「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

読書~「文学は音楽に適わない」~

2014年03月29日 | 読書コーナー

「永遠の0」「海賊とよばれた男」など驚異的なベストセラーを連発する作家「百田尚樹」さんの近著「至高の音楽~クラシック永遠の名曲~」を読んでいたら、131頁に「文学は音楽に適わない」の言葉があった。

                       

これが音楽家から発せられた言葉なら「我田引水」なので信用できないが、負の立場にある文学者側の言葉となると大いに信憑性が増してくる。

日頃から暇つぶしに読書と音楽に勤しんでいるが、ややキザなことを言わせてもらうと「文学=多角的なモノの見方を養う」、「音楽=美的感性を磨く」ものだと思っている。したがって、これまでどちらかの優位性なんて意識したことはなかったのでこの言葉はなかなか新鮮に感じた。

ありていに言うと、「文学と音楽とどちらが好きか」と問われたら圧倒的に音楽に軍配を上げるので、思わず共感を覚えてしまったというのが本音。

「苦労して書いた長編小説が俳聖“芭蕉”の一句にとうてい敵わないことがある」と、作家の五味康祐さんがいみじくも書いていたが、それと同じことで、芸術の分野では長ったらしい口上よりもイメージ的かつ感覚的な理解に訴える方がむしろ説得力が増すこともある。

さて、本書を半日かけて読み上げたが、百田さんがこれほどのクラシック通とは思わなかった。常にクラシック音楽を鳴らしながらの執筆だそうで、ちなみに「永遠の0」のラストの執筆中は泣き濡れながら「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲をエンドレスで聴かれていたそうだし、レコード、CD合わせて2万枚の所蔵とは、恐れ入りました!

本書の狙いはクラシックをよく知らない読者とよく知っている読者の双方を満足させたいという狙いで、著者が愛してやまない曲目を一曲づつ8頁前後でもって紹介する形で展開されている。

クラシック通にとっては全25曲の顔ぶれがかなりポピュラーな面に片寄っているのもそのせいだが、折角なので順に挙げてみよう。この中で、一曲でもふと聴いてみようかという気になったら著者の狙いは成功である。ただし、興味のない方もおありでしょうからそういう方は読み飛ばしてください。

 ベートーヴェン「エロイカ」~不意に凄まじい感動が舞い降りた~

 バッハ「平均律クラヴィーア曲集」~完璧な音楽~

 モーツァルト「交響曲第25番」~天才がふと見せた素顔~

 ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」~当初酷評を受けた、20世紀を代表する名曲~

 ショパン「12の練習曲集」~超絶技巧の演奏でなければ真価は味わえない~

 ベルリオーズ「幻想交響曲」~失恋の苦しみが生んだ狂気と前衛の曲~

 モーツァルト「魔笛」~田舎芝居に附された「天上の音楽」~

 ベートーヴェン「第九交響曲」~聴力を失った後の「最後の戦い」~

 シューベルト「魔王」~最後にデーモンが顔を出す~

 ヴァーグナー「ヴァルキューレ」~新手法「ライトモティーフ」の麻薬的な魅力~

 パガニーニ~「24の奇想曲」~はたしてこれは純粋に音楽か?~

 ムソルグスキー「展覧会の絵」~第4曲「ピドロ」の謎~

 ブルックナー「第8交響曲」~「滑稽な変人」が書いた巨大な交響曲~

 チャイコフスキー「白鳥の湖」~チャイコフスキーの魅力が全て含まれている~

 ベートーヴェン「第5交響曲」~「文学は音楽に適わない」と思わされる瞬間~

 リヒャルト・シュトラウス「英雄の生涯」~英雄とはなんとシュトラウス自身~

 ブラームス「第1交響曲」~なぜ完成までに21年もかかったのか~

 バッハ「ブランデンブルグ協奏曲」~すべての旋律が主役~

 ベ^トーヴェン「悲愴」~悪魔的演奏術をすべてぶち込んで作った傑作~

 ラヴェル「夜のガスパール」~昼と夜で聴いたときの感覚が異なる~

 シューベルト「死と乙女」~死に魅入られた男~

 ロッシーニ「序曲集」~クラシック界の「天才ナンバー1」~

 モーツァルト「ピアノ協奏曲第20番」~「職人」が自分のために作った曲~

 バッハ「ゴルトベルク変奏曲」~対位法の最高峰~

 ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」~「闘争」がまったくない幸福感に溢れた曲~

読後に印象に残った点を2点ほど挙げてみると、

1 「決定盤趣味」について

上記のそれぞれの曲目にはベスト盤も紹介されているが、著者は「決定盤趣味=この曲目の演奏の決定盤はこれだ」という決めつけをしないタイプで、CDで発売されるほどの演奏家なら、いずれも優れているはずとの“おおらか派”。芸術はスポーツではない。優劣を競うものではないし、数値化できるものでもないとのこと。

たしかに、「この演奏でなきゃダメだ」という見方もよく分かるが、自ら選択の範囲を狭めているだけなので音楽鑑賞に当たってはいろんな演奏の良い点を汲み取る幅広い包容力も必要だと思う。まったく同感です。

オーディオだって「絶対にこのブランドでなくてはいけない、絶対にこの真空管でなくては」とよく決めつける方がいるが、ま、別のものもそれぞれ何かしらいいところがあるので、柔軟性が一番。

「お前は攻守ところによってカメレオンみたいに変わるなあ!」なんて、言わないでくださいな(笑)。

2 オペラ「魔笛」について

「またお前の好きな魔笛か、いい加減にしろ」と言われそうだが、こと魔笛となると黙っちゃおれない(笑)。本書の関連個所にこうある。(61頁)

「ひどい台本にもかかわらず、モーツァルトの音楽は言葉を失うほどに素晴らしい。魔笛こそ彼の最高傑作という音楽評論家は少なくない。モーツァルトは最晩年になると、音楽がどんどん澄みわたってきて、悲しみを突き抜けたような不思議な音の世界を描くようになるが、魔笛はまさしくそんな音楽である。曲はどこまでも明るく、軽やかで、透明感に満ち、敢えて恥ずかしげもなく言えば、もはや天上の音楽と呼びたくなるほどである。」

モーツァルトの音楽の本質を言葉で表現するのは難しいが、巷間言われているのは「涙が追いつかない悲しさが疾走していく」とある。つまりモーツァルトの音楽から澄み切った悲しさが感じ取れれば合格圏内といっていい。

そこで、百田さんの「最晩年になると音楽がどんどん澄みわたってきて、悲しみを突き抜けたような不思議な音の世界」という表現には心から納得。

さすがに文学者の語彙は豊富で表現力が一枚も二枚も上だ。百田さんは「魔笛」が分かっている!

最後に、執筆中にクラシックを聞き流すという百田さんにならって、このブログを作りながら初めて音楽をかけ流した。なにぶん、まだ寝静まった早朝(4時頃)なので我が家の「猛虎=寅年生まれの」を刺激しないようにひっそりと秘めやかな音での話。そして大発見!「AXIOM80」は小さ目の音の方が圧倒的にいい。

「幻想交響曲」(アバド指揮)と「ブルックナーの8番」(チェリビダッケ指揮:リスボンライブ盤)を聴き終ったところで、このブログがあらかた出来上がり。丁度2時間ってとこかな~(笑)。


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JBL375ドライバーの修理~#2~

2014年03月27日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

          

無事「375」ドライバーの裏蓋を開けて、いよいよダイヤフラムの位置の調整に取りかかった。           

音を出しながらの作業になるのでコンデンサーでおよそ500ヘルツ以下をカットしながら、アンプに繋いで音出し。歪んだ音を出した同じソースのCDをかけたが、ホーンが付いてないと実に頼り無さそうな“か細い音”がする。こりゃ、まるで内弁慶だ(笑)。

ダイヤフラムを動かす前に、念のためにマグネット部に取りつけてある8本のネジ(画像の小さなピンク色の丸で囲んだ部分)をそっと締めてみると何とすべてユルユル状態。な~んだ、犯人はこれだったのか!ダイヤフラムがしっかり固定されていないと歪んだ音が出るのは当たり前。

