「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

独り言~督促~

2012年06月29日 | 独り言

「あなたが借りた本は返却期限を過ぎています。他から予約が入った本がありますので至急返却をお願いします。」と県立図書館から督促の電話があった。27日(水)の午後のこと。

丁度、湯布院のAさんと我が家でオーディオの試聴中のことで「マクベス」(歌劇:ヴェルディ)をかなり音量を上げてスピーカーの近くで聴いていたため(室内の)電話の呼び出し音に気付かず、Aさんに促されてようやく気が付いた。

ちなみに、この日は「Axiom80」の下限200ヘルツ前後をカットしているネットワークの一部に使っているマイカ・コンデンサーの容量「0.075μF」とAさんから持ってきていただいた「1μF」との音の違いを確認していたもの。「驚天動地」(?)の結果が出たが、詳細については後日ということで。それにしてもAさんにはいつも協力をしていただいて、本当に感謝の言葉も出ない程。

話は戻って、「すみませ~ン。ご迷惑をおかけします。すぐに返しに行きます。」まったく弁解の余地なし。

現在、4つの図書館を利用しており、延べ
25冊の本を借りている。うち県立図書館だけ10冊が借りられる。1回あたり2か所の図書館を巡回していて、貸出期限が2週間だから、単純計算だと2週間で10冊~15冊を読破しなければいけない。

毎日、鋭意(?)オーディオに取り組むとともに「クラシカ・ジャパン」など、興味のあるテレビ番組を観ているので読書する暇なんかないはずなのに、借りてくるのは相変わらず限度いっぱい。「本の虫」とはいえ困ったことである。分かっちゃいるけど止められない!

督促手数料として1回あたり電話代と手数料を含めて「お金」を徴収したらどうだろうか。返却したときに「お金」を納めない人間がいたら、図書カードにペナルティを記憶させて以降その図書館から本を借りられないようにするといいかもしれない、などと車の運転中にボンヤリと考えながら、翌日(28日)の午後、返却に行った。

カウンターで「どうも遅れてすみません。どの本に予約が入っていたんですか?」と訊ねると、「”翻訳に遊ぶ”と”シンデレラの罠”です。」

「翻訳に遊ぶ」は非常に面白くてためになる本でどなたにもお薦めしたいと思った本。「シンデレラの罠」は何かの本で秀逸なミステリーと書いてあったので、借りたわけだが、そのうち「読もう、読もう」と思っていたのにとうとう未読のまま返却期限切れ。

う~ん、残念。それにしてもこの本を予約するとは、熱心なミステリーファンもいることだわいと何となく嬉しくなった。平日午後の図書館は閑散としていて、パソコンによる検索もいつものように順番待ちをしなくていいので助かる。新刊書コーナーも土日よりも在庫が豊富で、これからは平日に来ようかな~と思いながら、相変わらず懲りずに10冊借りた。

          

 「小説的思考のススメ」~「気になる部分」だらけの日本文学~阿部公彦(あべ まさひこ:東大准教授)著

 「世紀の発見」磯崎 憲一郎(芥川賞受賞)著

 「フランクを始末するには」アントニー・マン著

 「宝石1950」~探偵小説傑作集~「ミステリー文学資料館」編

以上が新刊。

ほかハードボイルドの傑作として知られる「マルタの鷹」、「血の収穫」、「ガラスの鍵」(以上、ダシール・ハメット)、「逃切り」、「悪魔は夜はばたく」(以上、ディーン・R・クーンツ)、そして安藤能明の「漂流トラック」。

相変わらずミステリーが大半を占めている。ハメットは、あまりに有名すぎていまさらの感があるが、学生時代に読んだけれどすっかり記憶が薄れてしまい、読後感も希薄だったので再度読み返すことにしたもの。

安藤能明(あんどう よしあき)の「漂流トラック」は、他の図書館から借りてきて現在読破中の「12オクロック・ハイ」~警視庁捜査一課特殊班~がすごく面白いので大注目の作家。わざわざ、「あ」(著者の名字別分類)のコーナーに行って択んだ。

どの書評にも頼らず、自分の好みに合った作家を見つけ出すのも図書館通いの秘かな楽しみである。そういえば「東京ダモイ」で大いに唸った「鏑木 蓮」(かぶらぎ れん)さんの作品はほとんど目を通したが駄作が無いのに感心する。

さあ、「今度こそ期限内に読むぞ~」と、思うのだが果たしてどうなることやら。

 


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音楽談義~ジャズの名盤「サキソフォン・コロッサス」の呪縛~

2012年06月26日 | 音楽談義

今回のテーマはいわゆる「テスト盤」について。

年から年中、暇にまかせてオーディオ装置をいじり回していると、どこかを変えるたびに気になるのが「いったい、どういう音になったんだろう?」。

それには格好のテスト盤(CD)があってそれは(社)「日本オーディオ協会」発売元の「SOUND CHECK」。「ピンク・ノイズ」にはじまって「位相のチェック」や「スウィープ・トーン」、「楽器やボーカル」の音色が確認できるようになっており、随分重宝しているが、やはり所詮は「音」に過ぎず、仕上げとしてはやはり「音楽」として心に染み入ってくるかどうかがポイント。

先日、いつも録画している「開運!何でも鑑定団」(骨董品の鑑定をしているテレビ番組)を観ていたら、「今は亡き夫の形見です」と、クラシック・ギターを出品されている中年のご婦人がいた。運営しているダンス教室の経営の一助として活用できればという趣旨だったが、このギターは鑑定の結果、名品と分かって何と500万円の価値が付けられた。そして通常のギターと、この名品のギターの弾き比べをしていたが明らかに後者の方が響きが澄んでいて
ウットリと聞き惚れた。

それに、何といっても両者の決定的な違いは聴いているうちに、きわめて幼稚な表現になるが「胸が”キュン”となって切なくなる」とでも言えばいいのだろうか、どうもそういう感じがしてきた。

実はいつもそうで、(自分にとって)「いい音、いい音楽」を聴くと、いわく言い難いような”微妙な感情の揺れ”が必ず訪れてくるのである。たとえて言えば初恋にも似たような情動性を感じるわけで、オーディオという趣味を飽きもせずずっと続けていられるのも、原点はそこにあるのだろう。

ある程度、酸いも甘いも噛み分けた「古狸」になると、ありふれた日常生活の中で実際に「心を揺り動かしてくれる」ものは実に貴重な存在なのである。

と、いうわけでちょっと寄り道をしたが、システム改変の仕上げはいつも好きな音楽を収録しているCD盤を聴いて、胸がキュンと締め付けられるような思いをさせてくれるかどうかが決め手。

