「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

魔笛試聴コーナー~CD(ライブ)の部~♯10

2008年08月09日 | 魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~

CD番号    メロドラム オペラ・ライブDP-SAZAS-GM-5.0044(3枚組)

収録年     1960年8月12日 ザルツブルク音楽祭

評  価     (A+、A-、B、C、D)の5段階評価

総  合     

指揮者        ヨーゼフ・カイルベルト    

管弦楽団    A- ウィーン・フィルハーモニー  

合唱団      A- ウィーンStaatsoper        

ザラストロ    A-  ゴットローブ・フリック        

夜の女王     C  エリカ・コース          

タミーノ      A+  フリッツ・ヴンダーリヒ     

パミーナ     B  リーゼンロッテ・フォルサー  

パパゲーノ    A- ワルター・ベリー       

音   質     B  モノラル・ライブ録音        

私   見     ヴンダーリヒの歌声を楽しむためだけの魔笛 

ようやく探し当てた45セット目の「魔笛」だったが、結論から先に言うとやや期待はずれに終わった。

まず、音質がよくない。終始こもった感じの音でスカッと抜けきらない。約50年前の録音それもスタジオではなくて劇場でのライブ録音なので要求するほうが無理かもしれない。

このマイナス・ポイントをカバーするためには配役陣の頑張りに期待するほかないがそれも女性陣がいまいち。

夜の女王役のコロラトゥーラは声量に余裕がなく肝心の最高音(ハイF)のところで声が伸びず完全な頭打ち。テンポも速すぎて伴奏と合っていない。

それにパミーナ役(ソプラノ)もやたらに声を張り上げる印象で声質にもっとしっとりとした柔らかさがほしい。独唱のときはまあまあ聴けるが二重唱となると調和が取れなくて浮いてしまう印象。

一方男性陣は充実の一言。タミーノ役のヴンダーリヒは言うに及ばずザラストロ役もパパゲーノ役も定評どおりの貫禄で水準以上。

とにかく、このオペラの全体的感想を言えば静謐感、緊張感に乏しくリズムもよくないし指揮者の手腕も冴えない。あまり感心できない出来栄えでこれほどの名曲にもかかわらず聴く途中で退屈してしまった。

この盤は「魔笛」ファンの方であってもあえて購入して聴くに値しないと思う。

ただし、不世出のテノール歌手ヴンダーリヒのファンにとっては別で、これ以外の彼の「魔笛」録音はベーム指揮の1964年盤だけなのでそういう意味ではこれは貴重な音源となる。

  
     


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魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~まとめ

2007年02月21日 | 魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~

1937年のトスカニーニ盤から1974年のカラヤン盤までCDライブ盤9セットの魔笛を視聴したのでまとめてみる。

今回の視聴を通じて、改めて演奏の優れた出来の良いライブ盤は録音の良し悪しに関係なくスタジオ録音盤とはまた違った良さがあるという思いを新たにした。ライブは演奏者の裸の実力と感情がストレートに伝わってくるところに大きな利点がある。

ライブの王様フルトヴェングラーは
「スタジオ録音は技術的な問題が優先するために音楽作品の直接性を実際に表現することは出来ない」と言っている。

また、視聴にあたって録音がいいのに越したことはないが、その良し悪しに関係なく作品の持つ音楽性は必ずしも損なわれないことも改めて考えさせられた。

このことはオーディオ装置は、むしろ音質が悪ければ悪いほど良質の装置が必要であるという考えにつながった。

どういうことかというと、装置によっては演奏部分と雑音とが渾然一体となって聞こえてくるのもあるが、逆に演奏部分と機械的な雑音とを分離させて聴きやすくしてくれる装置もある。

要は装置のもつ音の解像度(各楽器の音や人の声が綺麗に分離して音色や演奏位置をそれらしく聞かせる能力)の問題になってくる。

したがって音質の悪い盤を再生するときほど、オーディオ装置の力量が試され、良い装置が必要になる。

終わりに、CDライブ盤の優秀盤を上げておこう。

トスカニーニ盤フルトヴェングラー盤(1951年)
の往年のマエストロの2セットはたしかに音質は良くないが演奏の方は手持ちの全43セットの中でも屈指の存在だと思った。

