「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

非常にタメになる試聴会

2014年08月30日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

オーディオマニアには大きく分けて二つのタイプがあるように思う。自分の音に絶対的な自信を持つ人と、その一方、常に「この音でいいのかな?」と懐疑的な人。前者のタイプは非常に幸せな方である。自分は後者のタイプなのでいつも不幸を背負っている(笑)。

これまでも(人数の多少は別にして)お客さんを招いての試聴会を何回となく繰り返してきたが、その都度、独りで
聴くときにはとても気が付かないような新たな発見をすることが多かった。したがって、自分にとって試聴会とは第三者の意見を率直に聞ける非常にタメになる機会と位置づけしている。

今回の試聴会もその例に漏れず、4人のメンバーの意見の対立が「2対2」に分かれるのならまだ救われるが「1対3」ともなるとちょっと考え込まざるを得なかった。
 

今回の試聴会の一番の目的は手元の「AXIOM80」を鳴らすのに最も適したアンプはどれかということだったが、対象となるアンプは3種類あっていずれも真空管式のシングルアンプ。

はじめに、一番期待値の高い「WE300B」アンプから登板。

実は「どうです、なかなかいい音ではないでしょうか」とばかりにいろんな
CDをかけて皆さんの賛辞を内心期待したのだが、一同「・・・・」というわけでまったくの肩すかし~(笑)。

まあ、可もなし、不可もなしといったところだろうが、あまりの手ごたえのなさに「こんなはずではないのだが」と、後ろ髪を引かれる思いをしながらひとまず終了。

次に登場したアンプは期待値が2番目の「刻印付き2A3」シングルアンプ・1号機。

            

この1か月ばかり、新装なったWE300Bアンプのエージングに時間を割いていたため、ずっと待機中で久しぶりの登板だったが、これが思いもよらぬ好評を呼んだ。

音質についての云々は省略するが「これは、これは!」と、皆さん大いに盛り上がった(笑)。個人的には「WE300B」アンプへの期待度があまりに高かったので、意外感も手伝ってちょっと複雑な心境だった。かかった元手(お金)は段違いなのに~(笑)。しかし、これだからオーディオは面白い。

翌日の話だがK原さんからの電話で「刻印付き2A3アンプは良かったですねえ!」、Sさんからはさらに輪をかけて「2A3アンプで十分です。WE300Bはもう必要ありませんよ。」と追い討ちがかかった。

去る24日(日)に訪問したGさん宅(福岡)と同じように、ここでも「WE300B」不要論が沸騰した。

まあ、Sさんは圧倒的に「イギリスの音」派に所属され、ご自宅のスピーカーもタンノイの「GRFシルバー」と「AXIOM80」だし、K林さんも常々「真空管は71A、45、50、2A3を使っておきさえすれば大きな間違いはありません」と断言されるほどのWE300B否定派なので幾分割り引く必要はあるのかもしれない。

とにかく、一般的には「2A3」真空管といえば出力も小さく無難な球として「真空管の初心者」向きとされているが、これもピンからキリまであって1930年代~1940年代の球ともなるとまったく別次元の話となる。

「2A3」アンプがあまりに衝撃的だったために、3番目に登場した「71A」アンプは最後発の悲しさで「泡の抜けたビール」みたいになってしまった。実力の割には可哀想~。

最後に今回の試聴会を通じて気が付いたことを挙げておこう。

 WE300Bアンプを簡単に諦めるわけにはいかないので、今回の敗因(?)を後になって冷静に考えてみると整流管に直熱管を使用したことにあったように思える。このアンプには圧倒的に「傍熱管」が相性がいいようで、これからはWE422AかCV378を使うことにしよう。

 非常に評判が良かった「2A3」アンプだがはじめにマルコーニの「5U4G」(直熱管)を使っていたところ、K林さんからご提案があり、試しに最近購入したレイセオンの「VT244」(5U4Gの軍用管)を入れ替えたら一段と音響空間が大きくなって音の佇まいが良くなった。あまりの変わり様に「同じ5U4Gの整流管でもブランドの違いでこんなに音が変わるものですか。」と、皆さん驚かれていた。

ほかにもいろいろ臍(ほぞ)を噛んだことがあったのだが、あまりにも専門的過ぎてウンザリされるだろうからこの辺でもうお終い。

オッと、忘れるところだった。JBL3ウェイマルチ・システムの試聴結果だったが、スケール感の凄さは納得してもらえたようで「ワグナー向き」としてだけ公認された模様(笑)!


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まるで受験生のような気分!

2014年08月28日 | オーディオ談義

さあ、26日(火)は待ちに待った我が家での「AXIOM80」の試聴会。

東京に単身赴任されているSさんの夏休みのご都合でおよそ1か月前に決まった日程だが、この間、まるで入試を控えた受験生のような気分だった。

いや、入試といういうよりも“晴れ舞台”を前にして自分の実力以上にいいところを見せてやろうと準備に余念のない三文役者といった表現が当たっているかもしれない(笑)。

この日、参集されたのは「AXIOM80」を現用している3名の方々(いずれも福岡)でK原さん、K林さん、そして上述のSさん。

このところ、まるで梅雨の時期を思わせるような天候のもと、珍しく晴れ渡った中をご一行が到着されたのは12時40分。

さっそくオーディオルームにご案内するなり本日の日程ですと、メンバーに次の資料をお渡しした。これで“座元”の気合の入れ方がお分かりいただけようか(笑)。

         

                     試 聴 会 の 日 程 (2014.8.26)

メンバー
K原さん、K林さん、Sさん、座元

 機器の状況


共通部分 : CDトランスポート「dCS ラ・スカラ」

       : DAコンバーター「ワディア 27ixVer.3.0」

       : 真空管プリアンプ・1号機(接続対象ユニット:AXIOM80、JBL375)

       : 真空管プリアンプ・2号機(接続対象ユニット:タンノイHPD385、AXIOM301)

 「AXIOM80」の試聴(3種類のアンプによる比較試聴)

  (1) WE300Bシングルアンプ(モノ×2台)
       

  (2) 「刻印付き」2A3シングルアンプ・1号機
  
  
  (3) 「71A」シングルアンプ・1号機
     
     ア ナス管

     イ 特別球

 JBL3ウェイマルチ・システムの試聴

  低音域 真空管プリアンプ・2号機(「6FQ7」電圧増幅管使用)

       真空管パワーアンプ 「VV52Bシングル」

       スピーカー  タンノイ「HPD385」(エンクロージャーはウェストミンスター)

  中音域 真空管プリアンプ・1号機(「6DJ8」電圧増幅管使用)

       真空管パワーアンプ 「刻印付き」2A3シングルアンプ・2号機
      
       スピーカーユニット  JBL375+ウッドホーン

  高音域 真空管パワーアンプ 「71A」シングルアンプ・2号機

        スピーカーユニット JBL075+ステンレスホーン

この資料に沿って、試聴会を進めたがメインはもちろん「AXIOM80」の試聴である。

結果から申し上げると、いつもの試聴会のように後になって悔やむことが実に多かった。よそ様のシステムを聴かせてもらうときは長所、短所がおよそ分かるのに、自分のシステムだとどうしてこんなに盲目になってしまうのだろうか。

