「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

真空管の反乱

2018年03月30日 | オーディオ談義

ギャー、ガリガリ、バリバリッ!

PX25シングルアンプのスイッチを入れたとたんに右チャンネルのスピーカーから空気を鋭く切り裂くような大きなノイズが出た。いきなりのことなので肝っ玉がぶっ潰れんばかりになって急いでアンプのスイッチをオフ。

「いったい何が起きたんだろう?」と、戸惑うばかり。

とりあえずスピーカーのボイスコイルの破損が心配になったので、別のアンプに繋いで音出ししたところ、すんなり音が出てくれてひと安心。幸い、比較的耐久入力の有る「3ウェイシステム」だったので事なきを得た。

これがもし繊細極まりない「AXIOM80」(最初期版)だったらと思うと背筋がぞっとした。

スピーカーの無事を確認すると、今度は異音の原因究明だ。

アンプに原因があることは間違いないし、それも右チャンネルだけからなのでおそらく真空管、それも出力管だろうとおよその見当がついた。

SPコードを外しているので改めてスイッチオンして、右側の「PX25」真空管を真上から覗いてみたところ、プレートの光の周りが紫色になっている。左側のPX25にそういう症状は見られないのでこれが故障の原因に違いない。

さっそく古典管の泰山北斗「北国の真空管博士」に問い合わせて症状を説明すると、こういう答えが返ってきた。

「ああ、それは真空管内の真空度の低下による故障でしょう。おそらく寿命が来たと思います。真空管はスイッチ・オン・オフ時が傷みやすいので要注意ですよ。しかし、万一大きな異音が出てもスピーカーに衝撃を与えないように回路に対策を施しておきましたので大丈夫だとは思いますが。」

「何しろこれまで全然故障の兆候もなかったのでビックリしました。音が出なくなったり、だんだんと小さくなるような故障ならいいのですが、急に大きな異音が出るのはほんとうに驚きました。こういうケースは初めてですよ。」と返答。

「かなりレアなケースなのでぜひ見てみたいですね。」との博士の言葉に後押しされて後日、症状を確認していただくために該当の真空管を送付することにした。

    

ご覧のとおりかなり濃い目のゲッタがちゃんと残っているのでうまく復活出来たら「めっけ物」だが、まず無理だろう・・・。

いずれにしても、このアンプの整流管には直熱管を使っていたので、今後、傍熱管(WE422A)を使用することにした。まあ、気休めかもしれないが。

いつも素直に言うことを聞いてくれる真空管だが持ち主へのこういう反乱は珍しい。ちょっといじめ過ぎかもしれないので「働き方改革」が必要かもねえ(笑)。




 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

名作映画への誘(いざな)い~歴代のキネマ旬報ベスト10~

2018年03月29日 | 独り言

「キネマ旬報」といえばキネマ旬報社が発行する映画雑誌である。1919年創刊だからおよそ100年にもなる由緒ある雑誌だが、とりわけ有名なのが毎年発表される年間映画の「ベスト10」だろう。

どちらかといえば娯楽性の高い興行収入には目もくれず、芸術性に重きを置いた選出になっているのが特徴で、古来幾多の名監督がその栄誉に浴している。

そして、このほど通い慣れた図書館の新刊コーナーで偶然見かけたのが次の本。

       

「音楽&オーディオ」で猛烈に忙しい毎日なので(笑)
、それほど映画鑑賞に割ける時間も無いのだが、それでも身近な「ひかりTV」(NTT)で昔の懐かしい映画があったりすると、すぐに録画するはめになる。

なにしろ37チャンネルもあると映画のオンパレードなので、自分の知らない「名画」を見逃すのももったいないし、「何かしら指針があれば助かる」との思いに答えてくれそうなのがこの本だった。

1924年から年ごとに日本・外国の「ベスト10」が掲げてあるのでざっと目を通したが、知らない映画がかなりあった。

そのなかでコラム(595頁)に「映画人が選ぶオールタイムベスト100」というのがあったので、そのうちの「ベスト10」を紹介してみよう。映画人というのは監督、プロデューサー、脚本家、撮影監督などの専門家たちを指す。いわばプロたちが選ぶのだから信頼性は高い。

<日本映画>(カッコ内は公開年)

1位 「七人の侍」(54年) 2位 「浮雲」(55年) 3位 「飢餓海峡」(65年) 3位 「東京物語」 5位 「幕末太陽傳」(57年) 5位 「羅生門」(50年) 7位 「赤い殺意」 8位 「仁義なき戦い」(シリーズ) (73年ほか) 8位 「二十四の瞳」(54年)10位 「雨月物語」(53年)

この中で、まだ観てないのは「浮雲」「幕末太陽傳」「赤い殺意」の3本だけだが、選出順位は素人の自分でさえも「成る程」と頷かせるものがある。

次に<外国映画>へ。

1位 「第三の男」(52年) 2位 「2001年宇宙の旅」(68年) 3位 「ローマの休日」(54年) 4位 「アラビアのロレンス」(63年) 5位 「風と共に去りぬ」(52年) 6位 「市民ケーン」(41
年) 7位 「駅馬車」(40年) 7位 「禁じられた遊び」(53年) 7位 「ゴッドファーザー(3部作)」 7位 「道」(57年)

幸いなことに10本ともすべて観た映画ばかりだがいずれも秀作ばかり。たとえば「2001年宇宙の旅」の中で展開されていたコンピューターの反乱に当時はピンとこなかったものの、今や現実のものになろうとしているので、その先見性に改めて感心する。

また「ローマの休日」の終幕でグレゴリー・ペック(新聞記者)がヘップバーン(王女)との面会が終わって大広間にずっと佇むラストシーンがいまだに瞼に焼き付いている。

何はともあれ1950年代の映画が多いことに気づかされるが、当時は小学生くらいの頃で少なくとも映画が大衆文化の中でどういう地位を占めていたかを肌身で知っている。映画館はいつも超満員だった。クラシック音楽と同様に1950年代が質・量ともに映画の「黄金時代」だったのだろう。

ところで、つい最近「ひかりTV」で放映していたのが「時代屋の女房」(1983年)だった。

           

主演は「渡瀬恒彦」と「夏目雅子」のご両人だが、周知のとおり二人ともすでに「鬼籍」に入っている。

当時の年齢はといえば渡瀬が39歳の男盛り、夏目は23歳(白血病により25歳で病死)という全盛時代で、スクリーンの中での両者はまさに光輝かんばかりの存在感だった。

同じ人間なら誰にでも生涯のうちに「若さを誇示できる」一番素敵な時代があると思うのだが、映画俳優はこうしてスクリーンを通してベストの時代の映像をいつまでも人々の記憶の中に鮮明に残せるのだから、つくづく「いい職業だなあ!」と思うのは自分だけだろうか。

まあ、簡単になれる職業でもないが(笑)。


 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黄金の組み合わせ

2018年03月27日 | オーディオ談義

タイトルの「黄金の組み合わせ」と聞いてピンとくる方はきっと年配のオーディオ愛好家に違いない。

50年ほど前のオーディオ専門誌「ステレオサウンド」で見かけた言葉だが、スピーカーが「タンノイⅢLZ」、アンプは「ラックスの38F」アンプの組み合わせがそうだった。たしか、五味康介さんがこの組み合わせを強力に後押しされていたと記憶している。

当時は大のタンノイ・ファンだったので、我が家でもこの組み合わせを導入して大いに楽しませてもらったが、そのうち「あさはか」にもオーディオ評論家の口車に乗せられて「ⅢLZ」(イン・オリジナル・キャビネット)を下取りに出しヤマハの「1000モニター」を購入してしまった。

今となっては、とんでもないことを仕出かしたわけだが、
これはいまだに後悔していることの一つである。

たとえば、昨年(2017年)の12月にオークションに出品されていた「ⅢLZ」(箱付きのモニターレッド)は落札価格が35万円前後だったが、片や「1000モニター」の今の相場は2万円前後だから月とスッポンだ(笑)。

振り返ってみるとタンノイの中ではこの「ⅢLZ」(口径25センチ)が一番バランスが取れていた。

その後、口径38センチに換えてから、あのスピード感のない「ぼんやりした低音域」が嫌になって、いつのまにか「タンノイ嫌い」になってしまったが、もしかしてあのまま「ⅢLZ」を使っていたら、こうも迷路を彷徨しなかったかもしれない。

