「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

今年(2017年)を振り返って~最終回~

2017年12月30日 | オーディオ談義

いよいよ今年も残すところあとわずかになりました。この1年間、相も変わらず「音楽&オーディオ」三昧でしたがほんとうにありがたいことです。世の中のすべてに感謝です(笑)。

このシリーズでは、これまで「WE300B シングル」アンプの帰還、JBL[LE8T」の活用、そしてプリアンプ2台などの快進撃を挙げてきたが、最後に忘れてはならない2件を記録しておこう。

☆ ワーフェデールのユニットの活用

     

オークションで運よく手に入れた「ワーフェデール」(イギリス:口径30センチ)のユニットはまるでヨーロッパの貴族社会を思わせるような上品極まりない音質で大いに楽しませてくれた。

周波数レンジの過不足などのオーディオ的な問題をあれこれ詮索するような音ではなく、ただひたすら「音楽」に没入できるユニットだといえよう。

当初は同じワーフェデールの中高音域ユニット(コーン型)を使って2ウェイで聴いていたものの、クラシック以外のジャンルも聴きたくなったので現在はテクニクスの「EAS-25HH22」(4000ヘルツ~:12db/oct)と組み合わせて聴いているが、まったく不満はない。

    

金属のダイヤフラムを使ったユニットとも立派に共生できるのでかなり柔軟性のあるユニットだと思う。

これで、中型システムとして「AXIOM80」「変則JBL3ウェイ」そして「ワーフェデールの2ウェイ」の3つになったが「いずれ あやめ か かきつばた」で、バラ色の日々を過ごしている(笑)。

次に移ろう。

☆ PX25シングルアンプの前段管「GS112A」

11月に「北国の真空管博士」から譲っていただいた古典管「GS112A」は素晴らしかった。

    

およそ100年前の、とても希少な真空管だから「自分ごとき未熟者」に使う資格があるんだろうかと当初は遠慮したが、そのうち「命あるうちに精一杯楽しませてもらおう。」とあっさり宗旨替えした(笑)。

さっそく旧来の普通の「112A」と差し替えて試聴してみたところ、アッと驚く変わりよう。

    

煌々と輝くトリタン・フィラメントのまばゆい光のもと、ずっと遠くまで見通せるような透明感に加えて、音にスピード感があるため楽器の音が実にクリヤーに浮き出てくるし、ヴァイオリンの音色の潤いと艶は絶品で、これまでPX25真空管からこんな音は聴いたことがない。

博士によると、「トリタンフィラメントはフィラメントがひときわ熱せられるので電子が凄いスピードで飛び出します。それが出てくる音にも反映してスピード感と情報量が半端ではありませんよ。」

そういえば我が家の「WE300Bシングル」アンプも前段管の「171」はトリタン・フィラメントである。

前段管の究極の選択はトリタンに尽きるのではなかろうかと思う今日この頃(笑)。

以上、4回に亘った「今年を振り返って」シリーズを終わります。

今年も我田引水気味に勝手なことを書かせてもらいましたが、懲りず、飽きずに付き合っていただきありがとうございました。来年もどうかよろしくお願いします。

あっ、そうそう、始めてから丸11年、今やすっかり生活の一部になったブログの搭載ですが、今年初めのランキング(グーブログ)では750位前後でしたが、このところ3か月ほどの順位は550位(約280万ブログ中)前後と堅調に推移し何と200位も上昇しました。

根が非常に単純な人間なので成績が上がったことにより、素直にうれしくなってますますヤル気が出てきたところです(笑)。

なお、
最後になりましたが先日のテレビの健康番組で「朝目覚めた時の室内の温度が18度以下だと早死にする確率が高い。」と言ってました。実際に統計をとってみた結果だそうですよ。血管に強いストレスを与えるのが原因のようです。

そこで我が家の寝室の温度を測ってみると、何と「12度」でした!

今年の冬はひときわ寒そうなので急いで暖房対策を講じましたが、「早死にしたいという人」は別にして、どうか皆様も暖房対策にはご留意ください。

それではどうか良いお年を~。



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今年(2017年)を振り返って~その3~

2017年12月28日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

仲間たちから「高音域に難あり!」と指摘があった「オールJBLの変則3ウェイシステム」だが、その後一心不乱になって対策を講じた結果、ようやく次により決着を見た。

まず、アンプの方の出力管をWE300B「1988年製」から「1951年製」に戻す。二番目の対策はフルレンジユニット「LE-8T」をネットワークを使って「8000ヘルツでハイカット」(12db/oct)する。

一方「075」はマイカ・コンデンサー2個(0.075μF×2)を使ってローカットした。

これが楽屋裏からみた画像になる。

     

効果絶大で、ジャズもクラシックもバッチリ(笑)。

「075」ツィーターは能率が「108db」と、とても高いので微小値のマイカ・コンデンサーと組み合わせると、どんな中高音域を受け持つユニットにも合わせやすいのが利点。いまだにオークションで高値を付けているのもよく分かる。

難点は音がやや暴れ気味のところがあるが、我が家ではカバーしているステンレス削り出しホーンが超重量級(お値段は35万円ですぞ!)だけあって、重たくて澄み切った高音が出るので大満足。

それでは次の話題に移ろう。

今年は真空管式のプリアンプに恵まれたことも特筆すべき事柄だった。

いつぞやのブログで「プリアンプ不要論」を滔々とぶったが、これは明らかに若気の至りだった(笑)。

現在の心境は「プリアンプが要るも要らないもその性能次第で左右される。良ければ使った方がいいし、悪いときは外した方がいい。」に尽きる。

☆ 真空管式プリアンプの導入(6月)

今年の3月に知り合ったオーディオ仲間のMさん(大分市)のおかげで巡り会ったのが「クリスキットのマークⅥカスタム」。

   

このシリーズの生みの親である「桝谷」氏によると、「プリアンプに限っては真空管を増幅素子にしたものに限る」そうだ。

振り返ってみると、マーク・レヴィンソン(No.26SL)などの有名どころも織り交ぜていろいろ試してきたが、個人的にはこの説に大いに賛同する。真空管式以外のプリアンプは音の艶とか柔らかさとかがどうしても物足りない。        

このプリアンプはレコード用のフォノイコライザー付きで、「12AU7」を6本使っているが、あらゆる点で不満がまったく出てこないプリアンプである。

ただし、Mさんによると「クリスキットシリーズのプリアンプのうち完成度が最も高いのは最後のマークⅥのカスタムです。これ以外は欠点がいろいろあって使わない方がいいですよ。」

現在、我が家の唯一の大型システム「D130・イン・ウェストミンスター+AXIOM80」専用に使っているが、このところ相次いでお見えになったお客さんたちから絶賛を博しているのもこのプリアンプのおかげといっていいぐらい(笑)。

続いて、

☆ 2台目の真空管式プリアンプ

    

「J.D.S(ジャディス)の回路が余っています。」とのことだったので、こちらからシャーシを提供してMさんから作っていただいたプリアンプがこれ。

現在は中小型のスピーカー「AXIOM80」「ワーフェデールの2ウェイ」「変則JBL3ウェイシステム」専用に使っている。

通常のプリアンプによく使用される「12AX7」を6本使った回路だが、例によっていろいろな真空管を差し替えて試してみた。12AU7,12AT7、E80CC、E180CC、そして本家本元の12AX7など。

この中でベストマッチングは「E180CC」だった。「μ(ミュー)=増幅率」が50前後の球だが、レンジ、スピード感、艶などのバランスがとても良かった。

ただし、この「E180CC」にもいろんなブランドがあって現在手元には「フランス製」、「AMPEREX」(アメリカ)、「ムラード」(英国)、「VALVO」(ドイツ)があるが、画像一番左側のフランス製が一番相性が良かった。

    

フランス製の真空管といえば世間的になじみが薄いようだが、これまで「VISSEAUX」(「2A3」刻印)を含めて、いろいろ使ってみたが一度もハズレたことがなく、独特の味があって好印象を持っている。