たぶん、(機器に対する)勝手な思い入れのせいで冷静さを失って、つい贔屓目に見てしまうのだろう。試聴中の音質に対する意見交換では「3対1」で押しまくられて多勢に無勢、いかんとも抗し難かった(笑)。

詳報は次回ということで。 
    


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オーディオ週間

2014年08月26日 | オーディオ談義

今週(24日~28日)の日程は大忙し。すべてオーディオがらみの行事なのでまさに「オーディオ週間」。

ようやくお盆も過ぎ、朝晩過ごしやすい時季になってきてマニアのオーディオ虫がそぞろ動き出したとみえる(笑)。

24日(日)は福岡在住のGさん宅でのウェスタン・システムの試聴会(押しかけるメンバーは3名)。

26日(火)は我が家で「AXIOM80」現用者に限っての試聴会(迎え撃つメンバーは3名)。

そして最後の28日(木)はまた福岡に飛んでSさん宅の「PP5/400真空管+AXIOM80」の試聴会(押しかけるメンバーは4名)。

いずれも気心の知れた方々ばかりで楽しみなことこの上ない。オーディオの愉しみの半分以上は仲間との交流にあるといっても過言ではないが、もちろんその背後には各自が持つ独特の「感性の世界」が控えていて、切磋琢磨の“つばぜり合い”が秘かに演じられている(笑)。

「オーディオは本人の気に入っている音が出さえすればそれでいい」という言葉をよく聞くが、マニアにとって「それだけではちょっと人生淋しくはないだろうか」という気がしている。

生きているうちにどれだけの人たちを喜ばせてあげたか、どれだけの人の記憶に印象深くしかも長く留まることができたかはその人の人生の値打ちの一部分ではなかろうかなんて思うのである。たかが、オーディオの世界でも(笑)。

「いい音でしたねえ、あのときに聴いた音が今でも忘れられません。」という声を聞くのはまったくオーディオ冥利に尽きる・・・。

どうして急にこんな殊勝なことを言い出したのかというと、実は24日(日)にGさん宅の音を聴かせてもらってつくづくそう思ったのである!

                         

昨年のオーディオ訪問記で紹介したようにウェスタンの555ドライバー+ストレートホーンとジェンセンのウーファー(口径46センチ、フィールド型)をWE300Bシングルアンプ(モノ×2台)で駆動されていたのだが、1か月ほど前に「出力管を入れ替えて非常に満足してます。WE300Bはもう必要ありません!」との宣言を聞かされて、「エッ、天下の銘球を袖にするほどの球があったのか」と驚いた。

すぐにも駆けつけたかったが、Gさん宅は天神町の繁華街のど真ん中で老舗の和菓子屋さんを営んでおられ、お盆までは書き入れ時だったので、この日がやって来るのを1か月前からずっと心待ちにしていた。

今回の同行者は同じ福岡のKさん、そして湯布院のAさんの2名。            

当日はあいにく降りしきる雨の中を、鳥栖インター付近で交通事故発生のため大渋滞で一般道に迂回してひたすら福岡の中心部へ。おかげで予定の時間より30分ほど遅れて14時ごろに到着。
                
               

さっそく改造されたアンプを拝見。Gさんは年期の入ったアンプ技術者で器用にもドライバー管と出力管を同じ古典管(ナス型とST型)にしてあった。(後に自宅に帰ってよく考えてみると、この同一性が音質にメチャ利いていた!)

たかだか出力1ワット前後のこの球が、あの泣く子も黙るWE300Bを沈黙させたのかと一同かたずを呑む思いで耳を傾けた。

「これは素晴らしい!」と3名が異口同音に声を上げた。音の佇まい、音の透明感と抜け、吹き抜けるような爽やかな低音、いずれをとっても申し分なしで、さすがにウェスタン・システムが本領を発揮すると別次元の世界になる。ユニット間の位相調整にも緻密な配慮がされていて、振動板の位置やホーンの出口での合わせ方など苦労の後が偲ばれる。

念のため再びWE300Bを差し換えてもらって比較試聴したが、勝敗は明らかだった。ただし、誤解を招くといけないのであえて申し上げるとWE300Bがダメというよりも使っているSPユニットの能率や周囲の環境からしてこの古典管の方が(WE300Bよりも)相性がよかったというべきだろう。

少なくとも我が家ではWE300Bアンプは「AXIOM80」との相性においてエース的存在だからねえ(笑)。

それにしても「WE300Bさえ使っていれば安心」という安易な風潮の中でGさんは長年使ってきた愛聴管をよくぞ思い切って外したもので、そのチャレンジ精神には大いに感心した。

「素性のいい球、よく吟味した部品、シンプルな回路」が揃いさえすれば、たかだかペアで2~3万円程度の真空管が50万円(WE300Bオールド)ほどもする真空管を打ち負かすケースもあるのだからこれほどの痛快事はあるまいて(笑)。


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ブログはもう時代遅れ?

2014年08月22日 | 独り言

先週のことだが、お盆休みで帰省した娘が言うのには「お父さん、ブログはもう時代遅れみたいよ。あまり熱心にやらなくてもいいんじゃないの。」

日頃、付き合う仲間といえばオーディオがらみばかり、いかにも偏っているので情報不足は否めない。

「エーッ、もうそんなことになっているのか!しかし、手を抜くにしても中途半端な内容じゃあ、お父さんにもプライドってものがあるからな~」

「そうねえ、うちの会社のオジサンたちと一緒よねえ。」

と、(娘が)同感してくれたものの「たかがこの程度の内容のブログでプライド云々とは笑止千万!」という向きもあるかもしれないが(笑)、書いている本人にとってはこれが精一杯なので念のため。

それにしても、「音楽&オーディオの小部屋」の登載を始めてからおよそ8年になるが、ネットと人心の移ろいは“矢のごとし”で、うっかりしていると時代に取り残されてしまいそうだ。

そこで、はたして「ブログが時代遅れかどうか」検証してみよう。

☆ まず身の回りの現象から

現在このブログが所属しているのはNTT系の「グーブログ」だが、ひところに比べて加入者数の増加が頭打ち気味になっているのはたしかである。この1週間あまりを見ても、およそ205万にものぼる加入者数だが毎日増える数がほぼ300人前後で、往時の伸びと比べると明らかに頭打ちの傾向にある。

ちなみに「音楽&オーディオの小部屋」の日変わり順位はいつも700位前後をウロウロしている。

 ネット記事によると

次に「ブログは時代遅れ」をキーワードにググってみると、次のような興味深い二つの記事があったのでちょっと長くなるが引用させてもらおう。

 ブログはもはや時代遅れで会社や組織ではツイッターやFB中心の情報発信に切り替えているところが増えているらしい。またスマホの時代になりPCで閲覧するブログの形態が廃れ始めている。(抜粋)

 一口でソーシャルメディアといってもサービス毎に機能や特性、利用者のコミュニティが違いますし、必ずしも一つのサービスが排他的なモノではありません。
 
特にいわゆるツイッターのようなマイクロブログとFacebookやmixiのようなSNSに比べると、普通のブログというのは大きな違いがあります。それが今回のセミナーでも重要なテーマとなってくる「フローとストック」です。

Facebookやツイッターは基本的には一つ一つの発言がその日のうちに流れていってしまい、過去の発言が再注目される機会というのはほとんどありません、いわゆる「フロー」のソーシャルメディアです。

