2015年8月10日-2
機構的説明
「explanation 説明 [BungeDic1, p.93-94。BungeDic2と照合すべし]
説明は、諸事実と関係のある一つの認識的操作である。或る事実(具体物の状態または状態の変化)を説明することとは、それがいかにして生じたかを示すことにある。例:日没は地球の回転によって説明される。〔略〕説明は記述と試験〔テスト test〕によって先行される。説明には三つの側面〔相 aspect〕がある。すなわち、論理的、存在論的、そして認識論的という側面である。説明の_論理_は、規則性(たとえば、法則)と状況 circumstance(たとえば、諸初期条件)に関わる演繹的〔導出的 deductive〕論証としての説明を提示する。説明の_存在論_は、仮説化した↑【機構〔メカニズム〕mechanism】(因果的、機会的、目的論的、など)を指し示す。そして、説明の_認識論_は、既知のものまたはなじみのものと、新しいものまたはなじみではないものとの間の関係を問題にする。魔術的で宗教的な説明と同様に、典型的な科学的説明は、なじみではない諸存在者または諸性質を引き合いに出す。しかし、前者とは違って、後者は↑【検証可能 scrutable】である。
〔訳註。scrutable 精密な調査[研究]によって理解できる(大辞泉)。日本の新聞やテレビではよく「検証」という言葉が聞かれる。アメリカ合州国での scrutinize が検証に当たるようである。実証との関係は? 科学哲学業界での検証という訳語は、論理実証主義または論理経験主義的なverificationである。積極的な意味では、立証という日本語がある。verificationism を立証主義とし、test を試験またはテストとするとよいかもしれない〕。
そのうえ、通常の知識と魔術的説明とは対照的に、科学的説明は↑【法則 law】としっかりと認定された well-certified 事実を伴う〔を要件とする involve〕。
二種類の科学的説明を区別しなければならない。すなわち、弱いまたは包摂的と、強いまたはメカニズム的である。
_包摂的_説明とは、普遍のもとで特殊を包摂することである。それは、
(諸)法則 & 状況 |--? 被説明項(説明されるべき事実)
という形式を持つ。ここで諸法則は純粋に記述的であり得る。たとえば、併存〔? concomitance〕の言明や速度方程式である。例:ボブが死を免れないことは、彼が人であるというデータ、および、すべての人は死を免れないという一般化によって(弱く)説明される。(つまり、∀x(Hx ⇒ Mx), bH |--? Mb.)これは、J.S. ミル以来、大多数の哲学者たちが説明を理解してきたやり方である。
_機構的 mechanismic_〔訳註。mechanisticではないことに注意。〕または強い説明は、機構の開示である。それは、包摂と同じ論理形式を持つが、それに関与する(諸)法則は↑【機構〔メカニズム〕mechanism】を記述する。集成 assembly、衝突、拡散、競争、そして協力〔協調 cooperation〕といったものの機構である。たとえば、人は死を免れないことは、数多くの合同的に〔併発的に、同時的に concurrent〕作用する機構によって(強く)説明される。すなわち、酸化、DNA損傷、消耗、アポトーシス(遺伝的にプログラムされた死)、ストレスに満ちた時期のあいだにできた糖質コルチコイドの作用による免疫の低下、事故、などによってである。機構的説明は、包摂を包含 subsumeする。」〔20111102試訳、20150810一部修正〕
[2011年11月2日-3 Mario Bunge 哲学辞典:説明、説明力.http://blog.goo.ne.jp/1trinity7/e/80d2aa92205c0cc6947951de3716ac32]
科学的説明の二種類とは、包摂的説明と機構的説明である。機構的説明は、存在論的説明でもあるが、包摂的説明を包括するから、説明とは機構的説明という一種類となる。そこで、Mario Bunge (2013) の本、『医学の哲学 医学における概念的論争点』の用語集では、〈説明とは機構的説明である〉、ということになるわけであろう。
ついでに、下記の事項も引用しておこう。
「explanatory power 説明力[BungeDic1, p.94。BungeDic2と照合すべし]
仮説または理論の、それが言及する諸事実を説明する力。↑【適用範囲 coverage】(または確証の程度)と↑【深度〔深さ〕 depth】(関係する水準〔レベル level〕の数)の積として分析されるかもしれない。あらゆることを説明すると主張する仮説は、なにごとも説明しない仮説と同様に、まさに無価値である〔無用である worthless〕。」〔20111102試訳〕
文献
Bunge, M. 1999. Dictionary of Philosophy. 316pp. Prometheus Books.
Bunge, M. 2003. Philosophical Dictionary. Enlarged Edition. 315pp. Prometheus Books.
