「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

おおらかにオーディオを楽しむ心境

2016年05月29日 | 独り言

我が家の購読紙は「読売新聞」。家内が熱烈な巨人ファンなので仕方がない(笑)。そしてお隣さんの購読紙は「日本経済新聞」(以下「日経」)。週一回の古紙の回収日にしっかり見届けている。

お隣さんはとても穏やかなご夫婦で、ときどき「オーディオの音がうるさいでしょう?」と誘い水を向けるのだが「いいえ、ちっとも聞えませんよ」と気を利かしてくれる。絶対聞えているはずなのに~。

まずはこれ以上ない理想的なお隣さんだが、先日その奥様に庭先で出会ったときにこう持ちかけた。「日経が読みたいと思っているのですが、お互いに1日遅れの読売と日経を交換しませんか」

「ハイ、いいですよ。主人がどうしても日経と言うものですから仕方なく取ってますが、私は読売の方が好きですから願ったりかなったりです。」

ということでめでたく無料の商談成立。これまで図書館に立ち寄ったついでにまとめ読みしていたのだが、これで毎日自宅で日経が読める、しめしめ。な~に、一日遅れだって大勢に影響はない。


全国「五大紙」の中では独特の位置づけを占めているのが「日経」だ。

こと経済記事の精確さと充実度にかけてはとうてい他紙の及ぶところではないが、保守系への姿勢の度合いからすると「産経 → 読売 → 日経 → 毎日 → 朝日」という順番かな。間違ってたらゴメン(笑)~。

もう一つ、日経を読みたかった理由が一番最後の紙面に掲載されている「私の履歴書」。

              

政財界、芸能界、スポーツ界などのいわば「功成り名を遂げた」一流どころが「生い立ちの記」を綴っているわけだが、巷間、この「私の履歴書」に登場するのが夢だという実業家も多々あると聞いている。

当然、その分野で登りつめた方々ばかりだから人格識見ともに優れているのは当たり前(?)として、成功に裏打ちされた努力談には何か得るところがあると思うのだが、当然の如くそれぞれ人生の指針として「座右の銘」を持たれているのが興味深い。

言わずもがなだが「座右の銘」とは「常に身近に備えて戒めとする格言のこと」~広辞苑~。


こちとらは一介の市井の徒だし、これまで行き当たりばったりで生きてきたので高尚な「座右の銘」なんぞとはちっとも縁がなく、いつも仰ぎ見るように参考にさせてもらっているが、いろいろあった中でずっと以前に見かけた「大胆かつ細心」とあったのが何となく記憶に残っている。

いかようにも解釈できそうな言葉だが、普通に解釈すると「企画の段階では大胆なグランドデザインを描く、そして実行の段階では細心の注意を持ってことにあたる」といったところだろう。

じぶんの場合では「木を見て森を見失わず」「森を見て木を見失わず」に近いイメージを持っている。

そう、何だかオーディオにも通用しそうな言葉なのである(笑)。


オーディオという、どちらかといえば繊細な感性が要求される世界ではつい「重箱の隅を突っつく」ような傾向になりがちである。

じぶんだって日頃から覚えがあって、やれコーン型ツィーターがどうしたの、真空管がどうしたのと細部に夢中になっているし、それはそれで楽しくて仕方がないが、一方では細部に拘るあまりドツボにハマってしまい大局観を見失いがちになるのも否定できない。

所詮、オーディオ機器も部品も単独での評価は危険で、他の機器や部品との相性など使い方次第でガラッと変身することが大いにある。

たまには見方を代えて「少々の欠点には目をつぶっておおらかにオーディオを楽しむ」という心境もまた良き哉~。

オット、また出来もしないことを偉そうに口走ってしまった(笑)。


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ワケありCDの到着

2016年05月27日 | 音楽談義

3日前に「HMV」からメールが届いた。要約すると「あなたが注文していたCDが入荷しましたので送付します。」

エーッ、何かCDを注文したっけ?

CDのタイトルをそれぞれ見てみると、やっと思い出した。ずっと2年以上も前に注文していたもので、ようやく昨日(26日)になって到着!HMVさんの粘りには少々驚いた。

喩えて言えば注文していた料理がすっかり忘れたころになって冷え切った状態で提供された感じ(笑)。

          

ものごとにはタイミングというものがあって、今となっては“ほとぼり”がすっかり醒めてしまい積極的に聴く意欲もわかないが、まあその誠実さには感謝すべきだろう。

遅延の原因は推測だが「風よ吹け、南から」の稀少盤(外盤)の入荷が遅れたため、他の3枚のCDが足止めをくらったからだろう。

それにしても、はたしてどういう経緯で注文したのかそれぞれのCDの記憶の糸をたどってみよう。

☆ バッハの「マタイ受難曲」(3枚組:クレンペラー指揮)

クラシック歴が40年以上にもなるのにいまだにバッハのマタイに拘っている自分が悲しくなる(笑)。宗教曲の中ではベスト1の位置づけにある有名な曲目なので、カール・リヒター指揮の「マタイ」を購入して聴いてみたが、これまで何回もチャレンジしたもののとうとう馴染めず挫折の連続。

どうしても真面目過ぎるというのか、線香臭さが鼻についてしまう演奏なのだ。己の鑑賞力不足は棚に上げて、これはてっきり「演奏がおかしい」と指揮者の責任にして、クレンペラーの指揮なら波長が合うかもしれないと注文したのが真相に違いない。

生きていくうえでも、たとえ己に非があろうと、何でもかんでも他人の責任にするのは楽だからねえ(笑)。

クレンペラーは「勿体ぶり屋のクレンペラー」と揶揄されるだけあって、どちらかといえば大曲向きの指揮者である。名前が「エンペラー」(皇帝)とダブるのでトクをしているのかもしれない。

「魔笛」(モーツァルト)、「ミサ・ソレムスニス」(ベートーヴェン)、「大地の歌」(マーラー)などがとても印象が良かったので「マタイ」ももしかしてというわけで、夢よもう一度だったろう。

この演奏で「マタイ」に再挑戦だが、もし馴染めなければキレイサッパリ諦めることにしよう(笑)。

☆ パスカル・ロジェの「前奏曲全集」(ドビュッシー)

実を言うと、どうしてこのCDを注文したのかいまだに思い出せない。

ピアノ曲ではモーツァルトのピアノソナタ群は別格としてドビュッシーの作品が大好きでベロフ、アラウ、ミケランジェリ、ギーゼキングと著名なピアニストたちが手元にあるので、結局はなぜ「パスカル・ロジェ」に特定したかという話に落ち着く。

1951年生まれだから当年とって65歳、現代フランス最高のピアニストと称される(CDの帯にそう書いてある!)そうな。おそらくフランス人の作品だからフランス人の演奏で聴いてみたいというのが購入動機だろう。

これからじっくり聴かせてもらうとして、好みに合うといいのだが。

☆ コリン・デービス指揮の「幻想交響曲」(ベルリオーズ)

このCDもまたなぜ注文したのか定かには思い出せない。手元のアバド指揮の「幻想」はなかなかの名演だと思うので満足していたはず。

ところで、ベルリオーズはこの「幻想」だけで後世に名を遺したことになる、一発屋と称されるゆえんである。「幻想」はなかなかの人気曲で、この曲を愛する方といえば元総理の福田康夫さんを思い出す。

福田さんは政界有数のクラシックファンで、ヤナーチェクの作品を愛好されているが、好きな曲目を一つに絞るとすれば「幻想」だと何かの雑誌で読んだことがある。

デービスは大好きな指揮者だったが惜しいことに2013年4月14日に逝去している。計算してみると、どうやら死去後に注文したようなのでいわば「追悼盤」ということなんだろう。