自分の経験では、ピアノ曲の再生が一番クセ者で、これをウットリと聞き惚れることができればシステムの改変は半ば目的を達成したことになる。

ほかにも、ヴァイオリンが音響空間を漂うような感じで鳴ってくれれば更にいいし、ボーカルで「ちあき なおみ」ちゃんが切なく歌ってくれればもう峠を半分以上越したようなもの。いずれも最後の判定は自分固有の「耳=脳」である。

そしていよいよ最後の関門となるのがジャズの「サキソフォン・コロッサス」(以下「サキコロ」)。

             

もう、はるか10年以上も昔から我が家のテスト盤の王様として君臨しているのがこの盤。左が特別録音の「XRCD」盤で、右がその後に発売されたもの。1曲目の「セント・トーマス」の冒頭のシンバルの響きがきれいに抜けているかどうか、やせ細っていないか、そしてサックスとドラムが力強く鳴ってくれるかどうかがハイライト。そして5曲目の「ブルーセブン」のベースの重量感・・・。

この「サキコロ」再生の重要性について改めて認識させられたのが一昨日の24日(日)のことだった。

この日は梅雨の真っ最中で一日中シトシトと雨が降り続いて外に出かける気がしないので朝からずっと家に閉じこもって室内遊戯に耽った。カミさんは「宝塚」観劇のため22日(金)から大阪にいる娘のところに行っているので、家の中でたった一人、いっさい雑音が入らなくて快適(?)そのもの。

実験用の第二システムのJBL3ウェイをいじるうちに、何となく試しに1000ヘルツ以下の低域用のアンプをトランジスターの「01-A」(ケンウッド)から、現在遊んでいる真空管の「VV52B」シングルアンプに取り替えてみた。この取り換えは初めてのケースで、低域用のアンプはDCアンプと決めているので、すぐに元に戻すつもりでの実験だったが、あまりの(音の)品位の高さに驚いた。

ヴァイオリンやボーカルの艶めかしさは言うに及ばず、総じて中域部分が実に魅力的になる。低域もそこそこ出るしクラシックだけ聴くのなら「01-A」よりも上かもしれないと思ったほど。

しかし、問題は「サキコロ」を聴いたときのベースとドラムの重量感だけ・・・。何とかこの辺がうまく鳴ってくれると「鬼に金棒」なのでいろいろやってみた。ウェスタンのアウトプット・トランスを使って低域だけを増幅してみたりしてトライするもハム音が出てあえなく討ち死。

とうとう、この真空管アンプを修繕してもらった奈良のMさんに「何とかこのアンプの低域をもっと力強く鳴らせませんかね~。一案としてインピーダンスを整合させるためにチャンデバとパワーアンプの間にプリアンプを挿入すればいかがでしょう?」と(メールで)泣きついた。

すると「入力インピーダンスに関してはこのVV52Bは150KΩありますから条件としてはトランジスタアンプの50KΩ程度よりもずっと好条件のはずです。音の馬力に関してはモノブロックのトランジスターには叶わないと思います。(真空管の)シングルアンプの貴婦人に”馬の力”を要求するのはいかがなものでしょう。」と回答があった。

Mさんは少々力感は足りないけれど、優美で繊細な音色が売り物の真空管のシングル・アンプを「貴婦人」と称されている。

やっぱり、そうでしょうねえ。オーディオ・システムに何もかも要求するのは無理ってもんでしょう。結局、あれもこれもといろいろ追いかけるよりも「何をもって良し」とするのか、これは大切な「ポリシー」の問題にも一脈相通じるものがあってオーディオという趣味における非常に重要な問いかけになる。

お金が無尽蔵にあって高級機器をジャンジャン買い漁るわけにもいかないし、どこかでそれなりに妥協というものが必要になってくるのは分かっているつもりだが、つい夢中になるとその辺がおろそかになって無い物ねだりをしてしまい、いつもの落とし穴に嵌ってしまう。その挙句が「遊軍機器の増大=無駄遣い」。

とにかく「サキコロ」の再生にはいつも苦しめられている。何せ録音の感度が非常に低い。たとえばDAコンバーターの「デジタルボリューム」(0~100:2目盛=1db)が通常のCDであれば60程度あれば十分なのに、このサキコロに限っては90程度に上げてやらないと十分な音量にならない。こういう録音は手持ちのCDの中でも2~3枚程度。

したがって「サキコロ」の再生に照準を合わせると、他の曲目とのバランスがいろいろと取れにくくなることもこれまでさんざん経験してきた事実。

どだい、クラシックもジャズも両方うまく鳴らそうなんてケチな料簡がそもそも間違いなのかもしれない。片や教会の豊かな音響空間と固い石壁の反射音の響きの中で直接音と間接音が入り混じった音楽、片や「ストリート・ジャズ」の呼称にもあるように反射音なんかを度外視した音楽なのでその成り立ちがまったく異なっている。

したがって「原音再生」といいながら、原音以上にうまく鳴らそうという”欲張り”がオーディオ・マニアなのだからクラシックとジャズを双方満足して鳴らすのは基本的に難しい。結局は「二兎を追うもの一兎を得ず」。

自分が日常聴いているのは圧倒的にクラシックなので、何も「サキコロ」に振り回されなくてもあっさり諦めれば八方うまく納まりがつくわけだが、このジャズの名盤中の名盤は簡単にそれを許してくれそうもない。

クラシックなどからは絶対に味わえない「リズム感と乗り」が”もの凄い”のである。この躍動感だけはまったく別格の存在。

そろそろ「サキソフォン・コロッサスの呪縛(じゅばく)」から解き放されたいのは山々なのだが、ちょっと無理かもねえ・・・。

最後に、5年以上も前のブログで自分の愛聴盤としてこの「サキソフォン・コロッサス」を紹介したことがあるので再度紹介させてもらおう。(抜粋)


題  名     「サキソフォン・コロッサス」(コロッサスには巨像、巨人という意味がある)(収録:1956年)

曲  名     1 セント・トーマス

          2 ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ
          3 ストロード・ロード
          4 モリタート

          5 ブルー・セヴン

演奏者      テナーサックス   ソニー・ロリンズ
           ピアノ        トミー・フラナガン
           ベース       ダグ・ワトキンス
           ドラム        マックス・ローチ
 