随分、手間暇を掛けやがってと腹いせに8本ともキツ~ク締めてやった。もちろん、締めるときはダイヤフラムの裏側の強力なマグネット部分からドライバーが引き寄せられないように手の平で隔てながらの慎重な作業である。

しかし、どうしてこんなに緩んだのだろうか?これは想像だが(375は)メーカー指定どおりの500ヘルツのローカットにしているものの肩落ち「6db/oct」なので500ヘルツ以下のもっと低域部分まで音が侵入したため、無理な振動によってネジが緩んだ可能性が大いにある。

つまりダイヤフラムに相当負荷をかけていることになるが、ホーン独特の切れ味のいい中低音にするためには300~400ヘルツあたりの周波数帯域は生命線だ。コーン紙を使ったウーファー独特のフヤけた低音とのブレンドの凌ぎ合いの中で音を引き締める効果が絶大。

したがってこの辺までの音域はぜひカバーして欲しいところ。ま、ダイヤフラムは消耗品だと割り切ることにしているが、駆動している真空管アンプが「刻印付き2A3・2号機」の小出力(3ワット程度)タイプなのがせめてもの救い。

そして、この作業で大発見したことがもう一つ。なんと、ダイヤフラム側の出力端子とSPターミナルのプラス端子とマイナス端子の結線が逆になっていた!「エ~ッ、これでずっと聴いていたの」と背筋がゾッとした。

そう言えばどうも思い当たる節があって、テストCDで位相チェックをしていると、アンプによって正相になったり逆相になったりしていたのでいかにも不安定だったがこれでようやく合点がいった。

これからきっとJBLシステムが正常に鳴ってくれるに違いない(笑)。

375を元のさやに収めてCDをかけてみると見事に歪音が解消されていた。作業は大成功。これもOさんのアドバイスのおかげでお金と時間の節約ができたのは何よりだった。オーディオ仲間は実にありがたい。しかも修理のついでに位相に関する接続ミスも発見できたわけで、むしろこちらの方を発見できたことの方が収穫が大きいくらい。

やっぱり今回も「故障転じてチャンス」となった!どうしてこのところこんなに運がいいのだろう(笑)。

そして、翌日の午後タイミングよく市内のYさんからご連絡があった。実際にフルートを吹かれる方で管楽器の生の音に人一倍鋭くて、いつもありがたいアドバイスをいただいている。

「お久しぶりです。お元気ですか?丁度、新しいCDトランスポートが来ましたので試聴に来ませんか」

30分とおかずにお見えになったYさんもすぐに音の変わり様を指摘された。一番うれしかったのが「JBLシステムが実にうまく鳴るようになりましたねえ。」とのご指摘。

さすがにYさん!

「そうなんですよ。これには積もる話がありまして・・・。」

話がくどくなるのでこの辺でお終い(笑)。


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JBL375ドライバーの修理~♯1~

2014年03月25日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

新しいCDトランスポート「ラ・スカラ」(dCS)が来てから、まるで夢のような毎日。好きな趣味となると誰でもそうだろうが、オーディオほど面白いものはない。それにクラシック音楽鑑賞という深遠な芸術に触れることができるのだからなおさらのこと。

おっと、本末転倒はいけない。あくまでも主役は音楽であり、オーディオは召使いに過ぎない。分かっちゃいるけどつい忘れてしまう(笑)。

自分ばかり楽しんでいても勿体ないので、近場のオーディオ仲間のMさん(大分市)に声をかけてみると「それは楽しみですねえ。ぜひ聴かせてください」と一つ返事。

Mさんは、一人だけ聴くのはもったいないとばかりいつもお仲間を同伴されるが、今回はOさんを同伴された。Mさんはタンノイ・オートグラフとクリプッシュ・ホーンの2系統のシステムを愛用され、Oさんは大手百貨店で長年オーディオ機器の販売に携われ、引退後は悠々自適のオーディオ三昧でJBLのパラゴンを愛用されている。

このブログでも紹介したことがある(2012年12月)ので、ご記憶の方もおられるかもしれない。

お二人ともたいへんなオーディオの強者(つわもの)で、少なくとも大雑把な自分よりはずっとシビアな方である。

はじめに我が家のエース「刻印付き2A3」真空管アンプと「AXIOM80」で聴いていただくと「これまでとはまるっきり音が変わりましたね。一音出ただけですぐに分かりました。最新鋭のデジタル機器と70年以上も前の古典管との組み合わせが時代を越えて絶妙の音を醸し出しますね。」と、Oさん。

「実を言いますと、このCDトランスポートを購入しようかどうしようかと迷っているんですよ。お値段が〇〇円だそうです。」

「この音でその金額ならメチャ安いですよ!良心的なお店で良かったですね~。普通なら値段を明かさないままに送りつけて、相手の反応を見ながら価格を吊り上げるお店が多いんですよ。」さすがに、業者の手の内をよくご存知のOさん。

ひとしきり、「AXIOM80」で聴いていただいた後に、JBL3ウェイシステムへ移行して音出ししたところ、左チャンネルの375ドライバーから何だか歪んだような音が時折り出てくる。

極めて耳のいいお二人さんのこと、すぐに気付かれて「375がおかしいですね。もうこれ以上鳴らさない方がいいでしょう。」

「どうもこのところ調子が悪くて~。今日は一段と悪くなりました。早晩、修理に出す予定です。ダイアフラムの凹部とマグネットの凸部がピッタリ合ってないときにこういう歪んだ音が出てきますね。」

「そのくらいなら自分で出来ますよ。分解して音を出しながら調整してみてはいかがでしょう。その上でどうしても手に負えないときに修理店に持ち込めばいいでしょう。」と、Oさん。ご自身も「パラゴン」(中域が375ドライバー)を使ってあるので修理経験者からの貴重なアドバイス。

「そうですね。一か八かでやってみる価値はありそうですね。作業中に強力なマグネットに引きつけられて、ドライバー(ねじ回し)がダイアフラムを突き破ったなんて話をよく聞きますから用心しながら作業をやってみましょう。」

こりゃあ、新しいCDトランスポート「ラ・スカラ」の存在が霞んでしまうほどの大修理になりそうだ(笑)。

「善は急げ」とばかり、翌日の午前中にさっそく作業に取り掛かった。ウッド・ホーンを外してセットしてある位置から降ろすのに一苦労。何しろメチャ重たい。ようやく無事作業台に据えつけてから、おもむろに分解作業にかかって4本の長いネジを外してパカ~ンと裏蓋が開いた。

ダイヤモンドエッジ付きのダイヤフラム(口径10.4センチ)が姿を現した。

            

性根を据えて慎重に作業に取り掛かった。これまでのように「故障転じてチャンス」になってくれるといいのだが(笑)。

以下、続く。

 


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オーディオ機器の故障はチャンスの糸口

2014年03月22日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

頃はもう初春、3月中旬ともなると独特の宵闇が漂う時期になるがその中をわざわざ駆けつけて来ていただいたAさんに、「dCS」のCDトランスポート(以下「ラ・スカラ」)を紹介してからさっそく「小椋 佳」の歌を聴いていただいた。

「これはプロのエンジニアの録音現場のような音ですね。一つ一つの音の粒立ちが見事です。レコードの音に非常に近い印象を受けました。これまでのワディア270とは相当レベルが違うようです。〇〇さん、もうこのCDトランスポートで決まりですよ。こんな音を聴くと私も血が騒ぎます!」

我が家の音を熟知され、オーディオに対する熱意と経験が自分よりも一枚も二枚も上のAさんからのコメントはいつも一目もニ目も置いている


次から次にCDを引っ張り出して一緒に試聴しながら、心はもう“うわの空”でこの「ラ・スカラ」をいったいどう始末をつけようかとつい物思い(?)に耽ってしまった。

つまり、購入しようか、どうしようか(笑)。

「禁断の恋」ならぬ「禁断の音」に接するとオーディオマニアは盲目に近くなるのが世の慣わし。ま、しばらく時間があるのでここは冷却期間をおくことにしましょう。歳を取るにつれ情熱よりも分別の方が働くのが何だか悲しい!