さて、いたずらに過去を嘆いても仕方がないので我が家の「黄金の組み合わせ」に移ろう。

JBLの「175」ドライバーが我が家に来てから早3週間あまり。

仲間から使い方をいろいろ教わりながら、どうにか満足できるレベルになって今では我が家の「旗艦モデル」にしてもいいくらいの存在感があり期待以上の効果をもたらしてくれた。

しかし、「またぞろ好奇心の虫が・・」(笑)。

これで十分だと思うものの、愛情が増せば増すほど「もっと良くなるかもしれない」という誘惑にはとても抗しがたいものがある。

現在「LCネットワーク」を使ってクロスオーバー1000ヘルツの2ウェイ方式で鳴らしているのはこれまで記述したとおり。

「LCネットワーク」というのは一言でいえばコイル(L)とコンデンサー(C)を使って周波数帯域を分けるやり方で1台のアンプで駆動するのが特徴。

ところが、我が家には「チャンネルディヴァイダー」(以下「チャンデバ」)が3台あって、クロスオーヴァーが「500ヘルツ仕様」「1000ヘルツ仕様」そして「5000ヘルツ仕様」とがあるんですよねえ~。

まさに「猫に鰹節」、使わない手はない(笑)。

「チャンデバって何?」という方はネットで調べていただくといいが、平たく言えばスピーカー毎にアンプをあてがうやり方である。たとえば2ウェイともなると低音域用と高音域用にアンプをそれぞれ1台使う。

古来「LCネットワーク派 VS チャンデバ派」の「どちらがいい、悪い」の論争は尽きないが、まあ、それぞれに一長一短で、こればかりは好き好きといえよう。

ちなみに周辺のオーディオ機器との関連も大いにありで、どちらかといえばレコード派は前者に属し、デジタル派は後者の色合いが濃いように思える。

さて、今回のチャンデバ使用にあたって一番の魅力は「175」の駆動に「371Aシングルアンプをあてがうことができる」点に尽きる。

質の良い小出力の真空管アンプで高能率(110db前後、通常は95db前後)のユニットを鳴らすのはすこぶる快感で、まさに「黄金の組み合わせ」といえるのではなかろうか!

「シンプル イズ ベスト」の持ち味が一番発揮されるように思えるのがその理由。

いったん、思い立つと矢も楯もたまらなくなり即実行へ。な~に作業時間はものの1時間もあれば十分だろう。時間だけはたっぷりあるんだし、悪ければ元に戻せばいいだけの話(笑)~。

   

上側が「371Aシングル」アンプで下側の機器がチャンデバだが、二つのつまみはダミーで用をなしておらずボリューム調整なしの代物である。したがってパワーアンプ側でのボリューム調整が必要となる。

システムの概要はクロスオーバー1000ヘルツの2ウェイ・マルチ方式で、1000ヘルツ(12db/oct)以下はJBLのD130(イン・ウェストミンスター)、同以上は同じくJBLの「175」。

実験1

はじめにD130には「TRアンプ」、「175」には真空管アンプ「371Aシングル」で鳴らしてみたところ、これはあきまへん(笑)。

TRアンプの冷徹な音色と真空管アンプの暖かい音色が折り合わずひどい音になった。

以前、クロス500ヘルツで聴いていた時(500ヘルツ以上は復刻版のAXIOM80)は、両者の違和感はほとんどなかったのだが、耳にとってより敏感な帯域となる1000ヘルツでクロスさせると違和感が顕在化してしまった。

実験2

そこで、D130に次の3台の真空管アンプをあてがって実験。

「371Aプッシュプル」、「2A3シングル」、「300Bシングル」(モノ×2台)

この中でベストだったのは「2A3シングル」で、低音域が一番豊かだったのが決め手だが、加えて都合よく「フル・ボリューム」で使えるのが大きな利点だった。

これで十分だと思ったが、しばらく聴いているとどうもD130の中央の出っ張ったアルミの部分の音が気になってきた。ジャズ向きならこの輝きもいいんだろうが、クラシック向きとなるともっと落ち着いた音の方がいい。

そこで、久しぶりにウェストミンスターにサランネットを被せて刺激的な音をマスキングしてみたところ、予想以上の効果が上がった。見てくれの方も「クラシックを聴ける雰囲気」になったみたいな気がする(笑)。

   

何はともあれ、ジャズ向きのユニットをクラシック向きに強引に調教した感は否めないが、あの伝説のオーディオ評論家「瀬川冬樹」さんも「AXIOM80」から「JBL」へ転進されたわけで、きっとこういう音でクラシックを聴かれていたのではなかろうかと勝手に想像している今日この頃(笑)。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書く力は、読む力~いい文章とは~

2018年03月24日 | 復刻シリーズ

「上手いか、下手か」は別にして「書くこと」にはあまり苦にならないが、もっと“上手くなりたい”という気持ちは常に持っている。

「自分が考え、伝えたい意味をもっと的確に読者に届けたい」というのがその理由だが、そういう人間にとって格好の本があった。

              

2週間に1度くらいのペースで2か所の図書館通いを続けているがなかなか「これは」という本に出くわさない。もちろん自分の読解力不足も否定できないところだが(笑)、久しぶりに感銘を受けた本に出会った。

著者は現役の高校教師(「国語」)だそうだが、この内容は音楽鑑賞にも十分通用する話なので紹介してみよう。いつものブログよりもちょっと長くなるが最後まで付き合ってくださいね~。

まず冒頭、或る友人女性から著者に対する問いかけが紹介される。

「中学校の卒業式の日、担任の先生が教室でギターの弾き語りをしてくれた。それが「神田川」(1972年、かぐや姫)だった。歌い終わると、最後の歌詞の意味が分かるかとクラスに問いかけ、誰も答えられないのを見て、その男の先生がこういった。

“あと10年もすれば分かる日が来るだろう。これは人生の宿題にしておく。”」

その最後の歌詞とはこうである。

「若かったあの頃 何も怖くなかった ただ貴方のやさしさが 怖かった」

つまり友人女性から「“貴方のやさしさがナゼ怖かったのか”という意味が今になってもよく分からないから教えてほしい。貴方は国語教師だから分かるでしょう」というわけである。

歌詞の全体を紹介しておかないとフェアではないので、ちょっと長くなるが次のとおり。

「貴方はもう忘れたかしら 赤い手ぬぐいマフラーにして 二人で行った横丁の風呂屋 一緒に出ようねって 言ったのに いつも私が待たされた 洗い髪がしんまで冷えて 小さな石鹸カタカタ鳴った 貴方は私の身体を抱いて 冷たいねって言ったのよ 若かったあの頃 何も怖くなかった ただ貴方のやさしさが 怖かった


いろんな答えが紹介される。

 あなたから優しくされればされるほど、いつか別れの日が来たとき、つまり、今の幸せが失われたときのショックは逆に大きくなると思って怖くなる、だからそんなに優しくしないで。

これが著者の答えだが、直感に頼り過ぎる読み方として友人女性からあえなく却下される。

次に、歌詞の範囲から導けるぎりぎりの論理的な答えとして

 私を粗末に扱う一方で、優しくもしてくれる貴方。もしかしたら、ほかに好きな人がいるのではないか。その優しさは偽りの優しさなのではないか。そう思うと怖くなる。

ところが、「この答えはあまりにもありふれていて“人生の宿題”にはなりません」と、これも否定される。

とうとう白旗を掲げた著者だが、意外にも同僚の数学教師から次のような解答が導かれる。

 この女性は彼との同棲生活に多少の不安を持っています。悪い人間ではありませんが、理想や夢ばかり追って地に足がついていないような、まあ、男はみなそうですが、そういう人間として彼を見ている。もしかしたら別れることを考えていたのかもしれません。

ところが、彼がときどき見せる優しさに触れると、その決意はたちまち揺らいで、またしても彼の胸の中に包み込まれてしまう。コントロールが利かなくなるのです。

神田川は学園紛争全盛の時代を回顧した歌です。当時は親も教師も警察も怖くはなかった。強く出てきたら強くやり返せばよかった。しかし彼は違います。ここというところで優しく接してくるのです。それは無意識のものでしょうがその優しさを前にすると、彼女は険を削がれ無防備になってしまう。自身が操縦不能になってしまうのです。だから、彼の優しさだけが怖かったのです。」