この辺を、古典管の泰山北斗「北国の真空管博士」に率直にぶつけてみると「仰る通りです。フランス人は料理にもうるさいし、独特の感性があるみたいですよ。私もフランス製の球は大いに注目しています。」

以上、これらお気に入りの2台のプリアンプの共通点といえば真空管を6本使っていることにある。2本式、4本式に比べるとやはりそれなりの質感が音質に出てくるように思っている。

以下続く。

 

 


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今年(2017年)を振り返って~その2~

2017年12月26日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

今年の6月にオークションで落札した
「JBL LE8T 16Ω 初期型 フルレンジ 名機 完動品 ペア」

        

とても有名なユニットなのでもう語りつくされた感があるが、改めてオーディオ界の大御所「菅野沖彦」氏のコメントを紹介しておこう。

「このスピーカーの素晴らしさは積極的に訴えかけてきながらバランスを損なわないで、きちんと全帯域にわたってコントロールされている点ですね。マルチウェイシステムに比べれば周波数レンジは狭いわけですが、それほどレンジの狭さは感じさせない。

特に高音域の繊細な弦の感じは不満なく出てくるんです。それに中音から低音にかけての積極的な押し出しもよく再現されますので、とりたててどこかに欠陥があるかと探しても見当たらないわけですね。やはり全帯域型としてもっともウェルバランスでしかも万人が納得せざるを得ないようなソースの質感を素直に出してくれるスピーカーという感じです。」

以上のとおりだが、自分の感想は「口径20センチのメリットをフルに生かしたスピード感あふれるサウンドで、イギリス系のユニットにはない良さがある。」と、とても重宝している。

鳴らし方としては当初はフルレンジで鳴らしていたが紆余曲折があって今では変則3ウェイへ。

    

つまり、LE8Tはフルレンジで鳴らし、低音域は「160ヘルツ以下」を「D123」(口径30センチ:ウッドホーン入り)で補強し、高音域は「075」ツィーターでかすかに付け加えるというもの。

当初に聴いたときは高音域がちょっとうるさく思ったが、そのうち耳の方が慣れてしまって違和感なく聴いていたのだが、この23日(土)に仲間たち(大分市)に来てもらい試聴してもらったところ口々に責め立てられた。

「高音域がうるさすぎる!」

「ジャズを聴くのなら高音域はこのくらいうるさい方がいいと思いますよ。」と強がりを言ったものの、お帰りになった後でやっぱりそうかなあと、急に自信喪失(笑)。

オーディオの場合、ファースト・インプレッションはとても大切のようだ。

なぜなら人間の耳は実に都合よくできていて当初は音質に違和感を持っていても聴いているうちに勝手に耳(脳)の方にバイアスがかかってきて次第に「いい音」のように思えてくるのが通常だから。

「直感は過たない、誤るのは判断だ。」
は文豪「ゲーテ」の言葉だが、まことに正鵠を射ている(笑)。

こういうことがあるから、やはりときどきは「よそ様」の耳を借りる方が我が家のケースでは総じてうまくいくようだ。

実は、後になってから一つ思い当たることがあって、それは仲間がやってくる直前にWE300Bアンプの出力管を、やや「へたり気味」の「1951年製」から元気のいい「1988年製」に換えたこと。

「ええ格好しい」というか、欲を出し過ぎた罰が当たったようで、かえって逆効果だった(笑)。1951年製300Bオールドの渋さはやっぱり伊達じゃなかった。

総じて、今回の場合、低音域の補強は実にうまくいったのだが、ツィーターの使い方の難しさを改めて痛感したことだった。

この「LE8T」も「AXIOM80」ほどではないが簡単には鳴ってくれず、いろいろ勉強させてもらっていて実に弄り甲斐のあるユニットである。

以下、続く。




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今年(2017年)を振り返って~その1~

2017年12月24日 | オーディオ談義

先日、我が家のオーディオの貴重なご意見番としてとてもありがたい存在であるYさん(別府市)が試聴にお見えになった。

Yさん宅の音は正直言ってあまり感心しないのだが、こと我が家の音の欠点を指摘するとなると、恐ろしいほど的確なポイントをついてくるのがいかにも不思議。自分に甘くて他人に厳しいタイプなのだろうか(笑)。

冗談はさておき、そのYさんだがシステムを一通り聴いていただいてから、お帰りの際に「3年前とは見違えるほど音が良くなりましたねえ。」と、ポツリと洩らされた。

たしかに自分もそう思う。とりわけ今年(2017年)の躍進は仲間たちのおかげもあって実に目覚ましかった。これまでの長いオーディオ人生の中でもベストの年だったと自信を持って言える。

おそらく、来年以降は今年以上の躍進はとても無理だし、あとはもうメンテナンスが主体になるだろう。ようやく音楽に専念できる態勢が整ったことになるが、これは喜ぶべきか、悲しむべきか(笑)。

それでは、今年も残すところわずか1週間あまりとなったが躍進の原動力となった出来事を仲間たちへの感謝の念を込めて時系列で振り返ってみよう。

まず、

☆ 改造したWE300Bアンプの到着(2017年5月)

「北国の真空管博士」に改造を依頼して1年2か月も待たされたが、それだけのことはあった。我が家ではあらゆる気難しいスピーカーをものともせずに80点以上の合格点で鳴らしてくれる万能選手である。

概要だが、

前段管は「171」(トリタン・フィラメント)、出力管は「WE300B」(1988年製)、整流管は「274B」(シルヴァニア)、インプット・トランスとインターステージ・トランスは「UTC」、出力トランスは個人による手巻き、ヒーター回路は別区分、シャーシは厚さ2.5mmの銅板。

    

博士からいただいたメールを忘れないように再掲しておこう。

「WE300Bの音の特徴は独特の艶と色気にあると思っていますが、音のスピード感との両立が難しいのです。音にスピード感が無いWE300Bアンプは厚化粧のような音になりがちです。


スピード感のある音に仕上げることができれば化粧が適度に抑制されて薄化粧の好ましい音になります。
数回の試行錯誤の甲斐あって何とか既存のWE300Bアンプを凌駕するレベルに仕上げられたのかなと思います。

しかしWE300Bの値段を考えると更にワンランク上の音を目指さねばと思ってしまうのですが。

最後に整流管の区分を掲げておきます。


☆ 使用できる整流管(フィラメント及びヒーター電流2A以下の整流管)
 
274A、83V、274B、5R4、5AR4、5V4G 、GZ32
 
☆ 使用できない整流管
 
280:(プレート電流の制限) GZ37、GZ33、5U4G(VT244):(電源トランスのフィラメント電流の制限)
 

以下、続く。

 


 

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「プリウス」 → 「C-HR」

2017年12月23日 | 独り言

「クルマのオイル交換に行くので買い物がてら付き合ってくれるとありがたいんだけど~と、カミさんが遠慮がちに言う。こういうときに、つれない返事でもしようものなら後で「江戸の仇を長崎で討たれる」のは目に見えている(笑)。

オーディオに「とばっちり」でもくるとたいへんなので「ああ、いいぞ~」。

現在、家内専用の「プリウス」だが購入したのが一昨年(2015年)の5月だからおよそ2年半になる。走行距離は3万1千㎞で、日常の仕事に使っているのでかなり距離が伸びている。

これまでの通算燃費は24.7km/ℓで、ハイブリッド車の中でもかなり上出来の方だと思う。ちなみに自分が乗っている2代前の旧い
クラウン(2500cc)はわずか8km/ℓに過ぎない。

みみっちい計算をすると、走行コストは「15円/1km」、これがプリウスとなると「5円/1km」だからその差は大きい。もちろん地球環境にも貢献している。

したがって休日ともなると、すべてプリウスを借りて乗り回している。

オイル交換に行ったのは16日(土曜日)の午後だったが、かなり混んでいて1時間半ほど待たされた。

手持無沙汰に二人で新車の展示場をうろついていると「C-HR」が目に留まった。



「これ、かっこいいわね!」とカミさんが言うので「ああ、なかなかいけるなあ。」と相槌を打ったところ、俄然乗り気になって「プリウスを査定してもらおうかしら」、「ああ、それもいいなあ」と、無難な返事ばかりしておいた。何しろ主導権はお金を出す人が持っているんだから~(笑)。