一方ブログというのは書いた記事が検索エンジンで上位に表示された結果長期間にわたり多くの人に読まれたり、昔に書いた記事を誰かがツイッターで紹介することにより記事を書いて半年経ってから注目されたり、ということが起きやすい「ストック」のソーシャルメディアということができます。

逆にストックのソーシャルメディアは、その分ストックとして意味あるコンテンツにするのはハードルが高いというデメリットがあります。つぶやきや写真投稿は誰でも気軽にできると思いますが、他人に役に立つ記事を書く、となると自信が無い、という方は少なくないでしょう。

実際、私も今のブログを始める前に3度ぐらいブログを開設しては挫折して放置、というのを繰り返していました。なにしろ当時はブログが更新されたかどうかを知る手段もほとんど無い時代。

固定読者をつかむためには「とにかく毎日更新する」が鉄則で、毎日更新することができないブログはなかなか人気を集めるのが難しい時代だったと感じています。

ただ、実はFacebookやツイッターのようなタイムライン型のサービスが普及したことにより、ブログは非常に始めやすくなっています。何しろFacebookやツイッターで友達と普段からつながっておけば、ブログを更新したらそこに投稿することで少なくとも友達にブログの更新を知らせることができます。

ブログのコメント欄にコメントがつくというのは日本では結構ハードルが高い行為だと言われていますが、Facebookやツイッター経由なら友達からのコメントもつきやすくなりますし、いいねボタンなどで反応も見えやすくなりました。

そして何より他の人がFacebookやツイッターで記事を紹介してくれることにより拡散性もブログしかなかった時代に比べると格段に変わっています。

実は、Facebookやツイッターが普及した今だからこそ、ブログはブログならではの役割に徹することができ、毎日だまってブログを更新できる継続力のある人だけでなく、幅広い方がブログを始めやすくなっているわけです。

以上のとおりで、非常に参考になった。ブログはたしかに手軽さやスピードの面で時代遅れの様相を呈しているものの、ストックとして生き残る道もちゃんと残されているようだ。

たとえば自分の過去記事が何の前触れも脈絡もなくいきなり閲覧記事の上位に来ることがたびたびあるがその理由がよく分かったし、また、パソコンよりもスマホの小さな画面でご覧になる方が多いというのは、今さらだが認識を新たにした。

したがって今後の留意点は次の二点にしようと決心した。

 長文を避けてなるべくセンテンスは短くして読みやすくしよう。

☆ 大きな写真(映像)の迫力で“お茶を濁そう”なんて“はしたない”考えはユメユメ持たないようにしよう(笑)。


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真空管アンプ礼賛!

2014年08月19日 | オーディオ談義

先週のこと、お盆休みで帰省した娘と恒例のウォーキングを済ませた後で、しかたなく付き合いで近くの本屋に立ち寄った。大概の本は図書館で間に合わせているので、興味があるのはオーディオ関連雑誌のコーナーだけ。

そこでふと目についたのが真空管アンプの専門誌「管球王国」Vol.73(2014 SUMMER)。

                

羽振りの良かったころは季刊ごとに必ず購入していたもので、「真空管アンプ大研究」の初刊から50号前後まで蔵書として自宅倉庫に大切に保管しているものの、“尾羽打ち枯らした”今となっては「1冊=2600円」がかなりの重圧となって定期購読を見合わせている最中(笑)。

今回も立ち読みで済まそうとペラペラと頁をめくっていると、「私のオーディオ遍歴/目指す音」とあって、「管球王国」執筆者の15名の方々のシステムが紹介してあった。

「管球王国に健筆を振るい卓見を披露する15人の執筆者は、オーディオとどう関わり、どのような音を求めてきたのか。それぞれの長いキャリアをふり返りながら真情を明かす。オーディオの愉悦の本質が、そこから見えてくる。」

しばし、ためらった後に「専門家のシステムを拝見するのは(面倒くさい理屈なんか抜きなので)手っ取り早く参考になるかもね~」と、購入することに決めた。

15人の執筆者の中にはとかく悪い噂を聞く人もいるようだが、人格と音は別なので実名を挙げるのはよしておこう(笑)。

いずれの方々とも、さすがに有名ブランドのシステムをポンと置いて安易に済ます人はいないようで、年期の入った機器類をよく工夫され使いこなされていて苦心惨憺たる結果が明らかに見てとれた。

しかし、昔と違ってこういう方々のシステムを拝見してもちっとも“うらやましい気分”にならないのは、いったいどうしたことだろう?

その理由をつらつら考えてみると、

 「
いい音と好きな音とはまったく別物だし後者となると受け止め方は千差万別なので、そもそも他人のシステムを聴かせてもらったところでピタリと自分の好みと一致することはほとんどあり得ない。」という諦めが長年の経験で骨身に沁みてきた。

 裏を返していえば、大型システムになればなるほどうまく鳴らすのが難しく、もしうまくいったとしてもきわめて個性的な(持ち主向きの)音になっており他人を容易に寄せ付ける音になっていない可能性が高い。

☆ 口幅ったい言い方になる
が、今年に入ってdCSのCDトランスポートの購入を皮切りに、古典管の購入などでようやく理想とする音に近づいた気がしているので、およそ50年にわたるオーディオ遍歴も「この辺でぼちぼち打ち止めかなあ」という心境になってきた。

この三点に尽きる。

さて、15名の方々の中で一番興味があったのは、自分が愛用している「AXIOM80」を片チャンネル4本も使って鳴らしているK氏だった。ちょっと長くなるが引用させてもらおう。(41~42頁)

「瀬川冬樹さんはJBLに傾倒する以前はグッドマンAXIOM80や様々なユニットを駆使したマルチアンプシステムをお使いになっておられました。オートグラフに到達するまでの五味康祐さんも、マルチウェイのスピーカーと苦闘されておられたと聞きます。混成旅団とは言い得て妙です。~中略~

AXIOM80の4本システムは私の理想とする音をすべて具現したスピーカーです。楓の無垢のエンクロージャーに装着していますが、これからは天上の音が聴こえてきます。~中略~

AXIOM80もWE594もハートレイも真空管アンプで鳴らさないといけません。計測の領域では半導体アンプでもまったく同じ特性のアンプを作ることはできます。実に容易にできます。でも、たとえば45シングルと比べるとその音は全然違うのです。半導体アンプからは透明感に満ちた、あでやかな音色など聴こえてこないのです。

これこそ真空管アンプをつくる理由そのもので物理領域と感性/精神領域を隔てるものが何であるかが骨身に沁みて理解できるでしょう。これこそが真のオーディオで、この”何か”が大切なのです。高音が出る、低音が出る、定位が良い、綺麗な音だという月並みな世界のさらに奥深いところにある精神的な領域なのです。

“そんな神がかったことを”とお思いでしょう。でもそんな瞬間はどなたも経験されているはずです。ただ気がつかないだけです。」

以上のとおりだが、片チャンネル「AXIOM80」4本も使うなんていったいどういう音がするんだろう?一度、同好の士とクルマをすっ飛ばして聴きに行きたいなあ。

         

また、この文中では真空管アンプがやたらと礼賛(らいさん)されているが、本誌自体が真空管アンプ普及の趣旨から発行されているので幾分割り引く必要はあるかもしれないが、その内容については自分も同感である。

