「家」 @ 鎌倉七里ガ浜 + 時々八ヶ岳

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COVID-19! 世界の金融市場がますます悲惨な様相を呈した3月第2週を振り返る@鎌倉七里ガ浜

2020-03-15 00:00:58 | モノ・お金
3月の第2週、世界の株式市場は荒れに荒れた。

1週間前にご紹介したVIX指数のお話をもう一度しよう。恐怖指数とも言う。米国株式の代表的指数であるS&P500を将来売買する権利であるオプション取引の価格から割り出されるのがVIX指数だ。この指数が大きいほど、市場参加者が今後30日間に米国株式市場が大きく変動すると予想していることを示している。

3月6日(金)にその指数が40を超えたので、「それってこの10年でも稀なことだから、3月9日(月)の週は荒れるかもねぇ~」とこのブログで申し上げたわけだが、本当にそうなってしまった。米国株式市場は史上最大の変動を記録した。すごいよね。

下のグラフはVIX指数だ。日時終値ベースで、3月12日(木)にそれは80に迫り(右の黄色い丸)、リーマンショック時のピーク(左のオレンジの丸)にほぼ並んだ。

【VIX指数】


さて、3月16日(月)の週も、大荒れになるのだろうか?

トランプはFRB(米国中央銀行)が適切な金融政策をとっていないとパウエル議長をまたしても非難し、もっと金利を下げろと議長を恫喝している。しかし単純な金融緩和政策はCOVID-19に対して効果はなさそうだ。イタリアや中国のように国内の一部が封鎖されたり、欧州大陸から米国への入国が停止されるなど、実物(人やモノ)の動きが封じ込められてしまうことで将来の経済に不安が増しているので、そこにいくらカネを注入しても不安の解消にはならない。何かできるとしたら、もっと直接的な政策が必要なのだろう。

世の中では「史上最大の下げ幅」という言葉が繰り返されているが、幅自体はあまり重要ではないよね。より合理的には下げ幅ではなく、下げ率を見た方がいい。当たり前だけど・・・100円のものが50円下げる(50%の下げ)のと、500円のものが200円下げる(40%の下げ)なら、後者の方が下げ幅は大きいが、下げ率は小さい。S&P500なんて指数は長期的にはずっと上昇してきたし、わずか3週間ほど前までは史上最高値を更新していたのだから、過去の下落局面と同じ率で下げるだけで、史上最大の下げ幅ってことになってしまう。

米国株式指数(S&P500)で前回のリーマン・ショック(左の黄色の丸)と今回の下げ(右のオレンジの丸)をグラフで見よう。

【S&P500 ノーマル】


どちらも高値から底までで指数は800~900くらいは下げているのだから、今回の下げも12日(木)につけた水準で、下げとしてはもう十分だという人もいる。

しかしすでに書いたように下げ幅だけで議論はできない。下げ率で見たいところだ。それを見るなら、このグラフの縦軸を対数(log)で表せばいい。

みなさんのPCに入っているMS Excelで上のグラフを描いたら、軸のオプションをクリックして「対数」を選ぶだけで、上のグラフは下のグラフのように変わる。logは高校の数学で習ったでしょ。これなら100円の株式が10円下がるのも、1,000円の株式が100円下がるのも、同じ現象のように表現してくれる。

【S&P500 対数】


ご覧の通り縦軸を対数に変更すると、今回の下げはリーマン・ショックのそれに比較してまだ遥かに小さいことが、視覚的に鮮明になる。

しかも今回の下げは他と比較できないくらい、まだ期間が短い。今回の急落はCOVID-19という得体の知れないものがその主たる原因であり、それゆえ市場はそれによる市場への影響度合いが読み切れず、いつも以上に動揺している。

一方、リーマン・ショック時の下落の背景は、それ以前からはっきりしていた。米国では今世紀に入って大きな金融緩和があり、その後は一転引き締めがあり、そんな中で住宅ローンが貸し込まれていったが、住宅価格はやがて下げ始め、それでも住宅ローンは本来なら借りるべきでない人にまで貸し付けられるようになり、その後住宅ローンの債務不履行や返済延滞が大量発生する・・・といった流れがあった。米国の銀行は、住宅ローンをそのまま保有するなんてことはしない。その7~8割が証券化されモーゲージ債券と呼ばれるものになり、市場に売却される。その残高は国債市場と並ぶ大きさになっている。リーマン・ショックの時はそんな大きな市場がドカーーン!と爆発したような状態になった。その時悪玉として話題になったサブプライム・ローンって言葉を覚えていますか? 「なんだかよく知らないが、とにかく危なっかしいもの」と記憶している方も多いだろう。

