「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

前段管の「ベスト・アンド・ブライテスト」

2017年11月30日 | オーディオ談義

つい先日、搭載した「オークション情報」の冒頭で触れておいたが、ようやく待望の古典管「GS112A」のスペア(1本)が昨日(29日)我が家に無事到着した。

    

1か月ほど前に「北国の真空管博士」から譲っていただいた画像の2本に加えて3本体制となったので、これでようやく安心して使用できる。

いくらテストしてエージング済みといってもおよそ100年前の真空管だから、ご老人の容態が急変するようにいつ具合が悪くなるか予測がつかないので、スペアさえあれば鬼に金棒だ。

当初はこういう希少管を「自分ごとき未熟者」に使う資格があるんだろうかと、遠慮してきたが「命あるうちに精一杯楽しませてもらおう。」とあっさり宗旨替えした(笑)。

さっそく旧来の普通の「112A」と差し替えて試聴してみた。

    

煌々と輝くトリタン・フィラメントの光はまばゆいほどだった。

そして「これはっ」と、思わず絶句するほどに出てきた音が凄かった!

何と形容したらいいんだろうか。ずっと遠くまで見通せるような透明感に加えて、スピード感があるため音が被らず、楽器の音が実にクリヤーに浮き出てくるし、ヴァイオリンの音色の潤いと艶は絶品だしで、これまでPX25真空管からこんな音は聴いたことがない。

スピーカーは「ワーフェデールの2ウェイ」(赤帯マグネット)である。

小躍りして博士に連絡した。

「無事到着しましたよ。どうもありがとうございました。さっそく、これまでの112Aと差し替えて聴いてみましたところ驚きました。いささか頼りないところがあったPX25ですがこんなにシャキッと鳴ってくれるのは初めてです。

前段管でこんなに音が変わるなんて驚きです。出力管はやっぱり前段管とセットで考えないとダメですね。PX25を使ったアンプのうち、この音はおそらく日本一ではないかと思います。トリタン・フィラメントの威力にはほとほと参りましたよ。」

大言壮語が苦手で万事に控えめな人間だが、つい「日本一」という言葉を口走ってしまった(笑)。

すると、博士は「そうでしょう。私も日本一だと思いますよ。トリタン・フィラメントは特にフィラメントが熱せられるので、電子が凄いスピードで飛び出しますので出てくる音にも反映してスピード感と情報量が半端ではありません。このアンプは回路の中に私の独自の裏技を組み込んでいますので唯一無二の音だと思っていただいて結構です。」

わざわざPX25シングルアンプの前段用としてトリタン・フィラメントを選択していただいた博士の慧眼には「恐れ入り谷(や)の鬼子母神」だった。

そういえば我が家の「WE300Bシングル」アンプも前段管の「171」はトリタン・フィラメントである。

前段管の「ベスト・アンド・ブライテスト」それは、トリタン・フィラメントだと確信した。


 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

部屋の広いは七難隠す

2017年11月28日 | オーディオ談義

前回のブログ「オークション情報」で話題にした古典管「PA40」の落札価格だが、結局「433,100円」(1本)で決着をみた。

出品者様によると「WE300A」と交換して「PA40」を手に入れられたとのことで、ご自身でも想像以上の高額ぶりに驚かれていた。

こうした希少な古典管に対する激しい情熱の迸りを目の当たりにすると、自分ごときの熱意はとうてい足元にも及ばないことを痛感した。もちろん豊かな軍資金にも縁遠いわけだが(笑)。

閑話休題

さかのぼること、およそ7年前ぐらいの出来事になるだろうか。

季節は冬で、当時、狭心症のため心臓にステントを入れたばかりで、事後のリハビリのためにクルマで15分ほどの体育館の天井近くに設けられている一周440mのランニングコースを黙々とウォーキングしていた。

すると、あるとき1階の広いフロアーで一組の中年とおぼしき男女が身のこなしも優雅にダンスの練習をしていた。

伴奏の音楽がとても「いい音」に聴こえたので、いったいどういうシステムなんだろうと遠方から目を凝らしてうかがってみるとなんと小さな「ラジカセ」だった!(笑)

会場が広いとラジカセ程度でも「いい音」がするんだと、そのときにくっきりと脳裡に刻み込んだことだった。

そこで、このたび知人が所有する広さ80坪ほどのホールの話に移ろう。

このブログの読者ならご承知のことだと思うので詳細な経緯は省略するが、先日、口径30センチのフィリップスのユニットをグッドマンの指定箱に容れてこのホールに設置したまではよかったが、それ以降どうも低音がボンつき気味なのが気になって仕方がない。

    

そこで、冒頭に述べた記憶がふと蘇ってきて、大きなホールにはむしろ小さなユニットの方が合うかもしれないと、思い立った。

ちょうど手頃のリチャード・アレン(イギリス)の「ニューゴールデンエイト」(口径20センチ)を持っているので、これをフィリップスの代わりに納めてみようか。

    

このユニットに補助バッフルを取り付けて交換しようという算段である。

ここで、ちょっと寄り道になるが、このユニットの裏側にある端子はプラス、マイナスの表示がないので二つのうちどちらがプラスなのか非常に困ってしまう。そういうときの見分け方としては、すでにご承知の方も多いと思うが単3の乾電池(1個)を使うといい。

(ユニットの端子に)ハンダ付けしたSPコードの片方を乾電池のマイナス面に接触させ、片方のコードを乾電池のプラスの突起面に接触させる。瞬間的にコーン紙が軽く前方に出るときは正相になっているのでその接続は正しい。逆にコーン紙が後ろに引っ込むときはその接続はプラス、マイナスが逆になっている(逆相)ので正しくない。

話は再び戻って、一昨日(26日)に我が家にお見えになった近隣のYさんともどもこの地下室のホールを訪れた。一人では交換作業が大変なのでYさんに手伝ってもらおうという魂胆が見え見えである(笑)。

ホールの持ち主さんは不在だったが「出入り御免」の許可をいただいているので、専用の階段を降りて勝手に侵入しホールの照明をスイッチオン。

すると、スピーカーの間隔がやたらに広がっていることに気が付いた。目測だが3mぐらいから10mくらいに広がっているのだからとても玄人筋では考えられない感覚(間隔)だ(笑)。

それでも「オーディオは理論よりも実践の方が大切で、やってみなくちゃ分からん」ところが多々あるので各機器のスイッチをオンし、まずはYさんともども試聴に入った。

とてもいい音じゃないですか。そんなにボンついていませんよ。」とYさん。

「前回聴いたときはやたらにボンついていたんですがねえ。不思議ですねえ。」

前回と違うのはスピーカーの間隔だけだから設置場所を変えるだけでこんなに音が変わるのかと驚いた。

これならあえてSPユニットを換える必要はあるまい。というか、むしろ換えない方がいいかもしれない。

というのは、ホールの持ち主さんがとても現状の音に満足されているから。

「オーディオがこんなに楽しいとは夢にも思いませんでした。毎日気持ちよく聴かせてもらっています。」と、毎日のように電話がかかってくるほどの手放しの喜びようで、機器の周りにはジャズを中心にかなりのCDが積まれている。

もともと持ち主さんはたいへんな音楽好きだったご様子。

こういう例を実際に見聞すると、巷には「音楽は好きだけどオーディオといってもそれほど音が変わるわけでもあるまいし、少々変わったとしても大したことはなかろう。」という、「食わず嫌い」がいかに多いかがわかる(笑)。

こういう人たちに「いい音で音楽を聴く楽しみ」を味わってもらうことは、オーディオ愛好家にできる唯一の社会貢献かもしれない。

そこで、昨日(27日)持ち主さんに、こう提案した。

「民謡でも演歌でも構いません。どなたでも家庭に好きなCDの1枚や2枚はあるはずです。広く呼び掛けてそういうCDを持ち寄ってもらい、このホールで定期的に音楽鑑賞会をして交流の場にしましょうよ。」

「それは大賛成です。さっそく企画を練ってみましょう。」
とご快諾。

先日の日本経済新聞(2017.11.24)に、「社会的なつながりが多い高齢者は認知症の発症リスクが46%低下する。」との記事があったが、もともと認知症とは縁遠い高齢者が社会的なつながりを持つケースが多いので、この数字を鵜呑みにはできないが見知らぬ方々との交流がリスク軽減につながることはたしかなので、自分のボケ防止にもきっと役立つことだろう(笑)。