このところ一時的にプリアンプだけをTR式にと気分転換してみたが、それなりの良さは感じたものの今では元通りに真空管式のプリアンプに戻してしまった。いろいろ欠点はあるが魅力の方が遥かにそれを凌いでしまう。

また、文中の「混成旅団」は自分もつい最近のブログで何気なく使ったことがある。JBLとタンノイの機器による現行の3ウェイマルチ・システムを称して「混成旅団」と称したわけだが、それ以外の言葉が浮かんでこなかったのは奇貨とすべきかな(笑)。

終わりに、例によって「シルバー川柳」から3句ほど紹介。これが最後です。

 土地もある 家もあるけど 居場所なし

 無病では 話題に困る 老人会

 万歩計 半分以上 探し物


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裸足のままで弾く女流ヴァイオリニスト

2014年08月16日 | 音楽談義

去る7月27日に投稿したブログ「女流ヴァイオリニスト」の中で紹介した「パトリツィア・コパチンスカヤ」。モルドヴァ生まれの新進演奏家として現在大いに注目されている存在。

               

クラシック専門放送「クラシカ・ジャパン」(CS放送)での初演は8月10日(日)だったので、興味津々で録画した。曲目はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。

番組では本人へのインタビューと練習風景も収録されていたが、容姿は写真でご覧のとおりでまず期待を裏切らぬものだったが、性格の方も非常に活発でよくしゃべり、しかもよく動くタイプで演奏中は「裸足の習慣」というのには驚いた。(実演の際は長いドレスで隠されていた。)

専門家ではないので音程の正確さとかの腕前の良し悪しは判断がつかないが、音楽としては十分鑑賞に耐えるもので終演後に観衆の万雷の拍手で包まれたのがそれを証明している。

          

試聴したシステムはテレビ視聴のときは普通リチャード・アレンの「ニューゴールデン8」で聴くのだが、今回は特別なので「真空管プリアンプ+WE300Bアンプ(モノ×2台)+AXIOM80」の本格的な組み合わせで聴いたが、衛星放送はやや音が薄っぺらい印象をいつも受けるが、何といってもCDシステムと比べるのは酷というものだろう。

両者について「音の入り口」としての位置づけからすると衛星アンテナとチューナーとでたかだか4万円程度の機器と、片や7桁(定価)にものぼるdCSのCDトランスポート(ワディアのDAコンバーターは共通)では“はな”から勝負は見えているが、映像付きで鑑賞できるのは大きなメリットだろう。

いつぞやのブログでベストセラー作家の百田尚樹さんが執筆中にクラシックを聞き流す習慣があるというのを記載したことがあるが、それ以降、畏れ多くも自分も百田さんにならってブログの原稿を作成するときにクラシックを聞き流している。

この習慣はもう半年以上になるが、CDだと終わるたびに立ち上がっての入れ替え作業が面倒なので最近は「クラシカジャパン」の録画番組をかけ流しているがとても便利がいい。

音質的に細かいことを言わずに「ながら聴き」をするのには(クラシカジャパンは)最適だ。

お気に入りの音楽はCDで聴く、その一方で衛星放送で新進アーチストの発掘や馴染みのない曲目に親しむ機会を得るという、この二つの棲み分けは今のところとても気に入っている。

最後に例によって「シルバー川柳」(全26句)から秀作を3句紹介しよう。

〇 味のある 字と褒められた 手の震え

〇 誕生日 ローソク吹いて 立ちくらみ

〇 まだ生きる つもりで並ぶ 宝くじ
 


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レイセオンの整流管「VT-244」

2014年08月14日 | オーディオ談義

長年、オークションで真空管漁りをやっているとブランド名と型番を見ただけでピ~ンとくることが多くなった。これは明らかに成長の証しではなかろうか(笑)。

今回は「RAYTHEON(レイセオン) VT-244 5U4G 2本の出品」
がそうだった。

        

オークションの説明文は次のとおり。 

みなさんご存知の通り、大変貴重な軍箱元箱入りの真空管です。確か同一ロッド番号の真空管と伺っています。以前になりますが、秋葉原の太〇洋で購入して長く保管していたものです。 特にゲッターは、たっぷり有り長く使えるものだと思います。ヘッドの焼けもなく長く使えそうです。

昔の物である事を 御理解いただける方、御活用いただける方が居られましたら、御入札下さい。非常に古い真空管という品物の性質上、ノークレーム、ノーリターン(返品不可)でお願いいたします。写真で判断いただける方、現状にてお願いします。

レイセオン、しかも軍事用(選別球)とくれば涎が出そうな逸品である。また「VT244=5U4G」(直熱管)とあれば汎用性も十分でいろんなアンプに使えそうだし、さらに出自が秋葉原の太〇洋さんとなるとこれ以上たしかなものもあるまい。

「これは絶対落とそう」と思ったが、念のため同じ「AXIOM80」愛好マニアのKさん(福岡)に伺ってみた。とにかく真空管に関してKさんほどの詳しい方にはこれまでお目にかかったことがない。

「オークションの話ですがレイセオンのVT-244が新品のペアで出てますが、これは買いでしょうかね?」

「えーッ、これまで噂には聞いてましたが遂に現物が出ましたか。ちょっとパソコンで確認してみますからお待ちください・・・・・。RCAのVT-244(軍用)はちょくちょく出品されますがほとんど中古です。レイセオン製にお目にかかるのは初めてですがそれも新品ですね~。これはとんでもない稀少管ですよ。今のところ値段も安いしこれは絶対に買いです!自分が欲しいくらいです。」

真空管マニアの中には「レイセオン党」というのがいるそうで、同社の真空管を見つけては型番を問わず買い漁るといわれるほど、品質が良くて間違いのないブランドである。現在はミサイルメーカー(アメリカ)として名を馳せているが軍事産業のため広告宣伝の類はいっさいしないので知る人ぞ知る存在である。

同社はその昔、真空管を作っていた時代があり当時のモノはいまだに珍重されていて、自分もいろんな型番を持っているが
いまだかってハズレたことがない。

Kさんの強力な後押しもあって「絶対落とそうと心に誓った」(笑)。

スタート価格は「9999円」で信じられないほど安いが、オークションは生き馬の目を抜く世界なのでとてもこんな価格で収まることはあるまいと踏んで一気に勝負に出た。大奮発していきなり「51000円」で入札。実を言うと手持ちの中古機器を売ったおかげで、日頃に似合わず軍資金がそこそこあってちょっと気が大きくなっている。

落札日時は8月7日(木)の20時14分。今回ばかりはさすがに20時台とあって就寝せずにじっと見守っていると、不思議なことに強力なライバルが現れることなく、すんなり15500円で落札!もう信じられないほどの拍子抜け~(笑)。

翌日(金)、相手側の取引ナビを確認してから急いで該当額を振り込んだ。現品が手元に来るまで、相手側の心変わりがあったりしたら大変だからねえ。

そして手元に届いたのが11日(月)の午前中だった。

           

舌なめずりしながら、新装なったばかりの「WE300Bシングルアンプ」(モノ×2台)の整流管を「WE422A」(傍熱管)から、この「VT-244」(直熱管)に差し換えて試聴してみた。規格は合っているはずで駆動するスピーカーは「AXIOM80」。

ちなみに、整流管によって真空管アンプの音質はコロコロ変わるので胸がワクワクする。

ウ~ン、これは凄いッ!