今更申し上げるまでもなくジャズ史に燦然と輝く名盤である。ジャズという音楽は体質的に受け付けないけれども、この盤だけは別格。まるっきり素人の自分でさえ即興性の楽しさと体が自然に反応するリズムの「乗り」が感じ取れる。

また、オーディオ試聴用としても貴重な盤になっている。システムの一部を入れ換えたときには必ずテスト用として聴くのがこの盤である。

1のセント・トーマスの冒頭のシンバルの一撃(開始後37秒)はツィーター(高域専用のユニット)のレベル測定には欠かせない。極論すればシンバルの音をきれいに聴くためにタンノイにJBLの075ツウィーター(当時)を加えているといっても過言ではない。

5曲のうちで好きなのは1の「セント・トーマス」と5の「ブルーセヴン」。複雑なデジタル処理をしたこのXRCD盤の録音の良さには十分満足しているが、何せ録音の感度が低い。通常はワディアのDAコンバーターのボリューム60/100のところを90/100で聴かねばならない。

内容の解説については自分のような門外漢の拙い解説よりも、この盤の制作に携わった当事者と関係者の貴重なコメントが的確に表現していると思うのでかいつまんで紹介しておこう。

≪当事者≫
トミー・フラナガン(ピアノ)
あっという間にレコーディングが終了した。リハーサルもなし。簡単な打ち合わせをしただけでテープが回された。録り直しもなかった。やっているときからこのレコーディングは素晴らしいものになると確信していた。
 

マックス・ローチ(ドラム)
ソニーは何も注文を出さなかった。妙な小細工を一切せずにそのときの気持ちを素直に表現しただけだ。豪快で大胆、ソニーの持ち味がこれほど理想的な形で聴ける作品はほかにない。


≪関係者≫
トム・スコット(テナー・サックス)
セント・トーマスのリズミックなフレーズこそ彼ならではのものだ。普通のスウィング感とは違う。それでいて、ありきたりのダンサブルでもない。ジャズ特有の乗りの中で、独特のビートを感じさせる。これぞ典型的なロリンズ節だ。
 

ブランフォード・マルサリス(テナー・サックス)
ロリンズのアルバムの中で一番好きなのがサキソフォン・コロッサス。ここではいつにもまして構成なんかまったく考えていない。出たとこ勝負みたいなところがある。それで終わってみれば、構成力に富んだ内容になっている。これってすごい。うらやましい才能だ。この盤は不思議な作用があって、何かに悩んだときに聴くと、必ず解決策が浮かんでくる。お守りのような作品だ。全てのテナー奏者が聴くべき作品だし教科書でもある。


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独り言~オークションで手に入れたプリアンプ~

2012年06月22日 | 独り言

我が家のオーディオに無くてはならないものがネットオークション。これまで10年以上利用し、取引も軽く300件を越えるものの大半が真空管やコンデンサー、ケーブルなどの小物ばかり。

さすがに見ず知らずの相手から「値が張る大物」を購入する気にはならないが、それでもこれまで幸いなことに騙されたことが一度もない。もちろん性能に期待外れがあったりするが、それは当方の選択ミスであって相手方の責任ではない。

購入した真空管にいきなり雑音が出たりする事もままあって、いわゆる初期不良というわけだが、そういうときはすべて気持ちよく相手方が取引解消に応じてくれた。

したがって今のところネットオークションに悪いイメージはなし。オーディオをやる人間に根っからのワルはいないのだ!

さて、1か月ほど前に久しぶりに安くて性能のいい「プリアンプ」がないものかと探してみた。

我が家ではDAコンバーターにボリュームと入力のセレクト機能が付いているので基本的に「プリアンプ」は不要だが、低域と中高域用にアンプを分けているのでその音量バランスのためにボリューム調整が必要であり、現在使っているのはすべて「アッテネーター」。(「っても無(ね)ーたーとは俺のことだ」と、さる高名なオーディオ評論家が言っていた!)。

CD時代に入ってほぼ同じ機能を持つに至った「プリアンプ」と「アッテネーター」だが、いったいどれだけ音質に差があるのか、まあ、実験のつもりで探してみたというわけだが、ふと目についたのが「12AX7」と「12AU7」のミニチュア管各1本を使ったプリアンプ。

この両者は真空管アンプをご利用されている方ならご存知のとおり電圧増幅管の双璧ともいえる存在だが、同時に2本とも使っているプリアンプは自分が知る限り皆無である。あの名機とされる「マランツ7」だって12AX7を6本使用。

とにかく珍しいし、手持ちの真空管の中でもこの2種類についてはいろんなブランドを持っているので、”渡りに船”とばかり入札に参加。もちろん実験的に購入するのだから、(性能への期待が)外れて元々の覚悟で被害が大きくならないようにと4桁以内の価格での勝負。

すると奇跡的に5桁にギリギリ届こうかという範囲内で見事に落札。商品解説に「海外から発送なので到着するまでに1週間ほど期間が必要」とある。

「海外」だから、てっきりアメリカかなあと思っていたわけだが、「取引ナビ」で出品者と交渉を開始したところ”お名前”がたった「一文字の漢字」だったので”な~んだ”。アジアの「某国」だった。

正直言ってちょっとイメージダウンだが、何せ価格が価格だから贅沢は言えない。それにしても最初から「海外」とか言わずに「国名」を堂々と名乗ればいいものを、当事者そのものが国のイメージに自信を持っていない証拠かな。

そうこうするうちに、きっかり1週間後に荷物が届いた。どれどれと雑な梱包を解いて、小ぶりなプリアンプを取り出したところ、傾けるたびにザザーッと内部から盛大な音がする。

「エッ、この音いったい何?」。

戦々恐々としながら外れかかったネジを外して天板を開けると何と見るも無残な状態!

真空管2本のうちの1本がソケットから外れてしまってガラスが粉々の状態。ザザーッという音の正体はこれだった。ほかにも電源トランス取り付けのネジがすべて外れて”ぐらぐら状態”になっているなど、凄い惨状だった。いくらなんでもこういう状態で最初から出荷するはずはないから、どうも輸送中の事故のようである。

それも非常に高いところから放り投げてドサッと落とした感じ。相当の衝撃だったはずで、それも繰り返し繰り返し何回にも亘って。そうじゃないとこういうふうに真空管の9本のピンがソケットからすべて外れるなんてことはありえない。

とあるアンプの製作者が完成後にある程度の高さからドサッと床にアンプを落として衝撃に対する耐久性テストを実施すると何かの本で読んだことがあるが、このプリアンプもどうやら輸送業者がご親切にもそれをやってくれたらしい、それもすごく手荒に!?