模範解答があるわけではないが、“大人の知恵が盛り込まれている”この解釈こそが正しいと著者は確信する。この新解釈を友人女性に告げると、大いに納得した様子だったが、こうも言った。

「ほんとうは作者に正解が聞けるといいんだけどね」

実はここからがこのブログのポイントになるのだが、著者に言わせると「それはちょっと違う!」

「作者に正解を聞いてもあまり期待できません。理由は簡単です。作者が自分の思いを正確に表現できているとは限らないからです。正解は作者の頭の中にあるのではなく表現の中にこそあります。問うべきは書き手はどういうつもりで書いたかではなく、どう読めるかです。“読み”は文字どおり読み手が主導するものなのです。」

まさに、これはクラシック音楽にも十分通用する話ではあるまいか。

古来、作曲家が残した「楽譜」の解釈をめぐって沢山の指揮者や演奏家たちが独自の読みを行ってきた。たとえば同じ「運命」(ベートーヴェン)をとってみても星の数ほど演奏の違いがあり、演奏時間だって長いのから短いのまで千差万別である。

「いったいどの演奏が正しいことやら。さぞかしベートーヴェンが生きていたらぜひ訊いてみたいものだが」と思ったことのあるクラシックファンはきっと“ごまんと”いるに違いない。

今になってみると、楽譜は作曲家の手を離れて独り歩きをしていることが分かる。いろんな「読み方」があっても当然で、どれが正しいとか正しくないとか、それは鑑賞者自身の手に委ねられているのだ。

卑近な例だが、いつぞやのブログでも紹介したように「吉田拓郎」が作曲した「襟裳岬」が作曲家のイメージとはまったくかけ離れた形で歌手の「森進一」用に編曲されたが、初めはその変わり様にビックリしたものの、そのうちこれはこれで自分の意図した「襟裳岬」ではないかと思うようになった、というのがこのことをよく物語っている。

地下に眠っている大作曲家たちも現代の数ある演奏の中には自分の意図しない演奏があったりしてさぞやビックリしていることだろうが、おそらく全否定まではしないような気がするがどうだろうか。

最後に本書の中で、「いい文章」というのが紹介してあった。ちょっと長くなるが紹介しよう。

「1943年初め、中国戦線に展開していた支那派遣軍工兵第116連隊の私たちの小隊に、武岡吉平という少尉が隊長として赴任した。早稲田大理工科から工兵学校を出たインテリ少尉は、教範通りの生真面目な統率で、号令たるや、まるで迫力がない。

工兵の任務は各種土木作業が主であり、力があって気の荒い兵が多い。統率する少尉の心労は目に見えていた。1944年夏、湘桂作戦の衛陽の戦いで、敵のトーチカ爆破の命令が我が小隊に下った。生きて帰れぬ決死隊である。指揮官は部下に命じればよいのだが、武岡少尉は自ら任を買い、兵4人を連れて出て行った。やがて大きな爆発音がした。突撃する歩兵の喚声が聞えた。爆発は成功したのだ。

決死隊5人は帰ったが、少尉だけが片耳を飛ばされ顔面血まみれだった。なんと少尉が先頭を走っていたという。戦後30年たった戦友会で武岡少尉に再会した。戦中と同じ誠実な顔をされていた。大手製鉄会社で活躍、常務となって間もなく亡くなった。」

さて、これがなぜ「いい文章」なのか、分かる方は相当の「読み手」といっていい。

解答から言うと「書かずともよいことを、ちゃんと書かずにいるからいい」のだそうだ。

たとえば、「なんと、少尉が先頭を走っていたという。」のあとに何もない。結びの部分にも「戦中と同じ誠実な顔をされていた。」とあるだけで、余計な賛辞がない。

つまり
「書くことよりも書かないことの方が難しい。」

このパラドックスを前にして、しばし考え込んでしまった。

どうやら「読み手が想像の世界に遊ぶ余地を残している膨らみのある文章こそいい文章」
のようである。(201頁)

しかし、こればかりは「書く力」と「読む力」の共同作業になるので簡単なことのように見えてとても難しい。少なくとも自分には無理だなあ(笑)~。



 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

清純派 VS 無頼派

2018年03月22日 | 独り言

つい最近のブログでもちょっと触れておいたが、オーディオ愛好家はおおよそ二つのタイプに大別されるようだ。それは「オリジナル派 VS 改造派」。

つまり、メーカー既成のオーディオ機器の性能をそのまま素直に信用して使用するのが「清純派」とすれば、「少しでも隙があれば改造して音を良くしてやろう」と虎視眈々と狙っているのが「無頼派」と言えばいいのだろうか(笑)。

比率から言えば「無頼派」が圧倒的に少数だろうが、もちろんどちらがいいとか悪いとかいうことではないが、自分の場合はどちらかといえば「無頼派」に属している。

対人間には奥手で清純派であることを自認しているが、せめてオーデイオ機器ぐらいは大胆な無頼派でいこうというわけで、見てくれや世間体はあまり気にならず、ただ気に入った音さえ出てくればそれで満足。

このブログの読者ならたびたび拝見されているように、乱雑そのものでSPコードや電源コードが平気で「のたうち回り」、整理整頓が行き届いていない我が家のオーディオルームが何よりもそのことを物語っていよう。

そういえば、つい最近のことだがどなたかのブログに我が家のオーディオルームを引き合いに出されて「とてもクラシック音楽を聴く雰囲気ではない」事例の一つとして掲載されていたので愕然としてしまった。

そう言われてみると、たしかに「ごもっとも」ですよねえ(笑)。

今や「音楽」と「音の探求」が半々になっていることを素直に認めるが、それかといって改める気はさらさらない。誰に阿ることなく、納得がいくまで好きなようにやるだけである。

何しろ「老い先」が短いんだから理想の音を目指しつつ「座して死を待つ」ことだけは真っ平ごめんの心境だ(笑)。

話は戻って、それでは実際に「無頼派の面目躍如たる」具体例を挙げてみよう。

現在使用しているプリアンプはおよそ40年以上も前に製作されたもので「クリスキットのマークⅥカスタム」(12AU7×6本)である。

当時、とても有名だったオーディオ技術者「桝谷」氏の快心の作で改良に改良を重ねてとうとう最後の「マークⅥ」に行き着いたもの。

これは懇願して仲間から譲ってもらったものだが、特徴は回路がLチャンネルとRチャンネルの上下2層構造になっており左右のクロストークが少ないためセパレーションが抜群で音の濁りが少なく清聴感が際立っているのがとても気に入っている。

     

これまでプリアンプには散々苦労してきたが、この「マークⅥ」でとうとう理想のプリアンプに出会ったと大喜びしたものだった。もっとも、目の玉が飛び出るような高額のプリアンプを使ってきたわけでもないのであまり大きなことは言えないが(笑)。

ところで、このプリアンプは古い製品だけあって大幅な内部改造がしてあり、たとえば現代ではまったく不要な「テープモニター」回路をはじめとして「リバース」「バランス」「副次的なボリューム」などがいっさいジャンプされている。

それはそれでいいのだが、何せ使ってあるコンデンサーなどの劣化も心配なので故障したときの用心のため2台目を確保したくなり、まったく同じ型式のものを運よくオークションで落札した。

スペアを欲しがる心配性は治りませんねえ(笑)。

これは愛知県にお住いのクリスキットに精通された愛好家が完璧にオリジナル通り復元したもので、たしか半年ほど前のことだった。

到着当時に、「改造版」と、この「オリジナル版」とを聴き比べてみたところそれ程大きな差は見受けなかったが、やはり改造版の方が不要な回路を通さない分、音が一段と澄み切っている印象を受けた。もちろん比較しての話でありオリジナル版だけ聴けば、もうこれで十分というレベルである。

しかし、それ以降ずっと迷ってきたのが、この「オリジナル版」を改造してもらうかどうか。

仲間によると「な~に、2時間もあれば改造できますよ。付け加えるのではなくてジャンプするだけですからね。」との心強い言葉をもらっている。

ただし、改造してしまうと将来もしオークションに出品したときにお値段が「二束三文」になるのは目に見えている(笑)。この市場では音がどうあろうとやはり「オリジナル優先」である。