あれほどの輝きを放っていた「WE422A」が急に色褪せて聴こえた。この真空管は音声信号のあらゆる情報を何でもかんでも露わに出してくるところがあって、それが長所であり、逆に言えばちょっと節度に乏しい面があったが、「VT-244」は必要な情報をきちんと整理して出してくる奥床しさを感じるし、音が実に柔らかい、そして出力管のWE300Bとは同じ直熱管ということもあってか相性の良さを感じた。

これでは断然「VT-244」に軍配をあげたくなる。お値段はWE422Aの方が圧倒的に高いが真空管は必ずしも値段で決まらないところが面白い。

すぐに、Kさんにご注進。「レイセオンのVT-244が到着しましたので、さっそく422Aと差し換えて試聴したところ段違いでしたよ。」

するとKさん「今だからこそ言いますが、ウェスタンの422Aは以前私も使ってましたが、ちょっとガサツなところがありますね。出しゃばりなので実はあまり好きな球ではありません。それはもうVT-244の方がずっと上です。レイセオンの球は一本芯が通ってますから安心して聴けますよ。これは冗談ですが、〇〇さんにウソの情報を教えてほんとうは自分が落札したかったんですけどねえ(笑)」。

Kさんを悔しがらせたのはこれで2回目である。1回目は今年(2014年)の3月に東京の〇〇堂さんから1940年代製の「刻印付き2A3」(ヨーロッパ)をいっきに3ペア買い占めて「在庫なし」にしてしまったこと。この刻印付き2A3は1枚プレートの2A3(アクチュラス)でさえも出せない音があるそうで、今や我が家の秘宝的存在になっている。

現在、JBL3ウェイマルチ・システムのうちの「375」ドライバーを駆動中でまさに中心的な存在だが、いくら親友とはいえ、「いい真空管=いい音」の前には“友情”なんぞは構っておられないんだから~。まさに「仁義なき戦い」(笑)。

最後に、例によって「シルバー川柳」(全26句)から秀作を3句ほど紹介してみよう。

〇 カードなし ケータイなし 被害なし

〇 LED 使い切るまで 無い寿命

〇 おじぎして 共によろける クラス会

  


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モーツァルトはほんとうに天才?

2014年08月12日 | 復刻シリーズ

先日のこと、「林修の今でしょ!」(テレビ番組)を観ていたら、「学校で教えてくれない音楽の知られざる秘密」というタイトルで特集を組んでいた。

一般の人にはちょっと敷居が高いとされるクラシック音楽を身近に分かりやすく解説してもっと親しんでもらおうという目論みで、解説はヴァイオリニストの「葉加瀬太郎」氏。

冒頭に「すべての芸術は音楽の状態に憧れる」(イギリスの文学者)という言葉が紹介された。

その意味は、たとえば同じ芸術の範疇にある文学の場合はどうしてもその時代の道徳とか社会のルールに制約を受けてしまう、一例をあげると一夫多妻制の国と一夫一妻制の国とでは、複数の女性を愛したときの文章表現がどうしても変わってしまう。

その点、音楽は音符の組み合わせによって調べを作るだけなので、言語の違いなどを含めて何ら制約を受けることなくあらゆる国境を乗り越えて人の心に沁みこみ親しまれるという趣旨だった。

「音楽は哲学よりもさらに高い啓示である」と言ったのはベートーヴェンだが、芸術はスポーツなどと違って順番を付けるのはまったく意味が無いなので「音楽はあらゆる芸術の中で最高だ」なんて野暮な話は抜きにしよう(笑)。

さて、本題に戻って、この番組の中で葉加瀬氏が「モーツァルトは天才です。次から次に楽想が浮かんで音符を書くのが追いつかないほどで彼の楽譜に接するたびに天才と対面している思いがします。」と言っていた。

これまで「モーツァルト天才説」は耳にタコができるほど聞かされてきたが、はたしてほんとうの意味で天才だったのだろうか?

モーツァルトファンのひとりとして大いに興味があったので以前、このブログで検証したことがあるが何せ随分昔のことなので、ここで改めて以下のとおり再登載させてもらおう。

ご存知のとおり、人間一人ひとりは生まれながらにして風貌も違えば五感すべての感受性も違うし、運動能力にも天地の違いがある。 

そして、その差が遺伝子の相違に起因することは疑いがない。さらに人間はこの遺伝子に加えて生まれ育った環境と経験によっても変容を遂げていく。そうすると、一人の人間の人生行路に占める遺伝子の働きの割合は”どのくらい”と考えたらいいのだろうか。 

この興味深いテーマを天才の代名詞ともいうべきモーツァルトを題材にして解明を試みたのが次の本。

「モーツァルト 天才の秘密(2006.1.20、文春新書)

                           

著者の中野 雄(なかの たけし)氏は東大(法)卒のインテリさんでケンウッド代表取締役を経て現在、音楽プロデューサー。
 

自然科学の実験結果のようにスパッとした解答が出ないのはもちろんだが、脳科学専攻の大学教授の間でも説は分かれる。「知能指数IQの60%くらいは遺伝に依存する」との説。「脳の神経細胞同士をつなげる神経線維の増やし方にかかっているので、脳の使い方、育て方によって決まる」との説などいろいろある。

集約すると「およそ60%の高い比率で遺伝子の影響を受けるとしても残り40%の活かし方で人生は千変万化する」とのこと。モーツァルト級の楽才の遺伝子は極めて稀だが、人類史上数百人に宿っていたと考えられ、これらの人たちが第二のモーツァルトになれなかったのは、生まれた時代、受けた教育も含めて育った環境の違いによるとのこと。

この育った環境に注目して
「臨界期」
という興味深い言葉が本書の52頁に登場する。

これは、一定の年齢以下で経験させなければ以後いかなる努力をなそうとも身に付かない能力、技術というものがあり、物事を超一流のレベルで修得していく過程に、「年齢」という厳しい制限が大きく立ちはだかっていることを指している。

顕著な一例として、ヨーロッパ言語の修得の際、日本人には難解とされるLとRの発音、および聴き取りの技術は生後八~九ヶ月が最適期であり、マルチリンガルの時期は八歳前後というのが定説で、0歳から八歳までの時期が才能開発のための「臨界期」というわけである。

もちろん、音楽の才能もその例に漏れない。

ここでモーツァルトの登場である。
幼児期から作曲の才能に秀で、5歳のときにピアノのための小曲を、八歳のときに最初の交響曲を、十一歳のときにオペラを書いたという音楽史上稀に見る早熟の天才である。

モーツァルトは産湯に漬かったときから父親と姉の奏でる音楽を耳にしながら育ち、三歳のときから名教師である父親から音楽理論と実技の双方を徹底的に叩き込まれている。

この父親(レオポルド)は当時としては画期的な「ヴァイオリン基本教程試論」を書いたほどの名教育者であり、「作曲するときはできるだけ音符の数を少なく」と(モーツァルトを)鍛え上げたのは有名な話。

こうしてモーツァルトは「臨界期」の条件を完璧に満たしたモデルのような存在であり、この父親の教育をはじめとした周囲の環境があってこそはじめて出来上がった天才といえる。

したがって、モーツァルトは高度の作曲能力を「身につけた」のであって、「持って生まれてきた」わけでは決してない。群百の音楽家に比して百倍も千倍も努力し、その努力を「つらい」とか「もういやだ」と思わなかっただけの話。

