例えば授業中に「教科書の○ページを開きなさい」と,指示を出したとします。
たったこれだけのことでも,子どもが30人いたとすると,30通りの「教科書開き」があるものです。
サッとそのページを開き,姿勢まで正す子。
一生懸命ページをめくっているけど,そのページを見つけられない子。
やっと机から教科書を出そうとする子。
先生の指示すら聞いていない子。
教科書を開くという,たったこれだけの動作ではあるが,おもしろいものです。
そして,ここに遅い子がいると,授業のテンポが悪くなりますよね。
基本的に,早くできている子に合わせて進めたくなります。
でも,その一方で,遅い子も含めて全員のしっかりとした学習を保障したい。
「たくまくん!先生は今何と言いましたか!?」
なんて,ぼけーっとしている子に喝を入れる先生の声も,毎度のことになってしまってはむなしく響くだけ…
どうにかして,こんな場面でできるだけ敏速に,パッと活動させられないだろうかと考えると,
できた子の名前を呼んであげる!
という攻略法にたどり着きます。
単純なことです。
子どもは,教科書を開き,さらに姿勢をよくして,先生に(先生!開きましたよ!)のアイコンタクトを送ります。
それを受け取り即座に先生は「ゆいさん。」と一回その子の名前を呼んであげます。
そのうち,次々に子どもが教科書を開きアイコンタクトを送ってくるので,
「とおるくん」「ともこさん」「しょうたくん」「りなさん」・・・
と連続で名前を呼んであげます。
こうすると子どもは,名前を呼ばれるだけだけど,そこには「教科書を早く開けたね。えらいよ。」の意味がこもっているのだから,うれしくなります。
すると,他の子も名前を呼んでもらいたくて,活動を敏速にしようとします。
集中力の欠けていた子や,先生の指示を聞き逃した子がいたとしても,どんどんと呼ばれる友だちの名前に,「え?なに?なに?自分もしなきゃ」と焦りだします。
この子たちを叱ることなく,授業の流れに呼び戻すことができるわけです。
だいたい,早かった12,3人ほどを呼び終わるころには,全員が教科書を開き終えているでしょう。
そして,これには結構な教師の腕がいる。
まず,教室の隅から隅まで,アイコンタクトを見逃してはいけません。
そのために,先生は黒板に背中がくっつくほどのところまで後ろに下がって構え,教室全体を見渡します。
次に,子どもの名前を連続でスムーズに言えること。
訓練が必要です。
※最初のうち,子どもたちがまだこのシステムを理解していないときは,「○○さん,開きました。」とまで言ってあげてもいいですね。