北陸中日新聞(2019.11.10)川柳欄より
昨日(12月10日)の珠洲市議会一般質問では珠洲市民図書館の屋根破損問題に対する質問が相次いだ。
しかし、結果的に新しい事実や新たな対応方針はなんら示されず、残念ながら議論は平行線で終わった。
若干、感想を述べたい。
9月23日、台風17号は温帯低気圧に変わりながら能登半島沖を通過し、県内では非常に強い風が吹き荒れた。
津幡町では男性が転倒し負傷、各地で倒木が相次ぎ、交通機関は乱れ、能登では停電した地域もあった。
輪島市では瞬間最大風速31.2mを記録するなどそれなりに強力な台風には違いなかった。
が、県内での建物被害はほとんどなかった。
そんな中、今年3月に竣工したばかりの珠洲市民図書館のトタン屋根が大きく剥がれ落ちたのだ。
珠洲市は、剥がれ落ちる際の目撃者がおらず、どこからどんなふうに剥がれたか不明であること、図書館を襲った強風の風速が不明なこと、施工時の工法は建築基準を満たし屋根の留め金の強度も確保されていたことなどから業者の瑕疵を証明することは困難とし、原因究明を断念。1億円近くにのぼるとみられる修繕費用は事業者側が全額を負担し、当初と比べ強度を高めた工法で張り替えを終えたことで、幕引きを図る考えだ。
これに対して一般質問では森井議員、中板議員、濱田議員からは原因の検証や最終的な被害額、修繕費用の業者負担の経緯、業者の処分、市内の同様の工法の建物の検証などについて質問が相次いだ。
原因究明については、この間の議会全員協議会での説明の範囲を超える答弁はなく、中板議員は現地の地形から屋根に大きな揚力がかかった可能性など、第三者による検証を求め、濱田議員は当初の横葺きから縦葺きへの設計変更が原因ではないかと追及したが、市長からは同じ答弁の繰り返しで議論は深まらなかった。
被害額は市としては把握していないとのこと。
業者負担の経緯については、台風被害後の9月26、27日、業者立会で今後の対応を協議し、竣工から半年余りしか経過していないこと、周辺の建物に被害がなかったことなどを考慮し、業者が負担することになったとのこと。
業者の瑕疵の証明は困難であり、指名停止処分は考えていないとのこと。
市内の公共施設で同様の工法は44か所あるが、点検した結果、問題はないとのこと。
傍聴席ではもやもや感が充満、おそらく多くの市民の皆さんも同様の感想をもたれたのではないか。
私なりにもやもや感や疑問点を整理してみたい。
1.そもそも原因を究明せずにちゃんと再発が防止できるのか?
2.早期の図書館再開が重要課題とはいえ、現場の片付けが早すぎ。原因究明を最初から放棄していたのではないか。
3.業者の瑕疵は証明されてないにもかかわらず、なぜ利益が吹っ飛ぶような修理費用全額負担に応じた?
①瑕疵が証明できないのなら、裁判で争われたら市としても厳しいのではないか。
②もしかしたら瑕疵は明らかだったが、費用の全額負担を条件に、原因不明・処分なしとすることで手打ちをしたのではないかという疑問(疑惑)が消えない。
③本当に瑕疵不明にもかかわらず、費用負担割合についての協議すらなく全額業者負担ならば、市としてはありがたいがやはり不自然。「そのうちどこかで穴埋めするからね」なんて話はなかったのかという疑問(疑惑)も消えない。
4.発注者である市には責任はないのか。公共工事品質確保促進法でも発注者の責任が明記されている。市の財政的負担はなかったから(約40日間の図書館の閉館だけ)それでよしで済ませられるのか。
5.市民の中には、かつて鉄筋コンクリートの福祉センターの屋根が積雪で倒壊した出来事を思い出した方もいるのではないか。あの時も木造の住宅すら倒壊していないのになぜ?だった。今回も周囲の小屋すら飛んでいないのになぜ?である。「またもや」と言える市の施設に対する信頼を損なう事案にもかかわらず、そういった認識が感じられない。
人的被害や周囲の物理的損害がなかったことが不幸中の幸いだったが、これ幸いに原因究明を早々に放棄したことが市民の皆さんの疑念を深めたように思えてならない。
「吹き飛ばされたトタンはぐちゃぐちゃで原因究明などできないと判断した」と市長が語っても、「あんたは専門家じゃないやろ」ということだ。
市と設計業者、請負業者、施工管理業者で協議したと言っても、皆さん当事者だ。「このあたりで手を打ちませんか」ということじゃなかったのかとの疑念は消えない。
数千万円にものぼる損害額である。ここは専門知識のある第三者による調査委員会を速やかに立ち上げ、きちんと原因究明にあたるのがスジではなかったか。
残念ながら昨日の答弁を聞いていても泉谷市長にはそうした考えはまったくない。
幕引きを急ぐ姿は桜を見る会の安倍総理にも重なって見える。
現物が残っていないのは厳しいが、ここは議会としてもうひと踏ん張り期待したいところだ。
議会として特別委員会を立ち上げ、市の担当課だけでなく、関係した業者や専門家を参考人として招いて「新築の屋根だけ飛ばす風の技」の究明にあたるのだ。議会基本条例や議会規則でその根拠や手続きが規定されている。市長に質問したりお願いするだけが議会の仕事ではない。
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