そこで結局、モーツァルトに当てはまる「天才の秘密」とは、育った環境に恵まれていたことに加えて、「好きでたまらない」ためにどんなに困難な努力が伴ってもそれを苦労と感じない「類稀なる学習能力」という生まれつきの遺伝子を持っていたというのが本書の結論だった。

これに関連して小林秀雄氏の著作「モーツァルト」の一節をふと思い出した。
  

この中で引用されていたゲーテの言葉
「天才とは努力し得る才だ(エッカーマン「ゲーテとの対話」)に対する解説がそうなのだが、当時はいまひとつその意味がピンとこなかったが、ここに至ってようやく具体的な意味がつかめた気がする。

「好きでたまらない」ことに伴う苦労を楽しみに換える能力が天才の条件のひとつとすれば、かなりの人が臨界期の環境に恵まれてさえいれば天才となる可能性を秘めているといえるのではなかろうか。
天才とは凡人にとって意外と身近な存在であり、もしかすると紙一重の存在なのかもしれない。

とまあ、以上のとおりだが「天才」という言葉は「天賦の才」という意味であって、人工的に手を加えられた才能ではないと思うので、巷間「モーツァルト天才」説を聞くたびにいつも違和感を覚えてしまう。

ただし、「類稀なる学習能力こそ天才の証しだ」と、反論される方がいるかもしれない。

皆さまはどちらに組しますか?
 


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賭けは大当たり!

2014年08月09日 | オーディオ談義

寄る年波には勝てず「身辺整理」の一環としてもはや使う見込みのない、いろんなオーディオ機器をNさん(大分市)を通じてオークションに出品してもらい出してからおよそ2か月あまり。

今のところ売れ行き好調でまずはひと安心。

たとえばワディアのCDトランスポート「270」、ウェスタンのラインアウト・トランス「543A」、そして古典管などだが、思わぬ収入が入ってホクホクである。

ちなみに「543A」は20年ほど前に「10万円」で購入したものだが、スタート価格「5万円」で出品したところ、たった1クール(6日間)のうちに「12万円」で落札されるのだからたまらない。散々楽しんだうえに儲かるのだからさすがは名門ブランドのウェスタン・エレクトリックさん(笑)。

さて、今回Nさんに出品をお願いしたものの中に「AC/HL」(エジソン・マツダ)という電圧増幅管があった。オークションでもほとんど見かけることのない稀少な古典管である。一般的には欧州の名三極管として知られる「PX25」出力管のドライバー管として使用されることが多い。

この真空管を見てNさんがポツリと一言。「こんな球をオークションに出すなんて勿体ないなあ!WE300B真空管のドライバー管に使うと面白いかもしれないねえ。全国でも滅多にないと思うよ。」

「ホウ、そうですか。我が家にも300Bアンプ(モノ×2台)がありますよ。今のところ、音質に不満はありませんがもしかしてもっと良くなる可能性があれば乗ってもいいですよ。改造できるかどうか一度現物を見てみますか?」

そして後日、売れたオーディオ機器の精算のためにNさん宅へ訪れたついでに、半信半疑ながら300Bアンプを持って行ったところ、じっくり回路を見られたNさん「これなら改造できそうです。しかし、望みの音質が出ない可能性もあるのでその時に文句を言われても困ります。最終的には〇〇さんの決心次第ですが。」

「もう乗りかかった船です。思い切ってやってみましょうかね。」

正直言って自分の場合、これまでのオーディオ投資は半分は賭けのようなものだし、ハズレも数知れぬほど体験している。そういうときは授業料だと割り切ることにしているので期待外れのときのストレス耐性はある程度出来ている積もり(笑)。

まあ、「サマージャンボ」並みではないにしろ「真夏の大博打」というわけだが、N
さんの現在のシステムは「レコードプレイヤー+プリアンプ+WE300Bシングルアンプ(自作:モノ×2)+アルテックA7」で、実にいい音がしていて300Bアンプの制作には手練れの方なので安心して任せられる。

そして待つことおよそ20日間あまり、Nさんから待望のご一報が入った。

「アンプが一応出来上がったのでエージングを兼ねて我が家のシステムを鳴らしてみたところ、想像以上にいい音が出てますよ。一度聴いてみますか?」

さっそくNさん宅へすっ飛んで行ったのは言うまでもない(笑)。8月6日(水)の午前中のことだった。

試聴した結果「いやあ、いいですねえ!」ハム音などのノイズがいっさいないし、一音一音が磨かれて出て来る印象を受けた。こうなると早く我が家の「AXIOM80」を繋いで鳴らしてみたいばっかり。

「もっとエージングを」と渋るNさんを尻目に強引に取り上げて我が家へ一目散(笑)。

           

ここで、改造したアンプの構成を述べておくと、

初段管に「ECC82(テレフンケン)」、ドライバー管に「AC/HL」、出力管「WE300B」(1957年製)、整流管「WE422A」。

感度の鋭い「AXIOM80」に繋いでもいっさいノイズなしで、静寂そのものの「音の佇まい」に加えてひたすら透明感が漂う音響空間、そしてその音色たるや・・・・。

自画自賛はみっともないのでこの辺にしておくが、「笑いが止らない」というのはこういうことを指すのだろう。エージングを続ければもっともっと良くなること間違いなし。これなら現在使用中の「刻印付き2A3」アンプ・1号機といい勝負だろう。

賭けは大当たりだった!

久しぶりに血沸き肉躍る思いがしたが、やっぱりオーディオはときどき“のるかそるか”の大博打をするに限る(笑)。

なお、これまで「AXIOM80」にはマッキントッシュのプリアンプ「C28」を使っていたのだが、改めて真空管式のプリアンプと比較試聴したところ後者に軍配が上がった。あくまでも我が家のシステム環境での話だが、柔らかな響きと細かい情報量にかなりの差があった。やっぱり、相性の問題もあって良し悪しは一概に決めつけられないようだ。

最後に話はまったく変わるが、最近、知人からもらった「シルバー川柳」(全26句)に腹を抱えて笑ってしまった。その中から、3句ほど紹介してみよう。

〇 「医者と妻 急にやさしく なる不安」

〇 「目覚ましの ベルはまだかと 起きて待つ」

〇 「いびきより 静かな方が 気にかかる」

 


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「デッド or ライブ」

2014年08月07日 | 復刻シリーズ

ブログを始めてからおよそ丸8年が経過し、upした記事が2000件ともなると昔作った記事のタイトルや内容がすっかり忘却の彼方にあることが再々ある。

去る1日(金)のこと、例によって朝一で前日の「アクセス解析」の中の「頁ごと閲覧数」を見てみると1位が「デッド or ライブ」となっており、何と投稿日時は3年前の2011年8月28日。

「アレッ!こんな記事を載せたことがあったかな?」(笑)

書いた本人が忘れているくらいだから、この拙いブログをずっと追いかけていただいている方々(感謝です!)もおそらく覚えていない人が多いに違いない。

というわけで、これから「復刻シリーズ」と銘打って過去記事を今風にアレンジしながらときどき登載させてもらうことにした。

それでは、前置きをこのくらいにして復刻シリーズの第1号「デッド or ライブ」を。

つい先日のブログ「レコードはCDよりも優れているのか?」の中で紹介した「響きの科学」(2011.6、ジョン・パウエル著)。

                    

