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北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

奥能登芸術祭で集中質問

2017-12-12 | 珠洲市議会
本日の珠洲市議会一般質問。
今回のトップバッター、同志会代表森井市議の質問に答え、泉谷市長は4期目への出馬表明。

午後のトップバッターの私は当面の一番の政策課題「芸術祭の継続開催の是非」に関わる論点で集中質問。
以下、質問原稿です。ご笑覧を。
※<質問4>は持ち時間がなくなったため、原稿はほとんど読まず、通告した質問要旨を中心に発言しました。
※正式な議事録ではありません。引用は慎重に!
※答弁は近日中にアップします。


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<質問1>
まず来年度予算編成方針についてです。
先日の提案説明の中で来年度の予算編成の基本的な考え方が示されました。危機的な財政状況を脱したとはいえ先行きは楽観を許さず、慎重な財政運営が求められます。しかし一方で地域経済の活性化に向けた取り組みに停滞は許されず、そういう意味で「各種活性化事業に鋭意取り組む」という方針も当然のことです。ただ、一つ気になるのは、先ほど来春の市長選に向けた出馬表明もあったわけですが、政策的な予算をどこまで当初予算に盛り込むのかということです。政策面で当面の市民の皆さんの一番の関心事は次回の奥能登国際芸術祭、以下奥能登芸術祭としますが、この開催の判断だろうと思います。市民の皆さんの意識調査や経済効果などを踏まえて実行委員会で決めるのが手順ではありますが、財政面での影響は大きく、今後の市政の方向性も左右する大きな取り組みです。仮に3年後の開催に向けて動き出すにしても、政治的には選挙を経て、民意を確認し、6月議会で予算を上程するというのが、ある意味では常識的な流れかとも思います。第2回芸術祭関連予算は当初予算に盛り込まれる可能性はあるのでしょうか。まずお聞きします。
 
<質問2>
市長選で民意を問いたいとの答弁でした。選挙戦がどうなるのかは全くわかりませんが、市民の皆さんに芸術祭を巡る論点や課題を提示していくのも議会の大事な役割だろうと思います。そんな思いから以下、芸術祭の総括を巡って質問をさせていただきます。

 市長は芸術祭の閉会式でも、そしてまた先の提案説明の中でも、奥能登芸術祭は単なるイベントではなく運動なんだ、そしてその目的は「あくまで珠洲市の魅力を高め、若い方を惹きつけ、U・Iターン、移住定住につなげること」だと述べられました。
 一時的に大勢の人が来ただけじゃダメなんだ、一時的に経済効果があったからといって喜んでいちゃだめなんだ、珠洲の魅力を高め、モノの考え方を変え、人の流れを変え、時代の流れを変えていかなきゃいけない、そのための運動なんだということかと思います。「さすが泉谷市長、素晴らしい!」と感銘を受けた方もおられるかもしれませんが、私は2つ観点からこの「奥能登国際芸術祭」運動論について疑問点を提示し、答弁を求めていきたいと思います。
一つ目は、そもそも大勢の人が来たのか、大きな経済効果があったのかということです。2つ目の疑問は次の大項目3の中で触れていきます。
 まず来場者のカウント方法について確認させていただきます。
昨年12月議会、私は各地の芸術祭で様々なカウント方法が採用されていて、かなり多めの発表もある中、奥能登芸術祭はどうするのか尋ねました。この時の市長答弁は「各作品展示箇所の延べ人数というよりは、現段階ではパスポートやチケットの売り上げ等を基準として、いわば実数ベースで来場者数を把握したい」との答弁でした。ところが開幕後発表される数字は作品設置エリアを4ブロックに分類し、各ブロックの中で最も鑑賞者数の多かった作品の人数を合計した数字、つまり4地点の合計人数となり、最終的にはイベント入場者も合わせて71,260人とのことでした。
確かにパスポートの売り上げの数字だけでは、前売りを購入し、会期後半まで来場しないという方もいます。各地点のスタンプ数を追いながら来場者の動向を日々把握することも内部的には必要だろうとは思います。しかしその数字が常にマスコミを賑わし、ついには目標3万人の倍を超えるという話になりました。議会答弁はどこへ行ってしまったのでしょうか。開幕後、来場者数の把握を4地点の合計へと変更したのはなぜでしょうか。来場者数目標はいつから「4地点の合計の3万人」に変わっていたのでしょうか。ご説明願います。