それにしても、去る2月のブログで「たまには故障もいい」「またもや故障のおかげで」といったタイトルで、「機器が故障すると新しい発見に恵まれる」という趣旨のことを書いたが、まさにそのとおりで、今回もワディア270が故障したおかげでこういう新しい世界に巡り会うことが出来た。

「オーディオ機器の故障はチャンスの糸口」とは、けだし名言だとは思いませんか(笑)。

ちなみに、「Sオーディオ」のSさんによると、この「ラ・スカラ」の元の持ち主は、後継機種のdCS「Vivaldi」(480万円)を購入された由。ウ~ン、東京にはお金に糸目をつけないオーディオ・マニアがウヨウヨしているのだ!それに比べると、中古の「ラ・スカラ」なんて大したことないと急に気が大きくなってくる~。

さて、翌日からまるで子供が新しいおもちゃを弄り回すように(笑)、手持ちの真空管アンプ3台の相性テストを試してみた。スピーカーはオリジナル・エンクロージャー入りの「AXIOM80」。

出力管ごとに「WE300Bアンプ」、「PX25(ナス管)・1号機」、「刻印付き2A3・1号機」のアンプ転がし。いずれも直熱三極管シングル。







テストの途中で面白いことに気がついた。

CDから直接コピーしたCD-Rと、いったん「iTunes」に取り込んで作成したCDーRとでは後者の方がチャラチャラした軽薄な音で鳴る!デジタルでいじり回した音につきもののやや上ずった実体感のない響きと言えばお分かりいただけようか。

つまり「ラ・スカラ」はCDソースの弱点までをも克明に抉り出すのだ。逆に言えば、「iTunes」経由のCD-Rと他のCDーRとの差が感じ取れないようであれば、そのCDシステムはどこかおかしいということになる。こういう意味で「ラ・スカラ」は両刃の剣だと言えよう。

また、「ワディア270」のときはプリアンプを経由しないでDAコンバーター(ボリューム付き)にストレートにパワーアンプをつなぐと、響きが物足りなかったのだが、今回のスカラだとその点が見事に解消されてむしろプリアンプを外した方が好ましいようだ。明らかに「ラ・スカラ」の情報量が増えたことによるものだろう。

結局、2日間にわたるアンプテストの結果は音色にクセがなく小出力の持ち味が存分に発揮された「刻印付き2A3」
がベストだった。

高音域に少しばかりクセのある「AXIOM80」とのマッチングがうまくいったのだろうが、とにかくお値段的に一番安い球がベストになるのだからオーディオは面白い。

つまるところブランドに対する先入観などを捨て去り、白紙の状態で組み合わせの相性を探していくのがオーディオの妙味ではなかろうかと思った次第。

さて、これでCDトランスポート騒動は一段落といきたいところだが、そうは簡単に問屋が卸さない(笑)。

つい先日、大分からOさんとMさん、そしてその二日後には市内のYさんが相次いでお見えになったが、実は「ラ・スカラ」どころではない緊急事態が勃発!

以下、続く。 


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三つ子の魂百までも

2014年03月20日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

9年半使ったCDトランスポート「ワディア270」(以下、「270」)を修理に出して、その間、代用品として使わせてもらうことになったCS(イギリス)の「Verdi La Scala(以下「ラ・スカラ」)。

          

無事、セッティングが済んで待望の音出し。さあ、定価231万円にふさわしい音が出るかな?音の差が分かりやすいのはボーカルなので小椋 佳のCD「彷徨」から「しおさいの詩」を鳴らしてみた。システムの方は「WE300Bアンプ+AXIOM80」の組み合わせ。

もちろん「ラ・スカラ」はCDトランスポートなのでCDからデジタル信号を取り出して送るだけの役割しか持っていない。そのデジタル信号をアナログ信号に変換するためにはDAコンバーター(「igital to nalog onverter」だからDAC→通称:ダック)が必要となる。それは現在使っているワディアの「27ixVer.3.0」で間に合わせることにした。この際だから相性の良し悪しはあえて問うまい。

本当は同じ「dCS」のDAコンバーターを使うと、SACDも聴けるし、CDだってもっと高音質になるのだがそれは後日の可能性に期待しよう~。


さて、音が出たとたんに、目の覚めるような衝撃を受けた。これまで「270」の音にそれほど不満は無かったのだが、音のメリハリ、輪郭、雰囲気、佇まい、ありとあらゆる音の形容が一変するほどで、さすがに驚愕のお値段は伊達ではなかった!

CDトランスポートだけでこれだけ音の差が出るなんて信じられない!

次から次にCDを引っ張り出して聴いてみたが、特に管楽器の音色が印象的だった。近くの公園をウォーキング中にときどき練習中のトランペットの音を聴かせてもらっているが、音の輝きといい、響きの強さといい、生の音に近い印象を受けた。

ただし、留意点ももちろんある。

システムの微かなアラでさえも白日の下に晒し出す傾向があるので使いようによっては両刃の剣になる印象を受けた。また、音がやや乾燥気味のきらいがあるようだ。270が湿度60%とすると、ラ・スカラは湿度40%くらい。この辺は好みが分かれるところだろう。9年以上もずっと270を聴いてきたので余計そう感じるのかもしれない。この辺りはいささか自分の尺度に自信が無い。

言わずもがなだが自分はけっして自信家ではない。何ごとにつけ「自分の考えだけがいつも絶対に正しい」とはユメユメ思わないような“生き方”を心がけてきた積もり。もちろん耳だって例外ではない(笑)。

こういうときは仲間に一度聴いてもらってご意見を拝聴するに限るとばかり、いつもの湯布院のAさんに連絡し、「ものすごいCDトランスポートが来ましたよ。一度試聴してみませんか。」と誘いをかけてみた。

「あいにく現在福岡に居ります。今日はちょっと行けそうにもありません」とのご返事で残念!

それにしても、今回の件では改めて「音の入り口」の重要性を痛感した。

当たり前のことだが、最初に拾い上げた極小の電気信号をそのままアンプで増幅していってスピーカーのところで音に変換するのがオーディオシステムだから、万一、はじめの段階で信号の不完全さや欠落があるとすれば、それはそのまま拡大されていって大きな瑕疵になったり、あるいは大切な情報を失ったままになってしまう。つまり初動ミスが最後まで挽回できず、取り返しがつかない結果をもたらす。

後に控えるアンプやスピーカーでどんなに華麗な色付けをしてみても徒労に終わってしまう可能性があるのだ!

そういう意味でシステムの中で最上流に位置するCDトランスポートこそ「(システム全体の)音の支配者」なのかもしれないと思った。まるで「三つ子の魂百までも」である。あな恐ろしや~(笑)。

CDプレイヤー如きでの音の差なんて無視できる範囲と思っている方が圧倒的に多いだろうし、自分もそのクチだったが、一度「dCS」の音を聴くとその認識が改まるのではあるまいか。ただし、その違いを表現できるスピーカーを使うことが条件。

なお、ここで「ワディア」社のために一言弁護しておくと、

「スカラ」はこれまで使ってきた「270」とは製造年が5年前後違う。後者の方が古い。デジタル技術は日進月歩なので、この音質の差はワディア社とdCS社の技術力をそのまま反映しているわけでもないと考えるべきだろう。しかも経年劣化も考慮しないといけない。もちろん値段の差もおよそ2倍ほどある。その辺を斟酌しないと天下の「ワディア・デジタル」の面目が無かろう。

修繕後の「270」との聴き比べが楽しみだ。


なお「スカラ」の場合、音声信号を読み取るためにCD盤面の凹凸部分に当てるレーザー光線も強力で人的被害を防ぐために、わざわざ天板に乗せるスポンジ状のカバーまで付いている。素人考えだがこのことひとつとってみても音声信号の読み取りが極めて正確で輪郭のはっきりした音が目の前に浮かび上がって来そうな予感がする。

もう時間を忘れるほど夢中になって、気になる愛聴盤を次から次に引っ張り出して聴いていたところ、夕方になってAさんから「丁度、自宅に帰り着いたところです。今から30分後にお伺いします。」

「どうぞ、どうぞ、大歓迎です。」

これは楽しみ~。我が家の音を熟知されているAさんがこの音を聴いていったいどういうご感想を述べられるんだろうか?