音楽好きの物理学者が書いたというこの本には、もうひとつの重要な事柄が記載されていた。それは「部屋の音響効果」

オーディオマニアなら、改めて「部屋」(音響空間)の重要性について述べる必要はあるまいと思うが、念のため本書の要旨を記載してみよう。

「部屋の大きさと壁や天井を覆う材質によってその部屋の音響的な“生気”が決まる。家具が沢山おかれ、分厚いカーテンを引いた小さな部屋では響きはほぼすぐに消える。そういう部屋は音響的に“死んで”いる。

壁の固い広い部屋では音が壁に数回反射してから響きが消える、こうした部屋は“生気”があると形容される。音が部屋中に反射して響きが長く持続することは好ましいが、それぞれの音が反射して出来た響きが重なり合い、一つの長い音として耳に届くことがもっとも望ましい。

部屋の壁どうしが遠く離れていれば反射と反射の間に時間がかかり過ぎて、長く持続する一つの音として聴こえず、音の消えた後に間が空き、それからまた音が聞える。これは“こだま”(エコー)という好ましくない効果だ。

コンサートホールの設計者は聴衆がエコーではなく心地よい残響を十分に楽しめることを目指しているが、どちらの効果も壁や天井、床に反射することから生じるものであるため、バランスを取るのは難しい。

コンサートホールのような大きな空間には壁と壁との間の距離が遠いという避けがたい特徴があり、反射した音が長い距離を移動しなければならない。

たとえばヴァイオリンから出た音は遠く離れた壁まで行き、またもや長い距離を移動して耳の鼓膜に達するが、楽器から直接耳に届く音は遠回りせずに真っ先に到着する。そのため、二つの音が別々の事象として、一方がもう一方のエコーとして聞えるのだ。

小さな部屋では音が壁まで行って帰ってくる距離と直接届く距離との差があまりないため、反射した音波と直接届いた音はほぼ同時に耳に到着する。

二つの音の到着する時間の差が4万分の1秒以下なら、人間の聴覚はどちらも同じ一つの音として認識する。時間の差が4万分の1秒を超えるのは反射した音の往復距離がヴァイオリンから耳の鼓膜までの直線距離よりも12メートル以上の場合に限られる。」

とまあ、以上のような内容だった。

巷間、よく耳にする話として音響技術の専門家の意見を入念に取り入れて作ったNHKホールは代表的な失敗事例のひとつであり、佐治さん(サントリーの経営者)の主張によって海外の著名なホールをそっくり真似たサントリーホールは成功事例となっているそうで、ことほど左様に大きな空間の音響効果をうまく実現するのは専門家でも至難の技とされている。

さて、問題なのはオーディオマニアにとっての「小さな部屋」で、まあ、人それぞれだが概ね6畳~20畳程度に収まるのではあるまいか(笑)。

上記の説によってその音響空間を検証してみると次のようになる。

聴取位置がスピーカーから4m離れた場所とするとほぼ同時に聴こえる4万分の1秒以内に収まる往復距離は16m(4m+12m)となる。

このことはスピーカーから壁の距離までが8m以内であれば、スピーカーから出た音は直接音と反射音とが同時に聴こえることを意味している。

結局、「小さな部屋」で聴くときは「デッド」よりも、圧倒的に「ライブ」の状態で聴いた方がいいということになる。(第二次以降の反射音も無視できない)。

これを読んでからすぐに反射音を念頭に置いて我が家のオーディオルームの対策に取り掛かった。分厚いカーテン4枚を取り払い(下の画像)、薄いレースのカーテンだけにして不要な荷物を部屋から出すといった調子。

           

おおむね以上のような内容だったが、この記事の内容をすっかり忘れていたとみえて、2014年8月1日現在、スピーカーの前の床に長い敷物を置いていたので慌てて撤去した。

まったく「仏作って魂入らず」だなあ(苦笑)。
 


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「位相調整」にオーディオの奥深さを見る

2014年08月05日 | オーディオ談義

オーディオをやり始めのころはとにかく知識を得ようと闇雲にいろんな本を読んだものだが、今となってはずっと記憶に残っているのは五味康祐さんの「西方の音」「天の声」そして菅原昭二さんの「ジャズ喫茶“ベイシー”の選択」ぐらい。(瀬川冬樹さんのエッセイは単行本ではないので除く。)

オーディオに関して人にアドバイスするほどの資格はとても持ち合わせていないが、もし「何か参考になる本を紹介してください」と、問われたら真っ先にこの三冊を挙げる。

ただし、前二冊はクラシックの愛好者向きなので、純粋なマニア向きという観点からするとやはり「ベイシーの選択」に落ち着く。

               

本書の122頁に次のような箇所がある。

「能率100デシベルを軽く超えるジムランの大型3ウェイ・マルチスピーカーシステムは相手にとって不足はないが“レベル調整”と“位相調整”には手を焼く。

完成品の名器をお使いの方は、このスピーカーシステムの“位相調整”の苦労はあまり経験しなくて済むので気が狂うことがない代わり、ある部分“勉強不足”で生涯を終えるかもしれないが、気が狂ったまま終えるよりはまだ“まし”かもしれない。」

ここで「位相って何?」という方もおられるかもしれないが、簡単に表現すると誤解を招く恐れがあるので別途ググって研究していただくことにしよう(笑)。

さて、この文章には明らかに著者独特の諧謔的かつ逆説的な意味が込められており、自分には「位相調整の苦労を体験しない人はオーディオの奥深さを最後まで味わえない」と、読めて仕方がない。

前置きはこのくらいにして実はつい最近、この位相調整の難しさを身をもって体験したので「生きた教材」として紹介してみよう。

オーディオ仲間のGさん(福岡)が恒例の夏休みの家族旅行(別府の大型レジャーホテル)の途次、「ちょっと時間が出来ましたので」と我が家に立ち寄られたのは7月31日(木)の午後のことだった。

Gさん宅には昨年の10月下旬に訪問させていただき、自作されたWE300Bアンプでもって心ゆくまでホーンシステムの音を堪能させていただいた。

         

Gさんはものすごく耳のいい方でいつも貴重なご意見をいただいているが今回の試聴もそうだった。

というのは、例によってはじめに「AXIOM80」(以下「80」)を聴いていただいたところ、「ちょっと両方のユニットの間で位相がずれているようですよ。何となく違和感があります。」

以下、かなり専門的な話になるが悪しからず~。

我が家の「80」システムは、ここ3週間ほど「80のフルレンジ+AXIOM301」に落ち着いている。

                       

「AXIOM301」(口径30センチ。以下「301」)ユニットをサブウーファー代わりに使っており、いわば変則2ウェイシステム。

愛用している「80」の良さは改めて言う必要もないが、どうしても低音域に物足りなさを覚えるのでそれを補うために「301」の方に8.3mh(ミリヘンリー)のコイルをSPコードのプラス線に挿入しておよそ200ヘルツ(6db/oct)でハイカットしている。同じ「AXIOM」ブランドのユニットの組み合わせとあって、双方の音色にあまり違和感がなく今のところ狙いが的中した印象を持っている。

ところが、Gさんによるとこの「301」のSPコードにコイルを挿入したことにより「80」との間で位相のズレが生じており、もし位相を合わせようと思ったら、「80」側のSPコードにコンデンサーを挿入しなければとのご指摘だった。