☆ キャスリーン・フェリア「風よ吹け、南から」

フェリアといえばブルーノ・ワルター指揮の「大地の歌」(マーラー)の詠唱を思い出す。

CDの帯にはこうある。

「41歳で早世してしまった英国の伝説的アルト歌手、フェリア。彼女の深く柔らかい声で歌われる英国民謡は子供を見つめる若い母親の眼差しのような優しさのこもったもの、ただ聴いているだけで、心の奥の軋んだ扉が解放されるような感動が広がってきます。

かのデッカのカリスマ・プロデューサー、ジョン・カルショーもその著で“単純さと正直さこそが本質であるこの歌に、キャスリーンは苦も無く生命を吹き込むことができた」と大絶賛しています。良質な英国LPからマーク・オバートが新たに復刻したバランスの良い音質もうれしい限り。」

ハイハイ、素直に真に受けてこれから聴いてみましょう(笑)。


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「ヴィブラフォン」騒動記

2016年05月26日 | オーディオ談義

つい先日のブログ(2016.5.17)でタンノイ・オートグラフ(国産箱)試聴に関する記事を掲載しておいた。

持ち主のMさん(大分市)の「音ではなくて音楽を優先した鳴らし方」に感銘を受け、もし(Mさんが)
我が家にお見えになった時は「ユメユメ鬼面(きめん)人を驚かすようなコケオドシの音は出さないようにしよう」と、固~く心に誓ったわけだが、そのMさんがとうとう我が家に試聴にお見えになった。

ご一緒されたのは「アルテックA5」を愛好されている真空管アンプビルダーのNさんで、オーディオの猛者(モサ)のお二人を交えての試聴会にはじめからチョッピリ緊張した(笑)。

「ひっそり、しめやかな、そして質感の高い音」を心がけるとともに他人の耳が加わると新たな発見に恵まれることが多いので秘かに胸を弾ませたわけだが、やっぱりというか、とてもタメになったので後日のために記録に残しておくことにした。

それにしても、この日にMさんが持参されたのは何とも再生の難しい意地の悪いCDだった。

           

「モダン・ジャズ・カルテット」といえば、ヴィブラフォン(ミルト・ジャクソン)が有名だそうだが、これをウェストミンスターのシステムで聴いたところ蒼くなってしまった。

            

低音域と中音域の繋がりが悪くて実におかしな音になったのである。ヴィブラフォンという楽器の再生はシステムのアラをたちどころに露わにしてしまうようだ。お客さんのMさん、Nさんも無言のうちに首を傾げるばかり。

そのときのシステム構成は次のとおり。

CDトランスポート(dCS) → DAコンバーター(dCS) → (プリアンプ抜きの直結) → パワーアンプ「71APP」 
 
そしてスピーカーは3ウェイのオールホーン式、ネットワークはYL音響製。

低音域(~1100ヘルツ) → フィリップスの口径30センチのダブルコーン型(箱はウェストミンスター)

中音域(1100~9000ヘルツ) → グッドマンのミダックス・ドライバー(オリジナルホーン付き)

高音域(9000ヘルツ~) → JBL「075」(ステンレス製の特注ホーン付き)

周波数の分担域に応じてそれなりの適切なユニットを配置している積もりだし、他のCDならそこそこの音なのにヴィブラフォンの再生となるとなぜこんなにおかしな音が出るんだろう?

「お前はそんなに駄耳なのか」という評価が恐ろしくて(笑)、「10分ほど時間を貸してください」と、即行動に移った。

急遽、3ウェイから無難な2ウェイへと方向転換してバタバタと結線のやりかえ。な~に、ドライバー工具1本あれば済む話。

YL音響製の3ウェイ式ネットワークに替えて、パイオニアの2ウェイ式ネットワークのリリーフ登板と相成った。クロスオーバーは4000ヘルツ。低音域はそのままに、4000ヘルツ以上をFane社(イギリス)のコーン型ツィーター(口径10センチ)へと変更。

「いやあ、随分繋がりが良くなりましたよ!」と、一同ご満足のご様子。これでホット一息。

3時間ほどの試聴を終えてお客さんたちが帰途につかれた後でようやく「ヴィブラフォン騒動」の原因らしきものに思い至った。

ウェストミンスターの箱を使って2ウェイや3ウェイにするときはオリジナルユニット以外はクロスオーヴァーを1000ヘルツの設定にしたのが大間違いのもとだったようだ!

あの独特のフロント・ショートホーンの形状がキーポイントでカタログの仕様ではクロス1000ヘルツとされているもののそれはあくまでも同軸2ウェイを使ったときの話で、別のユニットを使うときは少なくともクロス3000ヘルツ以上に設定しなければいけなかったみたい。

道理で、これまでJBL3ウェイシステム(クロス500ヘルツ)がうまく鳴ってくれなかった筈で「今ごろ気付くなんて」と自分のアタマを小突いてやった(笑)。

これで我が家のオーディオは1歩も2歩も前進(?)。

翌日はクロス4000ヘルツをそのままに、コーン型ツィーターからJBLの「075」に変更。能率が110dbとメチャ高いのでアッテネーターの位置は11時ごろと随分控え目に。

駆動するアンプの方も「71APP」からより高域に透明感がある「71Aシングル」(インターステージトランス入り)に代えたところこれが大正解。懸案事項だったシンバルの響きが冴えわたった。

これでクラシックもジャズも何でもござれだ(笑)。

          

メーテルリンクの童話にチルチル(兄)とミチル(妹)の「青い鳥」という戯曲がある。幼い頃に読んだことがある方も多いことだろう。

ひとくちに言えば、「探していた宝物は意外にも身近に手の届くところにあった」というオチだが、これまでツィーターには散々試行錯誤し迷いぬいてきたが、やっぱり昔から使ってきたこの「075」が一番だったようだ(笑)。


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「聴かぬが花」とは

2016年05月24日 | 独り言

東海地方にお住いの「I」さんから、このほど興味あるメールが届いたのでブログのネタにさせてもらった。「I」さん、無断でゴメン(笑)。 

「こんにちは。ホルンホーンの再登場! ウエストミンスターにフィリップスが収まり、上に、決してピカピカではないホルンホーンが乗っている写真を拝見すると、〇〇様の、<囚われない自由な精神性>を感じます。うらやましい限りです。 
 
先日、日曜の午後に老舗の音楽・オーディオショップが規模縮小の形で開店されましたので行ってきました。お客さんもたくさんいて、便乗して端っこで音を聴けそうだなと見込んで出かけたところ、お客さんはゼロ。 
 
仕方がないので、B&Wの802でピアノとオペラアリアを聴かせていただきました。視聴スペースは20畳ほどでしょうか。 
 
大変立体的な音場で驚きました。それに中高音の美しさが凄かったです。何も申し上げることはありません。〇〇とは大違いでした。しかし、お決まりのアキュフェーズのアンプなど、組み合わせ機器も高級で、軽く1000万円を超えます。 
 
こういう場合、まず、買えないこと、そして、世界で唯一の音を出す楽しみがないこと......で、あきらめることにしています。 
 
しかし、15㎝のミッドに350ヘルツから4000ヘルツを担当させるところは、参考になるので、帰宅後早速、チャンデバ、アンプを総見直しして、同じクロスオーバーにしてみました。拙宅はイソフォンの18㎝楕円です。 
 
レベル設定が難しいと思いました。とりあえずのバランスですが、可能性を感じます。私の経験では、このクロスオーバー位の帯域の質が再生音のクオリティの大きく関係すると思っています。 
 
何かに似ているなあと考えたのですが......ロクハンのフルレンジの音に似ています。ロクハンの上下をうまく伸ばせれば、それはいいに決まっています。おもしろくなりそうです。 
 