[マリオ・ブーンゲ(2003)『哲学辞典 増補版』より10項目の日本語訳は、http://www10.plala.or.jp/trinity7/M&B/bungedic10.htm、にある。]
Bunge, Mario. 2013[/5/30]. Medical Philosophy: Conceptual Issues in Medicine. Paperback. World Scientific Publishing. [B20150717, paperback 6016円+0=6016円amz]
機構的説明
「explanation 説明 [BungeDic1, p.93-94。BungeDic2と照合すべし]
説明は、諸事実と関係のある一つの認識的操作である。或る事実(具体物の状態または状態の変化)を説明することとは、それがいかにして生じたかを示すことにある。例:日没は地球の回転によって説明される。〔略〕説明は記述と試験〔テスト test〕によって先行される。説明には三つの側面〔相 aspect〕がある。すなわち、論理的、存在論的、そして認識論的という側面である。説明の_論理_は、規則性(たとえば、法則)と状況 circumstance(たとえば、諸初期条件)に関わる演繹的〔導出的 deductive〕論証としての説明を提示する。説明の_存在論_は、仮説化した↑【機構〔メカニズム〕mechanism】(因果的、機会的、目的論的、など)を指し示す。そして、説明の_認識論_は、既知のものまたはなじみのものと、新しいものまたはなじみではないものとの間の関係を問題にする。魔術的で宗教的な説明と同様に、典型的な科学的説明は、なじみではない諸存在者または諸性質を引き合いに出す。しかし、前者とは違って、後者は↑【検証可能 scrutable】である。
〔訳註。scrutable 精密な調査[研究]によって理解できる(大辞泉)。日本の新聞やテレビではよく「検証」という言葉が聞かれる。アメリカ合州国での scrutinize が検証に当たるようである。実証との関係は? 科学哲学業界での検証という訳語は、論理実証主義または論理経験主義的なverificationである。積極的な意味では、立証という日本語がある。verificationism を立証主義とし、test を試験またはテストとするとよいかもしれない〕。
そのうえ、通常の知識と魔術的説明とは対照的に、科学的説明は↑【法則 law】としっかりと認定された well-certified 事実を伴う〔を要件とする involve〕。
二種類の科学的説明を区別しなければならない。すなわち、弱いまたは包摂的と、強いまたはメカニズム的である。
_包摂的_説明とは、普遍のもとで特殊を包摂することである。それは、
(諸)法則 & 状況 |--? 被説明項(説明されるべき事実)
という形式を持つ。ここで諸法則は純粋に記述的であり得る。たとえば、併存〔? concomitance〕の言明や速度方程式である。例:ボブが死を免れないことは、彼が人であるというデータ、および、すべての人は死を免れないという一般化によって(弱く)説明される。(つまり、∀x(Hx ⇒ Mx), bH |--? Mb.)これは、J.S. ミル以来、大多数の哲学者たちが説明を理解してきたやり方である。
_機構的 mechanismic_〔訳註。mechanisticではないことに注意。〕または強い説明は、機構の開示である。それは、包摂と同じ論理形式を持つが、それに関与する(諸)法則は↑【機構〔メカニズム〕mechanism】を記述する。集成 assembly、衝突、拡散、競争、そして協力〔協調 cooperation〕といったものの機構である。たとえば、人は死を免れないことは、数多くの合同的に〔併発的に、同時的に concurrent〕作用する機構によって(強く)説明される。すなわち、酸化、DNA損傷、消耗、アポトーシス(遺伝的にプログラムされた死)、ストレスに満ちた時期のあいだにできた糖質コルチコイドの作用による免疫の低下、事故、などによってである。機構的説明は、包摂を包含 subsumeする。」〔20111102試訳、20150810一部修正〕
[2011年11月2日-3 Mario Bunge 哲学辞典:説明、説明力.http://blog.goo.ne.jp/1trinity7/e/80d2aa92205c0cc6947951de3716ac32]
科学的説明の二種類とは、包摂的説明と機構的説明である。機構的説明は、存在論的説明でもあるが、包摂的説明を包括するから、説明とは機構的説明という一種類となる。そこで、Mario Bunge (2013) の本、『医学の哲学 医学における概念的論争点』の用語集では、〈説明とは機構的説明である〉、ということになるわけであろう。
ついでに、下記の事項も引用しておこう。
「explanatory power 説明力[BungeDic1, p.94。BungeDic2と照合すべし]
仮説または理論の、それが言及する諸事実を説明する力。↑【適用範囲 coverage】(または確証の程度)と↑【深度〔深さ〕 depth】(関係する水準〔レベル level〕の数)の積として分析されるかもしれない。あらゆることを説明すると主張する仮説は、なにごとも説明しない仮説と同様に、まさに無価値である〔無用である worthless〕。」〔20111102試訳〕
文献
Bunge, M. 1999. Dictionary of Philosophy. 316pp. Prometheus Books.
Bunge, M. 2003. Philosophical Dictionary. Enlarged Edition. 315pp. Prometheus Books.
[マリオ・ブーンゲ(2003)『哲学辞典 増補版』より10項目の日本語訳は、http://www10.plala.or.jp/trinity7/M&B/bungedic10.htm、にある。]
Bunge, Mario. 2013[/5/30]. Medical Philosophy: Conceptual Issues in Medicine. Paperback. World Scientific Publishing. [B20150717, paperback 6016円+0=6016円amz]