特にトスカニーニ盤は音質は一番悪いが逆に演奏の方は一番ではなかろうか。ままならないものだが、不思議なことに録音は悪くても演奏の良さが十分聴き取れた。

とにかく、70年の時空を越えてこれほどの魔笛はなかなか存在しないというのもいろいろと考えさせられる。

またヨッフム盤もこれらに劣らぬ名盤でこれは録音も比較的いいので万人向きだ。ライブ盤は以上の3セットに尽きると思う。とにかくスタジオ録音では味わえない世界だった。

なお、その後の調査で未入手のライブ盤として次の盤が存在していることが分った。

ワルター1942、ワルター1949、クレンペラー1949、ショルティ1955、コズマ1958、ビーチャム1958、カラヤン1962、ケルテス1964、以上8セット。(レコード盤も含む)

この中では特にワルターの1942年、1949年の2セット、それにケルテス盤は是非聴いてみたい。

              
                CDライブ盤9セット

 





 


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魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~♯9

2007年02月19日 | 魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~

CD番号       BMW 1000/2(3枚組)
収録年        1974年

評    価(A+、A-、B、C、Dの5段階評価)

総合      

指揮者     B     ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~1989)

管弦楽団    A-   ウィーン・フィルハーモニー

合唱団     A-   ウィーン国立歌劇場合唱団

ザラストロ        ピーター・メヴン

夜の女王    A-   エディタ・グルベローヴァ 

タミーノ     B     リーン・コロー

パミーナ    A+    エディット・マチス

パパゲーノ   A+    ヘルマン・プライ

音質       

私   見 

1974年ザルツブルク音楽祭でのライブである。まず、視聴後すぐに浮かんだ印象は、上品さを優先させた上流階級向けの魔笛だということだった。1980年盤(スタジオ録音)と実によく似ている。これは明らかに指揮者の意図なのだろうが制作者の意図とは距離があるようだ。

「モーツァルト最後の年」(H.C.ロビンズ.ランドン:中央公論新社)によると、台本作者シカネーダーは魔笛の作曲にあたってモーツァルトにこう頼んだ。

「あらゆる階層に共通する最低限の平均的な好みを満たすように心がけて欲しい、全ては大衆が求めている今様なものを・・・

モーツァルト「よろしい・・・。引き受けた」

こうしてオペラ魔笛は大衆を念頭に置いた最初のオペラとしてモーツァルト最大のヒット作となったが、こうした経緯からも上品さだけの魔笛は、台本作者、作曲家いずれにとってもその本意ではない。

聖なるものと俗なるもの、上品なものと下品なもの、これらの相反する要素が織り交じって崇高な調べになるのが魔笛の最大の魅力だと思う。

カラヤンの上品さは何といってもタミーノ役の配役に象徴されるのだが、総じて上記のような相反する概念の対立による相克感が聴き取れず上滑りしている印象がつきまとう。これではドラマにならない。

彼の出自は典型的な貴族階級なのでその辺が強く影響しているのだろうか。とにかく、指揮の良し悪しは別にして体質的にどうも魔笛に合った指揮者ではないように思う。

1950年のカラヤン盤(スタジオ録音)はやや事情が違っており、タミーノ役があのデルモータで野性味溢れる配役で緊張感が漲っているが、この盤の指揮はピンチヒッターに近かったというのが真相のようだ。皮肉にもカラヤンが録音した中でこの盤の出来が一番良い。

さて、歌手陣だがザラストロ役はやや音程が不安定だった。
グルベローヴァはおそらくこの盤が夜の女王のデヴュー盤ではなかろうか。彼女の場合、若いときの声質が後年になってもあまり変わらない印象を受ける。
タミーノ役は上述したように上品過ぎて押しの強さが足りない。
パパゲーノ役のプライはさすがに貫禄十分でハマリ役というところ。

特筆すべきはパミーナ役のエディット・マチスだ。さすがに容姿とともに一世を風靡したソプラノ歌手だけのことはある。柔らかくて、叙情味があって理想的なソプラノでアリアも重唱もいうことなし。マティスだけがお目当てでこの盤を購入してもいいくらい。

カラヤンはオペラでは歌手の選定にあたって声の質は当然として容姿も随分重視したようで 彼女は1980年のカラヤン盤(スタジオ録音)にも再登場している。

                     
 

 

 

 



  


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魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~♯8

2007年02月16日 | 魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~

CD番号        ROP-CD-3-D(3枚組)
収録年         1966年

評     価(A+、A-、B、C、Dの5段階評価)

総合      A-

指揮者    A+   オイゲン・ヨッフム(1902~1987)