いずれにしても、ここ2週間あまりの間にオーディオ仲間を4名、近所の方をお一人、このホールにお連れしているが皆さん大喜びだった。

スピーカーの間隔が狭いときのことだったが、それにもかかわらず
「いい音ですねえ。伸び伸びとしてとても豊かなサウンドです。それに音量を大きくしても、ちっともうるさく感じないですね。」

「(女性の)色の白いは七難隠す」という言葉があるが、「部屋の広いは七難隠す」(笑)。

部屋が広いと「アンプとスピーカーのバランス」さえよければ、少々難ありのシステムでも立派な音を出してくれるようだ。

最後に、今回の件を通じて自分のことばかりじゃなく、もっと社会のお役に立つことも考えなければと思った次第。

ちょっと大げさだし、我田引水かもしれませんがね(笑)。


 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オークション情報~2017.11.26~

2017年11月26日 | オークション情報

このところワーフェデールのユニットに味を占めて「夢よもう一度」とばかり、スピーカーのオークションに首ったけだが、珍しい古典管も放っておくわけにもいかず、やたらに忙しい(笑)。

そういう中、古典管の泰山北斗「北国の真空管博士」からメールが届いて「希少管112Aのスペアをアメリカ経由で1本見つけました。
現在エージング中ですが何ら問題ないようなので近日中に送ります。」

     

「PX25シングルアンプ」の前段管として、およそ1か月前に手に入れたのがこの球だが、スペアが確保できたのでようやく安心して使えることができる。幸せだなあ~(笑)。

それはさておき、博士から同時に「とても珍しい球をオークションに出品していますのでお知らせします。」と、あった。

「DA30系の最高峰、V503の上位球、幻の銘球PA40の極上品」というのがこれ。

           

解説文にはこうある。

英「Ediswan社のPA40を1本出品いたします。DA30系の出力管ではV503が最も人気があり、非常に高い評価を受けています。 

しかし上には上があるものでV503には上位球PA40が存在します。V503とは比較にならないほど入手の難しい球であり、その名を知らぬ方も多いと思います。
 
DA30系最大のプレート損失40Wを誇り、V503よりも遥かに丁寧に造られた内部構造には惚れ惚れとします。個人的にはWE300Aをも凌駕すると思っています。
 
長年2本目を探し続けましたが現在に至るまで入手することが出来ませんでした。大事に使って頂ける方に落札していただければ幸いです。 
 
出品にあたってバラックセットにて動作確認しました。
 
電源の関係でEp400Vでの動作となりましたのでPA40のデータからEp400V時の動作例を抜粋して比較します。
 
PA40オリジナルデータ 
Ef 4V   If 2A   Ep 400V   Eg -85V   Ip 50mA
 
動作確認結果 
Ef 4V   If 2.03A   Ep 400V   Eg -85V   Ip 56mA
 
ガステストとライフテストのみHICKOK533型チューブテスタで行いましたが、何れも合格でした。
ベースの緩みやクラックはありません。上記の結果から極上品と判断いたしました。」 

以上のとおりだが、実は、1年ほど前にこのブログで博士がオークションに出品された「V503」真空管を紹介したことがある。

その時の落札価格は「187、100円」(1本)だった。落札者は長年英国に駐在されてから帰国された方(九州)だと、伺った。V503を5本持ち帰り、4本を友人に進呈して残る1本でペアを組みたいとのことで、上には上の世界がちゃんと存在するんですよねえ(笑)。

いずれにしても、今回の「PA40」はその「V503」の上位球でありながら差し替え可能であり、ツクリの方も一段と優れているとのことなので「DA30」愛好者には垂涎の的だろう。

はたしてどのくらいの価格で落札されるんだろうかと興味津々。

注目の落札期日は本日(26日)21時12分です!




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

グレン・グールドの恋人

2017年11月25日 | 音楽談義

週刊誌やテレビのワイドショーなどで、政治家や芸能人たちの不倫報道が後を絶たない。

「報道する側もされる側もたいへんそう、まあ、人生いろいろですからお好きにどうぞ~」だが、ことグレン・グールドの不倫となると話は穏やかではない。

先日の「日本経済新聞」(2017.11.19)の文化面に掲載されていた記事がこれ。



グールド(カナダ:1982年没)といえば周知のとおり泣く子も黙るほどの大ピアニストである。生涯独身を貫き50歳で早逝したが、今もってその演奏に賛辞が絶えることはない。

自分も大好きなピアニストなのでこれまでいろんな伝記や文献を読み漁ってきたが、「女性関係の記事」はこれが初めてだった。

あの禁欲的な演奏とも相俟って「グールドにまったく女っ気無し」と、信じ込んできたのでこの日経の記事を読んで「ヘェー、あのグールドがねえ」とまったく意外な感に襲われた。

グールドもやっぱり人の子だったんだねえ!(笑)

上記の記事が読めるといいのだが、文字が小さすぎてちょっと無理そうなので要約してみよう。

アメリカ在住の作曲家ルーカス・フォス夫妻は車のドライブ中にグールドのゴールドベルク変奏曲を聴いて衝撃を受ける。ルーカスの妻はコーネリア・フォスといって画家だった。

ルーカスは当時指揮者レナード・バーンスタインと並ぶほどのアメリカ音楽界のスター的存在だった。そのうち、グールドはルーカスと親しくなり、電話魔だったので頻繁にルーカスに電話をかけるようになった。

しかし、ルーカスは多忙だったので妻のコーネリアと話すことが多くなり、二人は急速に距離を縮め抜き差しならない関係になっていく。

そしてコーネリアはある日夫に別れを告げ、幼い子供二人を連れてグールドの住むトロントに向かった。しかし、この関係は5年で終わる。

その後グールドは「50歳で死ぬ」と、コーネリアに語っていたとおり、別離から10年後、脳卒中で急逝した。」

以上のとおりで、いわば音楽家と画家との恋愛というわけだが、「聴覚芸術」と「視覚芸術」との間でお互いに刺激しあい、畏敬の念が高じて恋愛感情にまで発展したことは想像に難くない。

両者の間でいったいどういう芸術論が戦わされたのか、まったく想像の域を出ないが、たとえば「音楽」につきものの音響と「絵画」につきものの色彩の共通点を「波長」という視点から探ってみよう。

音響の場合、低音域は波長(波の高点と低点との距離)が長く、一方、高音域は波長が短いのは周知のとおりだが、色彩だって「可視光線」のもとで波長の概念を当てはめてみると、長い順に<赤~オレンジ~緑~青~紫>の順番になる。ちなみに赤外線は波長が長すぎて、そして紫外線は波長が短すぎて目には見えない。

そういうわけで、「音響」を「色合い」で表現すれば低音域は赤色のイメージとなり、中音域は緑色、高音域は紫色のイメージとなる。

「低音域~赤色・オレンジ色~暖かい」 VS 「中高音域~青色や紫色~クール」という印象を受けるし、オーディオも低音域が豊かだと暖かい気分になり、高音域が優った音はクールな気分になるのもそれだ。中音域だと緑色に該当するので何となく安心感がある。

ただし、これはここだけの極めてユニークな「珍説」なのでけっして真に受けないように申し添えておこう~(笑)。

それはさておき、自分だって、もし大のモーツァルトファンの女性と知り合って話が弾んだとしたら、その女性の容姿がどうであれ恋愛に近い感情を持つ可能性だって十分ある。おそらく向こうは歯牙にもかけないだろうが(笑)。

グールドも彼女のおかげできっと演奏にインスピレーションが湧いたに違いない。

なお、この記事の作者は「松家 仁之」(まついえ まさし)さんという作家で「火山のふもとで」(読売文学賞)などの著作がある。したがって、信ぴょう性に足る記事だと思っても差支えないだろう。

大のグールド・ファンとして、どうしても記事の原文が読みたいという方はコピーして郵送して差し上げますから、ブログの自己紹介欄のメール宛ご一報ください。先着5名様に限り対応します。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「好事魔多し」 ⇒ 「禍福は糾える縄の如し」

2017年11月23日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

オーディオ仲間によると「ワーフェデールは古き良きブリティッシュサウンドの代表格ですね」とのことだが、その口径30センチのユニットをオークションで無事ゲットして順調に我が家に到着。

