音楽の喜び フルートとともに

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レシピとおりに

2008-06-08 01:22:01 | Weblog

バッハを勉強しだしたSさん。ポロネーズの最初の部分。16分音符4つをスラーで2つに分けて、演奏するところを、はじめ2個をつなげ、後の2個をスタッカートで演奏してしまいました。
「そこはスラー2個だったね。」というと、「え?全然気づかなかったです。楽譜とおり吹いていると思いました。」
「ふーん。じゃ、もう一回吹いてみて」
演奏すると、またスタッカートに、「あれ?本当ですね。勝手になってしまいます。」と笑い出した。私もつられてい笑いながら、「じゃあ、楽譜とおりにふいてみて。」

「はい。」ところが、どうしても、スタッカートになってしまいます。
ついに、「こっちの方がいいと思います。」と言い出しました。
「そうだね、それもおもしろいね。」

「でも、もう一回ゆっくりこの4つの音だけ、全部スラーで、4分音符でふいてみようか。」
CHA#G#と吹いてみる。

「どう?」
「HA#と A#G#の間に変な音が入ってしまっています。」
「それを避けるために無意識に舌を使ってしまっていたんだと思います。」

自分なりの演奏をする、というのは本当に大切なことです。

バッハを理論的に、歴史を勉強したり、きっちりと演奏することと、それとは別にまったく真っ白に感性だけをたよりに演奏してみること。この二つは決して対立するものではないと思います。
感性で思ったことをしっかりと覚えておくことは、将来他の情報が入ったときにそれとの比較で、自分と他者の違いを明確にできるようになる=基準を持てることにつながります。

バッハについて書かれた本や楽譜はたくさんあり、全てに目を通すことは不可能なくらいです。
それを少しでも勉強して、自分なりの理論を持ち、意図と意志をもって演奏するのは素晴らしいことです。
でも、勉強する時間が無いときは、その研究家の集約の元に一般に普及した楽譜があります。常識的、一般的な解釈。という楽譜です。
それをまず楽譜とおりに演奏してみる。というのが良いのではないかと思います。
何十年も研究した先人や、専門家の努力に敬意を払ってみるというのは、悪いことではないと思います。

TVで以前見たことがありますが、我が家のカレーの味を競うという番組で、10年主婦、5年主婦、新米主婦が同じカレー粉を使ってカレーを作ってみるのです。
10年主婦、5年主婦はいろいろ工夫した材料や、料理法でカレーを作っていますが、新米主婦はジャガイモを切ってはカレーの箱のレシピを読んで、たまねぎをいためてはレシピを見つめています。
出来上がったカレーを、専門家や、芸能人が食べて投票し誰のカレーが一番か決めました。
さて、意外なことに新米主婦のカレーが一番に選ばれました。
10年主婦、5年主婦のカレーはきっと、その家の人たちにとっては一番でしたでしょう。
ところが、一般的に愛されるカレーは、メーカーが研究しつくしたレシピとおりに作ったものであったというのは十分納得できる結果でした。

そして、プロのコックさんならば、同じカレー粉を使って、レシピとおりのカレーも作ることができ、我が家の人たちをリサーチして限定した人に愛されるカレーも作ることができ、また、自分の店で出せる自分の表現を足したカレーも作ることができる。そういうものではないかと思います。
まずは、バッハをできるだけレシピとおりに演奏してみましょう。ね