以下、続く。


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千載一遇のチャンス

2014年03月18日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

9年半使い込んだCDトランスポート「ワディア270」(以下「270」)のメンテナンスを購入先の「Sオーディオ」(東京)に問い合わせた
ところ次のような返信メールが届いた。

「ご無沙汰しております。
WADIA 270 の件、了解致しました。お手数ですが、弊社へお送り下さいませ。至急、現在の代理店(ノア)で、メンテナンス致します。 
 

トランスポートの貸出しにつきましては、現在、トランスポートの在庫が少なく、下記の商品からお選び下さい。 

「AYRE   D1X」  
「DCS  VERDI LASCALA」  「GOLDMUND  MIMESIS SR CD/DVD 」
 
以上、宜しくお願い申し上げます。」

いやあ、Sさんがご在職で良かった!人材が長続きするショップは信頼が置けるし、とても有難い。

ワディアの輸入代理店は、購入当時の9年前は「アクシス」だったが、いつのまにか「ノア」に変わったようだ。さっそくネットでググってみると、自分が現在使っているDAコンバーター「ワディア27ixVer.3.0」(以下「27」)はすでに修理対象外になっている。非常に困る!

さて、修理の目途がついたところでその間の代用品としてとりあえず提示があった上記の3つのCDトランスポートから選択しなければならない。それぞれネットでググって調査してみたところ、「dCS」(イギリス)が飛び抜けてよさそうだ。なにぶんにも定価が231万円の代物でダントツの存在。

オーディオを長年やってると「値段が高いのできっと性能もいいに違いない」は幻想に過ぎないと次第に分かってくるが、こればかりは実際に高い授業料を払って身をもって体験しないと骨身に沁み込まない。はたして「dCS」の製品はどうかな?

とにかく貧乏人には永久に手が出そうにない機器なので、この機会を逃がしてなるものかと、さっそくメールを送った。「是非dCSをお願いします」。

                        

これはネットの画像だが、モーター部と信号処理部が2層構造になっていて見るからに高級感が漂う。まさにハイエンドの機器を無料でリスクなしに試聴できる「千載一遇のチャンス」(笑)。

ちなみに「dCS社」とは、1987年にケンブリッジ大学を中心として、軍需産業コンピューター解析を行っていた数学者たちの技術者集団がこよなく愛する音楽再生のためにその技術を注ぎ込もうと設立した会社でデータ変換システムを生業としている。

なお「270」のようにDAコンバーターとのクロック・リンクは不可能(ワディアはSTケーブル接続、DCSはBNCケーブル接続)なので、その辺の影響が音質にどう反映するのだろうか?「クロック・リンクなんて、あっても無くても同じこと。」という辛口の意見もちらほら聞くがはたして?

とにかく、強力な代替機器の出現に気を良くして「ワディア270」の梱包作業にも心が弾む(笑)。この日のために倉庫に元箱を保管していたので助かったが、重さ24Kgはちょっと老体にはこたえた。

ヤマトさんに取りに来てもらって無事発送が済み一件落着。そして入れ替わるように待望の「dCS」がようやく到着した。こんな高価な機器を気軽に試聴させてもらい、信用してくれたSさんに感謝!

大きな頑丈極まりない専用のトランクに梱包されて来たのには驚いた。

           

中身を慎重に取り出してみると、いくら中古とはいえ、まっさらの新品同様だった。塵や疵一つ無く、どうも使った形跡が見受けられない。ま、いいことには違いないが。

急いては事を仕損じるのでじっくり30分ほど付属の取説を熟読玩味してからセッティング開始。意外と簡単だった。重量が14kgなので楽だし、電源コードを挿し込み、DAコンバーターに繋いでいるバランスコードを本体に挿し込んで完了。リモコンの操作方法もバッチリ。

さあ、待望の音出し。はたしてお値段にふさわしい音が出るんだろうか?

半信半疑だったが、出てきた音を聴いてこれまでのオーディオ観が根底から覆るほどの衝撃を受けた!

以下、続く。


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「CDトランスポート」の故障

2014年03月16日 | オーディオ談義

このところCDトランスポート「ワディア270」(以下「270」)の調子がどうもおかしい。

       

再生する音質に異常はないのだが、CDを出し入れするトレイがときどき不順な動きをする。リモコンボタンを押しても、開けたと思えば急に閉まったりしてCDの取り出しが出来ない。

ヤレヤレ、とうとうメンテナンスの時期が来たか!


「好事魔多し」

保管していた「保証書」を見ると、買い上げ日が2005年11月11日になっている。もう9年半が経過した計算になるが、その間一度も故障しなかったのが不思議なのかもしれない。

月に直すと114か月、日数に直すと3500日ほどで日当300円あたりの「お楽しみ賃」となる。ま、そんなものだろう(笑)。

購入先は新品・中古品を含めて手広く営業している東京のショップ「Sオーディオ」さん。このオーディオ不況の中できちんと生き延びているのだから凄い。きっかけはよく覚えてないが、ここ20年ほどは大物の機器を購入するときにいつもこのお店を利用することにしている。もちろん敵状視察(?)とともに信用を得ていただくよう、現役時代に東京出張の折には必ず暇を見つけて立ち寄っていた。

アフターケアも丁寧で実に安心できるショップだが、それにしても顔馴染みのSさんははたして“ご健在”かな。そもそも修理を引き受けてもらえるのだろうか?

万一修理ができないとなると、「270」はとっくの昔に製造中止なので個人営業でやってる修理先を見つけるか、それとも新たに別の機種を購入するか、ちょっと迷うところだ。

少しでも音質が良くなる可能性があれば機器の入れ替えには躊躇しないが、大切なものが羽根をつけて飛んでいくのが少々残念(笑)。

ここでふと思い出したが、一方ではお金をたんまり持っていても機器の入れ替えを頑強に拒否する人たちもいる。
 

たとえばベストセラー作家の村上春樹さんは作家になる前はジャズ喫茶を経営するほどのジャズ好きで、中古レコード屋を巡るのが今でも大好きだし、当然のごとくオーディオにも無関心ではいられないはずだが、この点に関してステレオサウンド誌のインタビュー記事で次のような趣旨の回答をされていた。 

「ずっと長い間、同じシステムの音(JBL)で聴いてきましたのでその音が我が家の試聴時のメルクマール(指標)になっています。そりゃあ、いろんな機会に我が家よりももっと”いい音”を聴いたりすることがありますが、それで(我が家の)システムを替えようとまでは思いません。」

自分とはまるで正反対のタイプだが、これはこれで一つの立派な見識である。執筆活動が忙しくてとてもオーディオにまで(時間的に)手が回らないというのもあるのだろうが(笑
)。つまるところオーディオとは縁のない人なんでしょう。

ま、いろいろ言ってみても「270」を代えなくて済むのに越したことはないので、祈るような気持ちでSさんあて次のようなメールを送った。

「ご無沙汰してます。別府の〇〇です。その後お変わりありませんか?さて、10年ほど前に貴店から購入したワディアのCDトランスポート270ですが、トレイの開け閉めが不順になりました。時期も相当経つことから、一度全面的にメインテナンスをお願いしたいのですがよろしいでしょうか?また、その期間、貸していただけるCDトランスポートがありますでしょうか?以上よろしくお願いします。メールお待ちします。」

不安な気持ちで待つ中、2日後にようやく待望のメールが届いた。「270」の命運を握っているその中身やいかに?

以下、次回へ続く。
 


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色気があって振るい付きたくなるような音!

2014年03月14日 | オーディオ談義

昨日(13日)、別の用事があってオーディオ仲間のKさん(福岡)に連絡をとったところ、開口一番「オーディオの続きの記事を楽しみにしていたんですが図書館と彫刻の話でしたね!」

「いやあ、急きょ予定を変更して申し訳ありません~。」というわけで、1日予定を早めて本日そのオーディオの記事をupします(笑)。

念のため、初めに前々回の最後の4行をリプレイしておくと、

オーディオはどうしてこんなに楽しいのだろう(笑)。胸をワクワク・ドキドキさせながら聴いてみると、これが実に素晴らしい。オペラ「魔笛」(モーツァルト)を聴いたときに「これはいったい何という音楽なんだ!」と感激したが、このときとまったく同じでこの音をいったいどう形容すればいいのだろうか?