とにかく、ネジを元通りに付けて固定し、手持ちの真空管を差し替えたうえで恐るおそる音出し。

ものすごい雑音が出てスピーカーが壊れる可能性があるので、40年来の付き合いだが、”成仏するかもしれませんがどうかお許しください”と心の中で手を合わせながらフォスター(現在はフォステクス)の「BF-103S」(10センチ口径)につないだ。パワーアンプは2A3(真空管)シングル。

やっぱり、あきまへん~。

ハム音が盛大に出てとても聴ける状態ではない。しかし音自体はなかなか素性が良くて澄んだ感じがする。原石は粗っぽいが、磨けばけっこう「玉」になるかもしれないなあという気がした。

どうせ出品者に送り返しても大きな期待は出来そうになく、こういう時の出番は頼りになる奈良のMさんに決まっている。このプリアンプの購入についても事前に連絡してあったのですぐに話が通じて、「とりあえず送ってみてください」とメールがあった。

さあ、大改造の始まり、始まり~。以下2週間に及ぶメール交換で判明した主な作業内容を忘れないように記しておこう。

 RCAプラグ、ボリュームの交換

 電解コンデンサーを大容量のスプラーグ100μFに交換、同時にカソード用の電解コンもスプラーグに交換


 ハム音はSBDブリッジダイオードによるヒーター点火とアース回路の見直しで完璧に駆逐

 出力段の逆配線ミス、12AX7のデカップリング挿入位置のミス発見によりそれぞれ所定の位置に復帰

 様々なコンデンサーの交換、とりわけ音質を決めるポイントに「東一」(0.1μF)と「シーメンス」(下記写真の右側、縦長のステンレス製ケース2個、2μF)の採用で音の品位が飛躍的に向上

そして、Mさんの「自画自賛になりますが素晴らしい音になりました」との太鼓判のもとにプリアンプが戻ってきたのがこの15日(金)の午後のことだった。

           

使用されている12AX7と12AU7の真空管のうち、12AU7の方が音質に大きなウェイトを占めているとのことだったので、秘蔵していたムラードの「ECC82」(12AU7のヨーロッパでの呼称)を奮発。12AX7には遊んでいたテレフンケンの「ECC83」(ダイアマークなし)にようやく陽の目を見させてやった。

いやあ参りました!SN比が抜群にいいのはいつものことだが、「Axiom80」がまるで水を得た魚のように伸び伸びと、そして豊かに鳴ってくれる。やや癖のある高域がボリュームを上げてもうるさくないし落ち着きが出てきた。悩みの種だった独特の神経質さがこれで見事に払拭。

以前、使っていた「マランツ7」よりも(ライン系に限っては)SN比、音質ともに明らかに上回っている。

感謝の気持ちとともに「部品代、送料を含めて言い値を請求してください」と、メール。

「この前、別府にご訪問して3日間付き合っていただいたのでそのお礼です。代金は要りません。」

いやはや・・・。

ところで、「アッテネーター」と「プリアンプ」の比較についてだが今回のケースは迷うことなく後者に
軍配を上げるがこれはあくまでも我が家だけの話で、それぞれ個別の”ツクリ”の問題があるので一般論として双方の優劣を決めるというのは早計だろう。

それにしても恐るべきはコンデンサーの品質!交換次第でまるでアンプが別物みたいに変わるんだから”ゆめゆめ”おろそかにできないパーツ。

まあ、そういうわけでこのプリアンプは17日(日)午後のオーディオ仲間による試聴会(19日付のブログに登載)にギリギリ間に合って大活躍をしてくれたというわけである。


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オーディオ談義~オーディオ愛好家のご来訪~

2012年06月19日 | オーディオ談義

「今日の午後はお時間がありますか?久しぶりに聴かせていただきたいのですが」と、福岡県にお住いのNさんから、電話があったのが17日(日)の午前10時ごろ。

「いいですよ。空いてますからどうぞ、どうぞ~」。それこそ毎日が日曜日みたいなもんだからいつでも受け入れOK。

「それでは午後1時ごろに出発しますので3時頃には到着すると思います。」「ハイ、お気をつけて~」

さあ、急に忙しくなった。とにかく散らかし放題のオーディオ・ルームの整理整頓が先決。何せ狭い我が家で日常の生活空間を兼ねているので洋服や雑誌などの避難措置がたいへん。

一通り済んだところでお客さんの試聴位置をどうしようか、Nさんはオーディオ仲間が多いので少なくとも3名くらいはお見えになるはずと踏んで、ベストの位置を考察。我が家はスピーカーの高さが、低域から高域まで1.8mほどあるのでなるべく座高の高い椅子が良かろうと食堂の椅子を2脚持ってきて、出来るだけSPから離れた位置にセット。

準備万端整ってから、早くてもお客さんの到着は3時過ぎになるとの予測をもとに、2時半ごろからメイン・システムのスイッチをすべてオンしてウォーミングアップ開始。ちなみに、書く段になって改めてスイッチの数を確認すると8個になるが、そのうちセパレートのパワーアンプが4個を占める。経験上、我が家のシステムは15分ほど経過するとフル回転になるものの、念には念をいれて30分以上前に起動。

とにかくシステムがベスト・コンディションのときにお迎えできるなんて実に運がいい。

つい最近の対策として「ウーファー3発から4発への変更」、「トランスペアレントのXLRデジタルケーブルの購入」「Axiom80専用のプリアンプの採用」で気が遠くなる(?)ほど、音が良くなっているのだ!

とりわけ「Axiom80専用のプリアンプの採用」については、この15日(金)の午後に到着したばかりでまさに滑り込みセーフ。これにはいろいろ”いきさつ”があって後日、新たに項目を立てて詳述したい。

まるで入試会場に臨む受験生のような心境で、玄関を出たり入ったりしてそわそわしながら待つうちに3時半ごろにご到着。予想どおりというかお見えになったのは3名で、うちNさんとTさんはおよそ4年ぶりの再会、Mさんとは初対面だが、いずれもオーディオ歴が長く筋金入りの方々ばかり。

ちなみにTさんはYLの6ウェイ・オールホーン・システムなどを経て、現在はローサーなどのフルレンジ・システムをご愛用中、NさんとMさんはタンノイ・オートグラフの愛好者。

まあ、人の家に試聴に行って面と向かってシステムの悪口を言う方はまずいないので、評価についても話半分に留めておいた方が無難だが、結論から言うと今回ばかりは”お世辞抜き”と受け取らせてもらっても差支えないほど、「大好評」を博した。