さっそく担当のセールスさんがお見えになって、査定した結果、こちらが想像した以上の下取り額が提示された
。年末はサービス期間なのだろうか。

とはいえ、高額商品の即決はあまりよろしくないので「まあ、一晩寝てから考えてみます。」とそのまま帰途に就いたところ、何とその日の夕食時にセールスさんがご来訪。

適当にあしらってお引き取りいただいたところ、またもや翌日の日曜日の夕食時にもお見えになった。この熱心さには頭が下がった。しかも肝心の値引き額も15万円ほど追加されていたのでとうとう根負けした形でゴーサイン。

年明け早々には納車の運びとなったが、プリウスは半年後に車検も控えていることだし、ま、いっか~。

それはさておき、オイル交換の待機中にディーラー備え付けの「週刊朝日」の最新号を読んでいたところ「帯津良一」氏(医師)のコラムに次のようなことが書いてあった。(抜粋)

「とかく忙しい現代人は心を静かにゆったりとする時間も必要です。「延命十句観音経」というお経があります。中国の南北朝時代、南朝の将軍が戦いに敗れて処刑されそうになったときに、このお経を千回唱えれば助かると夢の中で教えられ、実際に千回唱えたら処刑を免れたといわれています。

江戸時代の禅僧白隠さんが丹田から声を出して朗々と唱えると霊験あらかただと教えていますので私は毎朝腹の底から大声を出して唱えています。1分もかかりませんが唱えると心がゆったりと静かになります。座禅や瞑想と同じ効果があるのではないでしょうか。」

お経というのはこれである。

観世音(かんぜーおん)  南無仏(なーむーぶつ) 与仏有因(よーぶつうーいん) 与仏有縁(よーぶつうーえん) 仏法僧縁(ぶっぽうそうえん) 常楽我浄(じょうらくがーじょう) 朝念観世音(ちょうねんかんぜーおん) 暮念観世音(ぼーねんかんぜーおん) 念念従心起(ねんねんじゅうしんきー) 念念不離心(ねんねんふーりーしーん)

根が信じ込みやすい性質(たち)なので、以降毎朝唱えているが、
最後の念仏に追加して「どうかもっと音が良くなりますように~」。

もう神頼みしかない(笑)。


 


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オーディオの推進力 ⇔ 欲と不満

2017年12月21日 | オーディオ談義

我が家のオーディオには欠かせない真空管アンプだが、知らず知らずのうちに溜まってしまって現在では8台(うち2台は知人に貸し出し中)にもなってしまった。

そのうち使うアンプが絞られてくると、出番の廻ってこないアンプがどうしても出てくる。それほど広い部屋で聴いているわけでもないし、置き場所にも困るので12月という比較的ふところが豊かになる時期を当て込んで1台くらい知人のNさんに頼んでオークションに出してみようかと思い立った。

さて、どのアンプを出そうか~。

目を付けたのが、同じ型式のアンプが2台もある「171A」シングルアンプ。

    

比較的小ぶりのアンプだが、最初に左側のアンプをオークションで購入し、大いに気に入ったので予備として同じアンプをさらに1台購入したもので、それぞれ改造を施したものの基本的に同じなのは出力管が「171A」(ナス管)、整流管が「280」(ナス管)、インターステージ・トランス内蔵、出力トランスも回路も同じという双生児だが、唯一違うのが前段管である。

左側のアンプの左端にあるのが「6SN7」(数値的には12AU7と同等)、右側のアンプの左端にあるのが「AC/HL」(英国マツダ:最初期版)。

どちらに定評があるかとなると「通」の方にはもうお分かりですよねえ(笑)。

「英国マツダ」の凄さには自分もゾッコンなので、比較的ありふれた「6SN7」を使ったアンプの方をオークションに出すことにした。

そうなると故障品を出品するわけにもいかないので、改めて無事にちゃんとした音が出るかどうか確認してみなければいけない。スピーカーはお気に入りの「ワーフェデールの2ウェイ」である。

じっくりと聴いてみたところ、これがまあ想像以上に「いい音」がして驚いた。

とても素直な性格で聞きわけが良く、行動もすばしこい優等生を連想させるような音。出力はたったの1ワット前後なのにまったく不足はない。

実はこのアンプは、先日知人の80坪ほどもある広いホールでフィリップスの口径30センチのユニットを試しに鳴らしてみたところパワー不足を露呈してとても印象が悪かった曰くつきのアンプだった。

部屋の広さとスピーカーが変わればアンプはこんなに豹変するものだろうか・・・。

こんなに音のいいアンプをオークションに出すなんて滅相もないとすぐに気が変わった(笑)。

俄然ヤル気になって、今度は本腰を入れて「AC/HL」の方を引っ張り出して試聴した。

   

出力管は「171」(トリタンフィラメント)、整流管はSPARTONの「480」(メッシュプレート)にグレードアップ。

まったく惚れ惚れするような音が出た。

小型のシャーシの中に「こじんまり」と収まった回路、小型の出力トランス、小出力の真空管といった「小型」ならではのメリットを最大限に生かしたスピード感溢れるサウンドで、これなら我が家のエース級の「WE300B」や「PX25」アンプとも十分太刀打ちできるし、むしろ上回る部分さえある。

ルンルン気分になって、今度はスピーカーを換えてオールJBLの「変則3ウェイシステム」にしたところ、途端に色褪せてしまった。これはアカン。歪み気味の音になっていかにもパワー不足。

ワーフェデール(イギリス)は箱の力をうまく利用して鳴らすようにできているので小出力でも十分通用したが、JBLともなると箱の力を借りようとしない音づくりなのでユニットの能力をフルに引っ張り出してやらないと勝負にならない。アンプにかなりのハイパワーを求めてくるのだ。

そういうわけで「あちらを立てればこちらが立たず」というのか、我が家では4系統のスピーカーがあるがこれらをすべて完全無欠に鳴らしてくれる万能タイプの真空管アンプは残念ながら今のところ存在しない。

つまり、6台ともにごく微細な点でいずれも「帯に短し、たすきに長し」の感があり、毎日がアンプとスピーカーの相性探しに費やされているといっても過言ではない程。

とはいえ、自分で言うのもなんだがちょっと要求水準が高すぎるのかもしれない。

オーディオの推進力は何といっても「欲と不満」だから、ま、仕方がないか(笑)。



 


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オークション情報~2017.12.19~

2017年12月19日 | オークション情報

オーディオ愛好家にとって今やネットオークションは欠かせないツールの一つになっているが、お互いに顔の見えない同士の取引とあって、どうしてもいくばくかの博打的な要素が伴うのは否めない。

そういう中、「この出品者なら絶対に間違いなし」という定評のある方が居られるが、古典管マニアの間で取り分け折り紙付きなのが関西の老舗のショップさんで、仮に「Eさん」としておこう。

このEさんが出品されたときはアラート登録しているので常にメールで教えてくれるが、いつもスタート価格がリーズナブルだし、品質もたしかとあってたいへん重宝している。

そして、このほど出品されたのが、いわずと知れた泣く子も黙るほどの「WE300B刻印」。画像と解説文を見てみよう。

    

「WE ウエスタンエレクトリックの直熱3極出力管WE300Bです。言うまでもなくWEの代表的銘球で、出品していますのはWE300Bでも最初期の刻印ベースのものです。

どちらも新品元箱入りで、WE300B刻印の未使用品は今では現地でも入手困難になっています。1940年前後頃の製品。

プレート上部側面の3枚のマイカ板が長い長方形になっている点やプレート下部のマイカ板の中央部だけに白いマグネシアを塗布してある点(劣化の進行を防ぐため)など刻印時代の特徴が見られます。どちらも大型のO型ゲッタリングのものです。

