風を紡いで

旅の記録と料理、暮らしの中で感じた事などを綴っています。自然の恵みに感謝しながら…。

パリのタクシー・ドライバー

2005年12月15日 | 2005年仏サンジェルマン デ プレ
パリに二泊した。いよいよ帰国という旅の最終日の早朝。かなり早く目覚めた私は、ベッドから抜け出した。窓の外を見ると、パリの街が真っ白に雪化粧しているではないか。嬉しい驚きだった。どうりで冷え込むと思った。

腕時計を見る。午前四時だった。今日は、サンジェルマン・デ・プレにあるホテル(一応三つ星)から、エアーフランスのリムジンバスでパリ・シャルル・ドゴール空港に行く事になっていた。ロンドン経由(機内泊)の飛行機で帰国することに。
ホテルを午前八時に出れば、タクシーでエッフェル塔近くのバス停まで行けるはずだった。例のフロント係の中年男性に確認しておいた。彼は、電話すればタクシーはすぐ来るから大丈夫と、言っていたし余裕のはずだったのだが…。

すでに、荷造りも済ませてあるし、テレビでも見ていようとスイッチを入れる。娘はぐっすり眠っていて、テレビの音にもまったく反応しない。映画を上映していたので、それを見る。終わると音楽番組、そして子供番組に切り替えた。腕時計を見ると六時半。まだ時間はたっぷりある、とのんびりテレビを楽しんでいた。何気なく、チャンネルを換えてみると、画面にはニュースの映像が流れ…。

その時、私はとんでもない間違いに気付いて、唖然となった。ほんの数秒だったと思うが…。

「ええ~??七時半???嘘でしょう~??!!」
私は慌てた。娘をたたき起こし、
「起きて!!七時半よ~!!!三十分もないよ!急いで仕度して!!八時にはタクシーに乗らないと間に合わないよ!!」
「ええ??どうして???まだ六時半だよ」
自分の時計を見て彼女が言った。一時間の時差!時計を合わせるのをすっかり忘れていたのだった。二人とも。

娘は大急ぎで着替えを済ませた。私たちは十分後にあわててフロントに降りて行き、すぐタクシーを呼んでくれるよう頼んだ。タクシーを待つ間に、チェックアウトを済ませた。ほどなくして、タクシーがホテルの前に止まった。タクシー・ドライバーは大柄な黒人男性だった。私たちはタクシーに乗り込み、エアーフランスのリムジンバスの乗り場まで急いで行ってほしい旨を告げた。バスの発車時刻を伝えると、運転手はなれたもので、朝の大通りは混み合うので、さけて別ルートで行くから、と言うのだった。

遠回りをしているような感じがしないでもなく、少し不安もよぎったものの、ここのところは信じてまかせるしかない。彼はプロのタクシー・ドライバーなのだから…。二、三十分は走っただろうか。遠くエッフェル塔が見えてきた。リムジンの側で車掌らしき人の姿が確認できたが、今にもバスに乗り込み発車しそうな雰囲気なのだ。ちょっとの差で行ってしまうかも知れない、そう思うとドキドキしてきた。

キキー!タクシーが止まる。私は降りる前からおおよそのタクシー代金を手に握っていた。チップを加えた運賃の計算に戸惑う私を見て、彼は私の手のひらから紙幣を取り上げた!多めのチップを渡そうと考えていた私は、一瞬きょとんとする。すると、彼はすばやくお釣りを返してくれるのだった。その律儀さに私たちは感動してしまった!!!お礼を言ってタクシーから降り、大急ぎでバスへと突進する。

ハアハアと荒い息を吐きながら、バスに乗り込んだ。席に落ち着いたが、なかなか発車しない。すぐ発車すると思い込んでいたので、拍子抜けする始末。十分ほどしてから、やっとエンジンがかかり走り出す。現金なもので、
「慌てることなかったかな?」
なんて、考える有様に、我ながら恥ずかしくなる。

「ホテルは朝食付だったのに、二日間とも食べられなかったよ」
「本当!コーヒーさえ飲めなかったとはねえ~」
「鉄道での出入国で、時差を忘れるなんてね。大ボケだね」
「飛行機だと、その意識があるけど、地続きだとさっぱりないよねえ~」
お粗末な時差ボケ騒動だった。
コメント (4)
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