ちょっと話がそれる。米国で住宅ローンを借りようとする人ならまず必要とされるFICOのテストで、660点以上をもらえる人々がプライム層とされ、それ未満の人々がサブプライム層とされる(この線引きは金融機関により異なる)。後者に貸し付けられたのがサブプライム・ローンである。



米国では個人の返済履歴、負債、資産、収入などを得点化し、それが表す個人の信用力によって、同じ銀行が貸しだす住宅ローンでも金利水準他の条件がまったく異なる。その判断に使われるのがFICOである。米国らしい公平さだねぇ。本当に米国らしいと思う。日本みたいに、ある銀行がどんな人にも同じような金利水準で貸していることが公平なのか? それとも米国みたいなやり方が公平なのか? おそらく米国式が本当の公平というものだろう。米国人から見たら、日本の信用力のある人はそうでない人の犠牲になり、不当に高い金利でローンを借りていることになるだろうね。私はこうした住宅ローンを証券化したモーゲージ債券をさらに加工したモーゲージ派生債券に投資するファンドを日本の機関投資家に購入してもらうということを何年も仕事にして来たので、米国の住宅市場やローン市場やその債券市場について、かなり詳しかった(過去)。

今回の下落のようにあまりに急に大幅に下げるという意味では、リーマン・ショックなんかより、ブラック・マンデーの方が近いだろう。1987年のことだ。FRBの総裁にグリーンスパンがなってまだわずかだった頃、やって来た激震。相場はその前からじわじわと弱くなり、やがてドスン!と下げて比較的短期間に高値(左のオレンジ色の丸)から底値(右のオレンジ色の丸)まで3割ほど下げた(下のグラフ)。しかしこのブラック・マンデーだって、その前にプラザ合意(1985年)があり、そこからいろいろ原因を重ねて、起こった出来事だ。ハッキリした下地があったのだ。

【ブラック・マンデー】


30年以上前のこと、まだ20代だった私は当時ロンドンで働いていて、ブラック・マンデーの当日、ロンドンの昼過ぎにニューヨークの朝が始まり、ロンドンの夜遅くになってニューヨークの市場が閉まるまで、ずっとオフィスでその動きを見ていた。「こんなことがありうるのか?」と、私は信じられない気分だった。ニューヨーク市場の株式市場、債券市場の日中の動きを覚えている。暴落した株式市場と暴騰した債券市場を見て、私は「世界は二度と元に戻れないのではないか?」とも思った。

でも、そんなことはないのだ。これだけひどく落ちても、2年後にはしっかり回復しているのが、上のグラフで見てとれるでしょ? 落ちた後に買った人は大儲けできたのだ。

今回もすでに一旦は3割くらい下げているから、そろそろ終わり?・・・いやぁ~、今回はそうは行かないと思う。今回の下げは訳がわからない。COVID-19って、我々がよく見知った経済現象とは別のものだから。加えて今回はあまりに急激に下落している。まだパニックみたいな状態で、何が何だかよくわからない。

でももしあなたに貯金があって、なにも買う予定がないなら、どこかでリスク資産(株式や低格付け債券や不動産や石油などの商品)を買うつもりで準備していましょう。10年に一度の大チャンスが今後どこかで現れそうだよ。いつも急激な下げが次のチャンスをもたらしてくれる。あまりに勢いのついた下落は、市場の株式や債券の価格を不合理な水準まで押し下げてしまう。仕組みが複雑だったり、信用度が低いものほどその傾向が強い。だからその後それらがリバウンドを開始した時は、回復速度がとっても早い。



リスク資産(株式や低格付け債券や不動産や石油などの商品)はこうした局面で一斉に下げるので、それを避けようと思った誰もが、逆の動きをするものや低相関・無相関なものを(異なる動きをするもの)に投資する。私もそうだ。そうしたことが理由で私が買ったグローバル・マクロ戦略ヘッジファンドの直近のパフォーマンスはどうなんだろう?

私のヘッジファンドは2月は株式で大やられして、債券で大勝ちして、若干のプラスに持ち込んだ。しかし今月はどうなってるんだろう?

直近の債券市場は不思議な動きをした。

米国国債の利回り、10年(青)、3カ月(オレンジ)単位は%


金融当局は金融緩和の姿勢を鮮明にしている。そうなると短期金利は低く推移する。オレンジ色の線がそれで、米国の国債3カ月物の利回りの推移だ。こちらはほぼ一貫して下げ。一方、面白いのは青の米国の長期国債(10年)の利回りだ。利回りが急スピードで下げたので、その低すぎる水準を見て修正されたのか、やがて上がり始めた。COVID-19を受けた米国中央銀行の金融緩和スタンスを反映した短期金利の単純な動きとは対照的に、長期債の利回りは明らかに異なる何かを反映している。こういうのがすっごく面白いねえ。

私の可愛いヘッジファンドは、この局面で、どんなポジションを取っているだろうか?




コメント (14)
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