自分だって、どこの馬の骨が弄ったか分からないような改造品を落札するのは真っ平ごめんなのでその心理状況はよく分かる。

はたして名を取るか実を取るか、「沈思黙考」(?)すること3か月余り、とうとうこのオリジナル版を改造してもらうことにした。その理由の第一は稼働時間の問題。

何しろ我が家の場合、数あるオーディオ機器の中でプリアンプの稼働時間がもっとも長い。たとえば朝6時頃から夜20時頃までとすると、途中休憩が若干入るものの14時間ものスイッチオンの状態となる。

そこで、この2台の「マークⅥ」を使い分けるとすると負担も半分になるので故障のリスクもきっと少なくなるはず。そういうわけで、つい先日、仲間に来てもらって作業をしてもらい、改造後の音出しもめでたく完了して万事うまくいった。

後日のために現時点(2018.3.22)でのプリアンプ2台の振り分け方を記録しておくことにしよう。

CDトランスポート(dCS)は共通である。

第一系統

DAコンバーター「エルガー プラス」 → プリアンプ「マークⅥ1号機」 → パワーアンプ「300B」(モノ×2台) → スピーカーJBL「D130+175」

第二系統

DAコンバーター「ワデイア
27ixVER.3.0」 → プリアンプ「マークⅥ2号機」 → パワーアンプ「PP5/400」ほか5台 → スピーカー「AXIOM80」ほか2台

この2系統のシステムをおおむね午前と午後に交互に振り分けて聴いているが、精神的なストレスがなくなって極めて快調である(笑)。

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

モーツァルト全集~55枚のCD~

2018年03月20日 | 音楽談義

 先日、我が家に試聴にお見えになったオーディオ仲間(レコード愛好家)にこう言って嘆いたことだった。

「ようやくdCSのCDトランスポートが修繕から戻ってきましたが、2~3年おきに故障してほんとうに困ってます。使い方が悪いんでしょうかねえ。」

すると、「CDトラポは回転系ですから毎日使ってやった方がいいですよ。長い間ほったらかしにすると、ゴムベルトが変形したりしてけっしていいことはありません。その点レコードはいいですよ~。もう一度戻りませんか。」

「音がいいのはたしかですがレコードはちょっと・・・。精密な調整箇所が多すぎてこの歳では時間と資金が足りませんからねえ~(笑)。そういえばCDトラポは近年USBや光テレビで音楽を聴くことが多くなって1週間近く使わないことがよくありました。以後、気を付けて毎日使うことにしましょう。」

というわけで、大いに反省してそれからは毎日必ず最低でも2~3枚のCDを聴くことにしているが何を聴くかというとやっぱりモーツァルトに尽きる。

他の作曲家となると、どうしても楽譜の前で苦吟しながら作曲するイメージが付きまとい、旋律とかリズムなどを含めて作風そのものが何だか作為的というのか、わざとらしく感じてしまう。音楽の母「バッハ」はちょっと「線香臭い」しね~(笑)。

その点、モーツァルトは天真爛漫、こんこんと泉の水が湧き出てくるような風情で何もかもが自然の装いのまま、すんなりと音楽に溶け込めるのがいい。

幸い、5年ほど前に購入した「モーツァルト全集~55枚~」(ドイツ・グラモフォン)があったので、順に聴いていくことにした。55枚もあればモーツァルトのありとあらゆるジャンルに亘って綺羅星のような名曲が網羅されている。

  

この全集が到着したときに、ずっと通しで聴いているので知らない曲目はないがこうして改めて聴いてみると、やっぱりいい。

それにさすがに老舗のドイツグラモフォンからの発売だけあっていずれも、名歌手、名演ぞろいなのがありがたい。

とりわけ感銘を受けたのが次の2曲。

    

まず左側のCDは「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ K.165」(原題:エクスルターテ・ユビラーテ)。アレグロ・アンダンテ・アレグロという3つの構成だが、このアンダンテの中で歌われる4分ほどの曲が素晴らしい。

もう、「この世のものとは思われないような清々しい美しさ」である。歌手はあの有名な「バーバラ・ボニー」(ソプラノ)で、天使のような澄んだ声と知性的な歌唱力に思わず息を呑み、ウ
~ン、参った!

ほんとうに生きててよかった!

こんな音楽を「いい音」で聴けるのなら、オーディオにいくらお金を突っ込んでもいいという気になるから不思議(笑)。

改めてバーバラ・ボニーに惚れ込んで、すぐにオークションを覗いて次のCD(歌曲集)を即決で落札。

                

それにしても、この曲目はモーツァルトが弱冠17歳のときの作品で、晩年(とはいっても35歳で亡くなったが)
の円熟した作風とはまた違う朴訥な良さがあって、やはり年代毎の作品の優劣を感じさせない並外れた才能に「天才」という言葉を惜しみなく捧げよう。

次は、モーツァルトの最晩年の作品であるオペラ「魔笛」(ベーム指揮)。ベームは魔笛の常連さんだが、これは1964録音の最後の魔笛。

出色は王子役(タミーノ)の「ヴンダーリヒ」で、惜しいことにこの録音の2年後に事故死したが当時最高のテノールと謳われ、現在でも「彼を越えるリリック・テナーは現れていない」とまで言われる稀有の存在。

「大地の歌」(マーラー作曲:クレンペラー指揮)でも、ルートヴィッヒ(メゾ・ソプラノ)と並んで名唱を披露していた。

このCDの中でも伸びのある素晴らしい美声を披露してくれて、王子役としてはあらゆる魔笛の中で彼がベストと言い切っていい。秀逸な録音と相俟って、上出来の魔笛を堪能させてもらった。

もし、モーツァルトファンを自認されている方であれば、この全集はぜひお奨め~。


 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

JBL「175」の使い方の一考察

2018年03月17日 | オーディオ談義

我が家にやってきてから早くも10日あまりが経ったJBLの175ドライバー。

物珍しさも手伝って、いろいろと調整に余念がないが、そういう中JBLに詳しいオーディオ仲間から耳よりの情報が入った。

「思い出したのでご連絡しておきます。ずっと以前に聴かせていただいて、とてもいい音だった「ランサー101」(LE14A+175)のことですが、175ユニットに限ってはスピーカー付属のネットワークを使わずに、良質のコンデンサーでローカット(6db/oct)していました。メーカー仕様のランサー101のままではどうしても出せない音だったそうですよ。一度実験されてみるのも面白いと思います。」

えっ、そうですか!

スピーカーに付属している既成の(箱の中にある)ネットワークのお粗末さについては、これまで耳にタコができるほど聞かされてきた。

あの有名なタンノイさんだって同類だが、「それはタンノイの音づくりの一環だ」と反論されればそれまでの話だが(笑)、自分にはどうしても納得できなかったので、とうとうそれがウェストミンスターの大幅な内部改造に繋がった経緯がある。

したがって「ブルータス、お前もか!」(シーザー)ではないが、「JBL、お前もか!」(笑)。

ちなみに、この「ランサー101」を上手に鳴らされていた方(東京)はプロとして真空管アンプの製作・修繕に併せて1000台近く手掛けられたというベテラン中のベテランであり、「付属のネットワークを使うことでJBLのユニットは随分損をしていますね~。」が口癖で、JBLの数あるドライバーの中では175が一番好きです。音が荒れない、長時間聴いても疲れない。」のがその理由だったそう。

まあ、以上のような話は「オリジナル崇拝主義者」にはきっと顰蹙を買うことだろうが、そこまで聞かされて手をこまねくことは自分にはとうていあり得ない(笑)。

さっそく実験してみることにした。まず「周波数早見表」によって「クロスオーバー1000ヘルツ」(8Ω)に見合ったコンデンサーの容量を調べてみると、およそ20μF(マイクロ・ファラッド)だった。

我が家の場合、1000ヘルツ以下に使っている「D130」ユニットの能率は「102db」、そして「175」の能率は「108db」と大きな開きがある。

したがって、まともに20μFを使うと音量バランスが保てないので10μF(2000ヘルツ)あたりで実験してみることにしよう。もちろん175にアッテネーターを使う手もあるが音の鮮度が劣化するのであまり使いたくない。

