電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

佐伯泰英『意次ノ妄~居眠り磐音江戸双紙(49)』を読む

2015年08月04日 06時04分02秒 | -佐伯泰英
長く続くシリーズもいよいよゴールが近くなった大長編『居眠り磐音江戸双紙』シリーズですが、最新刊の著者の「あとがき」によれば、予定よりも1巻だけ多くなり、来年(平成28年)の1月に第50巻と第51巻を同時刊行して完結、だそうです。ふむふむ、それは目出度い。ほとんど惰性で読んでいるとはいえ、結末はやはり気になります。



小梅村の尚武館坂崎道場では、空也クンと睦月チャンの兄妹が老犬・白山を心配しています。前の老中・田沼意次の死去の知らせをもたらしたのは、今は引退している速水左近。もう一つの情報は、老中首座に就いた松平定信が、田沼政治を急展開すべく、某商人をブレーンに据えようとしているとのこと。それが今津屋でないところに、定信からの依頼=将軍の剣術師範就任を断りつづけている坂崎磐音との距離感があらわれているようです。

しかし、書名のとおり、田沼意次氏は懲りない人のようで、またまたナントカの一つ覚えのように、生前に刺客を放っていたようなのです。全部で49巻も続けて読んできた読者にしてみれば、こうなるともはや「作者の妄」に近い展開ですなあ(^o^)/

松平定信の「寛政の改革」で奢侈禁止令が出されるというインサイダー情報を入手した磐音クンは、最上屋奈緒の紅花商売を心配しますし、松浦弥助の情報によって判明した柳生永為ら七人の刺客団を切り崩し、松平定信暗殺の未然防止のための策略をめぐらして、それは半ば成功しつつありますが……、というお話。



うーむ、この大長編エンターテインメントでは、敵はくるくる変わるのが特徴です。始まりは確か豊後関前藩の内紛で、黒幕は国家老の宍戸文六でした。次は今津屋が両替屋行司に就任する以前の同業者仲間の実権争いで、この時は今津屋は田沼側だったはず。それがいつの間にか田沼父子が巨大な敵に変わってしまい、次々に妙ちきりんな刺客を送り込むだけでなく、豊後関前藩の江戸家老が企んだ阿片抜け荷の黒幕さえも田沼父子になってしまっていました。ところがトリックスター佐野善左衛門さんの軽挙妄動によって田沼意知が死に、今回は意次さんも亡くなります。物語としては新たな敵が出現しないと困るわけで、土子順桂さんが最後の敵になるのでしょうか、それとも松平定信が敵に回ることになるのか?

やれやれ、つまるところ武術は護身の術であり、敵を倒すのは政治と軍事なのだ、ということか。結局は「一介の剣術家・坂崎磐音、次々に押し寄せる刺客をしのぎきることができるか?!」という物語に終わってしまうのでしょうか(^o^)/
全部で51巻もかかってそれだけに終わるのかどうか、作者のお手並み拝見、といった気分です(^o^)/

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