   

さっそく予備の専用のバッフルの穴あけに取り掛かった。簡単な塗装と合わせて2時間ほどかかって完成後の画面がこれ。

    

専用のエンクロージャー(自作:底板にARUを取り付け)には「鬼目ナット」を埋め込み、ネジ穴を合わせて3種類のユニットをバッフルごと入れ替えができるようにしている。

画像の左から「D123」(JBL)、「ワーフェデール」、そして「AXIOM150 マークⅡ」(グッドマン)。

JBLとグッドマンの音は熟知しており、何ら不満はないがワーフェデールからどういう音が飛び出すのかハラハラ・ドキドキ・ワクワク~。

インピーダンスが前二者は「16Ωと15Ω」だが、ワーフェデールは「8Ω」なのでネットワークの交換が必要になる。

ここで鳴らし方に4つの選択肢が出てくる。

1 フルレンジで鳴らす。オーディオは「音源が一つ」が理想なのでこれが王道である。

2 フルレンジで鳴らしたままローカットしたツィーターを追加して鳴らす。

3 クロスオーバー4000ヘルツ前後(12db/oct)のネットワークを使って2ウェイシステムを構築する

4 低音域だけネットワーク(4000ヘルツでハイカット)を使ってハイカットし、高音域は別途に良質のコンデンサーでローカット(6db/oct)する。この方式は、コンデンサーの容量次第で高音域の音量調整を自由にできるメリットがある

それぞれ一長一短だが、今回は4でいくことにした。1~3はゆっくりと時間をかけて後日検証することにしよう。

そういうわけで、まずはネットワークの交換(インピーダンス:8Ω用)から始まった。

前回のブログで述べたようにツィーターは同じワーフェデールの口径10センチのユニットなので、今回はまさに「純正の組み合わせ」といえる。

      

ちなみにツィーターのローカット用のコンデンサーには「ブラック仕様」(ウェスタン製)を2個パラって計7μF(マイクロファラッド)前後とした。            

簡単な結線を済ませて、出てきた音を聴いたとたんに「これは素晴らしい!!」(笑)。

出品者様(元の持ち主)が水彩画のような気品あるイングランドトーン」と評されていたがまさにその通り。

どちらかといえば淡い色調の細身の音ですっきり感が漂う、そして控えめな自己主張の中に何ともいえない気品が満ち溢れており、弦楽器はことさらに艶があって瑞々しい。自分が理想とする「爽やかな風のように吹き抜けていくサウンド」としては満点に近い。

この音を聴くと、グッドマンは濃い色調の油絵みたいに映るし、JBLは現物に忠実な写実的な絵画を思わせる。

いずれも好き好きだが、自分にはワーフェデールが一番相性が良さそうで、これは永遠のシステムになりそうだ。

ところが「好事魔多し」(笑)~。

そのうち、左のチャンネルから弱音時にガサゴソと小さなノイズが発生するではないか!

いい音がするユニットほど繊細なツクリなので故障しやすいことはAXIOM80の例を見るまでもない。ひたすら故障しないことを目的として作られる工業製品とスピーカー製品との一番の違いはそこにある。

したがって、スピーカーには「ハイリスク ハイリターン」がつきものだ。

すでに出品者に対して「非常に良い評価」(オークション)を済ませているのだが、改めて「片方の1本からノイズが発生します。いかがしましょうか」と、持ち掛けたところ予想した通りとても誠実な方だった。

すぐに返信が来て、次の3つの選択肢を提示された。

1 「契約の解除」 2 「同一ユニットのスペアがあるので交換」 3 「入札額の半分を返還する」

もちろん、2の「スぺアとの交換」を選んだのだが、出品者様が仰るには「ほんのちょっとしたノイズならバッフルへの取り付け角度を変えたら治る場合がありますから試してください」。

そういえば、あのデリケートな「AXIM80」でも似たような経験があったので、バッフルへの取り付け角度を上下逆にしたところすっかりノイズが収まってしまった。これにはうれしい悲鳴。

さっそく出品者様に連絡した。

「お説の通りにしたら治りました。おそらく輸送中の影響でコーン紙に歪みが出ていたのでしょう。かなり繊細なユニットですね。しかし、今後に不安が残りますし音質的には大変気に入りましたので、よろしかったらスペアの分も適価で譲っていただけないでしょうか?」

たいへん虫のいいお願いをすると、次のようなご回答をいただいた。(要旨)

「まずは一安心といったところでしょうか。Wharfedale のクロスエッジは柔らかめですので、12インチとなると、こういうことも起こるんでしょうね。柔らかめのエッジは、Wharfedale 社がエッジに関してはHigh Sensitivityを何より重視していた会社だったからだと思います。

さっそく明日スペアの方を送付しますのでマッチングを試してみてください。お値段はそれからのご相談ということにしましょう。」


もちろん異存はない。ほんとうに稀にみる誠実な出品者様だった。

ちなみに前回のブログを読まれたメル友の「お二人」さんから、相次いでご連絡があって「出品者は〇〇県の〇〇様でしょう。自分も希少なユニットを落札したことがあります。続編がとても楽しみです。」

ビンゴ!(笑)。どうやら「スピーカー好き」の間ではたいへん著名な方のようだ。

それにしても、ちょっとした故障らしきもののおかげで予備のユニットまでもが手に入ることになったのだから、うれしさもひとしおである。

これこそまさに「禍福は糾える縄の如し」(笑)。

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

赤帯マグネットに駄作なし

2017年11月21日 | オーディオ談義

オーディオの華といえば「姿かたち」といい、その機能からいって「スピーカーに尽きる」ことに誰も異論はあるまい。野球でいえばエースであり4番バッターである。

ここがしっかりしていないと組織的にガタガタになる(笑)。

たとえば「しょぼいアンプに豪華なスピーカー」 VS 「豪華なアンプにしょぼいスピーカー」のいったいどちらが絵になるのか、もう言わずもがなだろう。

これまで、SPユニットに対してああでもない、こうでもないと長いこと彷徨ってきたが、事(こと)ここに至ってようやく二つに収斂してきた。

一つは「昔のJBLサウンド」であり、もう一つは「古き良きブリティッシュサウンド」だ。両極端のようだが、実は音質に似通ったところがあると思うのは自分だけだろうか。

さて、ずっと愛でてきた口径30センチのユニットのうち「D123」(JBL)、「AXIOM150マークⅡ」(グッドマン)、そして「フィリップス」の花の3姉妹のうち、ご承知のようにフィリップスを嫁に出したので何だかポッカリと心に隙間ができてしまった。

その空白を埋めるかのようにオークションで目に入ったのが「ワーフェデール」(イギリス)のユニット(口径30センチ)だった。

「ブリティッシュサウンド」ファンにとって「ワーフェデール」と聞いただけで胸がときめく。

先年亡くなられた音楽評論家の「宇野功芳」氏が3ウェイシステムのうちウーファーにワーフェデールを、中音域にAXIOM80を使っておられたことを思い出す。

そのブリティッシュサウンドの代表格ともいえるワーフェデールだが、出品タイトルには水彩画のような気品あるイングランド・トーン 英Wharfedale12インチ~希少なアルニコ赤バンのフルレンジタイプ~」とあった。

    

解説文にはこうある。ちょっと長いが引用させてもらおう。

イギリス Wharfedale社の12インチ ( 30cm )、フルレンジ (ウーハ-)Super12系のユニット。前期の赤帯のアルニコ・マグネットを背負った希少なユニットです。pair での出品になります。

さすがに、このクラスのユニットになると、重量のあるがっしりとしたフレームが採用され、作りに手抜きは見られません。フルレンジがベースになっているようですが、センターキャップの大きさからボイスコイル直径を想像するに、ウーハ-として使用した方が無難なようです。

ただ、もともとの作りがフルレンジであるだけに、このサイズとしては、高域も比較的よく伸びています。(アメリカ系によく見受けられるワイドレンジ・ウーハ-といった感じです。)したがいまして、クロスもかなり広範囲で選ぶことができますので、2way構成も可能だと思います。

また、ツイーターについても、Super 3Super 5が一般的でしょうが、その他、広い範囲から選ぶことができると思います。(フルレンジに近い作りですので、一般的なフルレンジ+ツイーターといった使い方もできます。)
 
