北野進の活動日記

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矛盾深まる安倍政権

2013-05-09 | ニュースコメント
 韓国のパククネ大統領は米韓首脳会談で日本の歴史認識に異例の苦言を呈した。
 さらに米議会調査局は安倍首相をultra nationalistとして知られていると紹介し、安倍首相の歴史認識について「米国の国益を害する恐れがある」と指摘した。

 民主党政権時代にギクシャクした日米関係の修復を外交政策の最重点課題にして、先の訪米では日米同盟の完全復活を宣言していた安倍首相だが、大好きな歴史問題で大きくつまずいた格好だ。

 パク大統領にとっては、最大の懸案事項である北朝鮮問題への対応で足並みを乱す安倍政権へのいら立ちをオバマ大統領に伝えただけでなく、円安・ウォン高で輸出競争の旗色が悪くなっているなか、安倍政権に一矢報いた形にもなった。

 それはともかく、なぜ安倍首相は歴史認識問題に対して「圧力には屈しない」と言ってまで固執するのか。本人の思想信条?、いや、そんな高尚なものでもなく趣味かもしれない。

 米議会報告書は安倍首相だけでなく、政権には ultra nationalist や nationalist がいっぱいいると指摘している。安倍首相の偏った趣味のレベルではなく、日本の政治の大きな傾向と捉えておくべきだろう。

 この問題について昨日の朝日新聞で内田樹先生がわかりやすい解説をしている。

 「壊れゆく日本という国」というタイトルで、まず国民国家としての日本が解体過程に入り、国が「国民以外のもの」=「グローバル企業」の利益を国民よりも優先するようになったと現在の日本を分析。グローバル企業は文字通り、企業収益の増大がイコール国民の利益の拡大とは限らない企業のことだが、ことあるごとに政府に無理難題を押し付け、言うことを聞かなければ海外に出ていくぞと脅す。そんな企業を政府が国民の税金で支援するためには、日本企業よ世界でがんばれ!サムスンなんかに絶対負けるな!と、国民は低賃金を受け入れ、地域経済の崩壊を受け入れ、消費増税を受け入れ、原発を再稼働も受け入れるようにならなければならない。まさに世界でたたかう企業をささえる銃後の守りとして欲しがりません勝つまでは!という国民マインドが必要となる。そのために排外主語的なナショナリズムが不可欠なのだという。
 歴史問題を安倍首相の個人的嗜好の次元で捉えていてはいけない。TPPなどともコインの裏表の関係で密接に絡んでいるのである。

 ところで内田先生は最後にこうした国民国家の解体は程度の差こそあれ世界中で起こっているという。
 では、他の国も natuonalism を推し進めているかと言えば決してそうではない。国民的一体感の醸成に過去の歴史認識の見直しを持ち出すのは日本くらいである。自由や民主主義、人権擁護など人類の普遍的な価値を掲げるのではなく、諸外国から批判を受ける歴史認識を持ち出さなければならないところが日本の最大の弱点であり、政権の致命的な矛盾である。
 


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