それにしても、日曜の午後にお客がゼロで、店員さんの元気もない.......大丈夫かいな・・・と、いらぬ心配をしてしまいました。」

以下、このメールに対して所感を述べてみます。

☆ ホントにこのオーディオ店は先が思いやられますね~。

 「囚われない精神性」と褒めていただきましたが、オーディオの「見てくれ」にはまったくこだわりません。ただし女性の「見てくれ」は別ですが(笑)。とにかく見かけはどうあろうと好きな音さえ出てくれればそれでいいのです。名を捨てて実を取るタイプだと自認しています。

 ミッド(中音域)の周波数が350~4000ヘルツにはメーカー側の深慮遠謀が感じられて興味深いです。人間にとって一番デリケートに感じる帯域を1つのスピーカーで賄い、ほかの帯域は「付け足し」というポリシーは大いに参考になります。とりわけ低音域が500ヘルツではなくて350ヘルツでハイカットというところがミソだと思います。

 一番興味を惹かれた「B&W 802」について以下詳述します。

実を言うとこれまで聴いたことがないSPですが「さぞやいい音がすることだろうなあ」という印象を持っています。長年、オーディオをやっていると独特の勘が働いて耳元でそうささやいてくれます(笑)。

不要な共振を排した箱のツクリ、スピード感に劣る大口径ユニットを使わずその代わり口径20センチのコーン型ユニットを2本使用、主要な帯域に金属のダイヤフラムとホーンを使わないなどの基本設計にはクラシック、ジャズを問わず音楽と名のつくものはすべてうまく鳴らしてやるぞというメーカー側の矜持が感じられます。
                             
                     

ただ惜しいことに能率が低いですね。90dbですから(昔のSPは通常95db前後)出力を稼ぎやすいトランジスターアンプ(以下「TRアンプ」)の方が圧倒的に駆動しやすいことでしょう。

もし、じぶんがTRアンプを使っていれば「B&W 802」を第一候補に挙げるのにやぶさかではありませんが、もうこれだけ真空管アンプにどっぷり浸かると撤退は不可能に近いですね。

とは言いながら「B&W 802」にはチャンスがあればと、ちょっと食指をそそられます。正確には802D(ダイヤモンド)ですが。

実際に一度聴いてみたい気もしますが、こればかりは「聴かぬが花」なのかもしれませんねえ。何せブレーキが利かないタチですから~(笑)。
 

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エクセレント!

2016年05月21日 | オーディオ談義

同じ「AXIOM80」仲間のSさん(福岡)。

「今週、東京出張の折にオリジナルの<シルヴァー イン タンノイ・オートグラフ>を試聴してきます」とのことだったので、一日千秋の思いで結果のメールを待っていたところ、19日(木)にようやく到着。しかも画像付き。

タイトルは「エクセレント!」

「東京でシルバーinオートグラフを聴いて来ました。感想を一言で言い表すならば「欲しい!」です。

あれが本来のオートグラフの音だったのですね。オートグラフに対する私の偏見は吹き飛びました。中高域はユニットがモニターシルバーなので我が家の音そのものなのですが、低域の豊かさが全く違います。

まあそれは物がオートグラフなので当たり前の事なのでしょうが、これまでに沢山聴いた事があるゴールドやレッドが入ったものと同じ響きを想像していると驚かされます。

オートグラフ特有の低音のボンツキは全然なくて、豊な低音がスピード感を伴って出てきます。ゴールドオートグラフの様な位相がズレたモヤっと感やレッドオートグラフの様な低音と高音のアンバランス感は皆無です。

オペラを聴くと当に眼前にリアルなステージが広がっていました。いや~欲しいです。毎日あれで音楽が聴けたなら本当に幸せですよ。今のところ興味を示している人達は、資金調達と奥様説得のハードルを前に、皆さん悩んでおられるみたいですね~、まあ我が家も同じですが(笑)。」

                      

へぇ~、そうですか・・・・。

およそ1千万近い高値との呼び声高い逸品だが、人間、毎日「1千万」と念じていると次第に感覚が麻痺してきて大した金額ではないと思えてくるから不思議。

たとえば随分スケールが小さくなるが、じぶんの経験では若かりし頃にマーク・レヴィンソンのプリアンプを購入したときがそうだった。たしか150万円ほどのお値段で薄給のサラリーマンにはおいそれと手が出る代物ではなかったが、寝ても覚めても欲しい、欲しいと思っていると次第に大した金額でもないと思えてきて、とうとう購入してしまった。

ちなみに、それは後年ワディアのDAコンバーターに化けてしまった(笑)。

さて、Sさんの話に戻って、代わりに計算してあげよう。

まだお若いのであと30年は楽しめるとして、仮に1千万円として1年あたりにすると33万円。1月あたりにすると27500円。1日当たりにすると916円。およそ、千円かあ・・・。

Sさんは一流会社の重役さんだし、福岡市内の超一等地に豪邸を構えられクルマからしてヴィンテージの英国車だから、それほどの負担には感じられないだろう。

おっと、それに下取り価格を忘れていた!

この世に生きとし生けるもの、すべて生命には限りがある。Sさんも例外ではない。そのときのオートグラフの残存価格ははたしてどのくらいなのか?

おそらく購入価格を下回ることはなさそうな気がする。何しろ同じモノが世界にせいぜい一桁あればというほどの稀少品である。しかも、オーディオ好きの「IT」長者やお金持ちのお医者さんはゴマンといるのでもし市場に売りに出されればすぐに買い手がつくことだろう。そのときにご遺族はきっと「お父さん、いい買い物をしてくれましたねえ!」と感謝されることだろう。

そもそも貴重な文化遺産を音楽芸術を通して毎日愛でる楽しみはお金には代えられようはずがない。

こうしてみるとむしろお得な買い物には違いない(笑)。

いずれにしても全国区のレベルの高い競争相手が沢山いる話なので、けっして思い通りの結果にはいかないかもしれないがSさん、がんばって~。陰ながら応援してます。


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黄金の組み合わせ

2016年05月19日 | オーディオ談義

先日、久しぶりに同じ「AXIOM80」仲間のKさん(福岡)が試聴にお見えになった。

いわば他流試合になるが、独りで聴くのとは違ってディスカッションをしながら聴くと出てくる音の長所も欠点も洗いざらい白日の下にさらされるような気がして、(音の)チェックにはもってこいだった。

この日はKさんがこのほど改造したばかりのアンプを持参されたのでさっそく試聴させてもらった。

          

出力管は「42」で1920年代のラジオ用の球だが、これがまったく振るい付きたくなるほどいい音だった。改造先はチューブ オーディオ ラボ」さん(新潟県)。

試聴盤は協議の結果、「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K・364」(モーツァルト)に選定。

600曲を越える多作家モーツァルトの作品の中でもオペラを除くと一番好きな曲目である。Kさんも大好きで毎日のように聴かれているそうだし、また、日本を代表する作曲家「武満 徹」氏がそのオーケストレーションに感嘆したという曰くつきの名曲である。

演奏者は「五嶋みどり」(ヴァイオリン)さんと「今井信子」(ヴィオラ)さんで日本が世界に誇れる名手たちである。

           

ちなみにグリュミオー盤も持っているので比較の意味で聴いてみたが、日本人コンビの方が上だと意見が一致。五嶋さんの演奏を聴くとグリュミオーは音楽の本質から外れて耽美的な演奏に走り過ぎているように思えてくるから不思議。

「日本人の感性もとうとうここまで来ましたか」と、Kさんともども感無量。

さて、この曲を「42」アンプで聴いていると、音のエッジがクッキリしているのでヴァイオリンとヴィオラの音色の違いを克明に出すことに気が付いた。これが傍熱管のメリットだろうか。

急遽本日のテーマを「ヴァイオリンとヴィオラの音の違いがアンプによってどう変わるか」に設定した。

次にアンプを「71Aシングル」に交換。インターステージトランスが入っていない方のアンプをおよそ1年ぶりに実験的に登板させてみた。

          