いきなり固い話から入って恐縮だが、もしモーツァルト・ファンと称するのであればこれを読んでいないとモグリだと評されるほどの名著がある。

それは評論家・小林秀雄氏の「モーツァルト」(1946年初出)だが、その中の一節に「美の本質は感動に満ちた沈黙を創り出すことにある。(美とは)そもそも言葉で表現できるものではない。」といった趣旨のことが書かれている。

「いい音楽」にしろ、「いい音」にしろ行きつくところは「美」だが、道理で、実際にそういうものに出くわしたときに適切に形容する言葉がなかなか出てこないはずである。もともと言葉で表現することなんか無理なんだから。

こういう中、私たちオーディオ仲間の間では「いい音」に接したときに苦し紛れに発する共通の言葉がある。

「色気があって振るい付きたくなるような音ですね!」 言うに困るとはいえ何ともまあ、俗な表現(笑)。

実は今回、「刻印付き2A3真空管」で鳴らした「AXIOM80」の音がまさにそれだった。


ちなみに1950年代に製造されたSPユニット「AXIOM80」(イギリス)は、「45真空管アンプ」でテストしながら開発されたことはつとに有名だが、その「45」の出力を高めた発展系の真空管が「2A3」だから相性がいいのは当たり前だが、1940年代の古典管がこれほどうまく「AXIOM80」を鳴らすとはさすがに思いもよらなかった。

「AXIOM80」をうまく鳴らすコツは「駆動するアンプがカギを握っている」ので、これまで散々テストしてきた結果、真空管アンプ「WE300B」と「PX25」に落ち着いていたのだが、この「刻印付き」にはほんとうに参った。

もちろん回路や電源トランス、出力トランスなどのマッチングもうまくいったのだろう。昨年、改造してもらった“手練れ”のMさん(奈良)に改めて感謝である。

しかし、あまりに“いい音”に直面するとうれしい反面、「この音を絶対に失いたくない」という不安にも駆られるものである。心あるマニアなら極めて保守的で切実なこの心理をきっと分かっていただけると思う。

「何といっても70年以上も前の球だからもし突然切れたらどうしよう。ヨーロッパ系の球は寿命が短いという噂があるので不安だ。この球でないと絶対に再生できない世界があるんだから急いでスペアを獲得しておかなければ」とばかりに、すぐに東京の〇〇堂さんに「刻印付き」をさらに1ペア追加注文した。

「もうペアが取れる球がありません。ほかの球ならあるのですが」とのことだったが、「少しくらい特性の差があっても構いませんよ。ぜひ同じ銘柄をお願いします」と、無理を言った


これで一気に3ペア(6本)確保。九州の片田舎からの相次ぐ注文に〇〇堂さんもきっと目を白黒されているに違いない。

おっと、つい夢中になって話が先に飛んでしまった。わざわざ福岡からお見えになったKさんの話に戻ろう(笑)。

今回試聴用にKさんが持参された名花「シュワルツコップ」(ソプラノ)の「オペレッタ・アリア」(CD)は実に素晴らしかった。

             

レコード時代からの長年の愛聴盤だそうで、たしかにシュワルツコップはこんなに上手かったのかと思わせるものがある!

これに目覚めて、同じシュワルツコップのモーツァルトの「歌曲とアリア集」(2枚組)を引っ張り出してこのところ連日聴いているが、あまり録音が良くないものの、ピアノがギーゼキングときているから雰囲気は抜群でこれ以上の名コンビはおるまい。

今回の試聴会は音の収穫ばかりではなく、名歌手の再発見もできたのは実にありがたかった。

2日後にKさんから次のような連絡があった

「譲っていただいたメイド・イン・HOLLANDの6922(4本)ですが、プリアンプとパワーアンプに挿し込んで聴いたところ、これまでで一番いい音が出ました。さすがにオランダ・フィリップスは音楽の聞かせどころを知ってますね!どうもありがとうございました。」

           

しまった、ライバルに塩を送ってしまったか! ま、いっか。「刻印付き」を教えてもらったことだし、これで“あいこ”だな~(笑)。


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図書館巡りと彫刻展

2014年03月13日 | 独り言

<前回に続くオーディオの記事は予定を変更して次回にupします。>

以前、このブログで紹介した「このミステリーがすごい!2014年版」の海外編で堂々とランキング1位に輝いたスチーブン・キングの「11/22/63」をネットで予約(図書館)しておいたところ、ようやく「準備ができました」というメールが届いた。

取り置き期限があるので、いそいそと取りに行ったのが11日(火)のこと。“物はついでに”といろいろ借りてきた。

       

この中で、一番興味を引かれたのが「日本ウイスキー世界一への道」で、すぐに読んでみた。このところ本県特産のカボスが旬を過ぎてしまったので、芋焼酎から乗り換えてもっぱら愛飲しているのはウイスキー。もちろん許容量はしれているのでちょっと嗜む程度。ホントかな(笑)。

ウィスキーの本場物となると周知のとおりスコッチに尽きるが、最近つとにいい評判を聞くのが国産ウイスキー。

本書ではウィスキーの何たるかをはじめ国産ウイスキーの黎明期から今日に至るまでの苦労話が満載されている。表紙の裏に次のような解説があった。

「日本のウイスキーは世界五大ウイスキーの一つに数えられ、近年世界のウイスキー賞で最高受賞が相次いでいる。西欧に起源を持つ蒸留酒にもかかわらず、90年に及ぶ試行錯誤の末に、日本の風土を生かした独自の高品質ウイスキーを産むに至ったのである。今やジャパニーズ・ウイスキーは世界中のウイスキーファンを虜にしている。

世界を驚かせた日本のウイスキーはどうやって造られたのか、サントリーの蒸留所工場長などを歴任した醸造の大家と、そのブレンド技術で世界のトップに立つカリスマブレンダーがウイスキーの製造法から楽しみ方まで、至高の味わいの秘密を惜しげもなく明かす。」

フ~ン。

実は10日ほど前からジャパニーズ・ウイスキーの評判を聞きつけてサントリーの角瓶「ザ・プレミアム」を買って飲んでいる。「オッ、値段の割になかなかいける!マッカランに引けをとらないぞ。」というのがこれまでの正直な感想だが、味オンチなのであまり当てにならない(笑)。それはともかく、まさに本書はグッド・タイミングの出現。

ウイスキーの楽しみ方もいろいろあるようだが、本書の240頁に紹介されていたのが「ホットウイスキー」。

「ウイスキーグラスの4分の1から3分の1ほど注ぎ、ウイスキーの2~3倍くらいのお湯を加え軽く混ぜる。そのままでもよいが、レモンなどの柑橘類、シナモンスティックやクローブ、パジルなどのハーブ類、ジャムやドライアップルなどを加えるとさらに豊かな味わいとなる。お湯は80℃くらいが最適。」

さっそく我が家に「橙(だいだい)」があったので試飲してみた。何ごとも程度問題で入れ過ぎるとウイスキー独特の風味が無くなるが、4~5滴だと十分効果が発揮されるようだ。これはもう、病み付きになりそう(笑)。

最後に、図書館の帰りに近くで開催されている「彫刻展」に寄ってきた。

                      

以前、朝のウォーキング仲間だった方からパンフレットをいただいていたもので、東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了され、現在東京で活躍されているご次男さんの郷里での初個展とのこと。彫刻といえばあの「朝倉文夫」さんは本県のご出身で「大分アジア彫刻展」はこの朝倉文夫さんを顕彰するために創設されている。

彫刻はまったくの門外漢なので事前に「鑑賞のポイント」についてネットでググってみた。

「彫刻作品を鑑賞する際の視点(ポイント)はどのようなものがあると思いますか?簡単な回答でも構いませんのでお待ちしております。」

この質問に対して、回答は次のとおり。

「箇条書きにて失礼。 動勢(具象彫刻)  存在感、空間の大きさ  いさぎよさ  コンセプト  素材感」

このうち「いさぎよさ」の意味がつかめなくて広辞苑を引いたところ「1 清々しい、汚れがない 2 潔白である 3 未練がない、悪びれない」とある。これでも依然として分かりづらい。いったい「作品の持つ清々しさ」と「作品に対する作者の思い切りの良さ」のどっちに解釈すればいいんだろう?ま、いっか~。

さて、実際に会場に行ってみて展示されている作品群を拝観させてもらうと、線の大小と濃淡による立体的なコントラスト、そして平衡感覚に大いに興味を引かれた。お許しを得て1枚パチリ。

            

表題は「derivation」(2011、ステンレス)とあった。帰宅してさっそく英和辞典のお世話になると「起源、派生、展開、誘導」などの意味があるようだ。観ていると不思議に心が落ち着くので我が家のオーディオルームに飾りたくなった(笑)。

音楽もいいが、たまには彫刻の表現領域の拡がりを体感するのもGOODですよ~!
 