確かに飯田の商店街はじめ、市内各地に展開された作品展示会場の周辺は、見たことない人通りがありました。かつての能登半島ブームを思いだしたとの声も聞かれました。しかし、総事業費は4億円を超え、本市の実質的な負担も2億円を超えます。予算額でみれば県内でも稀なビッグイベントであり、見た目の印象だけで喜んでいるわけにはいきません。
会期50日間、一日あたり800万円という数字を念頭に他のイベントと少し比較してみたいと思います。
トライアスロン珠洲大会は珠洲市の補助金が250万円、出店協賛金や広告料収入もありますが、大半は参加費で運営され、参加者はジュニアも含めると約1,700人近く、家族を含めると2,000人を超えます。珠洲まるかじりへの珠洲市の補助金はB級グルメ選手権含め230万円で例年1万人前後の入込がカウントされています。市外へ目を向けると穴水町の雪中ジャンボ牡蠣まつりは町の負担が400万円程度に対して2日間の入込は4万人を超え、今年はついに5万6千人とのことでした。今春から名称や運営方式を一新し
て開催された金沢の「風と緑の楽都音楽祭」は県と金沢市合わせて7,600万円の補助金で運営されていますが、入場者数は11万1840人と発表されました。こうした市内外の様々なイベント比較し、奥能登芸術祭を含めた各地の芸術祭は総じて自治体が投入する予算に対する来場者数はかなり少ないと言えます。費用対効果が悪い原因はどこにあると考えられるでしょうか。
もう一点、今年の6月から7月にかけて開催された北アルプス国際芸術祭とも比較してみたいと思います。市長も視察され、私も会期終盤に訪れたことは先の9月議会で少し紹介しましたが、あらためてここで着目するのは奥能登芸術祭との類似点が多くあるからです。北川フラム氏が総合ディレクターを務め、1回目の開催、一自治体の単独開催も同じです。会期は奥能登50日に対して北アルプスは1週間長く57日間。作品数は奥能登37に対して北アルプスは34と3つ少ないわけですが、パフォーマンス系を含めると38となりほぼ同数、海外作家は奥能登10人に対して北アルプスは11人と、全体を通じてほぼ同規模と言っていいと思います。ところが実は一つだけ大きな違いがあります。実行委員会予算です。奥能登4億700万円に対して北アルプスは2億円2600万円。半分強の約56%です。
このような北アルプス芸術祭ですが、パスポート販売数は25,430冊で奥能登の28,471冊のほぼ90%、個別鑑賞券も22,775枚と奥能登の26,753枚の85%。ちなみにパスポートや個別鑑賞券の価格は奥能登も北アルプスも同額です。半額に近い予算で同数に近い来場者数を集めたことになります。あまりの費用対効果の違い、奥能登芸術祭の厳しい数字に首をかしげてしまうわけですが、原因はどこにあるとお考えでしょうか。

次に経済効果について4点お聞きします。
まず経済効果を算定するうえで前提となる来場者数は何人でしょうか。71,200人を基に計算されるのでしょうか。それともパスポートや個別鑑賞券をベースにされるのでしょうか。ちなみに北アルプス芸術祭は個別鑑賞券を使用した方の平均鑑賞作品数は5作品として計算しています。この計算に習えば奥能登芸術祭の個別鑑賞券入場者数は4,489人。イベント入場者をすべて加算しても来場者は35,555人となります。
次に県内の経済効果、市内の経済効果についてです。現在、調査中で最終的な数字はまだ出せないことは承知をしていますが、それぞれのある程度の推計額がわかりましたらお示しいただきたいと思います。
経済効果については3月議会で、市内で約5億円と考えているとの答弁があり、6月議会では観光庁の試算を基に日帰り客で一人当たり約1万5千円、宿泊客で5万円、訪日外国人旅行者で約17万6千円という数字も示されました。またまた北アルプス芸術祭を引き合いに出しますが、大町市は来場者アンケートを踏まえて宿泊客の一人当たりの消費額は25,672円、日帰り客は4,890円としています。珠洲もこれに近いのではないでしょうか。この数字に経済波及効果係数をかけても、観光庁の数字とはかなり開きがありますので、今後発表される数字に注目してきたいと思います。
いずれにしても経済効果を大きく左右するのは宿泊者の人数であり、特に市内の経済効果は市内の宿泊者数に大きく左右されます。9月、10月2か月間の市内宿泊者数は前年度比26%増、人数で言うなら3,084人増とのこと。仮に1人5万円をかけても1億5千万円にとどまります。市外からの日帰り客の経済効果を一人当たり1万5000円としても、やはり経済効果は5億円をなんとか超える程度かと思われます。
ちなみに先ほど紹介しましたトライアスロン珠洲大会は珠洲市の補助金200万円に対して市内の経済効果は30倍の6000万円以上、金沢市が9000万円を支出する金沢マラソンの経済効果はその20倍以上の約20億円と推計されています。一方、北アルプス芸術祭は来場者数を関連イベントまで含めた54,395人とし、その45%が宿泊したという推計で計算していますが、それでも長野県内の経済効果は10億円にとどまります。
4億円の実行委員会予算、珠洲市の負担金が実質2億円余の奥能登国際芸術祭の経済効果は他のイベントと比較し各段に低い、つまり地域にお金が回らないイベントだと思われます。原因はどこにあるとお考えでしょうか。