管弦楽団   A-   ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団

合唱団    A-     同 合唱団

ザラストロ   A-   マルッティ・タルヴェラ 

夜の女王   A-   キャスリン・ゲイヤー

タミーノ     A-   エルンスト・ヘフリガー

パミーナ    A+   ヒルデ・ギューデン

パパゲーノ   A-   マンフレッド・レール

音    質   A-

私    見

さすがに1966年の収録になると、ライブでも随分音質がよくなる。ステレオになっているうえ、観客のしわぶき一つも逃さないような録音である。これなら十分鑑賞に堪えうる。

演奏においても上出来の魔笛だった。序曲の始まりを聴いた途端に非常に厳かな雰囲気を感じさせてこれは他の魔笛とは一味違うぞと思わせた。とても一音一音を大事にする丁寧な演奏である。

全体に亘ってオーソドックスな演奏だが決して盛り上がりにも欠けていない。おとぎ話の世界を楽しそうな雰囲気でしかも情熱を込めて進行している印象。

歌手陣もこのオペラの中に溶け込んで伸び伸びと歌っていて一体感が感じられる。しかも粒がそろっていてレベルが高く、実力が十分に発揮できていて会心の出来栄えだろう。中でもパミーナ役のギューデンはやはり華になれるソプラノだ。第二幕の”嘆きのアリア”にはうっとりと聴き惚れてしまった。

申し分の無い名盤だが、第一幕の”鳥刺しのアリア”でところどころ録音ミスで音が流れているのがやや難点。それと出演者の台詞を介添え役がごく小さなささやき声で囁いているのが聞こえてくるのも一興か。

それにしても、オケと歌手の力をフルに引き出して崇高で楽しい魔笛の世界を紡ぎだしたオイゲン・ヨッフムは何という素晴らしい指揮者なんだろう。 

                          



 



 



 

 

 

   


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魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~♯7

2007年02月14日 | 魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~

CD番号       GL 100.502(2枚組)
収録年        1959年

評   価(A+、A-、B、C、Dの5段階評価)

総   合   

指揮者    B    ジョージ・セル(1897~1970)

管弦楽団   A-  ウィーン・フィルハーモニー

合唱団    A-   ウィーン国立歌劇場合唱団

ザラストロ   A-  クルト・ベーメ

夜の女王   B    エリカ・コーツ

タミーノ    B    レオポルド・シモノー

パミーナ   A-   リサ・デラ・カーサ

パパゲーノ  A-   ワルター・ベリー

音   質   

私   見

1959年ザルツブルク音楽祭でのライブ録音だが、指揮者ジョージ・セルと魔笛の組み合わせにはやや異色の印象を受けてしまった。

あの謹厳実直で怖そうなセル(事実、楽団員に執拗なほど厳しかった)とおとぎ話の世界の魔笛のイメージがどうも一致しないが、当時クリーブランド管弦楽団の音楽監督として同楽団を一流に育て上げたことから白羽の矢が立ったのだろう。

さて、演奏の方だがセルの代名詞のような中庸、端正かつ緻密という言葉で要約されるように、非常に歯切れの良い進行だ。

しかし、全編を通じて盛り上がりの無い平板な印象を受けた。もう少し燃えるような熱気みたいなものが欲しいし、それに架空の夢の世界を思わせるような楽しさがもっとあってもいい。自由闊達、天真爛漫、天衣無縫さは魔笛には欠かせない要素だ。

一つの原因として歌手陣がこじんまりとまとまっていて何だか萎縮している印象を受けた。少なくとも伸び伸びとはしていない。

タミーノ役はA-かBか迷ったが、元気度の点でB。夜の女王は音程に不安定さを感じたのでB。

73歳と指揮者にしては比較的若くして急逝したセルの記念碑的な価値はあるのだろうが、決して水準以上に位置する魔笛ではないと思う。

                        

 




 


         


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魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~♯6

2007年02月09日 | 魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~

CD番号      WHRA6007(2枚組)
収録年       1956年

評    価   (A+、A-、B、C、Dの5段階評価)

総   合    

指揮者     B   ブルーノ・ワルター(1876~1962)