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「刻印付き2A3」真空管をゲット

2014年03月11日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

我が家のJBL3ウェイ・システムの中核は何といっても「375」ドライバー(16Ω)に尽きる。口径10.4センチのダイアフラムと強力なマグネットの威力は並み居るホーンドライバーの中で抜きんでた存在感を示している。ただし、自分がその能力をフルに引き出しているかどうかとなるといささか心もとない(笑)。

担当する周波数帯域はおよそ500~7000ヘルツ付近で人間の耳が最も敏感な帯域だが、この375を駆動している真空管アンプ「2A3・2号機」にKさんから持参してもらったヨーロッパ系の1940年代製造の「刻印付き」2A3真空管を挿し込んで試聴したところ、ビックリ仰天。

まるで音楽が空中にフワリと漂い、リスナーを柔らかく包み込んでくるような感覚でとても筆舌に尽くしがたい音。もう375の魅力全開で、ずっと前からこういう音を出したかったんだ!


「まるでヨーロッパの上流社会の貴婦人を連想させるような音ですね!こんなに変わるのならぜひ、この球を手に入れたいです。どこで売ってますかね?」

「皆さん、2A3の実力を知らなさすぎます。出力は小さいし、現在では〇〇製の球が沢山出回っていて、こんなものかとバカにされていますが、1940年代の球を一度でも聴いていただくときっと驚かれますよ。私が知っている限りでは
東京の〇〇堂さんにあるはずです。」とKさん。

初めて聞く名前のお店だが、さっそく、(Kさんの目前で)ググってみると、すぐに発見。しかも、同じ「刻印付き」の球が在庫中!

「2A3にはフィラメント吊りとスプリング吊りの2種類があります。断然〇〇吊りがいいですからメールで一応確認された方がいいでしょう。」

この問い合わせに対して、〇〇堂さんから翌日になって返信メールが来て望みの〇〇吊りだったのですぐに2ペア(4本)を注文した。な~に、どうせ古典管は再生産が出来ないのだから値上がりするのは目に見えている。比較的安価な今のうちに買い占めておかないと(笑)。

お金の振り込みも無事済んで「刻印付き」が我が家に到着したのは5日(水)のことだった。何せ70年以上も前の球なのでいきなり高電圧をかけると、プッツンなので整流管を引き抜いたアンプに刻印付きを挿し込んでエージングすることおよそ4時間あまり。

さあ、テストとばかりこのうちの2本を挿し込んで聴いてみると無事稼働。期待通りKさんの刻印付きと同じ傾向の音で、もっとエージングを続ければそっくりになるに違いない。良かった!

こうなるとつい欲が出る。現在、控えに回っている真空管アンプ2A3・1号機にこの刻印付きの別の2本を挿し込んで「AXIOM80」を鳴らしたら、どんな音がするんだろう?

思い立ったが吉日で、さっそく現在繋いでいるPX25・1号機アンプを外して、SPコード、音声ケーブルを付け替えて結線完了。

         

オーディオはどうしてこんなに楽しいのだろう(笑)。

胸をワクワク・ドキドキさせながら聴いてみると、これが実に素晴らしい。オペラ「魔笛」(モーツァルト)を聴いたときに「これはいったい何という音楽なんだ!」と感激したが、このときとまったく同じでこの音をいったいどう形容すればいいのだろうか?

以下、次回へ続く。


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「刻印付き」の真空管

2014年03月09日 | オーディオ談義

同じSPユニット「AXIOM80」を愛好しているオーディオ仲間のKさん(福岡)との交流が始まってからこの3月で1年になる。

とても研究熱心な方で(自分も負けず劣らずかも?)、ほぼ1カ月に一回のペースで往来を続けており、はたしてどちらが「いい音」を出すか抜きつ抜かれつのデッドヒート状態で、いわば「碁敵」のような存在になっている(笑)。

もちろんよき相談相手でもあるが、そのKさん、今年の正月3日に我が家にお見えになってからその後ずっとご無沙汰中。

とはいえ、けっして音信不通でもなくこの
2か月間もオークションに出品されている真空管などの情報交換を適時行っているのだが、それにしてもそろそろ我が家にお見えになってもいい頃合いだがと、とうとう“しびれ”を切らしてこちらから誘いの水を向けてみた。

つい最近、プリアンプの真空管をメイド・イン・HOLLANDの「6922」(6DJ8の高信頼管)に代えたことだし、JBLの3ウェイシステムのネットワークもとりあえず一段落したことだし、随分音の方も変化している。ひとつ、ビックリさせてやろうという下心が無かったと言えばウソになる(笑)。

3月1日(土)の午前9時ごろに「お元気ですか?JBLシステムの装いも新たになりましたし、ぼちぼち我が家に試聴にお見えになりませんか」

すると「行っていいですか?たまたま今日は仕事が空いてます。」と、一つ返事のKさん。

「アレッ、(訪問を)遠慮されていたのかな?」。もし、そうなら何と水臭い(笑)。

あんなに気心が知れて親しくしている積もりなのに、お互いの垣根の高さが微妙に違うのだろうか。それとも、プライドが邪魔して「聴かせてもらうほどの価値はない音なのでわざわざ訪問するに及ばず」なのだろうか。

やっぱり”人の心は測り難し”。

冗談はさておき、今回もいつものように11時半ごろにお見えになって、昼食をはさんで17時半頃まで、例によってみっちり6時間ほどの試聴会となった。「ここに来るといつも時間を忘れます」と仰るKさんだが、新装なったJBL3ウェイ・システムを中心に相変わらず収穫は大きかった。

現在、JBL「375」(中音域)に使っている真空管アンプ「2A3」・2号機の出力管は定評あるRCAブランド(アメリカ)を使っているのだが、Kさんが今回、満を持して持参されたのはヨーロッパ系の1940年代製造の「刻印付き2A3」(以下「刻印付き」)だった。

       

「刻印」とは真空管のソケット部分にブランド名を彫り刻んであることを言う。1950年代以降の真空管はそんな手間暇をかけることなくすべてプリントアウトされたものだが、それ以前の真空管はほとんどが「刻印付き」だ。当時はそれだけ真空管が貴重品で一本、一本に職人さんたちの愛情が込められていることの証しだろう。

しかも、これがまたすべてと言っていいほど滅茶苦茶に音がいい!その代表事例は泣く子も黙るWE300Bの刻印付き(笑)。程度のいいものなら値段が軽く7桁をいくという代物だ。ちなみに我が家では「刻印付き」はまったく手元にない。

さて、持参していただいたこの「刻印付き」に差し換えたところ音が激変した!