     

そういうわけで倉庫から引っ張り出してきたのが上記画像のオイルコンデンサーで、左側が「12μF」(イギリス製)、右側が「10μF」(ウェスタン製)。

ネットワークの「IN」端子(+、ー)に接続するだけなので実に簡単に実験できるが、今回のケースでは圧倒的にウェスタン製が良かった。音の柔らかさが違うのですぐに判断できた。

その原因がはたしてブランドのせいか、それともたった2μFの差のせいかは分からない。

この接続の効果はまったく目を見張るほどで、一段と175の鮮度と繊細さに磨きがかかるとともに、何よりもスピーカーの存在を忘れさせてくれるほどの音の自然な佇まいが素敵。

JBLに限らずSP付属のネットワークを使っている方にはこの方式を一度実験されることをお奨めしたいが「裏ブタを開けるのが面倒くさい。それに下手に弄って故障したらどうする、責任を取ってくれるのか。」と、詰め寄られればちょっと委縮する(笑)。

何しろオーディオで飯を食っているわけでもないので「一介の好事家(こうずか)の戯言」と思われても仕方がないのだから~。

したがって、信じるか、信じないか、チャレンジしてみるか、しないか、それはまったく貴方の自由。

ただし、付属のネットワークを弄るのが技術的に難しければこれはもう諦めるしかないが、自分なら執念深く同規格の外付けのネットワークを新たに購入して、高音域だけ上記のやり方で繋ぐことだろう。メーカー不信もここまで嵩じるとちょっと異常かもしれませんねえ(笑)。

なお、これに味をしめて我が家の別の3ウェイシステムの高音域(JBL「075」)もネットワークを通さずにマイカコンデンサー(4個)でローカットしたところ、これもとても良かった。

まあ、なにはともあれ「2ウェイ、3ウェイ仕様のスピーカー付属のネットワークはあまり信用できない」というケースがあるということだけは頭の片隅に置いておくのも損はないと思いますよ~(笑)。


 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真空管「6SN7」騒動記

2018年03月15日 | オーディオ談義

つい先日、我が家に試聴にお見えになったKさん(福岡)。

希少な古典管、それもマニア垂涎の新品に近い質のいい球を山ほど持ってあり、同時に知識も豊富なのでいろいろと折にふれアドバイスをいただいている


そのKさんが実験用として持参されたのが「6SN7」という電圧増幅管だった。真空管にはいろんな役目のものがあって、ざっと上げるだけでも、整流管、出力管、そして今回の電圧増幅管がある。

その中では、さしずめ出力管が野球でいう4番バッターとすれば、電圧増幅管は1番バッターとして、いわば小回りの利く役どころといったところだろうか。

この「6SN7」の使用例でいえば、有名な300Bアンプの前段管として使ってあるケースが多いようだが、小ぶりな恰好からしてけっして主役にはなれそうにない球だと従来から思っていたが、これがどうしてどうして凄い役割を持っていることが判明したので述べてみよう。

Kさんが当日持参されたのは5ペアの「6SN7」で、ブランド名を挙げてみると、

レイセオン「軍用錨マーク入り」、ロシア製メタルベース「メルツ・1578」、東ドイツ製、シルヴァニア・メタルベース「軍用錨マーク入り」、レイセオン(ダブル耐震構造)

一口に「6SN7」といっても「こんなに種類がたくさんあるんですか!」と、まずは仰天した(笑)。しかもいずれも入手が難しい球ばかりとのこと。

我が家には前段管に「6SN7」を使った「371A」アンプが1台あるので、それを差し換えながら実験してみた。下記の画像の一番左の小ぶりな球(GT管)がそうである。

     

現在、我が家にあるブランドとしては「GE」「レイセオン」「ホフマン」「ボールドウィン」(Baldwin)といったところ。

ボールドウィンというのはアメリカのオルガンメーカーで、昔は真空管を使って鳴らしていたそうで「選別球」なので品質は確かだと聞いたことがある。
    

当日の実験用システムは、CDトラポとDAコンバーターは「dCS」のコンビ、スピーカーは微細な表現力に富む「
AXIOM80」を使用した。

すると、これらの「6SN7」を差し換えるごとに音がくるくる変わり、それぞれに個性があって、これを「百花繚乱」というのだろうか、とても楽しかった。

実験中の会話で、これほどの希少な「6SN7」を一堂に会して試聴できるのは、おそらく世界中でここだけでしょうねと、二人で自画自賛し合った(笑)。


試聴結果についてはいずれも捨てがたい球ばかりだったが、これらのうちでベストだと思ったのは「シルヴァニアのメタルベース・軍用錨マーク入り」だった。「6SN7」に限らず、やはり軍用の真空管は人間の命がかかっているので、民生用とははっきりと一線を画すようで、
透明感、音の力感、分解能など非の打ちどころがなかった。

「これはぜひ欲しいですねえ」と、喉まで出かかったが、どうせKさんを困らせるだけで言うだけ野暮だろう(笑)。

Kさんが辞去された後で、シルヴァニアのメタルベースの残像が鮮明に残っている中、まったく同じタイプの「371A」アンプを引っ張り出してみた。

         

このアンプは回路からインターステージトランスや出力トランスまで何から何まで先ほどのアンプとツクリは同じだが、前段管だけが違っている。

2年ほど前に「北国の真空管博士」から改造していただいたもので、「6SN7」の代わりに「AC/HL」(英国マツダ:初期版)が使ってあり、「はたして違いやいかに」と耳を澄ましてみたところ、これもたいへん良かった。

力感はシルヴァニアに一歩譲るものの、高音域の艶とか色気はこちらの方が上で、あとは好き好きといったところだろうが、吾輩はこれで十分満足。けっして負け惜しみではありませんぞ~(笑)。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真空管アンプ転がし

2018年03月13日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

さほど期待もせずにオークションで落札したJBLの「175」ドライバーだったが、とりあえず小型の「蜂の巣ホーン」を装着して音出しテストをしてみることにした。

第一案 「LE8T」と組み合わせて2ウェイにする

第二案 「D130」と組み合わせて2ウェイにする

まず第一案からだが画像を再掲してみよう。

         

細かい話は面倒くさいので端折るが、まずは何よりも音が出ないとかノイズが発生するなどの不良品ではなかったので一安心。

試行錯誤の結果LE8Tを8000ヘルツでハイカットしたうえで、175はコンデンサーでローカットして試聴したものの、どの種類を使ってもどうも175が目立ち過ぎるようだ。

脇役(175)が主役(LE8T)よりも存在感を示すのは何事につけ、あまりよろしくない(笑)。

これなら「LE8T」をフルレンジで鳴らした方がまだいい、
ということで第一案はあえなく没。

次にいよいよ本命の第2案に取り掛かった。

となると、チャンデバやTRアンプ、AXIOM80を外すなど、大がかりな作業となった。

最終的にネットワーク(クロスオーバー1200ヘルツ:高音域用のボリューム調整付き)の出番となり、取り付け後の画像がこれだが、結局「ランサー101」の低音域部分を「D130」(イン ウェストミンスター)に代えたようなものである(笑)。

    

応急措置なので見苦しいが悪しからず。

この方式なら真空管アンプ1台による駆動ができるので(チャンデバ時に比べると)アンプの選択肢が飛躍的に広がったことはたいへんありがたい。

そもそもウェストミンスターのフロントホーンは周知のとおりクロスオーバー1000ヘルツ用の仕様なので、オリジナル型式に戻ったと言えないこともない。

問題は音だが、爽やかで切れ味が鋭く、これぞまさしく「JBLサウンド」だった!