はじめに出力管と整流管をST管で聴いたところ、やたらに賑やかな音が出たものの音の奥行き感の乏しさはどうしても否めない。

さあ、ここから名誉挽回だとばかり「球転がし」実験の開始(笑)。

はじめに、Kさんがわざわざ持参されたナス管に交換。出力管、整流管ともども画像の球がそれだが、これで音が激変した。情報量が増し、艶やかな音色、そして適度な奥行き感が醸し出されてまったく言うことなし。使う球のブランド次第でこれだけ変わるんだからまさに「真空管オーディオ」の醍醐味である。

「この球は是非欲しいですね!とても珍しいブランドですがどこで手に入れましたか?」

「苦労しましたよ~。まだ有名ではないので、オークションに出てもそれほど高値にはなりませんが、滅多に出てこないのが玉にきずです。北国の真空管博士に懇願して譲っていただきました。」

出自が分かってしまうと「道理でいい音がすると思いましたよ!」と、納得。

チョッピリ口惜しくなったので、負けてはならじとばかりとっておきの球を引っ張り出して対抗(笑)。

出力管には「171」(トリタン仕様)、そして整流管にはとても珍しいメッシュプレートのSPARTONの「480」とOKの「X213」。「X213」はこれまた北国の真空管博士に無理をいって分けてもらった稀少球である。

その結果「171」と「X213」のコンビがベストでこれには二人とも唸った!「やっぱり71系は奥が深いですね。たかだか1ワット未満の出力でこれだけの音が出るんですからね~。」

ちなみに、このとき使用したスピーカーは「AXIOM300+ワーフェデールのコーン型ツィーター」で、2ウェイ方式によりクロスオーヴァーは4000ヘルツ。

           

このスピーカーにはKさんがホトホト感心されて「もしかしてAXIOM80よりも上かもしれませんね・・・。弦楽器に関していえばこれは黄金の組み合わせですよ。」

たしかに、持ち主が言うのも変だが2ウェイだけどまるでフルレンジが鳴っているみたいに音のつながりが良くて違和感がない。音像定位、音の艶、適度な奥行き感、そして周波数レンジの広さにはこれ以上望みようがないほどで、いつもシステムをクルクル替えている自分だが、このスピーカーのコンビだけは絶対に入れ替える気にはなれない。

次に、試聴もいよいよ佳境に入ってウェストミンスターへと移った。このスピーカーは若気の至りで20年以上も前に購入したものだが、聴き込むにつれ音の好みが合わないことに気付いたものの“ときすでに遅し”。

以来、図体の大きさに持て余し気味ながらすっかり実験用と化している。素材が素材だけに「大化け」を夢見てメッタ切りのように内部を改造してやったのが今日の成れの果て。オリジナルとは似ても似つかない様相を呈しているが着実に好みの音に近づいているのはご愛嬌。そもそもオークションに出品しても二束三文は確実なので、もう一緒に心中するしかない(笑)。

このたびYL音響の3ウェイ用ネットワークを導入してから「音遊び」の道具が増えて、中音域のホーンの取り換えで夢のような毎日だが、Kさんは果たしてどんな感想を洩らされるだろうか。

結論から言うと「3ウェイはやはり難しいですね~。」と、気乗り薄のご様子だった。

駆動したアンプは「WE300Bシングル」(モノ×2台)だったが、先ほど登場した好評の「71Aアンプ」にも再登板の機会を与えたかったが、この日はあいにくの雨ふりで、高速道に靄がかかって通行禁止になるとまずいので帰りを急がなければと惜しくも時間切れ~。

16時半ごろに辞去されたが、11時ごろにお見えになったので5時間以上に亘っての熱戦だった。

ところで、とうとうこの日もAXIOM80の出番なし。

「いい音が出る」と分かりきっているスピーカーに登板させるほどの時間の余裕は我が家にはないのだ(笑)。
 


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タンノイ・オートグラフを聴く

2016年05月17日 | オーディオ談義

つい先日、同じ「AXIOM80」仲間のSさん(福岡)からメールが入った。

「東京出張の折りに、シルバー in オートグラフを聴いて来ます。はてさて、あのモヤっとした音のオートグラフでもモニターシルバーが入れば締まった音がするのでしょうか?」


以前のブログで話題にしたように、オリジナルのタンノイ・オートグラフにシルヴァーのユニットが入ったものが、本国(イギリス)から入荷され、お値段の方も1000万円近いとの声も上がるなか、このヴィンテージ品を聴いてこられるというわけ。

こういうチャンスはおそらく一生に一度だろうが、実にうらやましい(笑)。

国産箱のオートグラフはこれまで何度も聴かせてもらったので音の傾向はだいたいアタマに入っているが、改めて確認の意味でもう一度聴きたくなった。

オートグラフを身近に愛好されている方といえば、Mさん(大分市)なのでいそいそと出掛けてみた。

         

Mさんは圧倒的なレコード派で3台のプレイヤーを駆使し、2系統のスピーカーでクラシックからジャズまで幅広く鑑賞されている。システムの流れを紹介すると、

クラシック系

レコードプレイヤー → MCトランス(カンノ) → イコライザーアンプ(カンノ) → プリアンプ「出力管ウェスタン310A:整流管付き」 → パワーアンプ「KT88(GEC)プッシュプル」(新藤ラボラトリ:モノ×2台) → スピーカー「タンノイ・オートグラフ」

ジャズ系

レコードプレイヤー → イコライザーアンプ(ピッカリング) → プリアンプ(同上) → パワーアンプ「マランツ8B」 → スピーカー「クリプッシュ」(アメリカ)

周知のとおり、音の入り口に当たるカートリッジ(プレイヤー)と音の出口に当たるスピーカーはアンプなどの増幅系とは違って変換系なので替えてやるだけで音が激変するが、Mさんはたいへんな「アームとカートリッジ」狂である。

ちなみに、真空管式プリアンプはつい最近導入されたばかりで、オーディオ仲間のNさん(大分市)の製作。これまではTR式のマッキントッシュの「C28」を使ってあったが、このプリアンプを聴いてすぐにオークションに放逐された由(笑)。

はじめに、オートグラフから試聴開始。

けっして周波数レンジの広さを感じさせないものの、音像定位が良くて品はいいし奥行き感があってホール感たっぷりの音でこれこそオートグラフの世界なんだろう。しかも、良くも悪くもあの「モヤっとした感じ」の印象を受けないのはひとえにMさんのセンスを物語るところだろう。

我が家との音の違いを脳裡にくっきりと刻み込んで参考にさせてもらったのは言うまでもない(笑)。

「音がいいとか悪いとかいう資格は自分にはありませんが、これまで聴かせてもらった中では一番好きな音が出てますね~。」

ひとしきり聴かせていただいてから、今度はジャズへ移行。


          

モノラル盤のレコードが圧倒的に多いなか、女声ボーカルを聴かせてもらったが、とてもクリヤで音の鮮度が素晴らしかった。

Mさんは低音をドスンとかボ~ンとか迫力でもって鳴らすのがとてもお嫌いのようで、ボリュームもかなり絞った状態のもとオートグラフにしてもクリプッシュにしても大型システムなのに程良いバランスを心がけておられるのがよくわかった。KT88のプッシュプルという大出力のアンプだから「ドスン・オーディオ」も可能なのにこういう鳴らし方だから、そのオーディオ哲学が偲ばれる。

こういう鳴らし方をする人は「AXIOM80」のサウンドにもきっと理解を示されるに違いない。

次回、Mさんが我が家に試聴にお見えになったときは、「“鬼面(きめん)人を驚かす”ようなコケオドシの勝負はもってのほか」と肝に銘じて帰途についたことだった(笑)。
 


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押してもダメなら引いてみな

2016年05月15日 | オーディオ談義

もう1か月にもなるのに、いまだに余震が続いているのだからほんとうに今回の地震はしつこい。気象庁の予報によるとあと1か月くらいは震度6弱の余震があるかもしれないというから、用心に越したことはないが、とにかくオーディオシステムにまったく被害が無かったのは不幸中の幸いだった。