内1本(各画像左側)の足ピン表面に多少浮きサビが見られますが、問題になるようなものではありません(もう1本はぴかぴかの状態)。

どちらも新品元箱入りで(片方の元箱には裏ぶたが無くなっているなどいたみやシミが見られます)、WEオリジナルのWE300Bの動作例などが記載されたデーターシートもそのまま残っています(片方のシートにはいたみが見られます)。

特性はTV7/Uにより確認済みです。 測定値は基準値58に対しどちらも77となっています。入札価格は2本セットの価格です。」   

スタート価格は10万円で入札終了日は12月10日(日)を設定。

このEさんは、老舗だけあって独自の輸入ルートがあるとみえ2年ほど前の12月にも300Bの刻印を出品されており、その時の落札価格はたしか100万円近い額だったと記憶している。

同じ「12月」に出品されるというのは偶然かもしれないが、比較的ふところが豊かになる「ボーナス」時期を当て込んでのことかと、つい勘繰りたくなるし(笑)、また落札終了日は誰もがオークションに時間を割きやすい日曜日の設定だし、背後に緻密な計算が垣間見えるような気がする。

何しろ100万円近い取引なんだから、もし自分ならそうする!(笑)

結局、入札結果は激しい競り合いの末「933,000円」で決着をみた。たった真空管2本の値段がそんなにするのかと驚かれる方も多いことだろう。

もはや現代の技術をもってしても再生産が不可能な「300B刻印の人気衰えず」といったところだが、一説には通貨「元」の不安を見越して、高価で安定的な物品に換えておくために投機筋が動いているという噂もあったりして、可能性としてはかなり高いと思う。

趣味の世界に投機が持ち込まれるのは愛好家にとって不幸極まりないが、品物そのものにとっても使われることもなく仕舞い込まれるのは実力が発揮できなくて可哀そうである。

そうはいうものの、300B刻印を100万円も出して買うほど音質的に価値があるのかというと、個人的には首を傾げざるを得ないと思っている。

わが家ではやや「へたり気味の300B」(1951年:せいぜい市価30万円程度だろう)とエレハモ(ロシア製:市価2万円程度)をときどき入れ替えて聴いているが、とてもお値段の開きほどの音質の差は感じない。せいぜい「音に品があるかないか」程度のものである。

ところが「品が一番大切だ!」と言われると切り返す言葉がないが(笑)。

それはさておき、むしろ100万円もあればスピーカーに投資した方がずっと好みの音に近づけるような気がするのも事実。アンプ(真空管)とスピーカーは持ちつ持たれつの関係だが、スピーカーが主人公であり、アンプは召使だという思いはずっと変わらない。

なお、一昨日(17日)の落札日を迎えオークションに出品されていた「PX25ナス管」(イギリス:未使用)をずっと注視していたが、結局お値段が伸び悩んで落札価格が「146,200円」に留まった。

300B刻印とは月とスッポンの差だ。かっては直熱三極管の両雄だと並び称されていたのにどうしてこんなに差が開いたのだろう。

    

PX25のファンとして実力が正当に評価されていないことに一抹の寂しさを覚えるが、まあ、予備球が比較的安く手に入るのは歓迎というところだ(笑)。


 


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「音楽&オーディオ」を通じて人生の質を高めよう

2017年12月16日 | 復刻シリーズ

今や日本の作家の中で「ノーベル文学賞」に最も近いと言われている「村上春樹」さん。

あまりにも世界的に有名になりすぎたせいか、近年受賞を逸し続けているが、むしろご本人はそういう「ご大層な賞」に無縁であることを良しとし、まったくこだわっていないことが何となく作風から察せられる。

            

その村上さんの本だが、つい最近読んだのが「雑文集」(新刊)。

膨大な作品群があって、とても”ひと括り”には出来ない作家だが、タイトルに「雑文集」とストレートに銘打つところがいかにも”偉ぶらない、もったいぶらない”村上さんらしい。

周知のとおり、村上さんは作家デビュー前にジャズ喫茶を経営していたほどの音楽好きでその「音楽論」には心惹かれるものがある。たとえば、いつぞやのブログで「指揮者小澤征爾との対談集」を題材にしたことがあるが、ジャズのみならずクラシックにも造詣が深いことが伺える。

ただし、オーディオマニアではないのが残念(笑)。

日常聴かれているのは「レコード」が主体で、それはそれで充分頷けるのだがシステムのほうがアキュフェーズのアンプとJBLの古い3ウェイのSPというずっと不動のラインアップ。

「この音が善くも悪くも自分のメルクマールになっている。そりゃあ、いい音で聴くのに越したことはないがオーディオに手間と時間をかける気にはなれない」とのことで、いっさいシステムを変えようとされない。

たしかに一理あるが、
第三者からすると実に惜しい!

作家だけあってものすごく筆は立つし、前述のように音楽への造詣は深いし、カリスマ性もあるし、もし村上さんがオーディオマニアだったら、立派に「五味康祐」(故人、作家)さんの後継になれたのにと思う。

もしそうなると読者の一部がオーディオに興味を持ったりして日本のオーディオ界も随分と潤い、元気が出たことだろう。

ちなみに、ほかに音楽好きの作家といえば「石田依良」さんが浮かぶ。

豪華なオーディオ装置のある部屋で執筆しながら、グールドの弾くモーツァルトのピアノソナタや、オペラ「魔笛」(クリスティ指揮)を愛聴されている。

これから「音楽論」や「オーディオ論」がどんどん出てくることに期待したいが、参考までに
「石田依良」というペンネームの由来はご本人の姓が「石平」(いしだいら)だから。

話は戻って、この「雑文集」の中に「余白のある音楽は聴き飽きない」の標題のもと、以下のような文章があった。

オーディオ専門誌「ステレオ・サウンド」の特別インタビューに応えたもので、オーディオ愛好家にとって随分と励みになるコメントだと思うのでちょっと長くなるが引用させてもらおう。

「僕にとって音楽というものの最大の素晴らしさは何か?

それは、いいものと悪いものの差がはっきり分かる、というところじゃないかな。大きな差もわかるし、中くらいの差もわかるし、場合によってはものすごく微妙な小さな差も識別できる。

もちろんそれは自分にとってのいいもの、悪いもの、ということであって、ただの個人的な基準に過ぎないわけだけど、その差がわかるのとわからないのとでは、人生の質みたいなのは大きく違ってきますよね。

価値判断の絶え間ない堆積が僕らの人生をつくっていく。

それは人によって絵画であったり、ワインであったり、料理であったりするわけだけど、僕の場合は音楽です。

それだけに本当にいい音楽に巡り合ったときの喜びというのは、文句なく素晴らしいです。極端な話、生きてて良かったなあと思います。」

以上のとおりだが、以下、文中の音楽を勝手に「音楽=再生音」と変換させてもらうことにしよう。

オーディオに熱中して随分長くなるが、常にいいの悪いのと価値判断を続けていると時折り自虐的になることがある。

いったい何をやってんだろう、こんなに手間と時間を費やしている割りには目立った成果がいきなり上がるわけでもないし、むしろ、一歩前進、二歩後退のときだってある。

うちのカミさんなんか、「よくもまあ飽きもせずにあれこれ”いじり回してる”けど、ちっとも(音が)変わらないじゃない」と半ば呆れ返っている始末だし、このブログの読者だって「少しばかりの音の差にこだわっていつも騒々しいが、どうもこの人の心理状態がよく分からん。」と、きっと眉を顰める向きがあることだろう(笑)。

そういう多勢に無勢のときに、世界的作家の村上さんから「微妙な小さな差を識別できることで”人生の質”が違ってくるし、価値判断の絶え間ない堆積が人生を作っていく」なんて言葉を聞かされると、まるで「百万の味方」を得たようにうれしくなる。

ここで村上さんが言う「人生の質」とは人それぞれの受け止め方になるのだろうが、少なくとも「お金持ち」になることや社会的に成功する事で得られるものでないことはおよそ想像がつく。

ほんのささやかな「音楽&オーディオ」というフィールドだが、これからも「微妙な差」にこだわりながら「ボケ防止」も兼ねて「人生の質」を高めていこうと決意している今日この頃(笑)。


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アンプとスピーカーの「三すくみ」

2017年12月14日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

    

ご覧のようにオールJBLの変則3ウェイシステムの出来栄えに大いに悦に入っていたところ、さらに欲が出てきて「WE300B」シングルアンプから、このところ出番がない「171A」プッシュプルアンプへと変更してみた。

     

ワクワクしながら耳を澄ませてみると、オッ、なかなかいいじゃないか!