ジャズはもちろんだがクラシックだって肝心の弦楽器が「175」によってうまく調教されているのでとても心地よい。それに、小型の「蜂の巣ホーン」が歌手の口元を程
よく締めてくれるのが気に入った。まずは合格。

これでしばらく聴いてみることにしよう。

半年間にわたって活躍してくれた「チャンデバとTRアンプ(低音域用)」は当分の間、予備役編入となった。どうも楽しませてくれてありがとさん。

さあ、これからが本番である。

11日(日)の午後、
近隣にお住いのオーディオ仲間のYさんに来ていただいて、この「D130+175」システムに対して、はたしてどのアンプがベストなのか4台のアンプの競演となった。

    

ちょっと写りが悪いが、右から「WE300B」「PP5/400」「371A」(前段管はAC/HL)、「2A3」でいずれもシングルアンプである。

プリアンプはクリスキットの「マークⅥ」(12AU7×6本:改造品)を使用した(画像中央の白色)。このほど修繕から戻ってきたばかりだが、これまで使ってきた中ではベストのプリアンプである。

さて、このJBLシステムに対するYさんのご感想だが、「とてもバランスが良くて以前よりもずっといいと思います。しかし、AXIOM80と比べるとやや音が乾き気味ですね。ジャズにはとても良さそうですが。」

「そりゃあクラシック音楽を聴くときのAXIOM80と比べるのは酷というものでしょう」と、返事しておいた(笑)。

結局、およそ3時間にわたって4台の真空管アンプをとっかえひっかえテストしたが、「アンプ転がし」の場合、出来の悪いアンプでもスピーカーとの相性次第で優等生に変身したりするのでとても面白い。

Yさんの評価はおおむね予想通りだったが、「371A」がパワー感は別として透明感では他のアンプに負けず劣らずの大善戦でこればかりは想定外だった。

図体からトランスなどの部品まで何から何まで小さくて、おまけにお値段も安価だが逆に「シンプル イズ ベスト」のメリットがあって、改めて惚れ直した。

最後に、今日(13日)の午後からお客さんたち(3名)がお見えになるのでこのシステムを聴いていただく予定だが、はたして「鬼が出るか蛇が出るか」・・・(笑)。



 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

隠れ「JBL」ファン

2018年03月11日 | オーディオ談義

熱心なクラシック音楽愛好家にとって「JBL」(アメリカ)と聞いただけで眉を顰める向きが多いことは充分承知している。

何といってもこの分野で幅を利かしているのはイギリス製やドイツ製などのヨーロッパ系のスピーカーである。何せクラシック音楽発祥の地だから至極当然のことではある。

しかるに我が家では・・。

日ごろ「AXIOM80」などのイギリス製品には声高に言及しているものの、JBLについてはめったに登場させないことを自認しているが、実はこうみえて深~く潜航した「隠れJBLファン」なのである(笑)。

あの、メリハリの利いた音、そして透き通った青空を思わせるような爽快感に包まれた音はヨーロッパ系の音とは明らかに一線を画すものでたいへん魅力的だ。やれ「二股をかけている卑怯な奴」とか「節操がない人間」とか批判されても、そこは甘んじて受け容れよう(笑)。

現在の手持ちのJBLのユニットを整理してみるとこうなる。

D130(口径38センチ:8Ω)、D123(口径30センチ:8Ωと16Ωの2ペア)、LE8T(口径20センチのフルレンジ:16Ω)、075ツィーター(削り出しステンレスホーン付き)

(ちなみに「375」ドライバー(2インチ)や「LE-85」も一度手に入れて使った事があるが技量不足も手伝ってやむなく手放してしまった。)

これらはすべて現用中のものだが、このほどこれらに加えて新たにメンバーに加わったのが「175」ドライバーだ。

        

たまたまオークションで見かけて落札したもので口径1インチのドライバーだが周波数帯域では1000ヘルツ以上から使えるという頼もしい奴である。

別に取り立てて使う当てはなかったのだが、何しろ相場より安価だったし、手元に「小型蜂の巣ホーン」(HLー87)を持っているのでこの175とセットにしたらオークションで高値で売れるかもしれないという不純な動機が無かったといえばウソになる(笑)。

ほどなく我が家に到着したが(奇しくも我が誕生日の7日!)ズシリと重い手ごたえが思いのほかヤル気をそそってくれる。何しろ顔の見えない相手との取引でもあり、故障品の恐れもあるのでオークションに出す前に実験してみることにした。

さて、問題は使い道である。

JBLに詳しいオーディオ仲間に相談してみるとこういうコメントが返ってきた。

「175ですか!私はあの有名な375ドライバーよりも高く評価しています。ジャズからクラシックまで何でもうまく鳴らしてくれますよ。

以前「ランサー101」(LE14A+175)を聴かせてもらったときにJBLには珍しくヴァイオリンがうまく鳴っていたことに驚いた記憶があります。

そうですね~。使い道としてはD130(イン ウェストミンスター)の上に載せて2ウェイにするのが一番じゃないですか。」

「そうですか・・・。」

我が家の実験では二案を考えてみた。

 「LE8T」(フルレンジ)の上に載せて2ウェイで鳴らしてみる

 低音域ユニット「D130」の上に載せて2ウェイで鳴らしてみる

そのために準備した材料は次のとおり。

ネットワーク:クロスオーバーが1200ヘルツ仕様、4000ヘルツ仕様、8000ヘルツ仕様の3台

コンデンサー:2.4μF(マイクロファラッド)、1.5μF、1.0μFの3種類(すべてウェスタン製のオイル・コンデンサー)

真空管アンプ:WE300Bシングル、PP5/400シングル、2A3シングルの3台

ほんとうに軽い気持ちでこれらの材料を駆使しながら2日がかりで実験してみたところ、結果的にこの175が我が家のシステムに大改変をもたらすのだから、(我が家の)オーディオは「一寸先は闇」であることを痛感した(笑)。

まずは「LE8T」からの実験である。


    

以下、続く。


 




 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

少ない投資額で効率よく「いい音」を得るには

2018年03月09日 | 独り言

先日のブログで紹介した「マランツ10BのFMチューナー」(2018.2.22)。

        

この往年の名器がたまたまオークションに出品されていたので大いに食指が動いたものの、お値段が折り合わずやむなく涙を呑んだという情けない一幕だったが、この記事をご覧になったオーディオ仲間のYさんからご連絡があった。

「東京での学生時代に間借り先でFM放送を楽しんでいたので今でもFMには関心があります。マランツ10Bなんてもう古いんじゃないですか。今ではデジタルアウトの出力端子が付いているチューナーが発売されていますよ。」

「えっ、それは耳よりの話ですね。デジタルアウトの端子がついているなら、我が家のDAコンバーター「エルガープラス」にも接続して聴くことができますね。ぜひ商品名を教えてください。」

というわけで、下図のFMチューナーに行き着いた。ソニーを退職されたエンジニアが製作されているという、いわばガレージメーカー(失礼!)による製品。

   

デジタル関連の説明個所を抜き書きしてみよう。

「デジタルオーディオ出力は、光出力、同軸出力、AES/EBU(平衡)と充実したデジタル出力となっています。また、トスリンクとパルストランスはサンプリング周波数192kHz(25Mb/s)にまで対応した部品を使用しています。
なお、本来のデジタル処理の性能を充分発揮させるには、これらのデジタルオーディオ出力(同軸、光端子)を使用し、お好みの外部DACに接続して楽しむことをお奨めします。 (アナログ出力はモニター程度としてご使用ください。)」

        

いやあ、このFMチューナーは食指をそそりますねえ(笑)。Yさんによると、このチューナーで聴くとNHKのFMと民間のFMとの音質の差が明瞭にわかるとの評判が立っており、もちろんNHKの方が断然良いとのこと。

お値段の方も「清水の舞台から飛び降りる」ほどの覚悟も必要なさそうだし~(笑)。

もちろん現代ではインターネットラジオで聴き流すのも大いにありだろうが、トーク番組が無いなどバラエティに富んでいないのが少々物足りない。

まあ、しばらくは「寿命の予測並びに懐具合」と、よく相談することにしよう(笑)。

なお、FM放送とくれば当然「録音機」の出番となる。

メル友の「I」さん(東海地方)によると、録音機として「DVDレコーダー」を使っておられるとのことで、はたと膝を打ったが、これまたYさんが「格好の録音機」が載ってますよと持参されたのが季刊誌「Audio Accessory」(2018・SPRING号)。

           

頁後半にTEACの新製品が紹介してあったが、今時は録音にフラッシュメモリーを使うので驚いた。

昔はFM放送をカセットデッキでせっせと録音していたのでまさに隔世の感がある。

それはさておき、この季刊誌を一通り目を通していたら最新のオーディオ機器が紹介してあったが、総じて高価なものばかりで思わずため息が出てしまった。これでは若い人たちがオーディオから足が遠のくも道理だ。

その中でもダントツだったのがブルメスター(ドイツ)のプリアンプ「077+PSU」。何とお値段は600万円!