さて、高校時代の同級生でオーディオ仲間のU君(福岡)が「今回の地震で気落ちしないように」とリン(イギリス)のSACDを4枚わざわざ送ってくれた。しかもまだ未開封のものだった。

        

持ち主よりも先に未開封のCDの包装を解くのはかなりの勇気を必要としたが、お言葉に甘えて聴かせていただいた。

クラシックからジャズまで、オムニバス形式でアトランダムに曲目が収録されているが、リンのことだから音像定位にものすごくこだわった録音だろうと察しはつくのだが、一聴すると何の変哲もない普通のCDの鳴り方である。

「リンほどのメーカーにしては大した録音でもないなあ」というのが正直な感想だったが、もしかしてオーディオシステムの方に問題があるのかもしれないと思い至った。何せ相手はリンなんだから~(笑)。

これまでプリアンプ、パワーアンプ、スピーカーは八方手を尽くしてそれぞれ吟味してきてやり尽くした感があるので、これ以上替える手段は持たない。

そこで「押してもダメなら、引いてみな」とばかりに、プリアンプを外してDAコンバーターから直結でパワーアンプに繋いでみた。

使っているDAコンバーターは「dCS」(エルガー プラス)にしろ、「ワディア」(27ixVer3.0)にしろボリュームコントロールが付いているのでプリアンプもアッテネーターも要らない。

いやあ、驚きました。スケール感などはやや落ちるものの、楽器の位置の前後感などが克明にくっきりと再生してくれるではないか。精緻極まる音楽に変身とでも言えばいいのだろうか。さすがはリン。

レコードをやらずCDオンリーの我が家に限ってのことだろうが「プリアンプを介在させた方がいいのか、どうか」は永遠のテーマである。まあ「功罪相半ばする」といったところだろう。

そして、プリアンプを使っていた時は幾分冴えなかったアンプが、DAコンバーターと直結にしてやるとがぜん息を吹き返してくるのだからたまらない。逆も真なりで、プリアンプ使用時はエース的存在だったアンプが途端に色褪せるのだからオーディオは本当に面白い。

いつ何どき出番があるのか分からないので、使っていないアンプでも簡単に放逐してはいけないと、肝に銘じたことだった。

最後に、今回の騒動でものの見事に息を吹き返してエース級の座を射止めたアンプは「71Aシングルアンプ」(インターステージトランス入り)だった。ドライバー管は「MHL4」、出力管は「171」(トリタン仕様)、整流管は「180」(ARCTURAS)。

         

71系の真空管よ、永遠なれ。

U君、貴重なCDを貸してもらったおかげで我が家の音の選択肢が広がりました。どうもありがとう! 


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「王とサーカス」を読んで

2016年05月14日 | 読書コーナー

2016年版「このミステリーがすごい!」で第1位に輝いた「王とサーカス」(米澤穂信 著)。

先日のブログ「女流ミステリー作家」(2016.1.22)でも触れておいたが、ミステリーファンとしてぜひ読みたいと思っていたところ、念力が通じたのか3日前に出掛けた図書館の新刊コーナーに置いてあった。超ラッキー!

         

さっそく読破したので感想を一言。まずあらすじから述べよう。

「舞台は、二〇〇一年のネパール。皇太子が国王を始めとする多数の王族を王宮で殺害したとされる衝撃的な事件が現実に起こった、あの年だ。フリーの記者である二十八歳の太刀洗万智(たちあらいまち)は、滞在中に事件の報に接し、取材を開始する。

滞在する宿の女主人の知人が事件当夜の王宮で警備にあたっていたと聞き、スクープの予感に胸躍らせながら彼に会いたいと望む。しかし、念願叶って会うことができたラジェスワル准尉の態度は硬い。

“私はこの国を、王の死を、サーカスの演(だ)し物(もの)にするつもりはない”

若い記者である太刀洗の心は揺れる。報道することとは、書くこととは、記者の使命感とは何なのか。自分は何のために、この国で何をしようとしているのか。

そこに現れる、一体の死体。王を失うという混乱の最中、太刀洗が遭遇したその遺体は、上半身を裸にされ、背中に「密告者」の文字があった。」

本書は謎解きもさることながら「報道とは何か」という、とても重たいテーマが通奏低音のように全編を流れている。そもそも報道する側に真実を伝える資格があるのか、そしてその報道を受け取る側は単なる娯楽としてしか見ていないのではないか。

喩えて言えば、報道者がサーカスの座長にあたり、演(だ)し物(もの)はニュース、観客が大衆というわけで、「王の死はサーカスの演(だ)し物(もの)ではない。」という意味合いから「王とサーカス」という、まことに“けったいな”タイトルがつけられている。

単なる謎解きや真犯人探しに留まらず、社会的なテーマが背景にあるだけでミステリーはぐ~んと深みを増し、いっそう輝きを放つ。

前半の導入部はやや退屈だが、その辺を我慢すると中盤から一気呵成に読ませてくれる。竜頭蛇尾に終わるミステリーが圧倒的に多い中で「優れたミステリーの真価は中盤以降に発揮される」という見本みたいな作品。

最後にネットから読者レヴューをアトランダムに紹介。

「ひたすらスマートに構成して作ってると感じながら、じわじわと押し寄せるスリリングさを堪能。よその国の情勢と実際に起きた事柄を組み合わせてよくできてると感銘を受ける。そこにジャーナリストにおける真意や歪められて見世物にする扇動の脅威のメッセージも込められ、最後はお得意のちくっと来る意地の悪さも含め、素直に面白かった。楽しい話ではないのに、目が離せずこの雰囲気に飲まれて夢中で読んだ。」

「分野的には本格ミステリーなんでしょうね。 でも、准将殺しよりもフリージャーナリストになった太刀洗の矜持・信念の方が読みごたえがありました。 ただ個人的には王族の殺害事件はどうなったの?放置??と少し欲求不満が残りました。」

「とても面白かった!これはものすごい作品を読んだな!っていう読後感。ミステリーかと思って読み始めたら、ジャーナリズムの意義を問う核が内包されてて、その中に「太刀洗万智」という一人の人間の内面が見えてくる瞬間があり…「サーカス」の意味に気づいた辺りから鳥肌が立つ思いで読み進めました。「知る」と「伝える」、表裏一体のバランス…「こいつは家のソファで見ていたかったな」というセリフが強烈に印象に残りました。」 
 


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ホーン効果

2016年05月12日 | オーディオ談義

およそ1年半前の2015年の1月中旬、「北国のおじさんシリーズ」と銘打って3日連続でブログに登載したのをご記憶の方がおられるだろうか。

要約すると「北国のおじさん(青森県)と称されるオーディオ愛好家から、不要になった
楽器を改造したホルンをご好意でいただき実際にJBLのドライバーに取りつけて鳴らしてみたところ気に入った音が出て大喜び。」という話。

その後JBLシステムからの撤退によりホルンを使わなくなったが、そのうち出番があるかもと後生大事に保管していたところ、このたび見事に蘇ったのでその復活劇を述べてみよう。

ここ1か月あまり、コーン型ツィーター用のホーンの製作に余念がなかった。材料代が安価だったことも手伝ってとうとう5ペア分ものホーンを作成したものの、肝心の「ホーン」についての知識がサッパリだった。

そもそもホーンは音質にとってどういう効果があるのか、またマイナス面はあるのか。こういう事をよく知りもせずにホーンを作るのだから昔の人ならきっと「仏作って魂入らず」と揶揄したことだろう(笑)。