当方では、同じWharfedale社のSuper 5 ツイーターと、クロス3,000Hz前後、ツイーターのローカットのみ、-6dB/Oct.2way を組んで、後面開放の箱で聴いておりました。

音質的には、水彩画的といいいますか、ウェットでありながらさらっとした音質が魅力的だといえます。自らをあまり主張し過ぎない、当時の、気品あるイングランド・トーンといえるかもしれません。

後期のフェライト・マグネットのユニット(Super12)と比較すると、切れ味では及びませんが、アルニコ特有の中域の充実とともに、音の柔らかさ、しなやかさでは優れているように感じました。(ツイーターをSuper 3にすると、こちらは強い音質のツイーターですので、また印象が変わるかもしれませんが。)


以上のとおりだが、これだけ熱の入った解説文を記載されるほどだから出品者は相当の愛好家だとお見受けした。

何といってもAXIOM80に代表されるように「赤帯マグネットに駄作なし」で、とてもいい音がしそうですねえ。

実は1年半ほど前にワーフェデールのツィーター(口径10センチ)を手に入れて今でも愛用中である。これも赤帯マグネットだが、図体に似合わぬ大きなマグネットが付いている。

周知のとおり、音の切れ味はマグネット(磁束の量)で決まる。

      

通常のツィーター(金属のダイヤフラム)にはとうてい望めない弦の響きが大いに気に入って、わが家ではダントツの存在感を示しているが、今回のユニット(口径30センチ)を購入して2ウェイにすると「ワーフェデールの純正の組み合わせ」が期待できる。

そう思うと「矢も楯もたまらず」即決欄をポチッ(笑)。

以下続く~。

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オークション情報~2017・11・18~

2017年11月18日 | オークション情報

一昨日(16日)メル友の「I」さん(東海地方)から次のようなメールが飛び込んできた。タイトルは「大役ですね!」。

「西日本と東日本で読売新聞の紙面が異なるのかもしれませんが、今日の夕刊MUSIC面に、カティア・ブニアティシヴィリのリサイタル評が載っています。  

相変わらず凄い胸!は置いとくとして・・・いやあ、酷評です! 評論家は、いったい何の権利があって評価しているのでしょうか。  

評論家やマスコミの役割は、コンサートのプレゼンやレポートをすることであって、「評価」は聴衆が個別にすればいいものだと思います。  

ということで、彼女は、本人のしたい演奏を続けていけばいいと思いますよ。ゆっさ、ゆっさと(くどいですね)  

テニスでも解説者より現役テニスプレイヤーの発言の方がずっと深いと思います。現役プレイヤーは、お互い闘いの相手なので、本音はなかなか言わないものなのですが、その発言の中に見え隠れする、数少ない本音はとても重たいものです。  

評論家も自己の芸術性をかけての評価ならともかく、好みとしか感じられない内容ではオーディオと同じになってしまいますね。  

ところで最近の「音楽&オーディオの小部屋」で、一番ホットなところを。  

まずは、100坪のホールのサウンドディレクター就任おめでとうございます。  

しかし、100坪の広さというのは一筋縄ではいかないでしょうね。カラオケ帯域ならともかく、音楽の本格再生となるといろいろな問題が出てきそうですね。  

響き過ぎや定在波等、家庭ではあまり悩まなくていいことも出てきそうですし、それにも増して、音楽を聴くのが自分でなく、他者、それもけっこうな不特定多数の方が対象ということも、ディレクターを悩ませるところではないでしょうか。  

予想される悪戦苦闘の今後の展開、すごく面白くなりそうです。野次馬にも参考になることがたくさん出てくると思います。期待しています。」

         

ちなみに、この方が噂の「カティア嬢」(笑)。

それはさておき、以上の内容に対して次のようなメールを返信した。

「カティア嬢の件ですが我が家は読売の夕刊は取っていませんのでその記事は見ておりません。凄い胸だけで、ウットリです。彼女にかかると演奏なんかどうでもよろしいです(笑)。

さて本題に入りますが、大きなホールともなると鳴らし方の難しさを痛感しました。ホールの持ち主さんからは「いい音ってこんなに豊かな気持ちになるんですね。」と、手放しで喜んでいただいてますが、低音がややボンつき気味なのに手を焼いてます。

同じスピーカーなのに広さが違うとまったく違う鳴り方になります。

広いホールに相性がいいスピーカーといえば、まずアルテックが思い浮かびますね。通常の家庭で鳴らすときにアルテックがなぜ低音が薄いのかようやく合点がいきました。あれは大きな劇場で鳴らしたときに低音がボンつかないようにしているんですね。いろいろ勉強になります。」

そのアルテックだが、もし手頃なお値段だったら前向きに考えてもいいかとオークションを覗いてみたところ、ありました!

   

箱の中には名器と誉(ほまれ)の高い「604-8G」(口径38センチ、同軸2ウェイ)が内蔵されている。中央に小さなマルチセルラーホーンが付いたもので、同軸だから音像定位はバッチリだし、大きなホールにはもってこいだろう。

          

ずっと入札経過を追い続けたが途中から諦めた。注目の落札価格(16日夜)は「24万1千円」なり。

これではちょっと高嶺の花でして…(笑)。

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音の重心を下げる方法~その3~

2017年11月16日 | オーディオ談義

11月に入ってから立て続けに「音の重心を下げる方法」を搭載している。

「きれいな高音」を出すのは比較的簡単だが「まともな低音」となると、とても一筋縄ではいかないことを長いオーディオ人生の中で実感している。

初回(2日)は真空管アンプのカップリングコンデンサーの調整によって重心を下げ、二回目(12日)は「AXIOM80」にサブウーファーを併用することによって音の重心を下げた。

三回目(16日)になる今回はJBLの「LE-8T」にサブウーファーを利用する話である。今年の春に手に入れたものだが、内部の吸音材はすべて「羽毛の素材」に入れ替えている。

はじめに画像を見ていただく方が手っ取り早い。

   

口径20センチのフルレンジ「LE-8T」(JBL)はその素性の良さからつとに勇名を馳せており、いまだに根強い人気を誇っているが、ツィーターがないくせに高音域の伸びは満点だが惜しむらくは低音域の伸びがあと一つ・・。

もちろん、この低音で十分だと思われる方もいるだろうが自分にとってはやや不満が残る。

前回のブログに搭載したように「フィリップス」(口径30センチ)のユニットをお嫁に出したので、部屋のスペースに余裕ができ久しぶりに昨日(15日)聴いてみたところ、益々この感を深くした。

そこで思いついたのが、「AXIOM80」のときに使った口径30センチの「D123」(JBL:2号機)を共通のサブウーファーとして使うことだった。

どうしてこんな簡単なことに気づかなかったんだろう(笑)。

サブウーファーのSPコードの接続はSPターミナルからコードを脱着するだけだから実に簡単。

この方式で聴いてみたところ、まさしくこれぞ「JBLサウンド」だった。

低音域のレンジは広がるし、しかもレスポンスは早いし、細身の音の切れ味は抜群だし、楽器の音色はくっきり鮮やかだし、スカッと抜けきった爽やかな青空みたいな音でまったく言うことなし。そりゃそうでしょう、同じJBLのユニットで統一しているんだから~。

くどいようだが、この場合「LE-8T」はフルレンジで鳴らし、サブウーファーの「D123」(ウッドホーン付き)はムンドルフ(ドイツ)のコイル「8.2mh」で160ヘルツ以下あたりを補強するというもの。

「サ行」(サシスセソ)が若干強めの音だが、これがアコースティック系の楽器にはうまく作用して響きが実に素晴らしい。あの「AXIOM80」に優るとも劣らずといったところ。

俄然ヤル気になって組み合わせるアンプをいろいろ換えてみた。

我が家のビッグスリーである「2A3シングル」(出力管:フランスVISSEAUX刻印)、「PX25シングル」(ナス管)、「WE300Bシングル」(300Bは1951年製)

この中でベストだったのは「WE300Bシングル」(銅板シャーシ)だった。

         

前段管に希少管「171」(トリタンフィラメント)を使ったこのアンプは惚れ惚れするほどで、どこに出しても恥ずかしくない音だ、と、思う。


「こんなにいい音を出してくれると、後々弄る楽しみがなくなるので困る。」こういう心境になったのは長いオーディオ人生で初めてである(笑)。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オーディオシステムの「お嫁入り」

2017年11月14日 | オーディオ談義

市内の北東部に位置し、小高い丘の上の150戸あまりの小さな団地に住み始めて40年近くになるが、その一角に毎回「市議会議員選挙」でトップ当選されている方が居住されている。仮に「I」さんとしておこう。

「I」さんはとても気さくで明るくて面倒見のいい方で人気抜群、道路補修や標識・街灯の設置など市当局へのパイプ役として地区にとってとてもありがたい存在である。

選挙事務所を兼ねた住宅には丘の斜面を利用して作った
地下に100坪ほどのホールがあり、各種の集会や地区の中高年層の主婦たち30名ほどが集って健康体操教室などが開催されている。

我が家のカミさんも週一回、1時間ほどの体操教室の一員として参加し、およそ半年あまりになるが、このほど彼女が言うのには「お父さん、Iさんのところのスピーカーは音が歪んでとてもひどい音なのよ。これまで我が家の音が当たり前だと思っていたけど、全然違うのよね。もし余っているシステムがあったら貸してあげたらどう~。」

「そりゃあ貸してあげてもいいけどすべて愛着のあるものばかりだしなあ・・。しかし、広いホールで聴いてみるのも魅力的だな~。よしっ、肝心のIさんが前向きの姿勢だったら考えてもいいぞ。」

家内を通じてこの話を聞かれた「I」さんは大乗り気で「それは願ってもない話です。ぜひよろしくお願いします。」

さあ幸か不幸か、いよいよ「嫁入支度」を本格的に考えなくてはいけなくなった(笑)。

いずれも手塩にかけた娘たちだが、どれを嫁に出そうかなあ。アンプなどは行ったり来たりで簡単に交換が利くが、スピーカーともなると図体の大きさも重さも並ではないので簡単に出戻りさせるというわけにもいかない。

悩みに悩んだ末に選んだのがフルレンジのフィリップスのユニット(口径30センチ、アルニコマグネット型)だった。

フルレンジを分けると口径30センチを境に大別できるが、それ未満だとツィーターが不要だが、それ以上となるとどうしても低音域との兼ね合いで高音不足になってツィーターが必要になる。

我が家では口径30センチを専ら愛用しており、JBLの「D123」やグッドマンの「AXIOM150 マーク2」、そして前述のフィリップスなどだが、このうち唯一ツィーターが不要なのが高音域のレンジがよく伸びたフィリップスである。

これをグッドマン指定の箱に納めてから、実際にIさんに来ていただき試聴していただくことにした。いわば、「お見合い」(笑)。

試聴盤は「フランク永井」だったが、幸いなことに「I」さんはオーディオが分かる方だった。

すっかり感動した面持ちで「これはすごく贅沢なことですね。」とのお言葉に即座に反応して「はい、精神的な贅沢の極みだと思いますよ。」

「この音でレイ・チャールズなんかを聴くといいでしょうねえ。今からワクワクしてまるで夢みたいです。」

こんなに手放しで喜んでいただけるのならオーディオ冥利に尽きるというもので、話がバタバタとまとまり「お嫁入り」は12日(日)の午後と決まった。

当方で準備したのは真空管式プリアンプ、パワーアンプ、スピーカー1ペア、接続コード、電源コード、ラックなど。

当日は加勢にみえたお一人を加えて3人で軽トラに詰め込み、3分ほどでIさん宅に到着してよっこらしょと専用の階段を降りながら地下室へ運び込んだ。

ホールの1/4ほどを占める大きな舞台の上に設置することにして、瞬く間にセッティングを終えハラハラ・ドキドキ・ワクワクしながら音出し~。試聴盤は「加藤登紀子ベスト」。

    

「知床旅情」が大きなホールの広い空間をゆったりと流れた。いい音だ。「素晴らしいです!」と感激のIさん。

しばらく聴いてから、今度はジャズを聴かせていただけませんかとのことなので、カウント・ベイシーの「ビッグ バンド」をかけてみたところ、ガラリと音が豹変した。

部屋の広さが違うと、こんなに音が変わるものか。

我が家で試聴したときは低音域が締まり気味でまとまりのいい音だと気に入っていたのだが、ここで聴くと低音域がボンつき気味だし、高音域はやや「しゃくれ上がり気味」で、俗にいうドンシャリ型に近い。

悪くはないんだけどちょっと元気が良すぎる音のように感じた。ジャズ好きと仰る「I」さんには丁度いいかもしれないが・・・。

広いホールというのはシステムの長所を伸ばすよりも、むしろちょっとした欠点をあからさまに暴き出す傾向があるようだ。

おそらく、これからこの場所でたくさんの人たちが集って音楽鑑賞会が開催されるだろうからやはりベストの音を目指したいものだ。自分の名折れにもなるしね~(笑)。

よし、ほかのパワーアンプを試聴してみよう。

そこで、翌日になって「71Aシングル」(インターステージ・トランス内蔵)を持参した。

「Iさん、違ったアンプを持ってきましたよ。どちらがお気に召すか比較してみましょう。どうかお好きな方のアンプを選んでください。」

    

「アンプを換えるだけでこんなに音が変わるんですか」と驚かれる「I」さん。

「ハイ、そこがオーディオの面白いところです。」と、返事したが、どうやら悪い方向に変わったようだ(笑)。

期待の「71Aアンプ」だったが、いかんせんパワーが足りなかった。

「この音はおとなしいですね。長時間聴いても聴き疲れはしないようですが、もっと元気が欲しいですね。」と、率直な「I」さん。

「そうですね。ちょっと躍動感が足りないようです。アンプは元のままにしておきましょう。」と、自分。

今後いついかなるときでも「ホールへの出入り自由」という特権をいただいたので、そのうち、今度はよりパワー感のある「71Aプッシュプルアンプ」を持って行ってみよう。

我が家のエース級アンプだが仕方がない。何だか益々深みにはまりそうだ(笑)。

最後に、現代は「マンション・オーディオ」が主流になったせいか大型スピーカーのお値段に昔日の面影はない。

オークションで買い叩かれているのをよく散見するが、これまで置き場所がないため切歯扼腕しながら見送ってきたが、Iさんから「どうぞ、どうぞ、大型スピーカーでもなんでもここに設置していただいて結構ですよ。」というお墨付きをいただいた。

どうやら明るい希望の光が見えてきたようだ(笑)。



 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音の重心を下げる方法~その2~

2017年11月12日 | オーディオ談義

先日のブログ「音の重心を下げる方法~その1~」(2017.11.2)では、真空管アンプのキーポイントの一つ「カップリング・コンデンサー」の値を変えることでうまくいった事例を紹介した。

今回は視点を変えてスピーカー側から音の重心を下げてみようと挑戦してみた。

次の画像は木製の植木鉢をウッドホーン代わりにフィリップスのユニットを取り付けたものだが、これは過去のブログでも紹介したとおり。

   

これをフルレンジで楽しんでいたのだが、ふと思いついて「AXIOM80の低音補強に利用したらどうなんだろう」。

幸い、手元にはムンドルフ(ドイツ)のゼロ抵抗コイル「8.2mh(ミリヘンリー)」がある。

    

「クロスオーバーネットワーク周波数早見表」を覗いてみると「8.2mh」の場合、およそ160ヘルツ(6db/oct)あたりをハイカットできる計算(8Ωの場合)になる。つまり、160ヘルツ以下の帯域をサブウーファーとして活用しようという魂胆である。

普通、サブウーファーといえば箱に入っており、独特の「こもった音」が何とも嫌らしく感じて興趣を削いでしまうが、今回の場合は裸なのでユニットの特性がモロに発揮されるとあってとても好ましそう。

理屈は抜きにしてやってみなくちゃ分からんというわけでチャレンジしてみた。

くどいようだが「AXIOM80]はフルレンジで鳴らし、フィリップスは160ヘルツ以下(6db/oct)を補強する。

なんなく接続を済ませて、聴いてみると意気込んだほどでもなかった。ほんの少~し量感が増えた程度だ。これなら付けてもつけなくても同じことで、むしろ害にさえなる(笑)。

そこで、フィリップスがダメなら同じ口径30センチのJBL「D123」ならどうだろうと入れ替えてみた。

    

これはバッチリだった!(笑)

