徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

ハーンと大地震と銚子

2018-01-18 15:46:56 | 文芸
阪神・淡路大震災から23年、東日本大震災からやがて7年、そして熊本地震から1年9ヶ月に際して

 明治29年(1896)ラフカディオ・ハーンは、獲り入れたばかりの稲むらに火を放って村民に大津波の襲来を知らせ、高台に避難させて多くの命を救った村長の浜口五兵衛という人物の物語「生ける神(A Living God)」を著した。ハーンは、この年の6月、2万2千人もの犠牲者を出した三陸大津波に心を痛め、江戸時代後期に発生した安政南海地震津波の浜口梧陵の逸話をもとに再話を試みたのだろう。この2年前、ハーン自身も熊本で2軒目の居宅、坪井西堀端の家に住んでいた明治27年8月、地震に遭ったことがある。友人のチェンバレン宛の書簡には「地震が頻発し、庭で夜を明かさなければならなかった」と恐怖の一夜を書き綴っている。そんな実体験も浜口梧陵の逸話の再話を促したのかもしれない。
 浜口家は紀州の出だが、江戸時代前期より総州銚子で醤油業を創業し、後に銚子の経済を支える産業の礎となる。浜口梧陵はその七代目で銚子と紀州を行き来していて、たまたま紀州に帰っていた時に件の大津波が起きた。
 銚子と言えば思い出すのが「銚子大漁節」。元治元年(1864)、銚子はかつてない鰯の大漁で、これを祝って創られたのが「銚子大漁節」。ハーンは「銚子大漁節」を英訳し、「漁師の数え歌」として欧米に紹介している。これも彼の再話文学の一つと言えるのかもしれない。
※右の写真はハーンの坪井西堀端旧居跡の前にあった地蔵堂(数年前に撤去された)


♪ Firstly,
  The first ship,filled up with fish,
  squeezes her way through the river-mouth,with great shouting.
  O this ship of great fishing!
♪ Secondly,
  From he offing of Futaba even to the Togawa,
  the ships,fast following,press in,with a great shouting.
  O this ship of great fishing! 
♪ Thirdly,
  when,all together,we hoist our signal-flags,
  ee how fast the cargo-boats come hurrying !
  O this ship of great fishing!
♪ Fourthly,
  Night and day through the boiling be,there is still too much to boil-oh,
  the heaps iwasi from the three ships together.
  O this ship of great fishing!
♪ Fifthly,
  whenever you go to look at the place where the dried fish are kept,
  never do you find any room-not even a crevice.
  O this ship of great fishing!
(以下省略)