ところで弁解するわけではないが自分のブログは一貫して「リアリティ」をモットーにしている。したがってストレートに「聞いたこと、見たこと、体験したこと、感じたこと」を拙いなりに”ありのまま”表現しているが、どうも直截すぎて他者に徒に刺激を与えてしまい「揚げ足取り、ちょっかい、便乗」を誘発しているとすれば残念だし不徳の致すところ。

今回の内容も曲解されて「自慢話」として受け取る向きがあるやもしれず、それはそれで仕方がないが本意はけっしてそうではないので念のため~。

さて、試聴した曲目を順にいくと、

「ワルキューレ」(ワグナー作曲、ショルティ指揮)、「ヴィオリン・ソナタ」(モーツァルト作曲、シャハム兄妹による演奏)、

「交響曲第4番」(マーラー作曲、ゲルギエフ指揮)、歌謡曲「ちあき なおみ」、最後に再び「ワルキューレ」

試聴開始後すぐに、”もの凄い”ワグナー好きのTさんが開口一番。「4年前とは大違いですね。随分良くなってます。この音なら、どんな人が聴いてもケチをつける人は”まず、いない”と思っていいでしょう。今後いろいろ”いじって”もこれ以上の音にするのは難しいですよ。自分もたいへん苦労しましたのであなたのご苦労がよく分かります。あのときは大変失礼なことを申し上げました。」

「エッ、4年前に失礼な言葉があったかなあ」と思うが、どうも当時の記憶が定かではない。しかし、こういう言葉をいただくと、ほんとうにオーディオ冥利に尽きるんですよねえ。「いやあ、そう言っていただくと心からうれしいです。本当に苦労の甲斐がありました!」。まあ、あまりにも4年前のシステムがひどかったので、今回の好調さが目立ったのかもしれないが。

Tさんはあの有名な日本オーディオ界の泰斗「高城重躬」氏のご自宅を訪問されたことがあるなど、武者修行などを通じて豊富なオーディオ経験を積まれた方で、その話には共感したり勉強になることが実に多かった。

以下、「Tさん語録」としてほんの一部だが記憶にとどめておくことにしよう。

 ワグナーの指輪は「ワルキューレ」があれば十分です。それも「カルショー」がプロデュースしたショルティ盤を越える演奏はいまだにありません。これよりはちょっと落ちますが同じショルティ指揮の「タンホイザー」を購入されることをお薦めします。アジアの某国に赴任したときに、「タンホイザー」だけは肌身離さず持っていきましたよ。

 低域をうまく鳴らそうと思ったらDCアンプが一番です。一方、中高域の再生は何といっても真空管アンプですね。

 「Axiom80」(中高域用)と「SLE-20W」(低域用)のSPユニットはすごく強力なマグネットを使っていますね。そうじゃないと管楽器の響きがこれほどうまく出ません。「Axiom80」がまるでホーン・スピーカーのような鳴り方をしています。マグネットが貧弱だと反応が鈍くなるし倍音がきれいに伸びていきません。SPユニットはマグネットが生命線です。

続いてNさん。一番お好きな楽器はボーカルだそうで、これほど神秘的な楽器はないですねえと仰る。ボーカルの次に来るのがヴァイオリンとのこと。それならばと「ヴァイオリン・ソナタ」やマーラーの第4番の「ソプラノ独唱」(第四楽章)を映像入りで視聴。

その次に「ちあき なおみ」をかけてあげた。「この歳になると”ひばりちゃん”と”なおみちゃん”の二人がいれば十分ですねえ」と非常に満足されたご様子。

たしかに”ひばりちゃん”と”なおみちゃん”はボーカル再生の双璧だと思うが、Mさんから「不思議なことに男性歌手についてはすぐに思い浮かびませんねえ」とご提案。それもそうですよね~。皆さんがお帰りになった後で、ようやく「フランク永井」を思い出した。

Mさんは「オートグラフ」にレッドを容れてあるそうだが、低域の再生に非常に苦労されているご様子。オートグラフで低音不足なんてまったく贅沢な悩みだと思うが、そのせいか我が家のシステムではフォステクスのウーファーユニット「SLE-20W」に興味を示されていた。

有名な「Axiom80」の陰に隠れて地味な存在になっているが、我が家のシステムの一番の功労者はもしかするとこの「SLE-20W」(エッジレス)の4発なのかもしれない。とにかく低域という土台がしっかりしていないと、どんなに中高域が優美かつ繊細に鳴ろうと「砂上の楼閣」に過ぎないのだから。

試聴の終わり頃になって、「T」さんから、「もう一度ワルキューレを聴かせてください。最後の4枚目が一番好きなんです」とリクエスト。

結局、我が家を辞去されたのは夕闇せまる7時前でこれから湯布院のAさん宅へ向かわれるとのことだった。

とにかく、お客さんからこれほどストレートに喜びの声をいただいたのはまったく”初めて”の経験と言っていいが、こうして「功成った」のも、これまでのいろんな方々のアドバイスやご尽力のおかげであり、自然に感謝の気持ちが湧き起こってくる。

システムの上流から辿っていくと、CDの音をアナログに近づける「バッファー・アンプ」を作ってくれた大宰府のMさん、今回、比類なき高性能の「Axiom80専用のプリアンプ」を作ってくれた奈良のMさん、ウーファー4発を軽々と鳴らす「DCアンプ」を何台も作ってくれた杵築市のMさん、常に惜しみなくスピーカーをはじめ全般的なアドバイスをしてくれた湯布院のAさん、そして今回のお客さんやメール仲間たち。

どうも支えていただいて”ありがとうございます”!
 