そこで、「ホーン効果」について改めて勉強することにしてネットでググってみたところピッタリくる解説があった。

「ホーンについてなのですが、これが実に奥の深いものなのです。って言うか、ずっとそう言われています。フワッと包み込むような低音や刺激的な高音に心奪われたマニアは数知れず。蓄音機に限らずオーディオマニアの間では発生当初から現在まで、延々と続く課題の一つがホーン再生でもあります。プロ・アマ問わず無数の研究や論文、企業であれば関連特許など調べ上げたらきりがない世界です。

オーディオでもっとも贅沢な夢と言えるオールホーンシステム製作のため、スピーカどころか家屋全体を作り直したなんて人が世の中には数多くいます。3階ぶち抜きとか地下に作られた全長10m以上にもなる低音用ホーンなんて、金に糸目をつけない求道者的な人物も少なくありません。それほどにホーンはマニアにとって魅力を放つものなのです。」

こういう魅力的な前置きのもとに「ホーン効果」について詳しい解説が展開されているがポイントは次のとおり。

 音の増幅効果が高く10デシベル以上の増幅が可能。

 低域のカットオフ周波数(再生限界)は主に開口径で決まる。(大径のホーンほど低い音を出しやすい)

 開口径が同一ならばL長の長いホーンほど低域が豊かに響き、短いホーンはメリハリの利いた再生が得意。

 カットオフ周波数付近の低域から高域まで暴れの少ない周波数特性を持つ。

 指向性はあるがメガホン型に比べ自然。

音は空気の振動によって耳に届くが、どれだけ大量の空気を、そして素早く動かせるか、そこにホーンの役割が凝縮されているようだ。

そしてホーンは肝心の出口のところで音の流れが乱気流みたいになるのが難点で、その欠点を補うためにJBLのように「蜂の巣」型にしてみたり、アルテックのように「マルチセル」型にしたりしている。

そしてこれらの条件を満たす理想的なホーンの形状として紹介してあったのが、まさに「北国のおじさん」からいただいた開口部がR形状になっているホルンだった!

やはり「北国のおじさん」は只者ではなかった。ちゃ~んとホーン効果を熟知してある慧眼の持ち主だったと今さらながら感心した次第。

こうなりゃ、宝の持ち腐れにならないように即実験あるのみで、手持ちのグッドマンの「ミダックス・ドライバー」にホルンを取りつけてみた。

            

両者のネジ穴を合わせるのはとうてい無理なので両面テープと細かい針金でもって合体させて遮二無二音出しへ。

周波数の受け持ち範囲は3ウェイシステムの真ん中にあたる「1100~9000ヘルツ」となる。

現在使っているホーンはミダックスのオリジナルのもので左の画像のとおり。一時、JBLの小型蜂の巣ホーンを取りつけて鳴らしてみたが所詮「水と油」で相性が悪かった。

              

1100ヘルツからの再生となるとホルンの開口部が少し大きすぎるような気がするが、こればかりは実際に聴いてみないと分からない。

簡単に接続が済んで、さあ緊張の音出し。チョット聴きの段階ではなかなかイケそうだ(笑)。これからいろんなCDを聴いてどちらが相性がいいか探っていくことにしよう。

それにしてもスピーカー周りの実験はどうしてこんなに面白いんだろう!
 


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アルテック「A5」の見事な変身

2016年05月10日 | オーディオ談義

先月(4月)中旬に襲ってきた地震は熊本のみならず大分にも大きな被害を及ぼした。死者こそ出なかったものの別府市内も沢山の家屋の屋根瓦が大きなダメージを受け、いまだにブルーシートが掛けてある屋根が目立つ。

しかも高級なつくりの瓦ほど重量があるせいで被害が大きかったというから皮肉なものである。「お金は天下の回りモノ」と言うがヤレヤレ。

ところで、この厄介な地震が結果的にはいい方向への“きっかけ”になったという話を紹介しよう。

被害が起きてすぐの翌日のことだった。オークションの出品を依頼していたNさん宅(大分市)に伺った。品物が無事落札されて、その代金を受け取りに行ったわけだが、オーディオルームに入るなりNさんご愛用のアルテックの「A5」のドライバー部分が床に置いてある。「A5」のドライバーといえばご存知の方も多いと思うが、とても重たいしホーンの大きさも並ではない。

「いったいどうしたんですか?」とお伺いすると、「いやあ、また強い地震があって落ちると困るので家内に手伝ってもらって降ろしたんだけど、しばらくこの状態で様子を見ることにした。天井から(ドライバーを)吊り下げるといいんだけど、(天井が)ヤワなもんだからどうしようもないよ。直接、ドライバーをエンクロージャーに載せると響きが死んで音質的にも良くないと思うんだけど、どうしようもないからなあ。」

「ああ、そんなことならエンクロージャーから浮かす専用の台を作って、その上にドライバーを載せたらいかがですか。自分も以前、そういう台を作ったことがありますよ。」

「ウン!それはいいことを聞いた。試してみようかな。」と、温厚なNさんの目がキラリと光った(笑)。

そのときはそれで終わったのだが、それから10日あまり経った頃、「台の製作がうまくいったよ。聴きにお出で~。」とNさんから連絡があったので、押っ取り刀で出かけた。

丁度、タイミングよくオークションに出品依頼をしていたJBL2440ドライバーが1クール内で無事落札され、その代金の受け取りを兼ねての話で7日(土)の午後のことだった。

         

エンクロージャーを囲っているシルバーの金属製パイプがその台である。これでウーファー部分の箱と重たいドライバーがスッパリ切り離されたことになる。双方にとって不要な振動が伝播しないのがいい。

「いやあ、これは素晴らしい!」と思わず絶句した。とても素人工事とは思われない丁寧な仕上がり振りに驚いた。ネットで注文し、ネジ穴を指定し寸法通りに金属パイプを切断してもらったというからまるでプロ並みの工事である。自分が以前作った台に比べると月とスッポンである。

「実に簡単そのものだったよ」と涼しい顔のNさん。

問題は肝心の音質の方だが、これがまあ、大変身!

ジャズ好きのNさんが掛けてくれたレコードの音がとても澄み切っていて、以前と比べると透明感が向上してベールが一枚も二枚も取り払われた印象。とりわけシンバルの音がシャンシャンと綺麗に響いてきたのには驚いた。こういう音になると我が家ではとても無理。

「クロスオーヴァーはどのくらいですか」とお伺いすると500ヘルツと仰るから二度ビックリ。まるでフルレンジが鳴っている感じで、以前のブログで「1000ヘルツまでは違う振動板のユニットは混ぜない方がいい」と書いたことがあるが、ここに謹んで訂正いたします(笑)。そのぐらい両ユニットの繋がりに違和感がない。さすがはアルテック!

ちなみに使用されているパワーアンプはNさん自作の真空管式で、WE300Bシングル(モノ×2台)。プリアンプももちろん自作でこれまた真空管式。

Nさんによると「ようやく積年のモヤモヤ感が解決して気に入った音が出てくれた。何よりも響きがデッドにならないのがいい。繊細な音がかき消えないで鳴ってくれるおかげでほのかな余韻が漂い出した。夜中に聴くときもボリュームを絞っても音が痩せないので助かるよ。」と大満足のご様子。

こういう独自の工夫と工作で少しでも理想の音に近づくのがオーディオの真髄というものではなかろうか、と大いに感じ入った。しかも少ない投資で!