              

これに比べたら豪華な大型ホーンや少々お値段の張る古典管なんぞも可愛い存在に思えてくる(笑)。もちろんオーディオにも夢が必要なのでこういう機器があることに反対ではないが。

これに関連して思い出したが、昨年のブログで「お金があり過ぎる悲劇」のタイトルで投稿したことがある。

「音楽&オーディオ」の先達である「五味康介」さんが提唱された「オーディオ愛好家の5条件」の中の「お金がない口惜しさを痛感していること」の意味を紹介したもので、そもそも制約が無いところに進歩はないという趣旨だった。

「少ない投資額で効率よくいい音を得るには」これはオーディオ愛好家の裾野の広がりにとって、とても切実な問題だと思うが、やっぱり良き相談相手に恵まれるのが一番近道ですかねえ~。

商売気抜きで気軽に相談できる窓口があればいいのだが・・。


 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「新たな整流管」と「貸し出したアンプ」の到着

2018年03月06日 | オーディオ談義

前々回からの続きです。

2月28日(水)の午前中に届いたdCSのデジタル機器に続いて、午後に到着した二つの荷物を紹介しよう。

☆ STCの整流管4274A

3番目の荷物はオークションで落札したSTC(イギリス)の整流管「4274A」だった。これは「WE300Bシングル」アンプ用としてぜひ手に入れたいとかねがね狙っていたもので、珍しく同じものが1本ずつ、3本並べて中古専門のショップから出品されていた。

さっそく「北国の真空管博士」に「お値段の妥当性と画像診断」をお願いしたところ、次のような返答があった。

「3本あるうち、ピンの1本が曲がっているのがありますのでこれは避けた方がいいです。またゲッタが薄目のも止めた方がいいでしょう。残りの1本は瑕疵が見当たらないのでこれがいいと思います。お値段はとてもお買い得だと思いますよ。STC(ロンドンウェスタン)はどうかすると本家本元のウェスタンよりもツクリがいいことがありますからね。これは1950年代のWE274Aに匹敵する代物だと思います。」

     

巷間、整流管の王様とされているのは「WEの274B」だが、ピンが4本タイプのもあってそれが「WEの274A」であり、STC製造のものはすべて型番に4が付く。たとえば「4300B」であったり、「4274A」だったりする。

問題は音である。なにしろ真空管アンプは整流管次第でころっと音が変わるんだからね~(笑)。それも一番大切な「透明感」にもろに利いてくるのだからたまらない。

午前中に到着したdCSのデジタル機器のときのように心臓の拍動を意識しながら「WE300Bシングル」(1951年製:銅板シャーシ)にこの4274Aを差し込んで耳を澄ました。

すると、一段と磨きがかかり爽やかでくっきりした音に変身。現用中のSTCの「5R4GY」もなかなか良かったが明らかに「4274A」の方が一枚上手だった。

これで「AXIOM80」を文句なく鳴らせるようになり、「PP5/400シングル」アンプの独裁が終わりを告げたのはとてもいい傾向だ。

折りしも中国の共産党主席が独裁政権への道筋(3期まで延長)を開いて世界的に何かと喧しいが、なにごとも独裁が長く続くのはよろしくない(笑)。

☆ 真空管アンプ「371Aシングル」

最後に届いた4番目の荷物は真空管アンプ「371Aシングル」だった。

    

このアンプは1月の中旬ごろに県外の知人に貸し出していたもので「アルテックのスピーカーに苦戦しているのでどうしても実験してみたい」との熱烈なご要望があったので、同じオーディオマニアとしてその心理状況は手に取るようにわかった。

「ハイ、いいですよ。2か月ばかり試聴してください。その代わり売るつもりはありませんからね。」

我が家には371A(ST管は2桁表示の71A、ナス管は371Aなどの3桁表示となる)系統のアンプが3台あるので貸し出し自由。内訳はシングルが2台、プッシュプルが1台。

この371Aという球は1940年頃にアメリカのラジオ用として活躍した出力管で出力は1ワットにも満たないがとても特性が素直なので「じゃじゃ馬スピーカー」の調教にはもってこいである。

アメリカの古典管の系統からいくと「112A → 371A → 245 → 250 →2A3」となり、だんだんと出力が大きくなっている。ちなみに、この中で一番高価なのは250で「すい星」のように現れて消えた球だが、市場では珍重されており、いまだに人気が衰えない。

我が家のお客様の常連である「Y」さんも「50」アンプを現在発注されておりもうすぐ完成とのことでそのときは我が家に持ち込んで試聴させてもらうことになっている。

話は戻って、371Aアンプを予定よりちょっと早めに返却してもらった理由はオーディオ仲間のKさんから「東ドイツ製のとても良質な6SN7の類似管が手に入りましたよ。」とのことなので、ぜひ実験してみたかったから。

このアンプの構成は「整流管380」(ナス管)~「前段管6SN7」~「インターステージトランス」(国産)~「出力管371A」になる。

いつぞやのブログにも搭載したように「出力管は整流管や前段管次第で豹変する」のが通例なので、巷にありふれた「6SN7」を東ドイツ製に差し換えることでどのくらい音質が変化するか興味津々である。

最後に、貸し出し相手によるこの371Aアンプの試聴結果は「JBLにはちょっと無理でしたが、アルテックにはうまくいきました。」とのことだった。JBLのユニットはかなり能率が高いくせにアンプにハイパワーを要求するのは我が家でも経験している。

ただし、同じJBLでもチャンデバ使用時の「075」や「175」系の高能率のツィーターを制御するのは71A系アンプが最適という話を耳にしたことがある。

ちなみに、もしも貸し出し相手から「相性がとてもいいので返したくありません。ぜひ譲ってください。」と言われたときはどうしようか、相手の気持ちを尊重して「そうですか、仕方がないのでお譲りしましょう。」という考えも頭の片隅にあったが、どうやら「取り越し苦労」に終わったようで(笑)。

以上のとおり、前々回のブログを含めて1日のうちに次から次に4つの荷物が届いて大忙しだったが万事思惑どおりに運んだのが何よりだった。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

始め良ければ終わり良し

2018年03月04日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

今回のブログでは2月28日の午後に届いた残りの二つの荷物の正体を明らかにするつもりだったが、昨日(3日)、オーディオ仲間のYさんがお見えになったので急遽変更してその模様を記録しておくことにしよう。

当日の昼食後のことだった。「やっとdCSが戻ってきましたよ。聴きにお見えになりませんか。」とお誘いしたところ「ハイ、今から行きます。」

Yさんは以前から我が家にお見えになるたびに「dCSはまだ戻ってこないんですか?」と口癖のように仰っていた。修理期間中に代替機器として使っていた「ソニーのCDプレイヤー+ワディアのDAC」に、あからさまな不満を申されなかったが、きっと物足りなく思われていたのだろう。

    

そして、みっちりと3時間近い試聴だったがYさんのご感想を先に明らかにしておこう。

「これまで聴かせていただいた中で、今日がベストの音でした。音の鮮度がまるっきり違いますよ。dCSはやっぱり凄いですねえ。レコードの音でさえもこれに追い付くとは思えません。それに修理に出す前よりもずっと良くなってますから、これもレンズのクリーニング効果のせいでしょうか。」と、手放しの激賞だった。

「そうですね。ちょっと迷いがあったのですが、これでレコードに戻る気がまったく無くなりました。それにしてもシステムの中でCDトランスポート(以下、「トラポ」)の役割がいかに重要かがよく分かりましたよ。ソニーでも不満は覚えなかったのですが、こうやって聴き比べてみると雲泥の差ですね。驚きました。トラポの重要性はDAコンバーターとどっこいどっこいですね。」

当日のシステムの内訳は、真空管式プリアンプ(E180CC×6本)にパワーアンプが「WE300Bシングル」、スピーカーは「AXIOM80」の組み合わせだった。

オーディオシステムの構成を大雑把にいえば「音の入り口」(レコードやCD) ~「増幅系」(アンプ)~「変換系」(スピーカー)~「音響空間」の4つの要素に分けられ、いずれも手を抜けないことは周知のとおりだが、重要性の比率となると全体を10としてこれまでは順に「2:3:3:2」という感じだったが、今回の件で大いに認識を改めた。