管弦楽団       メトロポリタン歌劇場管弦楽団

合唱団     B    同 上  合唱団

ザラストロ   A+  ジェローム・ハインズ

夜の女王    A-   ロバータ・ピーターズ

タミーノ     B    ブライアン・サリヴァン

パミーナ    A-   ルシーン・アマーラ

パパゲーノ   A-   セオドア・アプマン

音   質    

私   見

1956年のメトロポリタン歌劇場におけるライブ録音である。魔笛の台詞は通常はドイツ語だがこの盤は英語で、♯5のカラヤン盤のイタリア語とは違って、終始、多少の違和感をぬぐえなかった。

指揮者のブルーノ・ワルターはトスカニーニやフルトヴェングラーと並び称される大指揮者で、あのカ-ル・ベームの師とも言われているが、特にモーツァルトの作品には定評があり、ワルターの魔笛で遺されているのはこのセットだけなので貴重な盤である。

さて視聴結果なのだが、それがどうも残念なことにこの盤はやや期待はずれのようだ。どこといって悪いところが無いのだが、それかといって心を打つような魅力にも乏しい。盛り上がりに欠けていてやや退屈感を覚えてしまう。

歌手では、タミーノ役に声の艶と張りがもっと欲しい。その他の歌手は全て水準以上の出来栄えである。

ところで、二,三の指揮者の話によると、一般的にオペラにはかなりの不確定要素がつきまとっているといわれている。例えばまったく同じメンバーで前回素晴らしい公演が出来たからといって、次の公演はどうにもならないほどダメな公演に終わる危険が決して無いとは言い切れないそうだ。

原因が分るようで分らないが、生身の人間が集って役割分担をしながら出来上がる作品にはそういう波というものがあるらしい。とにかくそういう場合は運が悪いとしかいいようがないそうである。

この盤も運の悪さに尽きるのかもしれないが、あえて原因を突き詰めるとワルター80歳のときの収録でやや気力と体力が十分ではなかった(?)のかもしれない。

                         





 





 



  


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魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~♯5

2007年02月07日 | 魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~

CD番号     WLCD 0017(2枚組)
収録年      1953年

評    価(A+、A-、B、C、Dの5段階評価)

総    合   

指揮者     A-    ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~1989)

管弦楽団    A-    SINFONICA DELLA RAI

合唱団           - 

ザラストロ    A-    マリオ・ペトリ

夜の女王    A-    リタ・シュトライヒ

タミーノ      B     ニコライ・ゲッダ

パミーナ     A-    エリザベート・シュワルツコップ

パパゲーノ    A-    ギウスッペ・タッデイ

音    質   

私    見

カラヤンは録音が遺されている範囲でスタジオ録音2回、ライブ録音2回計4回と最多回数を誇る魔笛の指揮者である。この盤は1953年にローマで公演した際のライブ収録である。

音質は良い方ではない。第一幕では一貫して背景の雑音にウーンという唸り音がしていて、音声が途絶えたときにやや目立つ。第二幕の途中からは唸り音がしなくなるが反対に音がこもったようなホール・トーンになる。とにかく音質が安定していない。悪ければ悪いなりに同じように続けてくれないと耳の聴覚フィルターの切り替えが大変である。

肝心の演奏の方だが、歌詞がイタリア語でドイツ語以外は初めてだがそれほど違和感は感じなかった。非常にきびきびした進行で元気はつらつ、熱気があってカラヤンのいい意味での若さを感じた。

歌手の方だが、タミーノ役が今ひとつでややおとなしすぎる歌唱。

パミーナ役のシュワルツコップは歴史に遺るソプラノの大歌手で、魔笛のこの役は自分が知っている範囲で最初で最後だが欲を言えば歌声がやや細身で尖っており、真面目すぎて叙情味が欠ける印象を受けた。独唱向きとオペラ向きと二つのタイプがあるとすれば前者だろう。

またパパゲーノ役が出色でコミカルで自由奔放なイメージをよく表現していた。

全体的にさわやかではつらつとして好感の持てる魔笛だが、音質の不安定さと大事な主役のタミーノ役がやや足を引っ張った印象で総合はBになったがA-に近い。

                          
 

 

 


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魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~♯4

2007年02月05日 | 魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~

CD番号         EMI CHS 5 65356 2(3枚組)
収録年          1951年

評     価(A+、A-、B、C、Dの5段階評価)

総    合   A- 

指揮者     A+   ウィルヘルム・フルトヴェングラー(1886~1954)