高音域の抜けはWE300Bに一歩譲るものの、中低音域の押し出し感はプッシュプルアンプならではのものがあり、総合力では上回るかもしれない。お値段の方はWE300Bアンプの1/10ほどだからコスパ(コスト・パフォーマンス)は抜群。

何しろ出力管4本(171Aのナス管)、前段管4本(メッシュプレートの227)ともいずれも比較的安価であり、気軽に使えるのでビンボー人にはもってこいだ(笑)。

そういうわけで、この変則JBL3ウェイ・システムは「171Aプッシュプル」アンプで決まり~。


となると「WE300B」アンプの出番がまったく無くなってしまうのもちと寂しい。

    

何しろ我が家の中で一番お金のかかったアンプである。これが、まったく無駄な投資だったとなると精神衛生上、極めてよろしくないので何とか活用法を考えなければとつい焦ってしまう(笑)。

そこで今度は「WE300B」アンプと「AXIOM80」との組み合わせで聴いてみると、良し、これでよかろう!両者はアメリカとイギリスだが国籍は違えども同じ資本主義国だから許す(笑)。

以上、前回のブログと合わせて登場したアンプとスピーカーの組み合わせを整理してみると、

 「PX25」シングルアンプ ⇔ 「ワーフェデール2ウェイ」

 「171A」プッシュプルアンプ ⇔ 「オールJBLの変則3ウェイ」

 「WE300B」シングルアンプ ⇔ 「AXIOM80」 

いやはや、こうなると「三つ巴の戦い」というのか「三すくみ」の状態というのか。

広辞苑によると「三すくみ」とは、「ナメクジは蛇を、蛇はカエルを、カエルはナメクジを喰うとあるところから、3者互いに牽制し合っていずれも自由に行動できないこと」とあるので、こちらの方が表現としては適切だろう。

さて、この3つの組み合わせの中でどれが一番「いい音」だろうかと自問自答してみた。

どんなに高価で優秀なスピーカーであっても音楽ソースによって向き不向きがあり、およそ完璧なスピーカーというものはこの世には存在しない。たとえばボーカルの再生に限っては口径10~20センチくらいのスピーカーが一番いい。歌手の口元がカバのように大きくならないから(笑)。

そこで、「いい音」かどうかは別にして一番「好きな音」となると少しばかり逡巡するがやっぱり「PX25アンプ ⇔ ワーフェデール」になるのかなあ。

ジャズ大好き人間なら一も二もなくオールJBLの「変則3ウェイシステム」にするのだが、根がクラシックファンなので・・・。

ワーフェデールは水彩画のような雰囲気の音の中に何といえない品の良さが漂っていて、ちょっと筆舌に尽くし難い。

ただし、「品の良さって何?」と問われると、ちょっと言葉に詰まってしまう。

どうしても感覚的な表現になってしまうのが辛いところだが、ただ一つ確実に言えることは「聴く人間を内省的にさせて秘めたる感情を揺さぶってくるような音」ということぐらいかな。


いずれにしても、こんなことばかりやって毎日が夢のように過ぎていくのだから、もう忙しくて忙しくてどうしようもない~(笑)。 


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オールJBLの「変則3ウェイシステム」

2017年12月12日 | オーディオ談義

相も変わらず「音楽三昧、オーディオ三昧」の毎日だが、まったく飽きることがなく楽しくてたまらないのはほんとうにありがたい。

いつも観ている「釣り番組」のコマーシャルで「ほんとうに好きな趣味に出会える幸福はめったにない。」みたいなことを言ってたが、その通りだとすると、とても運のいい星のもとに生まれたことになる(笑)。

先日ブログに搭載したとおり、希少な前段管(112A:トリタンフィラメント)を得てすっかり名誉挽回を果たした「PX25シングル」アンプ。

          

組み合わせている「ワーフェデールの2ウェイシステム」との「名コンビ」ぶりにゾッコンの毎日だが、そのうち、またぞろオーディオの浮気の虫が(笑)。

久しぶりにアンプを換えてみようかと「WE300Bシングル」と入れ替えてみたところ、これがどうもしっくりこない。

アメリカの出力管とイギリスのスピーカーとでは「お国柄」が違うせいだろうか、どうも言葉では表現しにくいような違和感を覚える。まあ、PX25アンプと比較しての話だが。

そこで、今度はスピーカーの方を換えてJBLの「LE8T + サブウーファー」にしてみたところ、WE300Bアンプにとっては明らかにこちらの方がグッド。

ただし、音の切れ味がいま一つ。おそらく出力管「WE300B」(1951年製)が「へたり気味」なのも一因だろうが、それにしても・・。

そこで「LE8T」に予備役で待機中のツィーターJBL「075」(ステンレス削り出しホーン付き)を加えてみた。マイカコンデンサー1個(0.075μF)でローカット。

  

これで、「オールJBLの変則3ウェイシステム」の完成となった。

具体的には「LE8T」はフルレンジで鳴らす、そして片隅に置いてあるJBL「D123」(口径30センチ:ウッドホーン入り)は、サブウーファーとして160ヘルツ前後以下(6db/oct)を受け持ち、JBL「075」は生かさず殺さずで、かすかに超高音域を分担することになる。

ずっと以前のブログで「口径30センチのフルレンジ+ツィーター」を話題にしたが、今回は「口径20センチのフルレンジ+サブウーファー+ツィーター」となった。

とてもスピード感あふれる歯切れのいい音と、小気味よく弾んでくる低音に恵まれてこれこそJBLの独壇場だと思った。明らかに「AXIOM80 」や「ワーフェデール」では得られない良さがある。口径20センチも使い方次第では侮りがたく、とりわけ「LE8T」(初期版)の素性の良さにはほとほと参った(笑)。

特筆すべきは075で、これが有るのと無いのとでは雰囲気感の再現力に雲泥の差があって、低音域の質感まで変わってくるように感じるのだから効果絶大。やっぱし、オークションに放出しなくてよかった(笑)。

ちなみに、つい最近の日本経済新聞の記事に載っていたが、2万ヘルツ以上の超高音域は耳では聴こえなくても皮膚で感じることができるそうで、それが脳に伝わって新鮮な刺激を与えてくれるので、これこそが近年ハイレゾが闊歩する一番の理由だとあった。

さて、これでアンプもスピーカーもアメリカ勢同士だし、相性もいいしで満足の一言だが、このところ出番のない「71Aプッシュプル」アンプならどういう音が出るんだろうかと取り換えてみた。

これもすべてアメリカ球なので相性の悪かろうはずがないと、およその見当はつく。

以下、続く。  


 


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SPユニット「ワーフェデール」の後日談

2017年12月09日 | オーディオ談義

先日、首尾よくオークションで手に入れた「ワーフェデール」のユニット(口径30センチ)だが後日談を述べてみよう。

    

その前に簡単に経緯を述べておくと、2本手に入れたうちの1本にかすかにノイズが発生し、出品者側(仮に「T」さんとしておこう)から、謝罪の意味を込めて信じられないほどの格安で新たな1本を譲ってもらった。

ほんのわずかな瑕疵なのにと、ご厚意に恐縮の至りだったが、いずれにしろこれでユニットが3本体制となった。

毎日じっくりと試聴しながらワーフェデールはこれまで使ってきたユニットのうちでもトップクラスとも言えるほどで、「やはり赤帯マグネットは素晴らしい。これでようやく理想とする音に出会った。」と、小躍りしているが、オーディオ仲間たちからも絶賛に次ぐ絶賛を浴びている。