 


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オーディオ談義~「大当たり!」~

2012年06月14日 | オーディオ談義

前回に続いての話だが6月9日(土)の夜にオークションで落札した「XLR(バランス)デジタル・ケーブル」。これはCDトランスポートとDAコンバーターというデジタル機器の間を結ぶ大切なケーブルである。

出品者(長崎)との宛て先の連絡や振り込み、発送が順調に進んで13日(水)の午前9時ごろに我が家に無事到着。

毎週水曜日は運動ジムの定休日なのでいつも図書館巡りに当てているが、出品者から「13日の午前中に到着指定しました」と連絡があったのでずっと待機するつもりだったが”朝一”で結着がついて大助かり。

さあ、さっそく試聴に取りかかった。これまでのケーブルとどのくらい違うんだろうかと非常に興味をそそられる。オーディオはやはりときどき変化がないとねえ。

(お前はいつも変化ばかり求めているじゃないか、と言われればそれまでだが・・・)

         

写真の左側がこれまで持っていた旧ケーブルで、右側が今回落札した新ケーブル。お分かりのとおり直径が一回り違うし、外装も違う。

ちなみに、今回改めて旧ケーブルの表記を調べたところ「アポジー」とあったので、ググってみると「オヤイデ」電器(東京)から発売されているもので価格は4000円前後と、極めて良心的な価格だった。この価格にしてはと言うと失礼だが随分立派な音でつい肩入れしたくなる。

一方、新ケーブルは「トランスペアレント」(アメリカ)という有名メーカー製で、定価は5万6千円、新品の販売価格だと2割引きだとしても4万数千円程度だが、今回落札した価格は前回のブログで記載したとおり中古なので1万2千円。ただし、一見したところまったく使用感がなく新品に近い印象を受けた。

はたして値段の違いほど音質に差があるのかなあ?

これまでこういう試聴を散々経験してきたが、満足するよりも期待外れの方が圧倒的に多かったので今回も期待半分、失望半分と、やや半身になって身構えながら聴いてみたところ、これが”大当たり”だったんですよねえ!

はじめにかけた「ちあき なおみ」の「夜霧よ今夜もありがとう」では、しっとりとしたハスキー・ボイスに痺れ、次にかけた「サキソフォン・コロッサス」(ソニー・ロリンズ)ではサックスとシンバルの音に痺れ、そしていよいよ本命の「ワルキューレ」(ワグナー)では豊かな低弦の響きと圧倒的な臨場感に痺れて、「凄い、凄い」を連発。

とにかく音が極めてナチュラルで、きめが細かくて、艶がありボリュームを上げてもうるさく感じないのがいい。これに比べると旧ケーブルはレンジの差はそれほどでもないが音の粒子が粗い感じがして、ボリュームを上げるとちょっと耳障りに感じるところが違う。

まあ、いろんな機器との相性もあるのだろうが、やっぱり値段だけのことはあるわい、というのが正直な実感で「Axiom80」の繊細さとウーファー4発の迫力を心ゆくまで堪能した。オーディオをいじって40年以上になるが、やっとここまで来たかと感無量。

まあ、自分が勝手に思うだけで他人が聴いたらまた違う評価があるかもしれないが、最終的には自分さえ納得すればいい世界なので十分満足。

それにしても、ケーブルの違いで音楽の印象がこれほど変わるとはつくづく恐ろしくなるが、そもそもケーブルによって生じる音質の差については諸説紛々で、今もって肯定的な意見と否定的な意見が入り乱れて百花繚乱の状態である。

否定的な意見は物理学的なアプローチ派に多いようで、その理由について微に入り細に入り分析して科学的に述べてあって、なかなか説得力があるし実際にマニアを対象にした「ブラインドテスト」(目隠しテスト)でも当たる確率は非常に低いという結果が出ている。

しかし、思うにブラインドテストを実施した際のケーブル以外のシステムの内容が問題で、果たして微妙な差を表現できる能力をシステム自体がそもそも持っているのか、(特にスピーカーが)という疑問に突き当たるし、それにいろんな機器との相性の問題もあるところ。したがってシステムの内容が明らかにされていない限りブラインドテストの結果を盲信するわけにはいかない。

オーディオもすべて理論的に割り切れればそれほど苦労はしなくて済むのだが、やはりまだ未解明というか、個人ごとの感性によって左右される部分が大いに残されている気がしてならない。

たとえば非常に粗っぽい話だが(間違っていたらゴメン・・・)、「音」は「空気中の疎密波」としてとらえられるが「音量(音の大きさ)=振幅
の大きさ」、「音程(音の高さ)=周波数(波形一つ分の長さ)」、そして「音色(楽器の種類)=波形の違い」の3つで表示され、これらのいろんな組み合わせによって「音の違い」が生じるわけだが、「音量」と「音程」は比較的簡単に物理的測定が可能だし、人間の耳(=脳)にとっても判断がつきやすいところだが、肝心の「音色」については数値で表示するというわけにはいかない。

「これがヴァイオリンの音だ、これがピアノの音だ」などと、簡単に測定できる機器があるとは思えないし、最終的には人間の判断に頼らざるを得ないが、その判断についても各人の感性によって大きく左右され、一番分かれやすいところ。たとえばチェロ、ビオラ、ヴァイオリンの区別がたちどころに分かる人なんてどのくらいいるんだろう?

オーディオにとって一番の課題は「原音再生」で、これは一言で言えば楽器の音色をそれらしく鳴らすことにあるが、それぞれのオーディオ・システムの音が各人の好み次第でマチマチなのもその辺に理由がある。

「生兵法は大怪我の基」なのでこの辺で止めておいた方がよさそうだが、はからずも今回の「XLRデジタルケーブル」によっていろいろ考えさせられたことだった。

 


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独り言~「XLRデジタルコード」をオークションでゲット~

2012年06月10日 | 独り言

今年の夏も「節電対策」が声高に叫ばれている。電気を湯水のように使うオーディオ・マニアにとってはちょっと気が引ける話。まあ、出来ることといえば、こまめにオーディオ機器のスイッチを切るとか音楽を聴く時間を減らすことぐらいしか思い浮かばない。

家庭における節電対策の筆頭に位置するのは何といっても「エアコン」の使用だが、音楽を試聴中にこれを使うまいとすれば、窓を全開せざるをえないが、そうすると室内から音量が盛大に漏れ出て隣近所に大迷惑ということになる。したがって「オーディオ=夏=エアコン」は切っても切れない縁みたいなもの。

まあ、これからの季節はミニシステムで聴いたり、出来るだけ小音量で聴くにこしたことはないので、小音量時のボリュームの調節がしやすい様にこの際「DAコンバーター」(「ワディア27ixVer.3.0」、以下、「DAC」)の出力電圧を下げてみることにした。

このDACには購入した当初から入力セレクト機能とデジタルボリューム(0~100目盛の可変:1db=2目盛)がついているのでプリアンプを使わなくてもいいのが利点だが、現在使っている目盛の範囲はせいぜい15~40前後。

何しろ出力電圧が普通のDACでは2V前後だが、これは、0.4V~8.45Vまで16段階に調整が出来て、現在は工場出荷時の4.26Vなのでちょっと高すぎる。

7日(木)の早朝から作業開始。

馴染みの東京のショップから教えてもらった通りに慎重に裏蓋のネジを10か所ほど外すと、天板が取れる。

        