これからは「4:2:2:2」の方針でいくとしよう。

そういえば次のような二つのことわざを思い出した。

「始め良ければ終わり良し」
始めがうまくいけば、すべてが順調に進み、最後によい結果を得る。だから最初は慎重でなければならない。

「終わり良ければ全て良し」
結果がよければ、動機や途中の経過などは問題にならない。ものごとは終わりがすべてだということです。

以上の二つだが、「終わり良ければ全てよし」は人生観としては大いに共感できるが、ことオーディオに関してはおよそ当てはまらない。

何よりも優先すべきは始めに「良質の微小な音声信号」ありきということ。したがって、増幅系や変換系なんかは後回しでもよいと思うがどうだろうか。

とはいえ「dCS」の威光を借りて、ちょっと「好(い)い気」になりすぎるのかもね~(笑)。



 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

48日ぶりに戻ってきた「dCS」のデジタル機器

2018年03月03日 | オーディオ談義

2018年2月28日(水)はおそらくここ10年で一番忙しい日、そして緊張した日として記憶に残ることだろう。

なにしろ4個の荷物が1日のうちに次から次に届いたのだからたまらない(笑)。

到着順に順次述べてみよう。

☆ dCS(イギリス)のデジタル機器の到着

修理とメンテを兼ねてdCSのデジタル機器を購入先のオーディオショップ(東京)に発送したのは忘れもしない今年(2018年)の1月10日のことだった。

内訳はCDトランスポートの「ヴェルディ・ラ・スカラ」(以下「トラポ」)とDAコンバーターの「エルガープラス」である。

    

一日千秋の思いで待つこと48日、ようやくショップのSさんから連絡があった。

「太陽商事さんに修理に出していたところようやく戻ってきました。エルガープラスは試験機で計測したところ何ら性能に異常はありませんでした。問題はCDトランスポートです。やはり読み込み不良のケースがどうしても出てくるようです。ピックアップレンズのクリーニングなど精一杯追い込んだとのことですが・・・。まあ、とりあえずこれで試聴してみてください。」

2か月近くも待たせておいて、そんな殺生な! 嘘でもいいから「完全に治りました」と言って欲しかった(笑)。

当日の午前中早々に我が家に到着したので、同封されていた修理明細書を改めて点検してみた。

まず、「エルガープラス」については「自動試験機にて検査しましたが正常です。念のため内部接点等のクリーニング、検査を実施いたしました。」

問題はトラポである。

「オプチカルユニット載せ替えも試行しましたが、現状品のレンズクリーニングしたもので落ち着きました。SACDハイブリッド盤の読み取り率は中程度と思われます。長期間のお預かりにも係わらず、完璧にはならず申し訳ありません。」

どうやら誠意が伺える内容で「なかなか正直だなあ」と、幾分、気を取り直した。実を言うとSACDの読み取り率にはあまり重きを置いていない。真空管アンプ(古典管)と「AXIOM80」の組み合わせで聴くとCD盤とSACD盤にそれほどの差はない。

CD盤を早くテストせねばと、それからの両機のセッティングがたいへんだった。接続スポットがいくつもあるので、改めて取説を見ながらクロックリンクや1394コードの接続箇所の確認には特に念を入れた。機器の入れ替えも含めてようやく2時間ほどで完了。

    

さあ、高まる心臓の鼓動を意識しながら試運転開始。

「どうか、うまく読み込んでくれますように~」と、念じながらトレイにCDを放り込んだところ「小窓」に「READ OUT」の表示が出た。一番懸案だったCDの読み込みが一発で成功してまずはひと安心。ああ、よかった!

気を良くして次から次に5枚ほど連続試聴したがいずれもOKだった。修理に出す前の読み込みの確率は1/4程度だったから修理は大成功。となると、(読み込み不良の)原因はレンズの汚れだった可能性が高い。

まずはショップのSさんにご連絡。「心配していたCDの読み込みはうまくいきましたよ。太陽商事さんによろしく言っておいてください。」

「それは良かったです。ピックアップ・レンズの清掃以外にも、トレイの角度や高さの調整などいろいろ追い込んだみたいですよ。」と、Sさん。

「そうですか。さすがにプロですねえ~」

あんなに「けなしていた」くせに現金なものである(笑)。

肝心の音質の方も明らかに音の瑞々しさが充満していて、「さすがはdCS!」と唸るほどだった。

これで、ひとまず胸を撫で下ろした。オーディオ機器の修理後のテストは心臓にあまりよろしくないですねえ(笑)。

次に述べるのは当日の午後に配達された残る2つの荷物である。

以下、続く。




 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ブログの効用

2018年03月01日 | オーディオ談義

これまで度々書いてきたようにブログを始めてから10年以上になり、かなりの時間を費やしてきたが、その間、残念なことに家族(家内と一人娘)から「もろ手」を挙げて励まされたという記憶がない(笑)。

白眼視されるほどではないが「そんな毒にも薬にもならないことをして」という雰囲気がどうも見て取れる。

そもそもオーディオに興味がないのだから共感してくれないのも当たり前だが、それはそれとしてこまめに情報発信をしているおかげで、自然と仲間も増え有益なオーディオ情報が頻繁に舞い込んで来るのには大助かりだった。

これはもうブログの効用の第一といっていいもので、とても「お金」なんかには代えられない!(笑)

今回もそうだった。

つい先日のブログに搭載した「レイセオンの整流管5Y3G」について、この記事をご覧になった「北国の真空管博士」からご連絡があった。

「実は私は5Y3Gのコレクターなんですよ。手元には長い年月をかけて収集した希少管がかなりありますが、やはりブランドとしてはレイセオンが最右翼だと思います。とても珍しいレイセオンの4ピラーの5Y3Gを2本持っています。10年かけて1本手に入るかどうかの確率でした。

あなたの記事の画像のレイセオンを拝見しますと、比較的近代のものですね。4ピラーは無理ですが、もっと時代が古くてより性能のいい5Y3Gを持っていますのでお譲りしてもいいですよ。」

古典管マニアの垂涎の的である「4ピラー」、しかも5Y3Gを2本も持っておられるなんてといささか驚いた。と同時にこれは願ってもないお話だが、希少な古典管ともなるとお値段が唯一のネックになる(笑)~。

恐る恐る「お値段はいかほどでしょうか?」とお伺いすると「ハイ、あなたなら〇千円でいいですよ。」

ウワ~、うれしい!

めでたく商談が成立して、二日後に到着した「5Y3G」がこれ。

    

左側が現用中の5Y3G、右側が今回ゲットしたもので袴の部分には「ZENITH」(ゼニス)と刻印が打ってある。

プリントではなくて刻印が打ってある球は古典管であることの証明みたいなものだが、これまでの経験で刻印球に駄作は1本もなかった。まずはうれしい兆候だ。

博士によると、当時(1940年前後)のアメリカの業界は「RCA」が覇権を握ろうとしていた頃で、それに対抗しようとしていたのが「ゼニス」というラジオの組み立てメーカーで、自社では真空管を製造していないため、レイセオンから供給を受けていたとのこと。

したがって、「ゼニス=レイセオン」で間違いなし。

さあ、問題は音である。同じレイセオンでも今回の古典管(以下「古典管」)と比較的近代管(「近代管」)とではどう違うのか。

ハラハラ、ドキドキ、ワクワクしながら耳を傾けてみた。

すると、まず音量のレベルが違ったのには驚いた。古典管の方が音量が大きて、プリアンプのボリュームを一目盛り落としてようやく釣り合ったほどだった。それに明らかに情報量も多い!

さっそく博士にご注進。「おそらく新品に近いものだからでしょうか、随分と整流能力が高いみたいですね。音量と情報量がかなり違うみたいです。」

「ハイ、何といっても大きな違いはプレートのサイズですね。近代管と比べると古典管の方が一回り大きいはずです。需要が多くなればなるほど真空管メーカーは手抜きをしますから初期バージョンにはどうしても及びません。それに音質もさることながら、しっかりしたツクリなので寿命の方も随分伸びると思いますよ。」

これで我が家の「71Aプッシュプルアンプ」は我が命尽きるまで心配なし!(笑)

     

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする