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《生命/生物、生活》を、システム的かつ体系的に、分析し総合し統合する。射程域:哲学、美術音楽詩、政治経済社会、秘教

一過性全健忘症(続考)

2016年06月03日 13時17分47秒 | 生物哲学
2016年6月3日-2
一過性全健忘症(続考)


 2016年5月20日-1 一過性全健忘症、記憶の読み書き
http://blog.goo.ne.jp/1trinity7/e/6f49234532343f63ffcb6e0d72514e50

の続きである。
 記憶装置に(おそらく電気的に)接続してやり取りして(アクセスして)、意識が意識の座(interface)を通じて読み書きする、というモデルを考えたいところである。一過性全健忘状態では、記憶内容の書き込みがその時点では仕組みが壊れて、たとえば海馬との接続できず、また一週間ほど前のすでにある記憶を想起できない(→すでに存在する記憶内容の読み出し接続線が機能しない、→神経細胞水準かその上位のシステム体の機能不全)ことは、読み出し機構の方もイカれてしまっていた(しかしこの古い時点の記憶内容は回復した)。問題(?)は、一過性全健忘状態では書き込みができないので、一過性全健忘状態にあったときの出来事(自分の言った内容、不安そうに振る舞っていたこと)をそもそも覚えていないことである。しかし、しゃっべった内容はまったく覚えていないのに対して、身体動作的なことは、かすかながら思い出せる「ような気がする」。まことにあやふや。

 一過性全健忘症という事項は、ウィキペディア日本語版には無かった。英語版から、その原因と先行事象の部分を試訳したものを下記に掲げる。

 一過性全健忘(症)Transient global amnesia (From Wikipedia, the free encyclopedia)
https://en.wikipedia.org/wiki/Transient_global_amnesia[受信:2016年6月3日。]

  「
Causes
 The underlying cause of TGA remains enigmatic. The leading hypotheses are some form of epileptic event, a problem with blood circulation around, to or from the brain, or some kind of migraine-like phenomenon.[7][18][19][20] The differences are sufficiently meaningful that transient amnesia may be considered a heterogeneous clinical syndrome[2] with multiple etiologies, corresponding mechanisms, and differing prognoses.[8]
原因 Causes
 一過性全健忘症を引き起こす原因は、謎のままである。指導的仮説は、或る形態のてんかん症的事象だというもので、脳の周りか、脳への、あるいは脳からの血液循環の問題であるか、或る種類の偏頭痛に似た現象であると言う。[7][18][19][20] 〔意見の?〕相違は十分に意味があるので、一過性健忘症は、多種多様の病因と相当する機構と様々な予後をともなう種々雑多な臨床的症候群であると考えられよう。[8]


先行する事象〔出来事〕 Precipitating events
TGA attacks are associated with some form of precipitating event in at least one-third of cases.[21]
一過性全健忘症の襲来は、少なくとも3分の1の事例で、或る形態の先行事象と結びついている[21]。

The most commonly cited precipitating events include vigorous exercise (including sexual intercourse), swimming in cold water or enduring other temperature changes, and emotionally traumatic or stressful events.[2]
最も普通に挙げられる先行事象には、(性交を含む)強力な運動、冷水中で泳ぐことまたは別の〔otherの意味がわからない〕温度への変化に耐えること、そして感情的に〔情緒的に〕衝撃的な〔トラウマ的な〕または緊張に満ちた出来事〔事象〕が含まれる。

There are reports of TGA-like conditions following certain medical procedures and disease states.[19]
 一定の医学的手順と病態に続く、一過性全健忘症に似た状態についての報告がある。[19]

There is a slight (2%) familial incidence.[2]
わずかだが(2%)、家族遺伝的罹病率がある。[2]

If the definition of a precipitating event is widened to include events days or weeks earlier, and to take in emotionally stressful burdens such as money worries, attending a funeral or exhaustion due to overwork or unusual childcare responsibilities, a large majority, over 80%, of TGA attacks are said to correlate with precipitating events.[8]
先行事象の定義を数日前か数週間前へと広げ、また、お金の心配とか、葬式への参列とか、働き過ぎまたは普通でない育児の責任による疲労困憊とかといった、感情的にストレスの多い重荷を取り入れると、一過性全健忘症の襲来の大多数(80%超)は、先行事象と相関すると言われている。[8]

The role of psychological co-factors has been addressed by some research.
心理学的共同因子の役割が、或る研究によって提出された。

It is the case that people in a state of TGA exhibit measurably elevated levels of anxiety and/or depression.[3]
一過性全健忘の状態にある人々は、測定可能な水準の不安または鬱あるいは両方を示すことは本当である。[3]

Emotional [8] instability may leave some people vulnerable to stressful triggers and thus be associated with TGA.
感情的不安定は、或る人々にとっては、緊張に満ちた引き金に感じやすく、こうして一過性全健忘症と関連するのであろう。

Individuals who have experienced TGA, compared with similar people with TIA, are more likely to have some kind of emotional problem (such as depression or phobias) in their personal or family history[22] or to have experienced some kind of phobic or emotionally challenging precipitating event.[23]
一過性全健忘を経験した個人は、TIA〔Transient ischemic attack 一過性虚血発作〕をもつ同様の人々とくらべると、個人のまたは家族の歴史において(鬱または恐怖症といった)或る類いの感情上の問題を持っていそうである、あるいはなんらかの類いの恐怖症的先行事象か感情的にやりがいのある先行事象を経験したことがありそうである。[23]

===
Progression of a TGA event
一過性全健忘事象の進行

 This onset of TGA is generally fairly rapid, and its duration varies but generally lasts between 2 and 8 hours.[2]
一過性全健忘症の発病は、概してかなり速く進む。その持続時間は変異するが、概して2時間ないし8時間続く。[2]

A person experiencing TGA typically has memory only of the past few minutes or less, and cannot retain new information beyond that period of time.
一過性全健忘症を経験している人は、ほんの二分か三分以下の過去の記憶しか持っておらず、その期間を越えた新しい情報を保持できない。

One of its bizarre features is perseveration, in which the victim of an attack faithfully and methodically repeats statements or questions, complete with profoundly identical intonation and gestures "as if a fragment of a sound track is being repeatedly rerun."[4]
さの奇怪な〔異様な〕特徴の一つは、反復症である。襲来された犠牲者は、誠実にかつきちょうめんに陳述または質問を繰り返し、「或る録音軌道〔録音帯、サウンドトラック〕の一断片が繰り返し再演奏されるかのように」大いに同一の抑揚と身振りで仕終える〔「, complete with」がイマイチわからん〕。

This is found in almost all TGA attacks and is sometimes considered a defining characteristic of the condition.[2][5][6]
このことは、ほとんどすべての一過性全健忘症の襲来において見られ、この症状の定義的特徴であると時には考えられている。[2][5][6]

The individual experiencing TGA retains social skills and older significant memories, almost always including knowing his or her own identity and the identity of family members, and the ability to perform various complex learned tasks including driving and other learned behavior; one individual "was able to continue putting together the alternator of his car."[2]
一過性全健忘を経験している個人は、社会的技能を保ち、古い意義深い記憶を保持しており、その記憶としては、ほとんど常に自分の同一性〔本人であること、身元〕を知っていることと家族の構成員の同一性認識〔身元〕をしていることを含んでいる。また、様々な複雑な身につけた仕事を遂行する能力としては、運転と他の習得した行動を含む。〔或る?、つまり一例の観察か?〕一人は、「自分の車の交流発電機を組み立て続けることが可能であった」。[2]

Though outwardly appearing to be normal, a person with TGA is disoriented in time and space, perhaps knowing neither the year nor where they reside.
外見上は正常に見えるけれども、一過性全健忘の人は、時間と空間が位置がわからない〔混乱する〕。おそらくその年〔の位置〕もどこに住んでいるかも、知らない〔わからない〕。


〔略〕

There is also evidence that the victim is aware that something is not quite right, even though they can't pinpoint it.
(正確に指摘できないけれども)なにかが完全には正しくないと、犠牲者は気づいているという証拠もある。


感性学、分析美学関連文献

2016年06月03日 02時21分46秒 | 美術/絵画原論、絵画理論、絵画技法
2016年6月3日-1
感性学、分析美学関連文献

 欧米の哲学業界では、分析哲学が主流だと聞いたことがある。そのため、美学(または感性学)でも、分析哲学的手法で論じる人が多いとのことである。
 日本では、『分析美学入門』の訳書が出版され、『分析美学基本論文集』が編集され出版された。数名が会員となっている、

 分析美学オンライン勉強会
https://sites.google.com/site/musicmetaphysics/home

がある。

 分析美学の手法は言説分析なので、実際の芸術作品に即して論じているところはあまり無いようで、役に立たないという批判がある(要文献)。

 ロバート ステッカー『分析美学入門』は、2013年6月2日に読み始め、2013年8月18日に読了した。2016年6月2日の現在、この本がどんな議論をしていたのか記憶が無い。表表紙の次の見開き2頁に、当時の走り書きがあるが、読み取りにくい。


感性学〔美学〕 aethetics [BungeDic1?2?: **][試訳20150906a]
 a 哲学的 芸術の哲学。それは、芸術作品、表象的/抽象的、様式、そして美しい/醜い、という一般的概念を巡って旋回する。この分野の地位は、不確定である。なぜなら、客観的規範〔規準〕は知られておらず、よって芸術作品を評価するための個人を越えた、かつ文化横断的な客観的規範は無いからである。とりわけ、気まぐれに行なったコラージュ〔糊付け作品〕でも、一連の恣意的な雑音でも、うまいこと売り込まれれば、芸術作品として合格するだろうわれわれの時代においては、そのような規範は無いからである。その結果、感性学〔美学〕的な意見、定義、そして分類は数多くあるけれども、試験〔テスト〕可能な感性学的仮説は、ましてや仮説演繹的体系(理論)は無いようである。もっとも、感性学的諸概念の分析と相互関係づけは、正当な努力であり、それは「分析美学〔分析的感性学〕」と呼ばれてもよい。
 b 科学的 D. Berlyneによって創始された、芸術鑑賞の実験的心理学。

美 beauty [BungeDic2: 30][試訳20160602]
 あらゆる人が求め楽しむが、だれも知らないらしいもの。価値論的絶対主義者は、美を客観的で文化横断的だと見なす。ところが、主観主義者は、美は見る人の眼にある、よって主観と文化に相対的なのだと宣言する。どうやら、この問いは人類学と実験的↑【感性学〔美学〕 aesthetics】によってのみ解決されるようだ。


□ 分析美学関連文献 □

今道友信(編).1984/9/30.講座 美学 第3巻 美学の方法.x+336pp.東京大学出版会.[2800+税84=2,884円][B20130902、138+250=388円amz][4 分析美学(戸澤義夫)pp. 117-142.5 実験美学(川野洋)pp.143-175.]

金悠美.2003/12/31.バーネット・ニューマンの美学批判とその帰結.美學 54(3): 1-14.[受信:2015年5月21日。]["Aesthetics is to artists as ornithology is to the birds" is known as Barnett Newman's quip. For a generation of painters, it represented the inadequacy of aesthetics for them. In turn, some aesthetic ]

金悠美.2004/2/25.美学と現代美術の距離:アメリカにおけるその乖離と接近をめぐって.xi+212pp.東信堂.[3,800円+税][B20100322]〔きむ ゆうみ〕〔分析美学,グリーンバーグ,Danto〕

西條玲奈.2014/12/25[ウェブ公開日].反復可能な芸術作品の存在論とまばらなメレオロジー唯名論.116pp.[北海道大学博士論文]http://hdl.handle.net/2115/57745[受信:2015年9月12日。]

ステッカー,ロバート[Robert Stecker].2010(森功次 訳 2013/5/15).分析美学入門.500頁.勁草書房.[5,985円][B20130602][Rh20130818、Rb20130602]

利光功.1994/12/31.美学はわびしいか――分析美学の射程と限界――.美學 45(3): 1-11.
http://ci.nii.ac.jp/els/110003714096.pdf?id=ART0004845198&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1465138181&cp=[受信:2015年?月?日、2016年6月5日。]
[「竹内敏雄編『美学事典』の増補版にも531ページ以降にすこし分析美学の紹介(執筆者は利光功)があるけど、『美学新思潮』での川野洋の紹介と内容はほぼ同じ」[http://d.hatena.ne.jp/conchucame/20130617]]

戸澤義夫.1984/9/30.分析美学.今道友信(編)『講座 美学 第3巻 美学の方法』: 117-142.東京大学出版会

西村清和.1995/10/.現代アートの哲学[哲学教科書シリーズ].8+266pp.産業図書.[2,800円+税][B20121110、1,400+250=1,635円][Rh20131208]

西村清和.2011/12/20.プラスチックの木でなにが悪いのか:環境美学入門.xi+416pp.勁草書房.[3,900円+税][B20121108]

西村清和(編・監訳).2015/8/30.分析美学基本論文集.433+xii pp.勁草書房.[本体4,800+税][B20151105、5,184円]

第1章 「芸術」の定義
 1 アートワールド アーサー・ダントー(西村清和 訳)
 2 芸術とはなにか――制度的分析―― ジョージ・ディッキー(今井 晋 訳)

第2章 美的価値
 3 芸術批評における理由 ポール・ジフ(櫻井一成 訳)
 4 美的概念 フランク・シブリー(吉成 優 訳)
 5 芸術作品の評価と鑑賞 ジョセフ・マゴーリス(橋爪恵子 訳)

第3章 作品の意味と解釈
 6 視覚芸術における再現 モンロー・ビアズリー(相澤照明 訳)
 7 文学における意図と解釈 ジェロルド・レヴィンソン(河合大介 訳)

第4章 フィクションの経験
 8 フィクションを怖がる ケンダル・ウォルトン(森 功次 訳)
 9 不道徳な芸術礼賛 ダニエル・ジェイコブソン(村上 龍 訳)

解説 西村清和

アーサー・ダントー(西村清和 訳)「アートワールド」 9-
ジョージ・ディッキー(今井晋 訳)「芸術とはなにか――制度的分析」 36-
ポール・ジフ(櫻井一成 訳)「芸術批評における理由」 63-
フランク・シブリー(吉成 優 訳)「美的概念」 99-
ジョセフ・マゴーリス(橋爪恵子 訳)「芸術作品の評価と鑑賞」 138-
モンロー・ビアズリー(相澤照明 訳)「視覚芸術における再現」 173-
ジェロルド・レヴィンソン(河合大介 訳)「文学における意図と解釈」 244-
ケンダル・ウォルトン(森功次 訳)「フィクションを怖がる」 301-
ダニエル・ジェイコブソン(村上龍 訳)「不道徳な芸術礼賛」 335-
西村清和 解説 411-]


morinorihide〔森功次〕.2015/06/08 09:54.K. Walton「芸術のカテゴリー」.https://note.mu/morinorihide/n/ned715fd23434[受信:2016年6月3日。][Kendall L. Walton. 1970/7. Categories of art. The Philosophical Review 79(3): 334-367. の全訳を販売している。]

森功次.2016/2/12.分析美学ってどういう学問なんですか――日本の若手美学者からの現状報告.http://synodos.jp/culture/16122.
[受信:2016年6月3日。]

at_akada〔高田敦史〕.2015-08-29.うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ.『分析美学基本論文集』の論文セレクトについて.http://at-akada.hatenablog.com/entry/20150829/1440811637.[受信:2016年6月3日。]