となると、さらに欲が出てきた。「もう1本あるとペアが組めるなあ、そうすると希望する仲間に譲ってあげることができる!」

そこで、Tさんに交渉してみた。「たいへん厚かましいお願いですが、残りの1本も適価で譲っていただけないでしょうか。」

すると、「残る1本はボイスコイルのタッチがあってノイズが出ています。ユニットの裏側からスポンジを差し込んで調整中です。半年ほどこの状態を保てればおそらく良くなると思います。そのときはバッフルに取り付けるときに、プラス・マイナスの端子を上側にするといいでしょう。そういうことでよければ〇円でいかがでしょうか。」

これまたほんとうにありがたいお話だった。一も二もなく応諾して、商談成立。すると、Tさんから「スポンジを装着したまま送付しますのでご参考になさってください。」

ほどなく到着したのがこれだった。

   

スポンジの「はさみ方」といっても、
聞いただけではどうにも腑に落ちなかったが「百聞は一見に如かず」でようやく納得がいった。なるほど、ボイスコイルのタッチ対策としてこういう矯正方法もあったのかと「目からうろこ」だった。

Tさんに対して無事到着のお礼とともに、「スポンジの件、ブログを通じて広く紹介させてもらっていいでしょうか?」と、お伺いを立てると次のようなご返信があった。
 

「この方法は、私のオリジナルでもありませんので、どうぞ、ご遠慮なく。自分の気に入ったスピーカーがボイスタッチで鳴らせないでいる趣味家さんにとって、朗報となれば、私も趣味家の一人としてうれしく思います。 

ただ、3点ほど補足しておきます。 

☆ あくまでも最終的にだめなら専門家に依頼ですよ。(ダメ元の精神で。) 

☆ フィックスド・エッジの場合は、コーン紙の方が変形する場合が多いので不向きです。(ロール部分が柔らかければ可能です。) 

☆ 持ち上げたい点がフレーム位置の中間にある場合は、その点の左右の2カ所のフレームを使ってスポンジを挟みます。

以上のとおり、Tさんのご理解によりこうして「スポンジのはさみ方」が日の目を見ることになってたいへんありがたい限り(笑)。

とはいえ、世の中の大半のユニットはフィクスド・エッジである。

フィクスド・エッジの場合は周知のとおり頑丈なツクリなのでボイスコイルへのタッチなどはほとんど有りえず、このスポンジ方式はおそらく無用の長物だろう。

そのかわり、音声信号への応答性が悪くどうしても音がこもりがちになって冴えない音になるのがフィクスド・エッジの宿命である。

あの繊細極まりない音を拾える「AXIOM80」は、そもそもエッジが無いツクリだし、ワーフェデールにしても極めて柔らかいロールエッジの持ち主なので、そういうユニットしか繊細な再生は望みようがないのが現実である。

ただし、一方ではエッジが不安定なのでボイスコイルのタッチが生じやすいのも事実なので、見方を変えると、(ボイスコイルのタッチは)「名誉の勲章」とでもいうべきもので繊細な再生ができることの証みたいなものだといえよう。

以前のブログで「SPユニットのツクリはハイリスク・ハイリターン」だと述べたが、そういう意味なのである。日本語で言い換えると「虎穴に入らずんば虎児を得ず」だ。別に鬼の首を取ったように言うつもりはないが(笑)。

なお、通常の2~3ウェイシステムはフィクスド・エッジを使ったユニット(口径30センチ以上)の反応の鈍さを補うために、500ヘルツあたりから金属のダイヤフラムを使ったドライバーの出番となるのが一般的だが、これらはどうしても弦楽器の再生が金属的で乾いた響きになってしまうのが通例だ。

その点、柔軟なエッジを持つワーフェデール(フルレンジ型)は4000ヘルツあたりまで持たせても反応が鈍くならないので、赤帯マグネットの威力ともどもこれが愛用する一番の理由である。

以上、作者の特権を行使して勝手に思うところを断定的に述べさせてもらったが、例によって勘違いや思い込みがあることだろうが、どうか悪しからず~(笑)。


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日本人のジョーク

2017年12月08日 | 独り言

☆ 日本人のジョーク

欧米人に比べて日本人はジョークが下手とはよく聞く話。別に下手でも悪くはないが、常にジョークを飛ばすほどの「心のゆとり」を持つことが大切で、英国では「ジョークは紳士のたしなみ」とされているほどだ。

とはいえ、自分だってジョークは苦手だし、そもそも「お笑い番組」の類は性に合わずいっさい観ないので偉そうなことは言えない(笑)。

そういう中、実にうまいジョークに出会ったので紹介してみよう。

昨年(2016)のノーベル賞受賞者「大隅教授」が母校「福岡高校」に凱旋され、「創立百周年記念式典」における講演後の祝賀会で同窓会長による「開会の辞」がこれ。

「大隅先生も朝早くからお疲れでしょう。先生がノーベル賞を受賞されるきっかけとなった酵母がいっぱいに入ったビールで早う乾杯しとうございますので手短に終わります。」(福中・福高同窓会「朝ぼらけ」通信より)

ちなみに、講演後に在校生による「質疑応答」の中で、「心のゆとり」に関しての質問があった。

質問「先生が研究を続ける中で、くじけそうになったり、諦めたくなったりしたときに、どのようにして立ち直りましたか。」

回答「研究はほとんどが失敗で、思い通りにいかないことの連続です。実験と失敗の蓄積の上に次の一手を考えている日々です。

成功への期待を高めすぎず、失敗の連続で何をやったらいいのか分からなくなることすらも楽しめる心の余裕を持てるといいな、と思いながら私は乗り越えてきたと思っています。

高校で習うことには必ず答えがありますが、皆さんがこの先チャレンジすることには解答がありません。世の中のほとんどの事には正解が少ないことを知って、自分が正解を見つけ出そうという精神で世界を見てほしいと思います。」

☆ ミステリー「湖の男」

このところとみに集中力が落ちてきて大好きなミステリーでも一気呵成に読むのに一苦労するようになったが、久しぶりに読みごたえのある本に出会い、睡眠不足になってしまった。

                                        

ネットにあったどなたかの書評を引用させていただこう。

「アイスランドの湖でロシア製の盗聴器がくくり付けられた白骨が見つかることから事件は始まる。捜査に当たるエーレンデュル達の話と並行して、ある男の回想が語られていく。

戦後、アイスランドから自らの信条に燃えて東独ライプツィヒへ留学した若者たちの共産主義への夢と挫折、絶望の物語である。

このパートが心に残る。白骨の人物を待ち続けた女性の発した「人はいつ待つのをやめるのかしら」の一言にエーレンデュルが共感したように、この物語はいなくなってしまった人を悼む思いが重低音の様にあって深い味わいを残していると思う。」

以上のとおりだが、作家も舞台も「アイスランド」なので日照時間が少なくてとても寒冷なお国柄のせいか、全編を通して暗くて陰鬱なムードが通奏低音のように流れており、謎解きの面白さよりも殺人の動機やそれに至っていく過程が個々の人生の襞をえぐるように展開されていくのが本書のポイント。

時代設定は第二次世界大戦直後の東西冷戦の接点だったアイスランドにおいてスパイが暗躍し軍事情報の収集にしのぎをけずっていた頃のお話。

警察の捜査の過程と同時並行で犯人と被害者の双方の過去が次第にあぶりだされていき、世間知らずの若者たちが共産主義思想に翻弄され、相互監視、密告と裏切りの中で離反していく様子が克明に描かれていく。

善人像と悪人像が微妙に交錯し、すんなり勧善懲悪とはいかないので読み終えても何だか割り切れず、読後感がずっと尾を引くがそれがむしろいいところなのだろう。たぐいまれな心理描写と言っていい。

これに限らず全般的に北欧のミステリーを読んでいるといつも感じるのだが、すべての登場人物が一癖も二癖もあり、屈折した心理状態のもとで単純には割り切れない人間関係の構築がベースになっている。

これに、捜査側の親子や夫婦の断絶、ドラッグなどの介在、そして奔放な性風俗などが絡んでくるのだから、いささか〝どぎつい”。

つくづく、温暖な気候のもと、穏やかな人情に満ち溢れた日本に生まれてよかったと思う今日この頃(笑)。


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小は大を兼ねる

2017年12月06日 | オーディオ談義
つい先日、近くにお住いの方(開業医)が入浴中に急逝された。死因は心臓麻痺。会えばごあいさつをする程度のお付き合いだったが、40年近くにもなる積み重ねがあったのでたいへんなショック。

ご出棺のときに奥様が号泣されて一同もらい泣き。合掌

我が団地(150戸あまり)では、ここ3年の間に4名亡くなられたが、いずれも共通点があって季節は冬、時間帯は夜、高齢(70~80歳)、そして入浴中というのが一致している。内訳は男性2名、女性2名で男女を問わず。

これから本格的な冬が到来しますが、お互いに気を付けましょうねえ。もちろん「高齢」には該当しない人が多いでしょうが(笑)。

閑話休題

1か月以上も前に登載した「ウッドホーンの誘惑~その4~」だが、その中で「クラシックとジャズの再生は両立してうまく鳴らせない」といった趣旨のことを述べておいた。

しかし、実を言うとオーディオは百者百様だし「はたしてこんなことを書いてよかったんだろうか」と、一抹の不安は拭いきれなかった。

すると、畏敬しているメル友の「I」さん(東海地方)から次のようなメールが届いた。(抜粋)


「ワンポイントマイク録音のクラシックとマルチマイク録音のジャズを、1台のスピーカーシステムで”ハイレベルで”具現するのは無理・・・と私も思います。
 
例えば、広く深い音場を再現するシステムで、マルチマイク録音のジャズ・ピアノトリオを再生すれば、センター奥にピアノが引っ込み、左のSPにベースが貼り付き、右のSPにドラムが貼り付き、不自然な3点ステレオ音場になってしまうはずです。
 
両方をそこそこにというのはあると思います。しかし、その状態は「音工房Z」の主宰が仰るように、「どんなジャンルの音楽再生にも対応するスピーカーです、というのは、どのジャンルの音楽も高度には再生できません、と言っているのと同じです」(だったかな?原文は忘れました)・・・私もそう思います。」

以上のとおりだが、これにはとても勇気づけられた(笑)。

「クラシックもジャズもうまく鳴ってくれる」というケースは、「ただし、両方とも高度な再生は出来ていませんが・・」というエクスキューズ付きなのだ。

もちろん、幸せ度からいくと「我が家のシステムは何でもうまく鳴ってくれる」という人が一番なのは議論の余地がないが(笑)、そういう人は別にしてクラシックもジャズも両方とも極めたいということであれば、どうしても2系統以上のシステムが必要となろう。

そういえば、ずっと昔大きな病院の院長さんだったK先生(故人:大分市)と親しくさせてもらったことがあり、とても広くて天井が高いリスニングルームにはタンノイさんのオートグラフとJBLのパラゴンが堂々と鎮座していた。

今となってはその時の音の記憶があまり定かではないのが残念だが、何だかとても大味な音だったという印象しか残っていない。アンプは、たしか「M&オースティン」の真空管アンプ「TV-A1」(KT88プッシュプル)だった。

定評のあるスピーカーとアンプをポンと設置して「いい音」が出てくれればこれに越したことはないが、実はそこからオーディオの危険な罠がポッカリ穴を開けて待ち受けていると、今となっては自信を持って言えるような気がする…(笑)。

特に広い部屋で鳴らすときのバランスのとり方は、つい最近の体験(「部屋の広いは七難隠す」)からして、一般的な常識が通用しないところがある。

それはさておき、以上は「クラシック VS ジャズ」というソフト側の視点から述べてみたわけだが、今度はガラッと角度を変えてハード側の視点から「大型スピーカー VS 中小型スピーカー」と見方を変えるとどうなんだろう。

たとえば大型スピーカーで大規模編成のオーケストラを聴いたり、ジャズを大きな音でガンガン鳴らす、その一方、ボーカルや小編成のジャンルは中小型スピーカーの出番といった調子。

こちらの方がむしろ一般的かもしれない。

我が家の例でいけば大型システム1系統と中小型システム3系統あるが、つい面倒くさくなって「大型システムで小編成を聴いたり」、「中小型システムで大編成を聴いたり」することがときどきあるが、面白いことに気が付いた。

前者の鳴らし方には違和感を覚えることが多いが、後者の鳴らし方にはすんなり入っていけるのだ。

つまり、大型システムの方がどうしても大味になって「つぶし」が利かない!
 
巷間よく言われる「大は小を兼ねる」とはとても言い難く、むしろ「小は大を兼ねる」ところがあり、あまりお金のかからない中小型システムの方に万能性があるところがオーディオの面白いところだ。

ただし、先日(11月12日)テレビで放映されて話題になった「シン・ゴジラ」の効果音は大型システムで試聴するに限ると思った。

音楽の再生にとって一番大切なのは「ハーモニー」だと思うが、それとは無縁のドド~ンという地響きのような衝撃音のすさまじさはほんとうに心胆を震え上がらせた。映画の迫力はサウンド(効果音)次第で豹変するので、わざわざ映画館に行って観る価値は十分ありそう。

    

いずれにしろ、我が家の大型システムの出番はテレビ番組とオペラぐらいなのがちと寂しいが、それだけ中小型システムが充実している証でもあり、ま、いっか(笑)。


 

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ヒューマンエラーを防ぐ知恵

2017年12月04日 | 復刻シリーズ

悲惨な事故のきっかけになることが多いヒューマンエラー。人間の「うっかりミス」による悲劇はいまだに後を絶たない。

たとえば乗り物でいえば、自動車のアクセルとブレーキの踏み間違い、飛行機の整備ミスによる墜落や落下物など枚挙にいとまがない。

地震とか台風とかいった自然災害ならともかく、ヒューマンエラーが原因の事故ともなると、加害者も被害者側にとっても悔やんでも悔やみきれないだろう。

このヒューマンエラーをどうやって防げばよいのか。

「ヒューマンエラーを防ぐ知恵」(2007年3月20日、化学同人社刊)   

著者
:中田 亨氏、2001年東京大学大学院工学系研究科博士課程先端学際工学専攻終了。工学博士。

この本は次のエピソードから始まる。

「ある男が避暑のために静かな田舎に引っ越してきた。ところが、早朝に近所のニワトリの鳴き声がうるさくて熟睡できない。そこで男は睡眠薬を買ってきて、ニワトリの餌に混ぜてみた。」

一見冗談のような話だが、この話は原因を除去するという発想に立つことの重要性を説明しており、事故分析と事故予防を考えるうえで大切な教訓を与えている。

この本の構成は次のとおり。

第1章 ヒューマンエラーとは何か
第2章 なぜ事故は起こるのか
第3章 ヒューマンエラー解決法
第4章 事故が起こる前に・・・・ヒューマンエラー防止法
第5章 実践 ヒューマンエラー防止活動
第6章 あなただったらどう考えますか
第7章 学びとヒューマンエラー 

各章ごとの解説は長くなるので省略するが、第6章「あなただったらどう考えますか」に28の事例があり、興味深いと思ったものをいくつか抜粋してみた。

☆ 医師が書いたメモが悪筆で、部下の看護師が読めない場合どうしたらよいか。

まず、なぜ看護師は読めないメモを医師に突き返さないのかと、素朴な疑問を第一の問題の捉え方とする。

医師と看護師の間で権威の落差(権威勾配)が大きすぎることが問題の原因。これでは、たとえメモの問題が解決したとしても権威勾配を背景にした別の事故が起こりかねない。事故防止のためには、たとえ権威のある人でも行動に間違いがあればそれを正す仕組みを作り出す必要がある。

たとえば偉い人の間違いを正す体験や部下に正される体験をする模擬演習が効果的。
偉い先生が「これから私はわざといくつかミスをするので変だと思ったら質問してください。また、私から「やれ」といわれても、不審な点があったら従わないでください」と宣言し、この訓練を年に1回でも実施する。

