夜な夜なシネマ

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『シネマの天使』

2015年11月19日 | 映画(さ行)
『シネマの天使』
監督:時川英之
出演:藤原令子,本郷奏多,阿藤快,岡崎二朗,安井順平,
   及川奈央,ミッキー・カーチス,石田えり他
声の出演:小林克也

前述の『ムーン・ウォーカーズ』とハシゴ。
シネ・リーブル梅田4階から3階へ移動して。

1892年、広島県福山市に開館した映画館“シネフク大黒座”。
1945年の福山大空襲をはじめ、何度か火災に見舞われながらもそのたびに再建。
明治なかばから122年にわたって存在してきたこの映画館。
2014年8月末日を最後に取り壊されることが決まり、
閉館を前にしてその雄姿を映像に残すべく製作された作品だそうです。

大黒座の新入社員・明日香(藤原令子)。
入社早々に閉館が決まり、周囲は慰めの言葉をかけてくれるが、
閉館と言ったって系列のシネコンへの異動が決まっているし、
明日香本人は大黒座への思い入れもほとんどなく、どうでもいい感じ。

しかし、幼なじみのアキラ(本郷奏多)はそんなことはないらしい。
映画監督を夢見て昔から大黒座に通い詰めていた彼は寂しくて仕方がない。
いつか自分で撮った映画を大黒座でかけてもらいたかったのに。
今はバーテンダーをしているが、閉館を前に映画への想いが再び湧き上がる。

大黒座の女性支配人・藤本(石田えり)は、
自分の代で閉館してしまうことを故人の先代に心の中で詫びる。
このところ地元メディアからも取材の申し込みが多く、
人びとにとって大黒座の閉館にどういう意味があるのかを考えている。

こんな3人を中心に描かれる、大黒座の関係者や地元の人たちの人間模様。
いつの時代の写真にも写り込んでいる謎の老人役はミッキー・カーチス
彼は自らのことを「映画の神様」ならぬ「映画館の天使」なのだと語ります。

娯楽の少なかった時代にこの世に生まれた映画館。
ときに映画が誰かの人生を変えることだってある。
時代が変わってさまざまな娯楽で溢れかえり、
暗闇の中で2時間座って映画を観るのは流行らないかもしれません。
でもこの時間は、私にとってかけがえのないものです。

ちょっと感傷的に過ぎると思わないでもありませんが、
100年以上存在した映画館がなくなるのですから、感傷的になるのもあたりまえ。
クサすぎるよこの演技と思いつつも、やはり泣いてしまったのでした。
エンドロールに映し出される、閉館した数々の映画館。これもまた泣けてくる。

映画館はひとつもなくなってほしくない。

本作を観た翌日に、映写技師役で出演されていた阿藤快さんが
お亡くなりになったことを知りました。
ご冥福をお祈り申し上げます。

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