何という自然な響きだろう。サブウーファーを「生かさず殺さず」しながら、しっかりと低音域の量感が増えている。

改めて「AXIOM80」とJBLのユニットは音が馴染みやすいことを再確認した。ただし、こんなことを、言ったり試したりするのはおそらく世界中で自分だけだろうなあ(笑)。


 

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

いい音楽は「和気あいあいの演奏」では生まれない

2017年11月11日 | 復刻シリーズ

メル友の「I」さん(東海地方)はこのブログの「ご意見番」として非常にありがたい存在だが、先日のメールで「オーディオネタはもちろん面白いのですが、音楽ネタも大好きです。音楽好きでないとオーディオが始まらないということをひしひしと感じます。」と、あった。

正直言って「オーディオ好き」と言われるよりも「音楽好き」と言われる方がうれしい(笑)。

そういえば、これまでたくさんのオーディオ愛好家とすれ違ってきたが長続きしている人は「心から音楽が好き」という人だけだった。

このブログでいつも小難しい理屈を振り回しているようだがシンプルに言うと、ただただ「いい音楽」を「いい音」で聴きたいというだけである。

というわけで、今回は調子に乗って音楽ネタということでいきましょう。


いつぞやのブログで、指揮者トスカニーニを引き合いに「指揮者とオーケストラの関係が和気あいあいの民主主義ではいい音楽は生まれない」なんて生意気なことを書いたものの、所詮は音楽現場に疎いズブの素人の「たわ言」と受け止められても仕方がない。

そこでオーケストラの一員それもコンサート・マスターとして第一線でバリバリ活躍している方に応援してもらうことにした。

語るのは矢部達哉氏(1968年~ )。

90年に22歳の若さで東京都交響楽団のソロコンンサートマスターに就任して大きな話題を集めた現役のヴァイオリニストである。97年NHK連続テレビ小説「あぐり」のあの美しいテーマ音楽を演奏した方といえば思い出す人もあるかもしれない。

知ってるようで知らない指揮者おもしろ雑学事典」(2006.6.20) 

この本の第4章「指揮者はオーケストラを超えていたら勝ち」に対談形式で述べられていた内容である。

☆ 指揮者とオーケストラが仲良し友だちみたいだと奇跡的な名演は生まれにくいのですか?

生まれにくいと思う。結果的には練習のときに僕が指揮者から怒鳴られて嫌な気持ちはしたけど、その演奏会を思い出すと幸せなんです。その指揮者をものすごく尊敬するし、尊敬の気持ちって一生消えない。仲良く和気あいあいとやった場合に、芸術的な深みのある演奏をした記憶がないんです、残念ながら。

ものすごくいい演奏ができるのは一年に一度か、運がいいと二度、三度かもしれない、そういうときはある種のストレスとか、負荷がかかって舞台にいるんです。すごい緊張かもしれないし、このメロディを綺麗に吹くことができるかどうかっていう瀬戸際かもしれない、そういうことを感じながらみんなが次々にクリアすることが積み重なって奇跡が起こることがある。

ある意味で、そういうストレスとか負荷を与えてくれる指揮者でないと、名演はできない。みんながご機嫌で全然ストレスがなくて、いい指揮者だな、この人はなにか居心地がいいよなっていうときはそこそこしか、いかない
です。

だから、今まで僕が経験した、素晴らしかった演奏というのはいい意味でのストレスは沢山ありましたよ。指揮者からの音楽的な要求が高くて、自分やオーケストラがそこまで行かれるかどうかを考えているときは精神的にプレッシャーがかかるけど、それを乗り越えたときにいい演奏ができる。

☆ コンサートマスターにとって、指揮者とはどのような存在なのですか?

指揮者って本当にミステリー。指揮者がいなくても演奏はできるがレベルをもっと高いところまで持っていくためには、やっぱり指揮者は絶対に必要。

レベルの高いオーケストラには、音楽に対する確固たる信念と個性を持った一流の器楽奏者が沢山集まっています。だから、指揮者はオーケストラの存在を超えているんじゃないかと思わせる人が勝ちなんです。

それはおそらく勉強とか経験とか、耳がいいとかスコアがよく読めるとか、そんなことではダメかもしれない、というのが僕の意見。

「生まれたときからそういう資質がある人じゃないと指揮者にはなれない」と、ある人が言っていますが、指揮者になれないのになっちゃっている人が意外に多いんです。「この指揮者は本物だ」と思える人はひと握り。

本物の指揮者だったら、音楽を離れたときにどんな人なんかあまり気にしない。音楽がものすごく出来て、しかも人間的にもバランスが取れている指揮者なんて、ほとんど聞いたことないです。

本物の指揮者は人並み外れているっていうのが僕の考え。そういう能力があって我々やお客さんに喜びとか幸せを与えられる指揮者なら意地悪だろうとお金に汚い人だろうとかまわないんです。

以上、関連箇所の抜粋だが、随分と歯切れのいい発言でこれが指揮者に対するオーケストラ側のおよその見解とみてもいいだろう。

ところで、以上の話は「演奏」という言葉を「仕事」に置き換えると音楽の世界だけではなく私たちが一般的に働いている職場にも通じるような話になる。

たとえば「なあなあの仲良しクラブみたいな職場ではいい仕事が出来ない」
とは在職中にもよく聞かされた話だが、ともすれば穏やかな雰囲気に流されがちだった我が身にとってはいささか耳の痛い話である。

組織の世界では単なる「いい人」
では済まされないことが多い。とりわけ管理職になると「厳しい上司と忠実な部下」という構図が当たり前のように求められるが、ストレスを受ける部下にしてみれば迷惑千万な話で「居ないのが一番いい上司」と言われる所以である(笑)。

「あいつは悪(ワル)だ」とレッテルを張られることはひとつの勲章といってもいいが、そこはそれ本人の人徳とも微妙に絡んできて「いい人」と「ワル」との兼ね合いはなかなか難しい。

結局のところ、最後の決め手となるのは「組織への忠誠心」と「人間的な誠実さ」にあるような気がするが、その辺が音楽芸術の才能の世界と大きくかけ離れているところだろう。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

百聞は一聴に如かず

2017年11月09日 | オーディオ談義

秋もだんだん深まり、過ごしやすい気候になると心身ともに快調で物事への熱中度も一段と深まるようだ。

日替わりメニューのようにくるくる変わる我が家のオーディオシステムだが、このところさらに加速気味(笑)。

主な変化をあげてみると次の4つに集約できる。

 フルレンジ方式の「AXIOM80」に取り付けたウッドホーン

 2ウェイシステムの「500ヘルツ以上」を受け持つ裸のAXIOM80に取り付けたウッドホーン

 同じく2ウェイシステムの「500ヘルツ以下」を受け持つJBLの「D130」を駆動するアンプにTRアンプを使用

 フィリップスのユニット(口径30センチ)に取り付けたウッドホーン

こうやって整理してみるとスピーカー周りの工作が大半だ。

      

「悦に入る」とはこのことだが、ほんとに以前と比べて音が良くなったんだろうか・・・。

オーディオは自己満足の世界なので自分さえ気に入った音であればそれで十分なのだが、やはりそれだけでは進歩が止まってしまうようにも思う。折に触れ他人の耳も拝借したいところだ。

そこで、先日ご意見番としてこれまで「我が家のサウンドの推移」をつぶさに熟知されているオーディオ仲間のYさんに来ていただいて、ご感想を伺うことにした。

まず1から。

「これまでとガラッと変わりましたよ。より自然で肩の力がすっかり抜けておおらかな音になりました。こんなに良くなるところをみると80の場合はバッフルへのネジ止めはしないほうがいいですね。この鳴らし方は特許ものだと思いますよ。」

「特許なんて大げさな~(笑)。しかし自分でもその効果にびっくりしてますよ。」

そういえば、先日これに関してメル友の「I」さん(東海地方)から次のようなメール(抜粋)をいただいた。

ショートホーン付きAXIOM80! 音が9合目まで来たということは大変なことですね。更に、デザインが凄い! アヴァンギャルドです。」

おっと、「アヴァンギャルドってどういう意味だったかな?」とググってみると、先進的、革新的という意味のようだ。たしかに、これまでこういうデザインはまったく見たことがない。

けっして「奇を衒う」わけではないが、「木製の植木鉢をホーン代わりにしてSPユニットを納める」なんてことを試みるのは、何だかパイオニアになった気分で実に楽しい。それにこの方式はAXIOM80以外のどのユニットにも適用できるのが面白い。