以下、次回に続く。
 


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読書~「無罪を見抜く」~

2014年03月07日 | 読書コーナー

 先日、図書館に行って手当たり次第に目についた新刊本を借りてきたところ、その中に珍しく「当たり!」があったので紹介してみよう。

☆ 「無罪を見抜く」~裁判官・木谷 明の生き方~(2013.11.27、岩波書店)

                         

「裁判官・木谷 明」氏と言っても大半の方が「Who is he?」だろうが、囲碁界の名門で知られる「木谷一門」を率いた木谷 實氏の次男と言えば「ほう!」という方もいるかもしれない。長兄が東大医学部卒、ご本人は東大法学部卒という秀才兄弟である。「碁は別智」という言葉も聞くが、父親譲りの智能なのだろうか(笑)。

本書の表紙の裏に次のような解説文がある。

「30件に及ぶ無罪判決をすべて確定させたことで知られる元裁判官が自らの人生をふり返る。囲碁棋士の父親の下で育った少年期から、札幌地裁に遭遇した平賀書簡問題、白鳥事件の思い出、最高裁調査官として憲法判例にかかわった日々、裁判官に求められるものは何かまで、すべてを語り尽くした決定版。」

世の中にはいろんな職業が無数にある。「職業に貴賤なし」の戦後教育を受けて育ってきた人間だが、とはいうもののどういうレベルの人たちがどういう仕事をやっているかはおおかた想像がつく。

たとえば世間では政治家、大学教授、医師、高級官僚などの一応“権威ある”とされている職業にしたって、一皮めくってみると意外にもそれほど“粒ぞろい”でもなく、人間性も含めて玉石混交の状態にあるといえばちょっと言い過ぎかな(笑)。

しかし、「裁判官」という職業ばかりは犯罪の当事者にでもならない限り一般人にとっては縁遠い存在であり仕事の内情だってとても窺い知れないし、いわば孤高の存在だといえるのではあるまいか。

間違いなく言えることは、「人を裁く」という崇高な使命のもとで最難関の「司法試験」に合格した秀才たちが携わっている職業であり間違っても「過ち」を起こさない人たちの集まりだと、ずっと思ってきたわけだが本書によって見事にその幻想が打ち砕かれた。

ありていに言わせてもらうと「よくぞ、ここまで裁判所の内情を思う存分に語ってくれたものです。裁判官だって所詮は人の子、法曹の世界も意外と一般の社会的組織と似たようなもんですねえ!」これが本書を読んでの正直な感想である。

本書は著者が質問に答える形式で構成されている。印象に残った“めぼしい点”を列挙してみよう。

☆ 裁判官のタイプの色分けはどうなっているのですか(289頁:要旨)

これまで多くの裁判官と付き合ってきましたが、私は3分類しています。

一つは「迷信型」です。「捜査官はウソをつかない」「被告人はウソをつく」という考えに凝り固まっているタイプ。これが3割ぐらいいます。

二つ目はその対極で「熟慮断行型」です。「疑わしきは罰せず」の原則に忠実なタイプで大目に見積もって1割いるかいないかです。

三つ目は中間層の「優柔不断・右顧左眄(うこさべん)型」です。「判決」に対する周囲の評価ばかりを気にして決断できないタイプで最後は検事のいうとおりにしてしまう。これが6割くらいです。

☆ 無罪判決についての意義について(290頁)

「無実の人を処罰してはいけない」に尽きます。そのためにはグレーゾーンに当たる人たちを出来るだけ無罪に持っていく方向にしないといけません。また、裁判所は捜査官の増長を防止するために捜査を厳しく批判するべきだと思います。そうしないと捜査自体が良くなりません。

☆ グレーゾーンに該当する被告がたまたま審理に当たる裁判官次第で主張を聞きいれてもらったり、そうでなかったり、不公平だと思いますがその辺はどうお考えですか(291頁)

だからその点が問題なのです。困った問題ですが「熟慮断行型」の裁判官を増やすように努力するしかありません。私は、冤罪は本当に数限りなくある、と思います。私は弁護士として事件を扱うようになってますます痛感しますが「なぜ、こんな証拠で有罪になるのだ」と怒りたくなる判決が沢山あります。本当に驚いています。「後輩たちよ、君たちはこんな判決をしているのか」と一喝したくなります。刑務所の中には冤罪者が一杯いると思わないといけません。

☆ 死刑制度について先生のお考えを聞かせてください(179頁)

私は今、完全に「死刑廃止論」を言っています。最大の論拠は団藤重光先生(故人:刑法の権威)と同じで、間違ったときに取り返しがつかないということです。「誤審の可能性」はどんな事件にもあります。ほかにも、死刑と無期刑とを区別する絶対的な基準を見つけることは不可能です。被告人にとって、当たった裁判官次第で死刑になったりならなかったりする、それでいいのでしょうか。

また、刑罰の目的というのは、応報と、最終的にはその人を更生させて元の社会に戻す、それで一緒にやっていく、というためにあるのではないでしょうか。死刑の場合は後の方の目的を完全に捨ててしまっています。

本書にはほかにも、裁判官の人事異動の内情などについても記載されており、上役の心証次第であちこちの地方に飛ばされたりして、まるで官僚組織そっくりなのには驚いた。

最後に、本書の中で取り分け印象に残った言葉が「グレーゾーンにある被告人を出来るだけ白の方向で考える」

基本的に「疑わしきは罰せず」になるのだろうが、個人的な意見を言わせてもらうと、そもそもグレーゾーンに至ったこと自体が本人の不徳のいたす所であり、はたしてそんな甘い考えでいいのかという気もする。証拠がいくら薄弱でも、捜査官の長年によるカンで「こいつはクロだ!」という心証もあながち無視できないのではなかろうか。

したがって「本当は有罪の人間が証拠薄弱のおかげで無罪になる」ことだって十分あり得るわけで、被害者側の心情を考え合わせるとはたしてそれが許されることだろうか。

こんなことを書くと「お前はまったく分かってない!」と、一喝されそうでちょっと気が引けるが(笑)。

それにしても、これまで自分は「死刑制度」には賛成だった。「目には目を、歯には歯を」で、「人の命を奪ったものは自らの命で償ってもらわないと」と、ずっと思ってきたが肝心の裁判官ご本人が「誤審」の可能性を拭いきれないと自ら言っているので、ちょっと再考せざる得ない気がしてきた。

非常にお堅くて地味な本だが読みだすと実に面白い。「虚心坦懐」の一言に尽きる内容で、もっと沢山の人の目に触れて欲しい本である。
 


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「必要悪」の代表選手

2014年03月04日 | オーディオ談義

「必要悪」という言葉がある。「広辞苑」によると「悪ではあるが、社会の現状からいって、やむを得ず必要とされるような事柄」とある。けっして明るい前向きなイメージをもたらす言葉ではなく、どちらかと言えば「後ろめたい存在」であることが分かる。

実は「オーディオ」にも「必要悪」がいろいろありまして(笑)。

極端な話、生演奏と比べるとオーディオ機器はすべて必要悪みたいなものだが、それではまったく話にならないのでシンプル・イズ・ベストの観点からいくと、さしずめ「スピーカー・ネットワーク」(以下、「ネットワーク」)あたりはその必要悪の代表選手ではなかろうか。

「ネットワークって何?」と訊かれても一言で説明するのは難しいが、簡単に言うと周波数帯域(人間の可聴帯域は20~2万ヘルツ)を低音域、中音域、高音域などの所定の帯域に分割し、その音声信号を各SPユニットに送り届ける役目を持った道具とでもいおうか。

興味のある方はググってもらうことにして、とにかくこれを“付ける”と確実に音が悪くなるのはたしかで、それ以外にもそういう機能を果すチャンネル・デバイダーという代物もあるがこれも所詮は音を悪くする部品の塊りなので使わないに越したことはない。

フルレンジ型のスピーカーをひたすら愛する人たちがいるが、それを使う理由の一つとして「音を悪くするネットワークを使わないで済むから」という答えが必ず返ってくる。実は自分もその一人(笑)。

ちなみに、タンノイの同軸型ユニットだって2ウェイなので当然の如くネットワークが使ってある。手元のウェストミンスターの仕様は「クロスオーバー1000ヘルツ、12db/oct」となっており、以前、裏蓋をこじ開けてじっくり観察したことがあるが、見るからに音を悪くしそうな細い銅線を沢山巻いたコイルが使ってあった。もちろん、いい悪いは別の話でメーカー側の「音づくり」の一環なのでこればかりは部外者があれこれ口を挟む余地はない。

フルレンジ型スピーカーの再生帯域に物足りない人が、2ウェイ、3ウェイ型のSPシステムに移行していくわけだが、そのメリットは十分あるもののネットワークを使うマイナス部分をどれだけ意識しているのだろうかと、ときどき思うことがある。

オーディオは常にプラス部分とマイナス部分の差し引きで考えるクセをつけた方がいいように思えて仕方がない。なぜなら無駄遣いの歯止めになるから(笑)。

とはいえ、ネットワークはオーディオを楽しむうえで絶対に避けては通れない課題なので、いかに音質への悪影響を最小限に留めるか、使う部品の銘柄などを含めて多大のノウハウがあって実に奥が深い世界。

研究に研究を重ねた方たちも沢山おられるし、正直言ってとても自分ごときが偉そうに語る資格はない。

以上、前置きが随分長くなったが、ようやくここから前回のブログの続きに入ります~。

以下、ちょっと専門的な話になるが悪しからず。

オーディオ仲間のAさんのアドバイスもあって、丁度よい機会とばかり見直す気になった我が家のJBL3ウェイ・マルチ・システムのネットワークの現状は次のとおり。

低音域(~1000ヘルツ:12db/oct)

ユニットはJBL「D130」(38センチ口径8Ω)を使用 ハイカット用としてコイル2.6mh、コンデンサー20μF
使用アンプは真空管PX25・2号機シングル

中音域(1000~7000ヘルツ:6db/oct)

ユニットはJBL「375」(16Ω) ローカット用としてコンデンサー10μF、ハイカット用としてコイル0.18mhを使用
使用アンプは真空管2A3シングル・2号機

高音域(7000ヘルツ~:6db/oct)

ユニットはJBL「075」(8Ω) ローカット用としてコンデンサー2.2μFを使用
使用アンプは真空管71Aシングル

このネットワークでは375の能力を十分発揮できそうにないことは、既にお察しの方もあると思う。それにはいろいろ理由があるが長くなるので省略する。今回も「ああでもない、こうでもない」といろいろ定数を変えながら4~5日間実験を繰り返した挙句、つまるところ落ち着いたのが次の結果。

低音域(~500ヘルツ:12db/oct)、中音域(500~7000ヘルツ:6db/oct)、高音域は従前どおり

375の500ヘルツ付近の再生能力に期待したわけだが、ひとまず、この定数に見合った容量のコイルとコンデンサーが必要になる。こういう時に役に立つのが「クロスオーバーネットワーク早見表」である。自分にとってはまるでバイブルのような存在で片時も肌身離さずに使って重宝している。

                       

結局、低音域用のコイルは4.7mh、コンデンサーは37μF、中音域用のコンデンサーは20μFが必要と分かった。ピッタリの数値のものがないのは当たり前で、およそ近似値のもので済ませても大勢に影響はないことが経験上分かっている。

コイルを3個合わせて似たような数値にしてからSPコードの+線に直列にして結線し、次に20μFのコンデンサーを2個並列にして、SPコードの+線、-線にそれぞれ結線して低音域は無事終了。「半田ごて」が大活躍。

中音域は6db/octだから簡単で22μFのコンデンサー1発をSPコードの+線に挿入して終わり~。

さあ、最初の音出し。いつものようにワクワク・ドキドキしながらスイッチ・オンして聴いてみると、なかなか“いい線”をいっている。375がまるで生き返ったみたい。ま、これで一段落かなあ~(笑)。

しばらくこの状態でいろんなCDを聴いてみることにした。
 


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ダメ押しの一言

2014年03月01日 | オーディオ談義

今日からいよいよ3月。2月は逃げる、3月は去るという言葉があるが、ようやく春が忍び足でやってくる。

さて、我が家の購読紙は地元紙と併せてとかく「左寄り」との噂がある朝日新聞(朝刊のみ)。

自分はどちらかと言えば「右寄り」を自認しているので、思想的な見地からすると他の新聞に乗り換えてもいいのだが、つい面倒くさくてそのままになっている。政治以外のニュースは別に偏向しているわけでもないし、ま、いっか~。

その朝日の一面の下段に掲載されている「天声人語」(2月27日朝刊)に興味深い記事(抜粋)があった。つい最近なのでご存知の方もきっといるに違いないが紹介させてもらおう。

「人間が性悪だというのは正確な表現とはいえないと、政治学者の丸山真男はいっていた。人間とは実は“取扱注意”の品物だという。<善い方にも悪い方にも転び、状況によって天使になったり悪魔になったりするからである>」

この世には、やれ騙したの、やれ騙されたの与太話が後を絶たないが、(人間を)「取扱に注意を要する品物」だと「醒めた目」で見つめるだけで犯罪が大幅に減りそうな予感がする(笑)。

閑話休題。

ここから前回の続きになります。

さて、その変幻自在の人間についてだが残念なことに人生経験を積み重ねるにつれて胸がワクワク・ドキドキする機会が段々と減っていくように思えて仕方がない。マンネリズムの弊害をここで述べたいわけだが、そういう中で日常的に熱中できる趣味を持っていると、いろんな変化を通じてその
ワクワク・ドキドキ感絶えず味わえるのでとてもありがたい。

「砂を噛むような人生」になるかどうかの境目は趣味にあり!

オーディオの愉しみの一つとしてシステム中のいずれかの機器を入れ替えたり、真空管やちょっとした定数を変えたりしたときの最初の音出し時の高揚感はたとえようもない。この辺はマニアならご存知のとおりだが、友人、知人たちとの交流も新たな視点を切り開く端緒になることが多いので昔から大歓迎である。

結論から言うと、今回の(22日)Aさんのご来訪もその後のシステムの「変化」に繋がるアドバイスをいただいたのでたいへん有難かった。

はじめに、いつものように両方の「AXIOM80」を聴き比べていただいたが、前回のブログで述べたように自作エンクロージャー入りをベストの位置に設置したにもかかわらず「オリジナル・エンクロージャー入りの方が明らかにバランスが取れていて表現力に緻密さがあります。」
とのご意見。

            


「やっぱり、オリジナル入りに一日の長がありますか。」所詮は自己流工作の悲しさですね~。

だがしかし、である。

「オリジナル入り」だってARUに目の詰まった金網を独自に一枚被せたおかげでようやく音の重心が見事に下がって今の音があり、それはAさんも先刻ご承知のはずで、以前「たった1枚の金網でこんなに変わるんですか!」と驚いておられたほど。

「コストと妥協しがちなメーカーの仕様をそのまま鵜呑みにすることはしない」という長年のポリシーだけはいつまでも失わない積もり。まあ、「〇〇〇、蛇に怖じず」という言葉もあるのだが(笑)。

また、例によって出力管WE300Bオールドと1988年製のWE300Bを比較試聴した結果、往年の名指揮者トスカニーニの演奏をたとえに持ち出されたコメントは非常に興味深かった。

「トスカニーニの指揮はオーケストラの各パートに順次スポットライトを浴びせて謳わせていくやり方が実に巧みです。WE300Bオールドには見事にその表現力を感じますが、1988年製はただ平面的に音が鳴っている感じですね。」

結局、両者の顕著な違いは音の「奥行き感の表現力」に起因するのだろうが、本格的に音楽鑑賞するうえではこの辺が大きな差になることは否定できない。な~に、1988年製はまだエージングの段階なので使い込んでいくうちに1950年代の音にきっと近づいてくれることだろう。

なお、プリアンプに新たに装着した「6922」(メイド・イン・HOLLAND製、6DJ8の高信頼管)の印象については特段のコメントなしで「違和感なし=GOOD」と解させてもらった。ただ、目ざとく「ほう、ピンが金足ですねえ!」。

これまで金足ピンのミニチュア管を沢山使ってきたが、まず大きく期待を裏切られたことがない。近代管のエレハモだって金足ピンには好印象を持っている。

さて、いよいよ最後になってJBL3ウェイシステムを聴いていただいたところ、「このシステムだけを聴くと違和感がないのですが、AXIOM80を聴いた後ですとやはり物足りなさを感じますね。残念ながらペルティーレ(テノール:往年の名歌手)が力の限り全身全霊で歌っている印象をいっさい受けません。」

ちなみに、テノールでは不世出の名歌手として「デル・モナコ」が有名だが、知る人ぞ知る「ペルティーレ」はその上を行くと思っている。

「やっぱり、そうですか・・・・」。以前から気になっていたがとうとうこれが「ダメ押しの一言」となった。

仕方がない、いよいよJBL3ウェイ・マルチ・システムの「LCネットワーク」を見直すとするか!

一晩眠って翌朝になっても、まったく考えが変わらなかったのでさっそく作業に取り掛かった。

以下、続く。
 


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