管弦楽団    A+   ウィーン・フィルハーモニー 

合唱団     A-   ウィーン国立歌劇場合唱団

ザラストロ    A+  ヨーゼフ・グラインドル

夜の女王    B    ウィルマ・リップ

タミーノ     A+   アントン・デルモータ 

パミーナ     A+  イルムガルド・シーフリード

パパゲーノ   A-   エリッヒ・クンツ

音   質    

私   見
♯3の1949年盤(旧盤という)と同様にザルツブルク音楽祭でのライブ録音である。主役クラスの歌手はタミーノ役とパパゲーノ役が変わっただけだが、旧盤とはえらい違いである。断然こちらの方が良い。

まず、どっしりとした重量感と密度の濃さと熱気を感じる。全編を通じて、まぎれもなく、フルトヴェングラー独特の情念といったものが渦巻いていて何だかあの名盤の誉れ高い「ドン・ジョバンニ」と同じ世界を髣髴とさせるものがある。

そのほか旧盤と比べて目立ったことは、オーケストラが非常にのっていることで、切れ味、スケール感、歌声への追随性いずれをとっても指揮者との絶妙の一体感を感じる。

歌手陣の出来もいい。タミーノ役のデルモータはやはり図抜けているし、パミーナ役との呼吸もピッタリだ。

夜の女王役のリップもいいのだが、いつも最高音のところで余裕が無い感じがしてBにとどまってしまう。

この盤は魔笛独特の架空のおとぎ話の世界とは随分縁遠い感じがするが、その反面で生身の人間を感じさせるような強い印象を受ける。ライブで真価を発揮するフルトヴェングラーならではの個性を色濃く反映した魔笛ではなかろうか。

音楽は一過性のものとよくいわれるが、上出来のライブは録音の良し悪しにかかわらずスタジオ録音では絶対に味わえない世界があり、その意味でこの盤の価値は大きい。 

さて、盲目、蛇に怖じずの感があるが、♯1のトスカニーニ盤と、このフルトヴェングラー盤の両巨匠の魔笛を同じライブ盤ということで俎上に上げてみたい。。

それぞれ一長一短でまず好みの世界であることを前提にしていえば、この魔笛に限ってはじぶんはトスカニーニ盤の方により深い感動と魅力を覚えた。

イタリア人の指揮者らしく歌手に朗々と豊麗な歌い方をさせているのが何よりの特徴で、したがってクライマックスへの盛り上がりが一段と効果的になっており、オペラはその辺が一番の生命線だと思うからである。

それに加えて、魔笛らしさというべきか、何だかわけの分らない広大なイメージを持たせてくれるところが気に入っている。

フルトヴェングラーはどちらかといえば「ドン・ジョバンニ」のような物凄く人間臭い世界がマッチしているように思う。

                      




 

 

 

 



 


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魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~♯3

2007年02月03日 | 魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~

CD番号       WLCD 0009(3枚組)
収録年        1949年

評    価(A+、A-、B、C、Dの5段階評価)

総    合  

指揮者             ウィルヘルム・フルトヴェングラー(1886~1954) 

管弦楽団   A-    ウィーン・フィルハーモニー

合唱団    A-     ウィーン国立歌劇場合唱団

ザラストロ   A+    ヨーゼフ・グラインドル

夜の女王         ウィルマ・リップ

タミーノ    A-     ワルサー・ルードヴィヒ

パミーナ    A-    イルムガルド・シーフリード

パパゲーノ  B      カール・シュミットーワルター

音   質   C     

私    見

1949年ザルツブルク音楽祭におけるライブ収録である。録音はベーム盤に比べると随分聴きやすい。8年の差は大きいようでCDケースには24BIT/96KZのリマスタリングとあるが、やや中高域の音に人工的な不自然さを感じるが鑑賞には十分耐えうる。少なくとも雑音に悩まされるよりはいい。

さて、ライブの王様フルトヴェングラーの登場である。結論から言えばもう少し燃える演奏を聴かせてくれると思ったが意外と随分抑制がきいた魔笛だった。

全体的に非常にゆったりしたテンポで歌手に十分時間をとらせて歌わせる方針のようだ。これでもいいのだが、何だか間延びしてしまって切れ味に乏しくさらにエネルギー感に欠ける印象を受けた。

いかにも熟年向きの魔笛といった感じであり、こういう演奏を聴くと、あの訳の分らないような魔笛特有の自由奔放さ、とてつもない宇宙空間のような広がりがもっと欲しくなる。