(こういう模擬演習に協力してくれるような先生なら、そもそも最初から権威勾配なんて起きそうもないがとは筆者の独り言)

☆ 高速道路をオートバイで二人乗りする場合は事故が少ないといわれているが何故か。

緊張感は人間を慎重にさせる。高速道でのバイクの二人乗りは一歩間違えれば危険な状況であり、バイクの運転者は背後の同乗者の命への責任を感じ安全運転を心がける。周りの自動車の運転者も警戒する。

この緊張感に関連して、古典「徒然草」百九段の箇所が有名。「高名の木登り」。

木から下りようとする人を、木登りの名人が監督していた。高くて危ないところでは何も言わず、低いところになってから”注意せよ”と声を掛けた。

緊張のレベルが高い段階では何も言わなくても自分で気をつける、緊張のレベルが下がる局面で油断が生じ、怪我をしやすい。だからそこで声を掛ける。緊張レベルの適正化
は現代の人間工学でも重要事項となっている。

☆ 名前の呪い

専門用語には名前の付け方が不適切なため誤解や事故のもととなることがある。例えば”自閉症”という字面は”自分の殻に閉じこもっている精神症状”と誤解を招く。なぜ、このような呼称になったのか。

専門用語は学問の歴史と密接な関係があり、発見者が命名権をもち、それが名誉となる。このため、研究が未成熟の段階で憶測を含んだ名称をつけてしまうことが頻発する。

つまり命名は名誉や権力の証ということだが、正しい命名法としては客観的で控えめな名前をつけるべきで憶測や価値観を匂わせる名称は控えること。事柄を何かにたとえた名称も避けるべき。たとえば”うどん粉病”はうどん粉とは関係がない。

以上のほかにも、
・自動車の速度計がアナログ方式とデジタル方式のどちらを選択するか
・人気のラーメン店で店頭で順番を待つのとレストランの店内でオーダーをとられて待つのと客の心理はどう違うかなど面白い事例があった。

さて、読後感だが本書の内容は失敗を予防する面からの記述に尽きるが”失敗は成功の母”という言葉にもあるように、世の中には実際に失敗してこそ成長の糧となるケースも多々あるのは周知のとおり。

卑近な例だが自分も50年近いオーディオ人生の中で数限りない失敗を繰り返し、高~い授業料を払ってきたおかげでどうにか現状の「そこそこの段階」に至った。まあ、けっして自慢できる話ではないが(笑)。

その点、「あとがき」で次のように申し添えてあった。

学 校 → 教えたことを間違えない生徒が有利

社会人 → 間違いをしても原因に気づきその後に生かせるタイプが有利

とあって、「学校での成績が必ずしも社会人としての成功と直結しない」とあった。この辺は実感される方が多いのではあるまいか。

そういえば、「輝かしい学歴と経歴」の持ち主たちが仕出かしたとてつもない失敗事例を思い出した。政策的な失敗は多くの人命の損失、国家の損失につながるのだから、とてもヒューマンエラーで片付けられる次元ではない。

話はあのケネディ政権の時代にさかのぼる。

当時の政権の中枢にいた「一流大学を飛びっきり優秀な成績で卒業し、光り輝く経歴の持ち主」たちが引き起こした「ベトナム戦争」をはじめとした政策の失敗の数々はまだ記憶に新しい。

これらについて鋭く問題提起した本が「ベスト・アンド・ブライテスト」(ハルバースタム著)だが、彼らに欠けていたのは「歴史観と展望力」だと指摘されていた。

「人間の知力とはいったい何か」について深く考えさせられる本である。


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アルテックを使わない理由

2017年12月02日 | オーディオ談義

「そんな1円の得にもならないことをして・・・」と、家内から折に触れ〝からかわれる″「ブログ」。

「バカ言え、これでも社会とのたいせつな交流の窓口になっているんだぞ!」と言い返すものの、年金のほかに稼ぎのない亭主の形勢不利はとうてい否めないところ(笑)。

まあ、「世の中、お金には換えられないものがあるんだし~」
と、自分に言い聞かせているが、ブログを通じて情報発信をしているおかげで、逆にいろんな情報が入ってきて我が家のオーディオに大いに貢献してくれるのはたしかである。

常日頃のメル友さんにはほんとうに感謝だが、ほかにもときどき見知らぬ方からメールをいただけるのでたいへんありがたい。

つい先日も次のようなメールをいただいた。匿名ということで無断掲載お許しください。

「ブログ、楽しく・興味深く・真剣に、拝見させていただいております。ワーフェデール、いいものを導入されましたね。記事の続き楽しみです。  

当方は、アメリカのSPを中心にいろいろ使用してきましたが、いつの間にかJBLばかりになってしまいました。しかし、1950年代前半の「ジムランシング」時代のユニットと1970年代以降のユニットは全く性格が違うような印象を受けます。まずは、日ごろの感謝と自己紹介まで。」

内容的にはボクシングでいえば軽くジャブ程度ということだろうか(笑)。すぐに返信した。

「拙いブログを読んでいただき恐縮です。昔のJBLの音は大好きです。細身の音の中に何とも言えない色気がありますよね。今のところアルテックがちょっと気になる存在になっています。もしアルテックを使わない理由がありましたらご教示ください。」

これもジャブ程度のお返しだったが(笑)、すると実に興味深い内容のご返信をいただいた。

「当方の周辺のオーディオの先輩・仲間の多くが、ALTECやタンノイを使用されております。なぜかJBLは「冷遇」されております。そんな中で、なぜJBLなのか?なぜALTECでないのか?本当に不思議です。 

強いて言えば、次のことが理由かと思いますが・・・。 

①ALTECはユニット・ネットワークの種類が限られており、組み合わせが極めて限定される。 

②ALTECは初期タイプ、特に最初期タイプのユニットに絶対的優位性がある。 

ちなみに、当方も過去A7もどき、A5もどきを使用しました。その経験から、上のようなことを感じましたし、結局マニア 内での「最初期ユニットの取り合い」になってしまいそうな予感もしました。 

この春にビンテージオーディオを始めたばかりの知人に請われ、所有していたALTECオリジナルの最初期エンクロージャーをお譲りした次第です。  

最近、ALTEC 604E2(604-8Gのチューンアップ版のようです)というユニットとエンクロージャーを譲っていただきました。 

結線したばかりで、これから調整を楽しみます。同軸SPを本格的に使った経験がなく、さてどうなることやら。当方はアナログ中心で、プリ・パワーとも管球式です。  

「フルレンジSP」の記事は、かなり取り上げられましたね。「同軸SP」、機会があればぜひ取り上げてください。」 

以上のような内容だったが「アルテックは初期のアルニコマグネット・タイプに限る。」と、耳にタコができるほど聞かされてきたが、やはりそういうことだった。

実はアルテックに限らず、SPユニットのうちフェライト(マグネット)タイプが、アルニコタイプを上回った例を知らない。

そもそもなぜアルテックを話題に載せたかというと、我が家のウェストミンスターのエンクロージャーにアルテックの同軸2ウェイ(口径38センチ)を放り込んだらどういう音がするんだろうと、ずっと気になっているから。

現状のJBL「D130」+「AXIOM80」(クロスオーヴァー500ヘルツ)にまったく不満はないものの、もともと同軸2ウェイ用のエンクロージャーなので回帰志向は常に頭の片隅にある。

それならオリジナルのタンノイ同軸ユニットを使えばいいじゃないかとご指摘を受けそうだが、この音がどうも・・・

タンノイさんのファンは世に多いので、これ以上深入りしてあれこれ言うと差し障りがありそうなので止めておこう(笑)。

メールでご提案があった同軸SPについては口径38センチの分は惜しいことに前述のアルテックとタンノイさんぐらいで品薄なのが現状だが、30センチクラスとなるとグッドマンの「TRIAXIOM」(トライアクショム)シリーズが思い浮かぶ。

      

20年近くオークションと‟にらめっこ”してきたがいまだにお目にかかったことがない逸品だが、万一、ゲットする機会があればぜひ試してみたいところ。


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