次に2と3について

「AXIOM80にホーンを付けた効果が出てますね。500ヘルツ以上しか受け持っていないのに80が大型システムになって鳴っているみたいです。この鳴らし方はまったく理想的です。それに低音域はTRアンプで駆動されていますが、何ら違和感がありませんよ。まったく信じられないような低音が出ますね。」

以上、ここまではいいことづくめだったが、最後に4について。

「この音は私にはピンときませんね。ちょっと低音不足ではありませんか。我が家のセカンドシステムでは口径10センチのユニットでもっと凄い低音が出てますよ。」

この音で低音不足とはこれいかに(笑)~。

翌日になって、いそいそと(Yさんが)運営されている「センター」のセカンド・システム(お客様控室)を聴きに伺った。

    

フォステクスの口径10センチのユニットをとても入り組んだバックロードホーンの箱に入れて駆動されている。アンプは真空管「6550プッシュプル」。

初めにジャズを聴かせていただいたが、こんなに小さなユニットからこんなに凄い低音が出るのかとびっくり仰天。おそらく30ヘルツあたりまでは十分出ているだろう。

たしかにこういう音を毎日聴かれていたら、我が家の低音に物足りなさを覚えられるのは当然のことだと心から納得した。

ただし、低音はもの凄いんだけど、ボーカルや弦楽器などいろいろ聴かせていただくと、ウ~ン・・・。

特定のソースには抜群の表現力を示すがそれ以外となると「?」のようで、いわゆる「一発屋」かな(笑)。

それにしても、Yさんはこういう音がお好みだったのか!

まさに「百聞は一聴に如かず」だった。

「人生いろいろ」だけどオーディオも「百者百様」だ。音楽の好みも違えば音質の好みも一致することはまずありえないが、それにしてもこの音は我が家とはまったく「水と油」だった。

もちろん正解のない世界だからどちらがいいとも悪いとも言えないが、
Yさんの我が家のシステムに対するいつもの「的確極まりないご指摘」はいったいどういうことなんだろう。

音の好みが違えば違うほど他家の音のアラが余計に目立つのだろうか。

不思議~(笑)。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢は枯野をかけ廻(めぐ)る

2017年11月07日 | オーディオ談義

4日(土)の早朝、パソコンを開いてみたところ過去記事「ユダヤ教徒が豚肉を食べない理由」のアクセス数が異常な伸びを示していた。

「エッ、どうして?」と不審に思っていたところ、5日のネット記事を見ていてようやく原因らしきものに行き当たった。トランプ大統領の娘「イバンカ」さんが、今回の訪日にあたって「ユダヤ教徒のため豚肉を食べない」との記事があったのだ。

思い当たるのはこれだけなので、時事問題がすぐにブログの関連記事に反映したのかと、いささか驚いた。

もちろん光栄の至りですが~(笑)。

閑話休題

さて、「我が家のオーディオの根幹をなしている」といっても過言ではない真空管だが、どうしても手に入れたい球も少なくなってきて、この頃は「もうこの辺で真空管漁りは打ち止めにしようかなあ」という思いを拭いきれないでいる。

というのは、どんなにいい球だと思っても、聴き慣れてくると所詮は「五十歩百歩」みたいなところがあって、どうもお値段ほどの違いはなさそうだ(笑)。

端的な例が出力管の雄とされる「300B」だ。

我が家には「300Bシングル」アンプが2台あって1号機(モノ×2台)と、2号機(ステレオアンプ:銅板シャーシ)とがある。

    

たとえば1号機でオリジナルのWE300B(1951年製)とエレハモ(ロシア)の300Bとを差し替えて聴き比べてみると、中高音域の美しさはどうかするとエレハモの方が上回るほどなのだ。

システム環境にもよるが「ツボ」にはまりさえすれば安物の真空管だって存在価値が十分あるというわけで、お値段からすると両者の開きは月とスッポンだから何だか馬鹿らしくなってしまった。

したがって、先日「北国の真空管博士」から「とても珍しい球が手に入りましたよ。この球は〇〇さんが使用されているPX25アンプの前段管に使用できます。<12A系>の一番古い球になります。お気に入りのトリタン・フィラメントですからぜひお奨めしたいと思いますがいかがですか。」とお誘いがあったときも、一つ返事とまではいかず「しばらく考えさせてくれませんか。」

すると「いつでも結構ですよ。〇〇さんのために保管しておきますから。」

沈思黙考すること1日間(笑)。

あの古典管の「泰山北斗」の博士がそこまで仰るのならと、「購入しますので送付お願いします。」

ほどなく到着して小包を開けてみた。白箱には「GSX-112」と記載してある。

  

ウ~ン、これは・・と、思わず息を呑んだ!

この独特の形状を見ただけで身震いし、「お前にこんな貴重な球を持つ資格があるのか」と問い詰められるような気がした。

仮にの話だが、100万円が相場の「WE300B」(刻印)が手に入ったとしても、何らこだわりなく使用することができるが、こういう100年近くにもなる超希少管ともなると幾重にもなる先人の努力と熱意が込められているような気がしておいそれと使えなくなる。

すぐに博士に連絡を入れた。

「一目見ただけで惚れ込みました。凄い球ですね。こんな貴重な球をとても使うわけにはいきませんよ。当分の間、見るだけにしておきます。それにしてもアメリカはヨーロッパのような戦火の地を免れたので今でもこういう貴重な球が残っているんですねえ・・。」

「ハイ、ご満足していただいて良かったです。1920年代の球ですが、実は71系にもこういう球があるんですよ・・。この球は特性もそろっていますし、接続部分のハンダを入れ替えてますので安心して使用できます。トリタン・フィラメントですから情報量も抜きん出ていると思いますよ。」

この球が来てからおよそ1週間、毎日のように「矯(た)めつ眺(すが)めつ」弄り回している。真空管には「見るだけで楽しめる」効用があることを初めて発見した(笑)。

まだまだ自分が知らない真空管の奥深さを垣間見せてもらった博士に改めて感謝である。

この球をもし使うときが来るとしたら、5年後か、あるいは10年後になるのか、「余命半年」と宣告されたときぐらいかなあ・・・。

そのときはPX25の親分筋に当たる出力管「
PP5/400」(英国マツダ)と組み合わせてみようか、肝心のスピーカーはそのころはいったいどうなっているんだろう・・・、と夢は果てしなく広がる。

俳聖「芭蕉」の辞世の句とされているのは「旅に病んで 夢は枯野を かけ廻る」だが、転じて自分の場合は「オーディオに病んで 夢は枯野を かけ廻る」と、させてもらおう(笑)。



 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音楽のジャンルとは

2017年11月04日 | 復刻シリーズ

音楽のジャンルといえば、まず意識するのが、クラシック、ジャズ、ポップス、歌謡曲などの区分ということになるが、いざこれらを「選り分ける具体的な基準は?」と問われると明快な答えを得るのはそう簡単なことではない。

たとえばクラシックとポップスの違い、ジャズとロックの違い、加えてクラシックひとつとってみても古典派とかロマン派といった分類がある。

    「音楽ジャンルって何だろう?」(1999年12月、新潮選書)  

この本は、そのジャンル分けの基準を研究した著作だった。著者は「みつとみ俊郎」さん。

本書の姿勢は、極端にマニアックな定義ではなく、標準的にこの程度の理解があれば、お互いに意思の疎通ができるような音楽のジャンルを示したというもので、根っこの部分では皆同じ音楽
なのだという考えに立っている。これにはまったく同感。

音楽を聴くときに己の「琴線」に触れるものであれば「モーツァルトも演歌も同じだ。音楽に貴賤はない。」と思っているが、これは一部のクラシックファンにとっては眉をひそめるような話かもしれない。

つい最近のブログで「ちあき なおみ」や「フランク永井」を俎上に上げたところ、クラシック通の知人から申し出があったので「フランク永井」のCD盤を「
貸して」あげたところ、今や大の愛聴盤とのこと。音楽の食わず嫌いって多いんですよねえ(笑)。

「メロディと歌詞」が一体となって切々と訴えかけてくる日本の歌謡曲は心情的にピタリとくるところがあって、やはり
人間の生まれ育ったルーツは争えない。

さて、テーマをクラシックのジャンルに移そう。

歌謡曲などと比べると極めて長い伝統を有するクラシックについてはどうしても身構えるところ多々あるが、いろんな歴史を知っておくと曲趣の理解がより一層増すという利点もたしかに無視できない。