世にJBLやアルテックのシステムを愛用している方は多いと思うが、万一音質に不満がある方やもっと良くしたいと思われる方は、ひとつの方法として重量級のドライバーを箱から浮かす工夫を講じられたらいかがだろうか。出てくる音の「響き方」がまったく違いまっせ~。

ま、要らん世話かもしれないが(笑)。
 


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戯び心のある小型SPユニット

2016年05月08日 | オーディオ談義

このところ口径10センチ程度の高音域用SPユニットに目がない状態だが、ヤフオクでふと目についたのがフィリップスの小型フルレンジ。タイトルは「戯び心のある小型SPユニット」と銘打ってある。

            

ご覧のとおりとても薄い。およそ3センチぐらいの厚さだろうか。こういう薄型はJBLの口径38センチのウーファーあたりを連想させるが、音声信号に対する応答性がとても速いだろうなあと、つい食指をそそられた。オーディオはつまるところスピードと量感の凌ぎ合いみたいなところがあって、その辺が分岐点となって音の好みが左右されるが目下のところ当方はスピード優先。

競争相手もいないまま開始価格の最安値で無事落札。現物が届いたのは6日(金)の夕食後のことだった。梱包を解いて仔細に眺めてみたところ、何とバッフルに取り付けるネジ穴が無い!

これには驚いた。しまった、画像をよく見ないといけなかったなあと嘆いたが時すでに遅し。しかし、取り付け金具というのが4個同封されていたので、しばし黙考の末、な~んだそういうことかとようやく気が付いた。

ユニットを押さえつけて固定する方式だった。ユニットの磁石も小さいし本体がメチャ軽いのでそういうことが可能なんだろう。

7日(土)の午前中に工事に着手。「百聞は一見に如かず」で出来上がった完成形がこれ。

           

上下2個の取り付け金具は当方の発案。何とかうまくいったのでさっそく「AXIOM300」の箱の上に置いて4000ヘルツ以上を受け持たせてみた。

一聴するなり「高音域がそれほど伸びていない」ことが分かった。もともとがフルレンジと銘打っているので仕方がないが、その代わりウーファー部分との繋がりがとても良くてなかなか捨てがたい。

周波数レンジを優先するか、それともハーモニーを優先するかという悩ましい選択を強いられたわけだが、こういう白か黒かを決めるときは灰色部分の割合がカギを握る。いわば白に近い灰色か、黒に近い灰色か。

恰好のテスト盤があって、それはジャズの名盤「サキソフォン・コロッサス」(SACD盤)。とても重宝していて、このシンバルの音を聴けば許容範囲に入るかかどうかがたちどころに分かる。

実際に聴いてみると、黒に限りなく近い灰色だった。冴えないシンバルの音にガッカリでとても許せる範囲ではなかった。ツィーターには不合格の烙印を押した。

しかし、転んでもただでは起きないぞとばかり何か有効活用はないものかとしばし黙考ののち、フルレンジだからテレビ音声用のシステムにでもするかと思い立った。

通常はテレビのチューナーからデジタルアウトの音声を繋いでいるが、アナログ音声の出力端子が空いているので予備のプリアンプにコードを接続。パワーアンプには久しぶりに「2A3シングル」アンプの出番となった。ときどき電源スイッチを入れてやらないとアンプのためにならない。

       

人気のある「2A3」出力管はRCAをはじめとして多種多様のブランドに恵まれているが、知人によると一番音がいいのは「一枚プレート」もので、その次に位置するのは「Visseaux」(フランス)の刻印モノだとハッキリ仰る。

たしかに、この「Vissuaux」は中低音域に独特の厚みがあり、凄く気に入ってすぐに東京のショップにあった在庫の4ペアをすべて買い占めた。と、同時にそれまで持っていたRCAやマルコーニ(カナダ)の2A3は「とても聴けたもんじゃない」とすべて売り払った(笑)。

ところが一難去ってまた一難。音出ししてみると十分聴ける音だが、片方のユニットから大きな音が入ったときだけ歪っぽい音がする。原因はおそらくユニットの取り付けネジの締め付け過ぎにあると睨んで、4か所のネジをそっと均等に緩めて上げると見事に症状が直った。ほんとうに世話の焼けるユニットだ。


とにもかくにも、これでようやく4番目のシステムの完成となった。テレビぐらいの音声ならこれで十分で、他のシステムの消耗防止にきっと一役かってくれることだろう(笑)。
 


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オーディオ熱は伝染する

2016年05月05日 | オーディオ談義

長いことブログを続けていると読者からいろんなメールをいただくのが楽しみのひとつになっている。

このブログの内容といえばいささか専門的だし、偏執的(?)なところもあるので読者の中には呆れかえっている人もいるかと思うが、中には共感を寄せてくれる方もいるのでそういうときはとても勇気づけられる。

今回はそのうちから「お二人」さんに登場していただこう。

☆ 上信越地方のSさん

去る5月2日(月)の夜に飛び込んできたメールがこれ。タイトルは「オーディオ熱は伝染する」。あえて県名を明かさずに、しかも匿名ということでSさん、無断掲載お許しください。

「お久しぶりです。〇〇県のSです。
しばらくお便りしませんでしたが、ブログはいつも拝見していました。添付しました画像のように〇〇様のAXIOM熱に感染して、AXIOM301を導入しました。この5月1日(昨日)に設置したばかりです。フルレンジでも結構聴けましたが、ツイーターはMIDAXに似たONKYOのHM500を使っています。

AXIOM301はフルレンジで使用し、HM500には5μFのコンデンサを直列に
入れ、4000ヘルツでクロスさせています。アッテネータは絞って、最低から1時間ほど、ツマミを回したところで使っています。スピーカーは他にアルテックの419フルレンジと806AドライバーでホーンはONKYO-HM450です。

もう一系統はヤマハ(Made in USA)のウーハーに
ホーン・ドライバーはHM450、気が付いてみればこれも3系統で、いつの間にか〇〇様に似てきました。3系統を競合させて音質を向上させる方法も〇〇様ゆずり、すっかり影響を受けてしまいした。とりあえずは、ご報告まで、やはりオーデイオ熱は伝染病ですね。」

            

いやあ、お株を奪われたようで恐れ入りました。たしかにオーディオは感染力の強い伝染病みたいなところがありますね~。性質(たち)のいい感染源になれたらいいのですが(笑)。

気に入った音を出す秘訣、それは「音の好みが合致した仲間を見つけていかにタメになる情報量を増やすか」に尽きるような気がしています。Sさんにはオーディオに取り組む姿勢や熱心さにおいて同じ匂いを感じるので末永くよろしくお願いしますよ~。

☆ 東海地方の「I」さん

2か月ほど前に初めてメールをいただいてから今日までほぼ3~4日おきにメールの交換を行っている東海地方の「I」さん。つい最近のメールにはこうあった。

「実は、2年程前まで、音楽は聴いていましたが、オーディオの方は気が乗らない状態が続いていました。 

ところが、眼を覚まさせることが二つありました。ひとつは、行きつけのオーディオショップの〇〇〇の試聴会、もうひとつは、〇〇様のブログです。
 
2年前の〇〇〇の視聴会は、20㎝ダブルウーファーの確か1本80万円のSPにCD、アンプ等機器総額800万円の装置でした。立派な金額ですよね。出てくる音は、ここだけの話ですが、どのSACD,ハイレゾを再生しても、私の耳には、シンセサイザーとエレキベースにしか聴こえない。驚きました。今のオーディオのレベルって、この程度なの? 
 