たしかに只者ではない魔笛を時折感じるのだが、フルトヴェングラーにはやはりコミカルなおとぎ話の世界が合わないのだろうか。とにかく不完全燃焼に終わってしまった感がする。

                       




 

  


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魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~♯2

2007年02月01日 | 魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~

CD番号       CANTUS5.00216(2枚組)
収録年        1941年

評     価(A+、A-、B、C、Dの5段階)

総    合  

指揮者    B    カール・ベーム(1894~1981)

管弦楽団   A-  ウィーン・フィルハーモニー

合唱団    A-   ウィーン国立歌劇場合唱団

ザラストロ   B    ルードヴィッヒ・ウェーバー

夜の女王      B    リー・ピルティ

タミーノ    A-   ピーター・アンダース

パミーナ    A-   マリア・レイニング

パパゲーノ      アルフレッド・ポエル

音   質   

私    見

録音状態はトスカニーニ盤と似たり寄ったりで、はじめの内は若干こちらが聴きやすいように感じたが途中から良い部分と悪い部分が極端に分かれており、これはおあいこである。

さて、肝心の演奏の方だが、当時(47歳)のベームではやはり芸格においてトスカニーニには及ばない。全体的にピーンと張りつめた緊張感と熱気が足りない。何だか教科書に沿って生真面目に進める授業といった趣である。

歌手の方も全体的に出来が今ひとつの印象だが、さすがにタミーノ役とパミーナ役はそろえている。

とにかく、メリハリに乏しく元気のない魔笛の印象である。ベームにしては当時の若さを割り引いてもやや物足りない。 
 

                         










 

 

 


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魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~♯1

2007年01月30日 | 魔笛視聴コーナー~CD(ライブ)の部~

CD番号       CACD 5.00273 F(2枚組)
収録年        1937年

評   価(A+、A-、B、C、Dの5段階)

総   合  A-

指揮者    A+   アルトゥーロ トスカニーニ(1867~1957) 
        
管弦楽団  A-    ウィーン フィルハーモニー

合唱団    A-   ウィーン国立歌劇場合唱団

ザラストロ  A+   アレキサンダー キプニス

夜の女王   A-   ジュリー オスバツ

タミーノ    A+   ヘルゲ ロスヴェンゲ

パミーナ   A-   ジャーミラ ノヴォトナ

パパゲーノ  A-   ウィリ ドムグラフ ファスヴェンダー

音   質  D

私   見

70年前の収録ということで、この録音の悪いCD盤をどのように再生するか、オーディオ装置の真価が問われるところである。

ひとつの方法として、こういう録音の悪い盤は可能な範囲でかなり大きい音で聴くことがコツで、その音が不自然にならないように調整すれば、時間の経過とともに自然に聴覚のフィルターが働いて録音の悪さが気にならなくなってくる。

さて、視聴結果だが一言でいって凄く人を惹き込む力を持っており、感動できる魔笛だった。ところどころカットされており、第二幕のエンディングでは録音の悪さで息も絶え絶えだがそれでも魔笛を沢山聴かれた方にお薦めしたい盤である。

全体的に大変メリハリのきいた緊張感の漂う演奏と進行で、厳しいことで知られるマエストロ「トスカニーニ」の指揮のもとで一糸乱れぬ行進を思わせるが、大事なポイントでは歌手を解放しているとみえてクライマックスの高揚感が見事である。

とにかく、当時の最高の歌手達が持てるだけの実力をフルに発揮した印象で、気迫、声量の豊かさ、声質の張りと艶いずれも現代の歌手達とは一線を画す印象を受けた。

特に、男性陣に特筆すべきものがあり、思わずすごい、スゴイを連発した。タミーノ役のロスヴェンゲはじぶんが最高のモーツァルト・テナーと思っていたあのペーター・シュライアーを凌ぐほどの歌唱力だったし、ザラストロ役も深々とした豊かな低音で周囲を圧倒する。その他の歌手も、極めてレベルが高い。

この魔笛は雑音が物凄くて聴くに堪えないが、まるで”それがどうした”といわんばかりに内容が濃い。明らかに芸術がテクノロジー(録音技術)を超越しているのではないかと思った。

これを敷衍していくとコンピューターが最後まで人間に追いつけない領域とは芸術に対する感性の分野ではなかろうかなどと勝手に連想したりしたが、自分自身にとってオーディオに対する考え方も含めて大変勉強になったCD盤だった。

                      

 


       


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