左が内部の全景画像で、右が出力調整箇所を拡大したもの。オレンジ色のところが左右両チャンネルの該当部分。

各4つの白いスイッチをオープン側とクローズ側のいずれかに倒して、いろいろ組み合わせることで出力の調整が出来る。実に簡単。この方式は依然所有していたマーク・レヴィンソンのプリアンプ「No.26SL」のゲイン調整でも同じやり方だった。ちなみに、このプリアンプを下取りに出して購入したのがこのDACだった。

今回は3.43Vに設定。まあ、保守心理が働いて激変緩和のつもりで心持ち落としたという程度。ここまでは順調に作業が済んだが、元通りにCDトランスポートからSTグラスケーブル、クロック・リンクのグラスケーブル、そしてBNCデジタルコードを接続し直したところ、肝心のBNCデジタルコードの接続が「NO DETA」とDACの小窓に表示されてうまくいかない。

「おかしいなあ?」とあれこれやってみて何度も確かめるものの、ガンとして受け付けない。トホホ、こんなことならボリューム調整なんて”いらんこと”をしなければよかったと思ったが後悔先に立たず。

このDACの入力端子には「STグラス」「BNC」「プラスティック」「XLR(バランス)」の4種類が設けられている。


仕方なく、いつ購入したかさえ忘れてしまっていた「XLR(バランス)デジタルコード」(1本)を引っ張り出してきた。まったく存在感が希薄だったケーブルだからきっとオークションで安物を手に入れてそのままにしておいたものだろう。

この接続はうまくいって、とりあえず試聴してみたところこれがなかなか”いい線”をいっているのである。「STグラス」と比べると明らかにレンジが広くなっている。ちょっと高域が耳障りだが、補って余りあるほどに音の鮮度が向上している。

安物で、こんなにいいのなら本腰を入れてゲットしてみるかと「オークション」を覗いてみた。通常使われるRCAのデジタルコード(75オーム)は沢山出品されているが、XLRデジタルコード(110オーム)になると極端に出品数が少ない。

その中で狙ったのが「トランスぺアレント」(アメリカ)という会社のデジタルコード。何しろ、途方もない百万円単位のSPコードを販売しているコードの専門メーカーなので間違いはあるまい。

「プレミアム」と「レファレンス」という2種類のコードが出品中。すぐにネットで定価を調べてみると、前者が5万6千円で、後者は上級機種として何と13万6千円!それが入札価格の状況は前者が5千円、後者が1万9千円。両者とも落札期日は9日(土)の夜。

オーディオ・マニアの心理としては当然のことながら後者の「レファレンス」に食指が動くのは致し方ない。土曜日は夕食が済んでからずっと戦闘モード。パソコンとにらめっこしながら思い切って「3万1千円」で入札に参加すると、「あなたが最高価格です」の表示にニンマリ。

しかし、5分とおかずに「高値更新」のメールが届いた。「これはダメだ~」と強力なライバルの存在に戦意喪失。昔ならすぐに負けん気を出すのだが、もはやそういう時代は遠い過去の話。何といっても先立つものがないのが一番の理由だが。

結局、「な~に、大した違いはあるまい」と自分を慰めながら次善の策として「プレミアム」で我慢してこの入札に専念することにした。自分も随分、成長(?)した!

それでもずっと入札件数「0」だったのが、終了間際になってどっと殺到してきて13件にも達したので驚く。

価格の方も「5000円」スタートだったのだが最終的には「1万2千円」で当方が落札。まあ、妥当というか割安な買い物だろう。この出品者(長崎)はあまり欲のない方のようで、真空管の「6SL7GT」(1955年製造、GEのニッケル仕様の未開封品)も合わせて安価でゲットさせてもらった。

オークションの出品者も様々のようで、明らかに相場よりも高い価格で設定しているのを見かけたりすると、”強欲さ剥き出し”みたいで、自ずと人品骨柄がしのばれる。

商品の程度は写真ぐらいでは分かりずらいし、双方ともに氏素性も分からない人間同士の取引というハンディがあるのだから相場よりも安い価格で出すのが当たり前で、競り合いで上がっていく分には仕方がないと思うのだが。

とにかく、遅くとも水曜日までには新しい「XLRデジタルコード」がやってくる。さ~て、どういう音がするかなあ。
 

 


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オーディオ談義~「ワグナーを聴くならもっと低音が欲しい!」~

2012年06月06日 | オーディオ談義

「ワグナーを聴くならもっと低音が欲しいところですね~」。

これは先日の1日(金)の午後に我が家にお見えになった湯布院のAさんが「ワルキューレ」(ワグナー作曲、ショルティ指揮)を試聴しながら、独り言のように何気なく洩らされた言葉。

その時は別段気にもかけず、聞き流していたのだが、4日(月)の早朝5時ごろに目が覚めたとたんにこの言葉を思い出した。おそらく無意識のうちに我が深層心理に深く刻み込まれていたのだろう。

「ボーカルや室内楽なら今のままでも十分だけど、オペラやシンフォニーを聴くとなるとたしかにちょっと物足りないよねえ。よ~し、いっちょう、やったるか」と寝床の中で一大決心。

ガバッと跳ね起きて一目散に1階のオーディオルームへ。現在、200ヘルツ以下を受け持っているフォステクスのウーファー・ユニット「SLE-20W」(口径20センチ)「3発」を、これから「4発」にしようという魂胆である。ちなみに200ヘルツ以上の受け持ちは言わずと知れた「Axiom80」。

ここで、ちょっと話が逸れるが「ウーファー」という呼称は「ウーハー」とも称される。「ウィキペディア」によると英語で「Woofer」とあって、これは低音再生を担当するスピーカー・ユニットのことであり、名称は大型犬やオオカミ、ライオンなどの唸り声から付けられたとある。

「Woo」(ウー)は「唸り声」そのもので、「~fer」は「リーダース」によると「生み出す、含む」という意味だから、そういうことになるのだろう。

さて、このところ、オーディオ装置を”いじる”のはいつもこのパターンで、「朝飯前の仕事」になっている。とにかく一日の中で一番ヤル気が出てきて、頭と身体もフレッシュな状態だし、カミさんが勤めに出かける前に力仕事を加勢してもらわねばならないのも一つの理由。

何せ、SPボックスを降ろすのは簡単だが、逆に持ち上げるとなるととても一人では無理なのでカミさんの加勢は必須要件。非常にご親切な「お隣さん」に頼む手もあるが、70代中ごろの年齢の方なので腰でも傷められたらたいへんなことになる。