関連してもう一点、50日間の会期でありながら、その間のボランティアはほぼ無償で頑張っていただきました。スズズカ食堂では飯塚地区の皆さん延べ148人が参加し、おにぎり弁当をつくっても地区には手間賃すらはいりません。アートフロントギャラリーには約3億円で業務委託しながら、地元住民にはお金が流れない、変なイベントだなと思っていましたが、大地の芸術祭では共催団体のNPO法人がパート155人、有償ボランティア191人など地元を中心に雇用を確保しているわけです。無償が当たり前ではなく、アルバイト、あるいは有償ボランティアとして、地域経済に貢献する方策はなかったのでしょうか。

 次に芸術祭の総括にあたって重要な予算及び契約内容の透明性についてお聞きします。
まず一点目、アーティストとの契約内容は、なぜプライバシーとして非公開としなければならないのでしょうか。昨年の12月議会で公開を求めましたが、個々のアーティストの評価など個人情報を含むので一般に公表できないとのことでした。契約金額は主に移動滞在費と材料費、そして評価にも関わるプランニングフィーということになると思います。契約金額が評価とイコールではありません。プライバシーを理由とした非公開は全く納得できません。芸術祭が全国に拡大する中、使途を明らかにできない自治体予算が拡大することに対しても釈然としないものがあります。
さらに疑問が膨らんだのが北アルプス芸術祭との比較です。
北アルプス国際芸術祭の作品数は先ほど紹介しましたがパフォーマンス系を含めて38作品、これに対して制作費は約1億5千万円です。一方、奥能登芸術祭はNoto Aburi Projectと鬼太鼓座を加えた39作品で約2億5千万円。約1億円の差、一作品当たり200万円以上、5割増し以上の高額となっているわけです。その要因はどこにあるのでしょうか。
北アルプス芸術祭が特別低いのかとも思い、瀬戸内芸術祭の総括報告書を見てみました。常設展示も多くありますので単純には比較できませんが、奥能登芸術祭より単価が低いのは間違いなさそうです。作品制作費でなぜこれだけの差が出るのか、市民の皆さんから聞かれても私は全く説明のしようがありません。市民の皆さんが納得できる説明をいただきたいとも思いますし、そのためにも個々の作品の価格を含めて説明すべきだと思います。
また、そもそも作品制作費の総額を約2億5千万円とする判断はどのような議論を経て決まったのでしょうか。昨年12月議会で私は、当初から言われてきた3億円の予算が膨んで4億円を超えることが判明し、その理由を聞きました。市長からいくつかの理由が挙げられましたが、作品についても全国から多くの方にお越しいただくには一定水準以上の作品の質や点数も必要とのことでした。では当初はどの水準を考えていたのか、そして出来上がったアートはどういう水準なのか。アーティストはそれぞれ多くの芸術祭への出品実績のある方が何人も入っています。確かに北アルプス芸術祭と比べて手間暇かけた作品は多いようには感じます。ただ、その手間暇の多くは地元を中心としたボランティアの方の手間暇で、制作費との関係は私など全くわかりません。議論の経緯もできる限り明らかにしていただければと思います。

次に作品の常設展示についてです。昨年12月議会では半数以上の作品の常設展示を想定していて、芸術祭閉会以降も一定程度の効果を持続できるとの答弁がありました。10作品程度と削減したのはなぜでしょうか。また、残す作品の判断基準、維持管理予算、所有権や管理責任の所在についてもお聞きします。