これは聴感上、本当にごくごく微妙な差での話だが理論的に説明を受けると成る程と納得。しかし、本丸の「80」にコンデンサーを挿入することはそれなりの音質の劣化があるだろうし、なかなか迷うところ。

そこで、とりあえず次の二つの対策を講じてみた。

 「301」のSPコードのプラスとマイナスに新たにコンデンサー3個(24μF+20μF+20μF)を並列に挿入して、ハイカットをおよそ300ヘルツ(12db/oct)とし、次にSPコードのプラス、マイナスを逆にしてアンプ(PX25シングル)と接続。両者の周波数の重なる部分を少しでも減少させる作戦。


           

 もう一つの方法はGさんが仰るように正攻法として「80」のSPコードのプラス線にムンドルフのコンデンサー(150μF)を直列に挿入し、「301」の方は従来どおり8.3mhのコイルを挿入するだけにする。これで「80」と「301」の双方が肩落ち「6db/oct」となる。なお、「301」のSPコードのプラス、マイナスを逆接続にする。

これで、両方を比較試聴してみると、プラス、マイナスがあってどちらとも軍配を上げ難い気がして大いに迷ってしまうが強いて言えばどうやら後者に分がある印象を受けた。

ただし、最終判断までにはもっと時間が欲しいところで今回、改めて位相調整の難しさをホトホト痛感した!

「ベイシーの選択」の著者の菅原さんが「気が狂う」と形容されたとおりである(笑)。

 


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音楽愛好家のご来訪

2014年08月02日 | オーディオ談義

去る27日(日)に福岡から「音楽愛好家」のMさんとNさんがお見えになった。

わざわざ「音楽愛好家」としたのは、明らかにオーディオよりも音楽への比重が大きい方々だからである。たとえば自分の場合でいえば、音楽:オーディオの比率が6:4だとすると、およそ8:2ぐらいの比率といってもいいくらい。

奇しくも、ご両名ともタンノイ・オートグラフを愛用されており、Nさん宅には昨年の11月に訪れている。当時の写真を再掲すると、

         

         

レコード愛好家の垂涎の的であるトーレンスの「リファレンス」を2台も持っておられて、当時ウットリとその音に聴き惚れたものだった。

こういう方々に我が家の音を聴いてもらうのはたいへん光栄だし、ありがたいことだが、その一方では不安がいっぱい(笑)。

我が家の2系統のシステムのうち「AXIOM80」はフルレンジだし、十分鳴らし込んでいるので無難なユニットとしてある程度評価していただく自信はあるが問題は第二システムのタンノイとJBLの混成旅団(以下、「混成旅団」)である。

                

ウーファーにタンノイの「HPD385A」、中高域に「JBL375」とJBL「075」と、おそらく日本どころか世界でも類を見ない組み合わせだから、「タンノイの回し者」とまで言われた作家の「五味康祐」さんが、もしご存命なら“怒髪天を衝く勢い”できっと怒られたに違いない。

生粋のタンノイ愛好家のNさんたちからも試聴の結果、叱責(?)のひとつやふたつは覚悟しておかねばなるまいというのがホンネで「これは音が鳴っているだけだ。音楽を聴くシステムではない!」なんて断罪されたらどうしようとハラハラドキドキ(笑)。

しかし、現役を退いてからもこういうハイテンションを味わったり、数多くの愛好家の方々との交流の機会が得られるのだから、まったく「音楽&オーディオ」の趣味“さまさま”である。

当日は午後2時半頃にお見えになった。Nさんの我が家へのご来訪はたしか4度目くらいなので、迷わずご到着。

さすがに混成旅団を最初に聴いてもらう勇気はないので、先に「AXIOM80」をきいてもらい、ある程度満足していただいたところで「混成旅団」を聴いてもらおうという作戦を立てた。

まず持参していただいた中からNさんがおもむろに取り出されたのが次のCD。

       

さすがに音楽愛好家のNさん!崇拝してやまない「ジネット・ヌヴー」(女流ヴァイオリニスト:飛行機事故で死亡)のファースト・レコーディング集を聴けるなんて感激である。

まるで男性みたいな線の太い音がいきなり鳴り響いた。誰もが「これが女性の弾く音ですか?」と驚くことだろう。1940年代の録音だから音質は悪いが、芸術性はそれを軽く凌駕する。しかも、ヴァイオリンを得意とする「AXIOM80」ならではの音の佇まいに、システムの主(あるじ)としてもちょっと鼻が高い(笑)。

「ヌヴーのヴァイオリンは三味線でいえば棹の部分が太いそうですよ、力の入れ具合をよほど工夫しないとうまく鳴ってくれません。」と、Nさん。

「そうですか、道理で。まるで男性顔負けですよね。ヌヴーがもっと生きていたら、世界のヴァイオリン界もさぞや変わっていたことでしょう」。ずっといつまでも聴いていたかったが、沢山のCDを持参されていたので3曲ほど聴かせてもらって次の曲目へ。

音楽好きのNさんのレパートリーは実に広い。クラシックからタンゴ、ラテン、歌謡曲、演歌までいろんなジャンルを聴かせてもらったが、特にラテン系がお好きなようで、「日本人の郷愁に相通じるものがありますよ」とのことだった。ちなみにアルゼンチンの名花ヒメマリア・イダルゴのレコードをお持ちなのには恐れ入った。

その一方、Mさんが持参されたCDは往年の名指揮者フルトヴェングラーによるベートーヴェンの交響曲シリーズ。はじめに1944年録音の「第3番英雄」、そして同じく1940年代の録音の「第九」。

交響曲の再生は「AXIOM80」には無理なので、ようやく混声旅団の出番となった。幸い、フルヴェンのCDは1940年代のSP録音なので、音質はイマイチだしどうやら馬脚を現さないで済みそうだとホッと一息(笑)。

なお、Mさんの音楽好きもNさんと負けず劣らずで、フルヴェンのCDが済むと、今度は同じくベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲群(12番~16番)を所望された。

これら後期の作品の中で自分が秘かに白眉と考えているのは「第14番」(作品131)である。

「ブッシュ弦楽四重奏団のはありませんか」と、問われたものの、惜しいことに手元にあるのは「アルバン・ベルク」「バリリ」「カペー」「スメタナ」各四重奏団だけ。

仕方なくアルバン・ベルク四重奏団をきいてもらったが、大の愛聴盤なのでついお客さんを忘れて聴き耽ってしまった。ただMさんは違和感を持たれたご様子で「ちょっと鋭角的な演奏ですね~。」と一言。これはJBLの音質の影響が大いにありだろう。

結局、お二人が所望されるCDを片っ端から聴いているうちに3時間以上経過して時刻は夕方6時ごろになった。お帰りになろうと腰を上げられたところで、持参された中でテレサ・テンのCDが残っているのを(自分が)発見。

「もう一度聴きましょうよ」と、お引止めしてとうとう延長戦に持ち込み「時の流れに身を任せて」有終の美を飾った(笑)。

最後に一番気になる質問「AXIOM80と混成旅団とどちらがお好きでしたか?」と、ストレートにお訊ねすると「AXIOM80のボーカルが印象的でしたね」とのことだった。

ただ混成旅団の方も全面否定ではなかったので、これでやっとひと安心。

山でいえばどうやら7合目ぐらいには到達したかな~(笑)。

 


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