左右両方のSPボックスの裏蓋のすべてのネジの取り外しやSPコードの半田付け、ネジの取り付けなどをして4発目の「SLE-20W」をつけ終えたのが、ちょうどカミさんが早朝の散歩から戻ってくる6時半ごろ。1時間半ほどの作業時間だった。

「おい、ちょっと加勢してくれ~」「またねえ」といつものように気乗り薄ながらも手助けしてくれて無事終了。

                                

まだ早朝だからと気兼ねしながらもこらえきれずにボリュームを上げ気味にして、すぐに「ワルキューレ」の試聴開始。

「やっぱり凄い。3発と4発では大違い」というのが実感。”ローエンド”まで伸びるというよりも、40ヘルツ当たりの充満したエネルギー感が実に心地いい。

理論上からすると、口径20センチのウーファーが3発の場合は1発のときに比べて√3≒1.7倍に、4発の場合は√4=2倍に匹敵するエネルギー増の計算になる。したがってわずかの差のようにみえるが、聴感上はそれ以上の違いがある感じ。

それと如実に思い知らされたのが最近導入したCS放送のスカパー「クラシカ・ジャパン」の音とCDの再生音との差。

「クラシカ・ジャパン」は24時間放送なので、録画、再生に忙しくてブログも書く暇がないほどの忙しさ(このブログにしても8日ぶりに登載!)だが、「衛星アンテナとちゃちなチューナー」で聴く音とCDで聴く音の違いが一番分かるのが低域の重量感だった。関連して前者は全体的に「音が薄い」印象がするのが顕著に分かってきたのもウーファー4発の効果。

現在使っているCDトランスポート(ワディア270)の価格が7桁で、チューナーは5桁だから文字通り”桁違い”なので致し方ないところだが、やはりCDの再生能力の凄さを改めて実感した。

さて、そもそもはじめから4発入りのボックスを作ったのに、なぜわざわざ途中から3発にしたのだろうかと今さら不思議だが、どうもその時のはっきりした理由が思い出せない。

おそらく、当時は比較的コンパクトな低音が欲しかったのだろうが、周辺環境の変化につれてノウハウが進化して「4発」にふさわしい状況になったのだろうとは実に手前味噌。

「しまった!先月の上旬に奈良から遠路はるばるお見えになったMさんには是非4発で聴いてもらえばよかったのに」と悔やまれるが、もう後の祭り。自分の場合、こういうケースが”しょっちゅう”ある。

何せオーディオ装置のうちの市販品はデジタル系を除いてすべて改造しているし、ほかはすべて手作りなので”いかよう”にも扱う箇所がものすごく多い。まあ、試行錯誤の連続で失敗と楽しみが同居しているようなシステムなので必然的な宿命みたいなものだろう。

関連してつい先日、我が家で試聴した高校時代の同窓のU君からメールが来て、「あるオーディオ店でマッキンとJBLの組み合わせを聴いてみたが、ただ機器を置いて鳴らしているだけという印象でとても”味わいのある音”とは思えなかった」とあったので、「オーディオは家に機器を据えつけてからがほんとうの始まり」という趣旨のことをコメントした。

高級な機器を購入してポンと置けば即座に「いい音」が出るなんて、「オーディオとはそんなに甘いものじゃないですよ」と経験上からつくづく思うのだが、あまり偉そうに言う資格もないところ。

ところで先日、近くの本屋に出かけたついでに最近のオーディオ機器の情報を関係書籍の立ち読みで収集してみた。

何せ自分が使っているスピーカーやアンプ類はすべて30年以上も前の製品ばかりなので、もしかして時代遅れではなかろうか、自分が知らないだけでもっと「好みの音」があるのではないだろうかという疑問は常に持っている。

オーディオの黄金時代の製品に対して近年の日進月歩の技術が果たしてどこまで追いついているんだろうかとの興味は尽きない。ただし、こと真空管に限っては60年以上も前の1950年代の製品に対して近年製造された真空管の性能は未だ追いついていない。まあ、しっかりしたメーカーが本気になって作れば軽く凌駕するとは思うのだが、何せ使い道がオーディオだけなので商売になるわけでもなく、本気になれるはずがない。

しかし、問題は「スピーカー」。

システムの中で音決めの最たるものなので、常にアンテナを張りつつ、「ポイントは低域の再生能力だ」と個人的に思いながらも、未だに画期的な製品は現れていないようだが今回の立ち読みでは大方の傾向が分かった。

昔はウーファーに38センチ(15インチ)口径1発とか2発使用のシステムをよく見かけていたが、近年は15センチ~20センチの口径のユニットを2発使ったものが実に多い。

どうやらこれが主流と言ってよさそうだが、これは38センチ口径のコーン紙が大きすぎて重たくなり、音声信号に対する追従性が悪くなるので、その辺をカバーするために小口径のユニットを複数使うということなんだろう。(ただし、38センチ口径以上のユニットでも「励磁型」ともなると、これは別次元の世界になる。)

以前、「Axiom80」の愛好者だった千葉のSさんの話だが「Axiom80に組み合わせるウーファーは38センチ口径で十分と言っている人がいて驚きました。これでは両者の音のスピードが合うはずがありませんよね~」で、まったく同感。

したがって自分も同じような理屈で「Axiom80」のために、あえて20センチ口径のユニットを複数使っているわけだが、しかし、2発ぐらいならいいがこれが4発の使用ともなると並列接続する場合、インピーダンスが2オーム(ユニットのインピーダンスが8オームの場合8÷4=2オーム)となるので、アンプに膨大な負荷がかかってとても無理な相談。

※ オームの法則「電圧=電流×抵抗」により、抵抗が低くなるにつれて沢山の電流が必要となってアンプの負担が重くなる。

このため市販のシステムがせいぜい2発どまりなのもよく分かるが、自分の場合ステレオアンプを左右チャンネルごとに1台使っており、SP端子のLとRにユニットを2本ずつつないで4オーム負荷にして解決している。

もう一つ、最新システムは二つのウーファーユニットの間に(ボックスの中で)仕切りを入れているのも十分頷ける。ボックス内の背圧がユニットの背後の空間内で干渉し合うのを避けているのがその理由だが、自分も4つのユニットの間をそれぞれ厚い板で仕切っている。それも定在波を防ぐために平行ではなく斜めに仕切っている。

まあ、以上によりどうやら大間違いの方向には行っていないようでまずは”ひと安心”だが、あとは信用のおけるオーディオ店で最新システムを一度試聴してみなければ・・・。

 


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