次に珠洲市から実行委員会への予算の支出についてです。
珠洲市から他団体へ予算を交付するときの名称として、補助金や助成金、交付金、負担金などがあります。それぞれの定義を読んでもわかったような、わからないようなところがあるわけですが、本市の場合、その手続きで大きな違いがあるように思います。補助金や助成金の場合、珠洲市補助金交付規則に基づいて交付の申請から実績報告まで一つひとつ事細かに規定され、提出する書類の様式も定められています。しばしば市民の皆さんから補助金を申請したいが手続きが面倒なのであきらめたとの声を聞くことがありますが、面倒なくらい厳格な手続きが定められているわけです。当然それぞれの書類は情報公開請求の対象となります。また珠洲市財務規則の決裁区分を見ると補助金と負担金の扱いも大きく異なり、100万円以上の補助金や交付金は市長決済ですが、負担金の場合は、50万円以上はすべて副市長決済となるようです。
さて、今回の芸術祭ですが、珠洲市から実行委員会へは今年度予算分も含め3億1480万円が、補助金ではなく負担金として支出されます。
負担金と言えば、例えば奥能登クリーン組合負担金や全国市長会負担金、石川県物産協会負担金など公益性はあるけど本市の裁量の余地が比較的ないものが多いように思います。一方で市長が大会長を務めるトライアスロン珠洲大会でも珠洲市から実行委員会への支出は補助金となっています。負担金と補助金、どのように使い分けておられるのかよくわかりません。芸術祭実行委員会への支出を補助金としなかった理由は何か、分担金と補助金の執行手続きの違いについてもお聞きします。

次にアートフロントギャラリーとの業務委託契約について2点お聞きします。
今年度の実行委員会とアートフリントギャラリーと業務委託契約の内容を見ると、すでに「次回開催に向けた提言」や来年度予算案までも盛り込まれていますが、その理由をお聞きします。
まずは次回開催に向けた議論を深めることがまずは求められているのではないでしょうか。そういう意味で、来年度云々の前に、アートフロントギャラリーから実行委員会へ今年度末までに提出予定の活動報告書を公開するべきだろうと思うわけですが、この活動報告書は公開対象となるのでしょうか。

総括に関しての最後の質問はコンセプトについてです。
昨年4月に公表された奥能登国際芸術祭実施計画書によれば、芸術祭のコンセプトは「日本の祭と食文化の源流を探る~日本文化・現代アートに出会う」でした。ところが芸術祭開会直前委に発行されたパンフレットや公式ガイドブックにはこうした表現はなく、コンセプトのように使用されたのは「最涯の芸術祭、美術の最先端」で、コンセプトの柱が祭りから最涯へと変更され、最涯イメージを前面に出したような印象を受けました。
祭りと芸術祭の関係については、2年前の12月議会で私は、そもそも神事である祭りを観光客向けのイベントとして捉えてはいないだろうかと問い、ヨバレについても昨年の12月議会で本来のヨバレとはどんどんかけ離れていく企画内容と「食文化の源流を探る」というコンセプトの関係を問いました。
終わってみて、キリコ祭りをイベント化することはなく、「昼はアート、夜は祭り」とも言われたように、アートと祭りは適度な距離を保ったかなとは思いますが、コンセプトに掲げた割には、祭りは薄味の扱いだったなとも思います。
そこで2点お聞きします
まず、各町内の祭りと芸術祭との連動について、終わってみてどのような評価をしておられるでしょうか。
2つ目はヨバレについてです。まつり御膳の提供数は2104膳とのことですが、提供したのは飲食店10店舗、宿泊施設6施設とのことで、1店舗当たりでみますと、1日2.6食となります。また、ヨバレ体験ツアーの参加者は36人とのことでした。これらの数字についてはどのように評価しておられるでしょうか。

