風を紡いで

旅の記録と料理、暮らしの中で感じた事などを綴っています。自然の恵みに感謝しながら…。

パリでチップの話

2005年12月09日 | 2005年仏サンジェルマン デ プレ
イギリスから鉄道を使ってパリ北駅まで行った。構内でトラベラーズチェックの換金を済ませてから、タクシー乗り場へ向かう。パリは恐い所とガイドブックなどに書いてあったので、キョロキョロしないようにして気を引き締めて歩く。そう思って周りを見ると、あの人も、この人も油断ならない感じに見えてきて、我ながら嫌になる。駅ではそんな心境だったので、少なからず緊張した。後で、冷静に考えると、金持ちに見えるはずもなく単なる気苦労に過ぎないと、苦笑してしまった。

タクシーを待つ人でごった返している。その列に並び、しばらくしてからタクシーに乗り込んだ。若い男性ドライバーに、サンジェルマン・デ・プレのホテル名を告げる。歴史の重さが感じられるパリの町並みを眺め、住人や旅人らしい人たちをしばしウォッチングしていると、あっという間にAホテルに到着した。

このホテルで2泊する予定。アクセスがいいことと、パン屋やカフェが多く、治安もいいというので決めたのだった。ツインの部屋に案内されたが、しばらくして別の部屋だと言われ、日本人の男女のカップルとチェンジすることになった。彼らは「随分待たされた」と話していたが。私たちもまたダブルベッドでは困るのでチェンジしてほしい、と抗議するが、うまく伝わらない。フロントの若い女性は、英語があまりうまくないし、私たちとて同じどっこいどっこいといったところなのだ。午後8時まで待ってほしい、と言われ、取りあえずその部屋に荷物を置き、街を散策することにした。

午後4時ごろだったと思う。サンジェルマン・デ・プレ界隈を歩く。ホテルのすぐ側にはパン屋があり、惣菜屋もあった。大通りまで行くと、ギフトショップや、本屋、有名デザイナーのショップも目白押しなのだ。ウインドウ・ディスプレイをチラチラと見ながら歩いた。カフェで軽食を採ることにして、のんびりとした時を過ごした。

8時にホテルに戻り、フロントに行くと、もう少し待ってくれと言われた。ほどなくして小柄で小太りの中年男性が現れた。彼は言った。
「あなた方が予約した部屋は、全部あのタイプなのだ」
「ツインで申し込んだのに、どうしてか」
と私も負けないで言ったが、ホテルのパンフレットを見せられ、まくしたてられ押し切られてしまった。しかたなく、母と娘がダブルベッドで寝ることになった。乳幼児の添い寝以来のことなので、なんとなく変といえば変だし、別にどうってことないといえばないし…。キングサイズではあっても、寝返りを打つと安眠できないと思ったが、疲労もあってか、ベッドに入ると二人ともぐっすり眠ってしまった。

翌朝の事だった。貴重品を金庫に入れて、出かけることにした。
「お母さん、チップどうする?」
「チップねえ~。どうしようか」
「調べててわかったんだけど、サービスが気に入ったらチップをあげるらしいよ。サービスが悪いと思ったらいいみたい」
「ふ~ん、そうの。ここはいいサービスだとは思えないよね~」
「そうだねえ~。でもいくらくらいがいいんだろう」
二人で考えるがらちがあかない。

旅のガイドブック「地球を歩く」のパリ編はイギリスに忘れてきてしまった。全然目を通してなく、新品だったのに…。そんな訳でチップのことも確かなことは分からない状況だった。なんだかんだと話しているうちに、別の話題になり、街へ繰り出すことになってしまった。結局のところ、チップは置かなかった。忘れてしまったのだった。(後に問題が発生するとは夢にも思わず…)


サンジェルマンにあるPAULで朝食を採った。パリの人たちは、列を作ってパンを買っていく。店内カフェで、コーヒーを飲みながら食べていく人も多い。私たちも食べることにした。店員さんが忙しそうに立ち働いている。美味しかったし、感じが良かったので、チップは置くことに。さりげなく周りの人たちを観察し、同じようにした。そのあと、デパートやスーパー、そして事前に調べておいた老舗のパン屋で人気のクッキーを土産に買い込み、味を知るためにバゲットやハードパンやクロワッサンなどしこたま買い込んだ。そして、有名なカフェ、マーゴでティータイム。さりげないサービスで気配りがあり、居心地が良かった。チップもさりげなく置いた。

ホテルに戻り、部屋に入ると、
「何かが違う~」
よくよく部屋を見渡して気付いた。ベッドメーキングがきちんとしてないのだ。シーツもピロケースも交換してない感じ?ほっとする暇もない。問題が発生!極めつけ―トイレの水が止まらないのだ!どうして??朝まではなんとも無かったのに…。
「これじゃ、水の音が耳障りで眠れないじゃないよお~」
「隣の部屋にも聞こえそうじゃない?迷惑かけちゃうよね」
フロントに言ったほうがいいかと思ったが、その前に自分でなおせないかといろいろいじってはみたものの、私にはさっぱり分からない。
「私がやってみるよ」
頼もしい娘の声。しばらくして、
「お母さん、水止まったよ!」
さすが、わが娘。
「止まった?良かったねえ~」
「チップ忘れてたから…そのせい?」

そんなことがあり、その夜は、前もってチップを用意しておいた。(サービス悪いのだから、いいのかも知れないが、とも思ったものの)。2日分のチップに、小梅ちゃん(あめ玉)と折り鶴を添えて。勿論お礼の言葉も書き添えた。担当の人が同じだといいね、と話しながら…。

労働賃金が安いところでは、チップ収入が大きな意味を持つ、という話をなにかの本で読んだことを思い出した。給料より、チップの方が多い場合もあるらしいのだ。今回の旅で、「本当にそんなことがあるんだなあ~」と実感させられた。





コメント (6)
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