〇〇〇に対して恐れ多いのですが、拙宅の装置と入れ替えてもいいと言われても、断るだろうなと思って聴いていました。購入金額でいえば拙宅の装置は150万円位のものです。しかし、これを発展させていった方が面白いだろうと思いました。
 
もうひとつ、〇〇様のブログに接して、音楽やオーディオを楽しく感じるようになりました。システムをあまりいじっているわけでもないのに音が良くなっています。凄い影響力です。ありがとうございます。
 
ようやく本題です。ジャズの場合は「奥行よりも音がマッシブで前に出る、後ろは程々に・・・」がいいと私は感じていますが、クラシックは後ろに広がって奥行き感を出すもののようです。私もそう思います。以下~略~。」 

「I」さんはジャズ8、クラシック2というほどのご熱心なジャズファンでJBL3ウェイシステムをマルチアンプ駆動されている。じぶんも1年ほど前までやってたがとうとううまく鳴らせないまま撤退の憂き目にあったものの、ジャズ好きの「I」さんならきっと上手に鳴らされているに違いない。

             

上信越地方のSさんと負けず劣らずのたいへんご熱心なオーディオ愛好家の印象を受けている「I」さんだが、いたくこのブログを気に入っていただいたご様子で、何と9年前に遡って2006年以降のブログをすべて読破しますと宣言された。

「いやあ、気恥ずかしいので止めてください。」と、喉元まで声が出かかったが、ネットで公開している以上読むも読まないもご本人の自由なのでお任せすることにした。
そして、およそ1か月ほど経ってから「完読しました」というメールが届いたが、記事の総数が1400件あまり、どうもたいへんご苦労様でした(笑)。

実は、過去のブログについては「あんなことを書いたけど、まずかったかなあ。いっそのこと書かなきゃよかったのに。」という反省と悔恨が入り混じったものが相当数あることを正直に告白しておこう。

何よりも内容の勘違いやミスが怖いので、経験談を中心に他愛のないことを記載しているものの、奥の深いオーディオのこと「これは違う」と思っている読者も相当数あるに違いない。

また、著名なエッセイストの山本夏彦氏からして「エッセイなんてどうせ自慢話だ」と述べられているほどだが、何ごとにつけ“ひけらかさない”ように気を付けているものの、つい自己顕示欲が出て要らんことを書くクセがあるのを自覚している。いざとなるとエッセイの書き方はなかなか難しいのだ(笑)。

いずれにしても「I」さん、稀少な同類として今後ともよろしくお願いしますね~。


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「紙臭い音」とは

2016年05月03日 | オーディオ談義

今度の大型連休を利用して帰省した娘が見かねたようにこう言う。

「お父さん、ずっとオーディオルームに閉じこもりっきりだけど少しは音が良くなったの?」

「ああ、これまでで一番いい音が出たぞ。」  「だってお父さんはいつもそう言うじゃない。」  「いや、今度こそほんとうだってば・・・」

例の狼少年のように「今度こそ一番いい音が出たぞ!」何度も言い続けながら、信用されないままにとうとう生涯が終わってしまうんだろうなあ(笑)。

それにしても今度の音はこれまでの次元とはちょっとレベルが違う気がして我がオーディオライフの集大成のような気がしてならない。まあこれまで何回も似たような経験をしてきたので少なくとも1~2週間ほどはいろんなCDを聴きながら様子をみることにしよう。

忘れっぽいので今回の経過を記録に残しておこう。

現在、ウェストミンスターの箱に入れているフィリップスのユニットとワーフェデールのコーン型ツィーター(クロス4000ヘルツ)の2ウェイ方式にまったく不満はなかった。

「もうこれでいっさい弄らなくていい」と思っていたほどだが、オークションでYL音響の「3ウェイ式ディヴァイディングネットワーク」に出会ったのが運の尽きだった。画像から受けた印象が実に良かった。

          

ピ~ンとくるものがあって「いったいどんな音がするんだろう」という誘惑になす術もなく、つい落札ボタンをクリックしてしまった。まるで
猫の前にカツオ節を置いたみたい(笑)。

それにクロスオーバーが「1100ヘルツと9000ヘルツ」仕様なので、タンノイのオリジナルユニットがそのまま使えるのが気に入った。そうなると9000ヘルツ以上にJBLの075ツィーターを持って来れる。「これならタンノイでまっとうなシンバルの音が聴ける」と閃いたことも背中を後押しした理由。

ジャズは滅多に聴かないのに、不思議とシンバルの音だけは気になってしようがないのだからホトホト困ってしまう(笑)。

さて、ご存知のように前回のブログの末尾にこのネットワークのことを記載していたところ、熱心な読者からさっそくメールをいただいた。「YL音響のネットワーク、見るからに音が良さそうな部品が載ってますね。きっちりとセオリー通り近接するコイルは90度に回転させて取り付けてあります。」

いざ現物が届き幾重にも巻かれた丁寧な梱包を解いてみると、見てくれといい、重量感といい惚れ惚れするほど。とにかく正常に作動するかどうか早急に見極める必要がある。音が歪んだり出なかったりしたときはすぐに出品者と連絡をとらなければいけないので、それぞれ3つのSPユニットを繋いで試聴。           

はじめにテストしたSPユニットの構成は次のとおりだった。

低音域(~1100ヘルツ) → 「フィリップスの口径30センチのダブル・コーン」

中音域(1100~9000ヘルツ)  → 「グッドマンのミダックス・ドライバー」 

高音域(9000ヘルツ~ ) → 「口径5センチのコーン型ツィーター」

この中で特筆すべきは「グッドマンのミダックス」だろう。ずっと以前に湯布院のAさんから譲り受けて大切に保管してきたものだがまさかこうして急に出番がやってくるとは夢にも思わなかった。

ちなみにその湯布院は今回の地震による被害は別府の比ではないようで、Aさん宅の天井から吊り下げられたウェスタンの大型ホーンが心配なのでご自宅に2回ほど電話をしてみるもののご不在だった。どこか避難されているんだろうか・・。

さて、話は戻ってこの「ミダックス」のメーカー(グッドマン)推奨の周波数の指定範囲は「800~8000ヘルツ」なので十分使えると踏んだわけだが、取りつけるホーンの方はオリジナルのものとJBLの小型蜂の巣ホーンと両方使用できるようにネジ穴をずっと以前に加工していた。

          

右側のホーンがオリジナルだが、今回は「見てくれ」もあって蜂の巣ホーンを選択。さあ、胸をワクワクドキドキさせながら緊張の音出しだったが、一聴するなり「GOOD!」。故障無しと分かってホッと一息。

ただし、ツィーターの能力不足のせいか歪っぽい音がするのでためらうことなくJBLの075に入れ替えた。能率が110db前後とメチャ高いので、こういう時のためにとつい最近仕入れたパイオニアのSP用アッテネーター「AT-8S」を併用。アンプ側から見て各ステップにおけるインピーダンス変化がないという優れものだ。

再度、音出しした結果、抜けのいい冴えわたった音が出てくれて大満足。ツィーターといえども全体の音を支配することを思い知ったが、欲張り人間は留まることを知らない。もしかしてもっと良くなるかもと、さらに「ミダックス」をワーフェデールのコーン型ツィーター(口径10センチ)に入れ替えてみた。

              

いやあ、これはこれで実にいい。なんだか“しなやかな音色”になって
各ユニット間の繋がりも一段と向上した感じ。強いて言えば、叩いたり吹いたりする音は「ミダックス」に軍配が上がり、ヴァイオリンなどの擦る音は断然「ワーフェデール」の方がいい。実に悩ましいが、クラシックファンを自称するならワーフェデールだろうなあ・・・。

それにしても、これまでネットワーク編成のためせっせとコイルやコンデンサーを購入して自前でいろいろ取り組んできたものの、このYL音響製と比べると何だか子供の「ままごと遊び」みたいに思えてプロの凄さを実感した。まあ、これまでの投資額は授業料と割り切っておくことにしよう。

最後に、このシステムの特徴と言えば「振動板の違い、つまりコーン紙と金属のダイヤフラムで鳴らす音の境界値が常識ハズレの周波数9000ヘルツに設定したところにある」といえそうだ。

定説では金属のダイヤフラムから出す音をいかに低音域の方まで下げるかが「いい音を出す秘訣」とされているが、このシステムではまったくその逆をいっているところが面白い。

「どうです、いい音でしょう!」と、つい自慢したくなるが、逆に「紙臭い音だ」と逆襲されるかもねえ(笑)。


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