音楽のジャンルを分ける基本中の基本は西洋音階(ドレミファソラシド)とそれ以外の民族特有の言語としての音階をもとに作られた音楽との二種類に分けられるという

「クラシック音楽
の定義」となると一見簡単そうに見えて意外と手ごわい。そもそも定義なんてないに等しいが、結局のところ、古さ(歴史)、曲目の奥深さ、作曲家自身の多彩な人間像などがポップスなどとの境界線になる。

以上を踏まえて、クラシック音楽のジャンルの中味をそれぞれ定義するとつぎのようになる。以下、堅苦しくなるので興味のない方はどうか素通りを~。

Ⅰ ルネッサンス音楽
14世紀から16世紀にかけてのヨーロッパ・ルネッサンスの期に書かれた音楽作品の総称

Ⅱ バロック音楽
1600年から1750年ぐらいまでのヨーロッパの音楽を指す。大型の真珠の形のいびつさを形容するbarrocoというポルトガル語がもともとの語源で「ゆがんだ」「仰々しい」といった意味合いを持つ。

イタリア
モンテベルディ、ヴィヴァルディ、コレルリなど多彩な作品が多くバロック音楽をリードした。

フランス
リュリ、ラモーなどのクラブサン(チェンバロ)に特徴づけられ、オペラの中にバレエが頻繁に使われたのもフランスならでは。

イギイス
ヘンリー・パーセルが様々な作品を残し、ヘンデルがイギリスに帰化して「メサイア」などの完成度の高い、劇的な作品を数多く残した。

ドイツ
シュッツが宗教音楽を数多く残し、
バッハが宗教曲、器楽曲に数多くの傑作を残した。

Ⅲ 古典派音楽
ハイドン、モーツァルト、ベートーベンの初期までを中心とした1800年次前後のおよそ30年間のヨーロッパ音楽の総称。
メロディと伴奏がはっきり分かれるホモフォニック形式で作られているのが特徴で、これを音楽のスタイルとしてまとめたのがソナタ形式。

Ⅳ ロマン派音楽
19世紀始めごろから印象主義の始まる19世紀末までの作曲家たちで、もっとも多い。古典派のように形式にとらわれず旋律が自由で伸び伸びしており、メロディ主体の音楽が多い。

ベートーベンは古典派とロマン派の過渡期に位置しているがほかに、シューベルト、シューマン、ブラームス、ショパン、ヴェルディ、プッチーニ、ビゼー、ベルリオーズ、

そして、後期ロマン派としては、ワーグナー、マーラー、ブルックナー、リヒャルト・シュトラウス、ムソルグスキーなどのロシア5人組、チャイコフスキー、グリーグ、スメタナ、ドヴォルザーク。

Ⅴ 印象派の音楽
近代音楽の幕開けを飾るドビュッシーやラベルなどのフランスの作曲家たちの音楽スタイル。
音楽の特徴はモネなどの絵画のように全体のつくりの焦点をぼやけさせ、始まりと終わりを合理的に解決しないところ。イギリスのディリアスなどの作品も印象派音楽として位置づけられる。

Ⅵ 近代音楽
ロマン派音楽と現代音楽との橋渡し的な役割として理解される面が多い。
ストラビンスキー、バルトーク、シベリウス、スクリャービン、シェーンベルク、ベルク、そして、ショスタコーヴィッチとプロコフィエフ。

Ⅶ 現代音楽
第一次大戦終了後から現在に至るまでの音楽を総称して現代音楽と呼ぶ。この中に含まれる音楽スタイルはさまざまで現在もなお進行中のジャンル。電子音楽の試みをしたシュトックハウゼン、前衛的なアプローチの第一人者ジョン・ケージ、自然音を楽器によって模倣しようとしたメシアンなどがあげられる。

最後になるが、本格的なクラシックの歴史がバロック時代(1600年~)からとすると今日までおよそ400年経過したことになる。一方、絵画の世界ではダ・ヴィンチの傑作「モナ・リザ」が描かれたのが1500年頃だからこちらの方が100年ほど古い。

西洋芸術の粋は音楽と絵画に尽きると思うが、いったいどちらに優位性があるだろうと、ときどき妙なことを考えてしまう。

ついては、ずっと以前の朝日新聞の「天声人語」にこんな記事が載っていた。

「絵画は音楽に負ける」と冒頭にあって「音楽に涙する人は多けれど、絵画で泣いた話はめったに聞かない」とあり、興味深いのは音楽側の人の発言ではなく、昭和洋画壇の重鎮、中村研一氏の言ということ。

耳からの情報は五感の中でも唯一脳幹に直結しており、感情が生まれる古い脳に最も近い。

だから、音楽を聴いて一瞬で引き込まれ、涙することもある。音楽の効用の一つに感情の浄化だと言われるのはそのためだ。

この天声人語の最後はこんな言葉で結ばれている。

「心がうらぶれたときは音楽を聴くな」(笑)。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音の重心を下げる方法

2017年11月02日 | オーディオ談義

「チューブ・オーディオ・ラボ」(新潟県)さんから改造していただいた真空管式「2A3シングル」アンプ。出力管は2A3の中でも希少管と言ってもいい「VISSEAUX」(フランス:刻印)だし、放送局仕様の大型出力トランス(タムラ)もポイントである。

    


日記をめくってみると去る6月30日に我が家に到着しているのでちょうど4か月経ったことになる。

流石に歴戦のプロの手になるものなので「2A3」専用回路の採用など独特のノウハウも相まって「非の打ち所がないアンプ」と言いたいところだが、唯一、物足りないところがあって、それは低音域の伸びがもっと欲しい~。

もちろんアンプの長所も欠点もスピーカー次第のところがあって、両者は持ちつ持たれつの関係にあるが、我が家の場合は低音域が比較的薄めのスピーカーがAXIOM80を筆頭に多いことからその傾向が余計に目立つ。

ドスンとかドカンとかいう鳴らし方にはとうの昔に縁を切ったが、それにしてももっと音の重心を下げたいところだ。

とうとう思い余って製作者のKさんにぶつけてみた。

「例の2A3アンプですがとても鮮度が高くて気に入っているのですが、もっと音の重心を下げる方法がありませんかね。難しいですかね・・・。」

すると
「ああ、それなら簡単ですよ。カップリングコンデンサーの値を上げればいいです。ちょっと回路図を調べてみましょう・・・。0.22μF(マイクロファラッド)のコンデンサーを使ってますが、0.47μF程度ならいいと思います。ブランドとしては【ビタミンQ】クラスなら言うことなしですが。」

Kさんは完成したアンプのテスト用として低音域が豊かなタンノイさんのオートグラフを使用されているので、比較的「低音過多を警戒した音づくり」をされているような気がすると、Kさんの名誉のために援護しておこう(笑)。

「ビタミンQなら持ってますよ。たしか、0.22μFを2個持ってたと思います。これをパラってハンダ付けしても構いませんかね?」

次の画像がSPRAGUEのビタミンQ。

     

「はい、それでも結構です。コンデンサーの極性はありません。アンプの裏ブタを開けると、出力管のソケットのすぐ近くのコンデンサーがそれです。(簡単な作業ですから)わざわざ送り返すほどのこともないでしょう。ご健闘を祈ります。」

トホホ~(笑)。

      

音質に多大の影響を与えるというウェスタンの配線材を使い、きちんと整理整頓が行き届いた回路なのですぐにお目当ての個所が分かった。

おぼつかない手つきでハンダごてを握ってようやくビタミンQを2個取り付けた。これでカップリングコンデンサーの値が「0.22μF」から「0.44μF」(耐圧400V)になったはずだ。

さあ、いよいよ音出し。低音域の量感が以前より増えることはたしかだが、どのくらいのものかなあ。

ハラハラ、ドキドキ、ワクワクしながら聴いてみると・・。

バッチリだった(笑)。こんなことなら早く相談して手を打つべきだった!

これで晴れて「2A3シングルアンプ」が我が家のエース級に仲間入り~。

このところ恐ろしいほど打つ手打つ手がピタリと当たるのはいったいどうしたことか(笑)。

 


 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする