第でSPコードを繋ぎかえて聴いている。

それぞれに個性があって興味が尽きないが今回はこの4台を鳴らし比べてオリジナルの「80」のベストマッチのアンプを探ろうというものだ。

個人的に一番うまく鳴って欲しいのは「血(お金)と汗と涙」を最も注ぎ込んだWE300Bアンプなので、ここでもKさんとの音楽感性の衝突が起きたのはご想像に難くない(笑)。

さて、もったいぶらずにあっさり結論から言うと「1920年代製の真空管」を使ったアンプがダントツのベスト1だった。オーディオ仲間たちから「口外無用」と釘を刺されているので、ここで簡単に型番を明かすわけにはいかないのが残念(笑)。

この球は1か月ほど前にKさんのルートで手に入れたものだが、この日に限らず我が家を訪れたマニアたちが口をそろえてこの真空管を絶賛するのでこれは衆目の一致するところで、Kさんからは「80に限って言えばおそらく日本有数の音でしょう。」と太鼓判を押してもらった。

巷間「80」の弱点とされている中低音域の薄味、高音域の神経質さを補ってくれるところがあって、たいへん重宝しているが、この球はおよそ90年前の製造なので程度のいいものが少ないし、オークションにも滅多に出ないしで手に入れるのは至難の業。現在、Kさんともども八方手を尽くして血眼になってスペアを探し回っているところ。

したがって、もし球が故障でもしたらという恐怖感が先に立って、うかつにアンプに挿すわけにはいかないのが悩みの種。その辺は真空管マニアならお察しのとおりである。そこで現在はお客さんがお見えになったときだけ差し換えて聴かせてあげている。

真空管アンプのポイントは出力トランスをはじめいろいろ挙げられるようだが、個人的には最終的に出力管で運命は決まると思っている。

たとえばの話だが高価なアンプに中国製の出力管を挿した場合と、安価なアンプに古典管(もちろん規格に合ったもの)を挿して聴き比べた場合、音質はきっと後者に軍配が上がることだろう。

次回は最後のテーマプリアンプとアッテネーターの違いと音質実験について」
 


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音楽感性の衝突~その2~

2014年11月04日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

ずっと以前、加銅鉄平さん(オーディオ評論家)の著作を読んでいたら、「他人のシステムを聴かせてもらったときに、ご本人の面前で音質についての悪口を言うのは、“あなたの子どもはバカですね”と言うのと一緒だ。」という一節があった。

当時は何の気なしに読み流していたのだが、よく考えてみるとこれは半分は当たりで半分は当たっていない。

なぜなら子供は夫婦の合作なので責任は1/2しかないから(笑)。

その一方、オーディオシステムとなると構築の責任はすべて本人に帰するので、このケースで言えば「あなたはバカですね」と一緒のことになる。まあ、バカというのは語弊があるからせいぜい「センスが悪いですね」ぐらいのものだろう。しかし、こんなことを面と向かって言われて腹を立てない人はまずいない。

長い年月を経てようやく辿りついたシステムは本人の音楽・オーディオ観、ひいては人生観でさえも反映したものだからユメユメ直接的な批評はご用心だが、それかといって通り一遍の「いい音ですね~」で済ませても何だか虚構の世界となってしまうし、第一、ご本人のためにならない。

「いい音」の尺度はいろいろあるのだろうが、ひとり“悦に入る”のではなく誰にも認められてこそほんとうに「いい音」だというのが我が輩の持論である(笑)。

とはいえ、「機器や真空管の選択によってはもっと音が良くなりそうだが、ストレートに指摘すると気を悪くされるだろうし、ま、ご本人が満足しているんだから、それでいっか。煙たがられるよりも黙っておいた方が無難だろう。」というのがせいぜいのオチというところ。

たかがオーディオだが、されどオーディオ。ま、熱の入れ具合によってもそれぞれ違うのだが。

その点、同じ「AXIOM80」仲間のKさん(福岡)とは熱意度がほぼ同程度の強力なライバル同士なので、「できるだけホンネの世界で腹蔵なく指摘しあいましょう。それがお互いのタメですからね。」と事前協定を結んでいる(笑)。

ま、中にはハナっからホンネが通用しない方もいるのでその辺の性格的な見極めが必要だが、とにかく良き仲間に恵まれて感謝しているものの、この日(27日)の試聴会は最初期の「AXIOM80」(以下80。)を導入してから初めてなのでお互いに気を張っていたのは事実だが、いつも以上にストレートな意見が沸騰した。

今回のテーマは前回にも記したように次の4点だった。

1 最初期の「AXIOM80」と「復刻版」の違いについて

2 「フルレンジ+低音部の補強」という我が家の鳴らし方は、はたして適切なのか

3 4台の真空管アンプのうち最終的に「AXIOM80」とのベストマッチは?

4 プリアンプとアッテネーターの違いと音質実験について

まずについて。

Kさんはご自身ではオリジナルの80を使用されているが、かねてからの復刻版擁護派である。オリジナル一辺倒ではないところに「名を捨てて実を取る」式の冷徹な経営者としての素顔が伺える。

そのKさんが仰るには「オリジナルの良さは当然認めますが、皆さんが言われるほど復刻版も悪くないですよ。むしろ低音域は復刻版の方がいいくらいです。それにオリジナルは製造してから60年以上も経っていますから程度の悪い物が巷に氾濫してます。手に入れるにはあまりにも危険が多すぎます。私が〇〇さんにオリジナルを積極的に薦めなかったのもそれが一番の理由です。」

そういうわけで、今回導入した最初期の80に対してもその性能に対して半信半疑のご様子だったKさんだが、試聴の結果「この80は万にひとつの確率で当たりましたね。荒れたところがいっさいありません。程度がすごくいいです。前のオーナーがよほど良質の真空管アンプで大切に聴いてきた結果でしょう。しかし、復刻版との音質との違いとなると駆動するアンプとの相性の差に等しいような気がします。たとえば、私が好きな71Aアンプで鳴らす復刻版の音と、WE300Bアンプで鳴らすオリジナルの音が似ているようなものです。」

ここですかさず反論。「いや、そうは思いませんよ。中高域にかけての自然な雰囲気と柔らかさの表現力はどう転ぼうとオリジナルの方が明らかに上でしょう。」

「・・・・・」と、どうやら納得されたご様子ではなさそう。両者の微妙な音楽感性の違いは如何ともしようがない。

これでは先が思いやられる(笑)。

ところで、今回の主な試聴盤はKさんが持参されたナナ・ムスクーリ。Kさんは女性ボーカルの大ファンで名花シュワルツコップからヒメマリア・イダルゴ(アルゼンチン)、そして加藤登紀子まで守備範囲が実に広い。

         

ムスクーリは素晴らしき美声の持ち主である。収録されていた「黄金のつばさに乗って」(オペラ「ナブッコ」ヴェルディ)を聴いたときに「この人はクラシックの素養の持ち主ですね。」と言ったところ「ナイトクラブでのアルバイトがばれて、音楽学校を退学させられたそうですよ」で、なるほどと納得。

一般的にオーディオマニアの好きなジャンルはどうしても愛用しているスピーカーの得意分野に収束していくようだが、自分も「ボーカルとヴァイオリン」には目がないので同様の傾向にある。その一方、大規模編成のオーケストラには足が遠のくばかりなのも“むべなるかな”。

さて、のテーマは(両者の「音楽感性の違い」として)結着のつけようがないので、そのまま放っておいて
次のテーマの「フルレンジ+低音部の補強という我が家の鳴らし方は、はたして適切なのか」に移ろう。

以下、次回へ続く。
 


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「文明の衝突」ならぬ「音楽感性の衝突」

2014年11月01日 | オーディオ談義

4年半ほど前に「文明の衝突と21世紀の日本」というタイトルで投稿したことがある。

記憶にある方には申し訳ないが、概要をかいつまんで再掲すると、
 

「最新アジアビジネス熱風録」(2008.4.10、江上剛著、文藝春秋刊)を読んでいたら、第八章の「中国マネー戦争の内幕」のところで次のようなコメント(233頁)があった。                          

『サミュエル・ハンチントンは「文明の衝突」の中で、日本は最終的には中国の側につくだろうといっています。欧米から見れば、日中は同じように見えるのです。いずれ私たち日本人は、中国と米国のどちらかを選択
することになるのでしょう。』

国際政治のトレンドなど本格的に勉強したことはないが何とはなしに日頃の自分の思いをズバリと代弁してくれたような話。

将来的に中国は太平洋に進出して本格的にアメリカと対峙したいものの、地政学的に弧になった日本列島が喉に引っ掛かった小骨のような存在という話を聞く。〔中国海軍は2009年から航空母艦の建造に入ると発表済み)。

現在、ホットな沖縄の米軍機基地移転問題にしても、もし日本が中国につけばアメリカは太平洋戦争当時のように軍事基地がハワイまで後退なんて話も出てくる。

自分のような一介の市井の徒がこんな大それたことを心配してもどうなるものでもないが、何となく好奇心を刺激するのである。

と、いうわけで原著「文明の衝突」について当たってみた。

「ウィキペディア」にはこうある。まず、ハンチントン氏から。

サミュエル・フィリップス・ハンティントン(1927~2008)

アメリカ合衆国の政治学者でハーバード大学教授時代はリアリズムを基調とした保守的な思想で知られる国際政治学の世界的権威だった。著書「文明の衝突」で名声を確保した。~以下略~

次に「文明の衝突」について

「文明の衝突」(1998年和訳:鈴木主税、集英社刊、理論は1993年に世界の論壇に登場)

冷戦が終わった現代社会においては、文明と文明との衝突が対立の主要な軸であると述べる。特に文明と文明が接する断層線での紛争が激化しやすいと指摘する。記事の多くはイスラム圏、ロシアについてであり、他の地域に関してはおまけ程度の扱いである。日本の将来については孤立を深め中国と提携としている。

10年以上も前に発売されていた本とはいえ是非読んでみたいと図書館に行ったところ偶然にも題名が「文明の衝突と21世紀の日本」(2000.1.23、鈴木主税訳)
という本を見つけ出した。これもハンチントンの著作なのでもってこいの本、早速読んでみたがこれがたまらないほど面白かった。 

☆ 
21世紀における日本の選択

本書に一貫して流れている大きなテーマは「21世紀の世界は民主主義によって一つの世界が生まれるのではなく、数多くの文明間の違いに起因する分断された世界になる」
ということだった。

1 
冷戦後の世界~西欧と「中国・イスラム」の関係~

まず、冷戦後の一極(アメリカ)・多極(中国、ロシアなど)世界という新しい世界秩序の中で紛争の主な源として「中国の台頭とイスラムの復興」が挙げられ、西欧とこの新しい勢力を持った二つの文明~中国とイスラム~との関係は特に難しく、対立的なものとなるとの指摘から話は始まる。