<質問3>
質問の大項目3に移ります。
先の総括に関する質問の冒頭で「奥能登国際芸術祭」運動論について2つの観点から疑問があると述べましたが、2つ目は大都市と珠洲の間で「幸せ競争」を展開する発想です。「日本一幸せを感じられる珠洲市」という市長のスローガンを巡っては、この間何度も幸せは順位争いをするものではない、他者と競争するものではないと異議を唱えてきましたが、またもや登場した幸せ競争に、市長は本当に競争が大好きなんだなぁと半ば呆れています。
開会式では珠洲が中心になってもいいじゃないかとの発言もありました。これも同様の発想なのかなと思いますが、4億円の実行委員会予算のうち3億円が東京の代官山にあるアートフロントギャラリーへの業務委託費となる芸術祭、しかも「最涯」や「忘れられた日本がそこにある」という表現はあきらかに都会に軸足を置いており、どうして珠洲が中心になるのか私には理解できません。
それはともかく珠洲に暮らす私たちが地域に誇りを持つこと、そしてこれまで気づかなかった珠洲の魅力に触れ、実感し、その魅力をさらに高めていく努力を積み重ねることは大切なことです。ただ、珠洲と大都市を比べるときに、注意しなければならない二つの落とし穴があるように思います。以下2点質問します。
 半島先端の珠洲は大都市と比べて豊かな自然環境に囲まれ、また人口密度が薄い分、人間関係は濃く、一人ひとりの存在感や期待される役割も相対的に大きいことは間違いありません。貨幣経済への依存度が低いことも今の社会ではますます大きな魅力だと思います。優れている面がたくさんあると自信を持ちつつも、劣っている面があるのも事実で、そこに政治の役割、依然大きなものがあると私は思います。例えば高度医療、先端医療を施せる施設は大都市に集中し、公共交通などインフラも充実しています。命や日々の暮らしに直結する深刻な政治課題がたくさん残されており、提案理由にあるような、見方、考え方を変えれば済む問題ばかりではけっしてありません。珠洲の良さ、魅力をもっとともっと大きくアピールしたい思いはわかりますが、政治課題が置き去りになってはいけません。政策の実現で改善しなければならないことはまだまだたくさんあるはずで、そんな努力の必要性が後退するようなことがあってはならないと思いますがいかがでしょうか。
 さらにもう一つ、より根本的な問題は幸せ比べ、幸せ競争の発想です。
芸術祭最終日、私は金沢からの知人を案内し、いくつかの作品会場を回っていたところ、たまたま上戸の「青い船小屋」で制作者の真壁陸二さんから直接お話を聞く機会がありました。船小屋の内側に張り付けられた幅10センチほどの壁板に、それぞれ青を基調にして海や山の風景が断片的に描かれ、よく見ると逆さ杉や蟹寺の蟹などが描かれていて、地元の人は上戸の風景だと気づくわけですが、それぞれの絵がなぜ断片的なのか、真壁さんはこのように解説してくれました。
「人は、例えば逆さ杉を見たとき、すべてを見たつもりでいても、実は一部しか見えていない。周りの人と同じ風景を見ているつもりでも実は違った一部を見ている。隣り合う一人ひとり、一つの空間を構成する一人ひとりがお互い違った見方をしていることを理解し、お互いを尊重しあうことが平和な社会を築いていくことにつながるんじゃないかな。そんな思いを込めてこの作品をつくりました」という趣旨の話でした。
一見したところ「なんやきゃ、あれ」とひんしゅくを買うような作品も人によっては感動し、5分、10分、その場を離れず見入っているという光景がありました。まさに人それぞれ、多様な見方を知ることも芸術祭の楽しみ方だったように思います。
市長は市内に展示された作品を見て、「よしやっぱり珠洲は東京にも勝てる」、そんな確信を持たれたのかもしれません。それはそれで結構ですが、真壁さんの言葉を借りれば、社会の見方、人の生き方、やはりそれぞれ。珠洲で暮らす幸せを都会の人も含め広く伝えていくことは大切ですが、大都市で一生を終える人の人生と「幸せ比べ」をするのはやはり余計なお世話でしょう。人の価値観、人生観に踏み込んで「珠洲の方が幸せだと解らせる」そんな運動は、特に行政としてやるべきではないと私は思いますが市長の思いをあらためてお聞きしたいと思います。

<質問4>
質問の最後、大項目の4番目、芸術祭から見えてきた珠洲市政の課題についてです。
芸術祭の総括を巡って、私は決して良かった、良かったと浮かれた気分にはなれないと思っています。だからと言ってやったこと自体無駄だったというつもりはありません。私自身、あらためて気づかされたことがたくさんありますが、それ以上に、市長はじめ職員の皆さんにとっても、芸術祭という初めての取り組みに挑戦する中で、ともすれば前例踏襲と言われる役所仕事の視点を変え、あるいは発想の転換を迫られるようなことも多々あったのではないでしょうか。50日間の会期とはいえ、普段、市外の人の姿が見えなかったところに人が来た、普段の人通りより一桁どころか2桁も多い人が来た、そんな中で鮮明に見えてくる地域の課題もあったかもしれません。ある意味、市政をバージョンアップするチャンスではないかと思うわけですが、珠洲市政の新たな課題や可能性について見えてきたものがありましたらこの際お聞かせいただきたいと思います。
また、今回の取り組み、市長や芸術祭推進室だけではなく、市役所総がかりの取り組みでもありました。特に作品の制作や撤去、そして会期中の受付などで市職員の動員はのべ1,271人に上ったとのこと。単にサポーターの手が足りなかったからその穴埋めに入ったというだけではあまりにもったいないように思います。市内外からの多くの来場者との触れ合いを通じて、それぞれの担当部門に関わらず幅広く市政の課題を考える機会ともなったのではないでしょうか。いま、市民の皆さんの声、あるいは市内各事業所の状況を把握するアンケートや調査が行われていますが、職員の声を吸い上げる場も持ってはどうかと思いますがいかがでしょうか。
 以上、答弁を求め、通告したすべての質問を終わります。


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