筆者註
:この本が出版されたのは10年以上も前、ということはアメリカの同時多発テロ以前であるが、イスラムの脅威を見事に予言していることになる。

さらに潜在的に最も危険な紛争は、アメリカと中国の間で起こるという。

この二国は多くの問題~貿易、知的所有権、人権、兵器の販売と大規模破壊兵器の拡散、チベット、台湾に関する問題~によって引き裂かれている。

しかし、根本的な問題はパワー
をめぐるものであり、今後の数十年間東アジアの覇権を握るのはどちらの国かということである。

中国はハッキリしている。長年、他の大国に従属して辱められてきた時代が終わり、19世紀半ばに手放した東アジアにおける覇権的な地位を取り戻すことを期待している。

一方、アメリカは常に西欧や東アジアを一つの大国が支配することに反対してきたし、20世紀には二つの世界大戦と一つの冷戦に勝利してそうした事態が起こるのを防いだ。

したがって、中国とアメリカの関係を特徴づけるものが対立となるか和解となるかそれが将来の世界平和を左右する中心的な問題となる。

2 日本の選択肢~東アジアの命運~

こうした状況のもとで、日本の進路の選択について検討がなされるが前提として日本の文化・文明的視点からの特徴(これが実にユニークで面白いが長くなるので省略)が縷々(るる)述べられていく。

結局、その特徴がもたらしたものは「完全に独立した文明」だが、それが孤立国家日本を生み出し国際社会に真の友だちがいない、加えて出来ない実情
が明らかにされていく。

必然的に選択肢が限られる中で日本は強い方につかざるを得ず「中国の台頭とアメリカの超大国としての地位」を見比べながらはじめの方は選択そのものを避ける。

そして
アメリカが最終的に唯一の超大国としての支配的な地位を失いそうだと見れば、日本は中国と手を結ぶ可能性が高い。

中国と日本とアメリカにおける三国の相互関係こそ東アジアの政治の核心だが、このうち最も弱いのは日本と中国を結ぶ線であり、この二国関係の改善が何よりも重要となる。

以上の見方をとるハンチントン氏はホワイトハウスのブレーンとして活躍したことがあり、これはアメリカの国家戦略と見なしてもよいものだろう。

本書ではほかにも人口爆発によるイスラムの脅威の分析など興味ある事項が満載だが、巻末に「解題」として京都大学教授の中西輝政氏の論文が寄せられており、その中に次のような興味深い一文があった。

私自身とハンチントンとは、中・長期的な中国の将来像については大きく見方を異にする。ハンチントンは中国は今後も安定して経済の急速な発展を続けると見ているが、私は長期的にみて中国という社会は大きな変動に直面し「21世紀の超大国」の座を現実のものとする可能性はまずないであろうと考えている。21世紀に入ると時間が経つにつれ「分裂する中国」という文明史的特質が浮上してくるはずである。

まさに社会的な大実験が行われつつあるが、果たしてサイコロはどちらに転ぶのだろう。

ちょっと長くなったが以上のような内容だった。

なぜこんなことを再掲したのかというと、27日(木)に我が家に試聴にお見えになった同じ「AXIOM80」仲間のKさんと、「文明の衝突」ならぬ「音楽感性の衝突」という気持ちを味わったからである(笑)。

オーディオの愉しみはシステムを駆使して最終的に自分好みの音質に仕立て上げることに尽きるが、その過程において必要なのが仲間との交流で、お互いの情報交換や音質についての意見交換はまず欠かせない。

しかし、この意見交換というものがなかなか一筋縄ではいかない。生まれも育ちも、それに耳の形だって違うので各人の音楽感性が異なるのは当たり前。そういうものをわきまえたうえでも、素直に相手の意見に耳を傾けるのはなかなかの努力を要する。相手にしてみると、「どうして自分の意見がわかってもらないのか」という気にもなるだろう(笑)。

この日は最初期の「AXIOM80」を導入してからおよそ2週間目。つい「この音質」があたり前になって「初心忘れるべからず」という警句が必要な時期でもあるので、Kさんとの試聴は絶好のタイミングだった。

今回の試聴にあたってのテーマは次のとおり。

☆ 最初期の「AXIOM80」と「復刻版」の違いについて

☆ 「フルレンジ+低音部の補強」という我が家の鳴らし方は、はたして適切なのか

☆ 4台の真空管アンプのうち最終的に「AXIOM80」とのベストマッチは?

☆ プリアンプとアッテネーターの違いと音質実験について

すべて意見の食い違いが表面化しそうなことばかりである(笑)。

以下、次回へ続く。
  


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