古代中国の地理書を見ると、鳥類の中に一羽でオスとメスとの機能を兼ね備えて自家受精する種類がいたらしい。「山海経」にこうある。
「鳥がいる。その状は烏のごとく、五彩にして赤い文あり、名は<きよ>、これは自家生殖する」(「山海経・第三・北山経・P.50」平凡社ライブラリー)
<きよ>の<き>は奇に鳥、<よ>は余に鳥と書く。いずれの文字ももはやパソコンでは出てこない。不便な世の中になったものだ。
また同じく鳥類とされている「象蛇(ぞうだ)」。
「鳥がいる、その状は雌(めす)の雉の如く、五彩でもって文(あや)どり、自家生殖する、名は象蛇(ぞうだ)」(「山海経・第三・北山経・P.60」平凡社ライブラリー)
鳥の名前になぜ「象」と「蛇」とが当てられたのかわからない。ちなみに蛇の中に象を食べる蛇がいたらしい。「巴蛇」。
「巴蛇は象を食い、三年にしてその骨を排出した」(「山海経・第十・海内南経・P.135」平凡社ライブラリー)
本当だろうか。「楚辞」にこうある。
「靈蛇呑象 厥大何如
(書き下し)靈蛇(れいだ)の象(ぞう)を呑(の)む、厥(そ)の大(だい)は何如(いかん)
(現代語訳)神秘な蛇が象を呑むというが、その蛇の大きさはどれほどなのか」(「楚辞・天問 第三・P.195」岩波文庫)
ところで、南方熊楠と柳田國男との間で最後まで決着が付かなかった「山人(さんじん)論争」。一連の議論の中で熊楠はただ単に似ているからといって「山男(やまおとこ)」とはまったく異なるものの一つに関し、「山海経」に言及しつつ「狒々(ひひ)」を上げている。
「《青(衍文)》獣がいる、人面、名は猩猩(しょうじょう)。西南に巴国がある。大皞は咸(かん)鳥を生み、咸鳥は乗釐(じょうり)を生み、乗釐は後照を生んだ。後照は巴の人の先祖である。国がある、名は流黄辛(りゅうこうしん)氏、この国の広さ方三百里、塵(ほこり)が立つにぎわいである。巴遂(はすい)山あり、澠(じょう)水がここより流れる。また朱巻(しゅけん)の国あり。黒い蛇あり、青い首、象を食う。南方に贛(かん)巨の国の人あり、人面で長い〔臂〕唇、黒い身(からだ)で毛あり、踵(かがと)は反(そ)りかえり、人の笑うを見るとかれもまた笑う」(「山海経・第十八・海内経・P.174」平凡社ライブラリー)
一方、柳田は「狒々(ひひ)」について「妖怪談義」の中で論じている。「狒々」がただちに妖怪だというわけではなく、古くから「狒々」と見なされてきた類種は、「猴神(さるがみ)」伝説に至るまで実は恐ろしく広い範囲に渡って収集された目撃談や噂話までを含んでおり、そう一概に単純化して結論付けるわけにはいかないという意味を込めて述べている。
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「鳥がいる。その状は烏のごとく、五彩にして赤い文あり、名は<きよ>、これは自家生殖する」(「山海経・第三・北山経・P.50」平凡社ライブラリー)
<きよ>の<き>は奇に鳥、<よ>は余に鳥と書く。いずれの文字ももはやパソコンでは出てこない。不便な世の中になったものだ。
また同じく鳥類とされている「象蛇(ぞうだ)」。
「鳥がいる、その状は雌(めす)の雉の如く、五彩でもって文(あや)どり、自家生殖する、名は象蛇(ぞうだ)」(「山海経・第三・北山経・P.60」平凡社ライブラリー)
鳥の名前になぜ「象」と「蛇」とが当てられたのかわからない。ちなみに蛇の中に象を食べる蛇がいたらしい。「巴蛇」。
「巴蛇は象を食い、三年にしてその骨を排出した」(「山海経・第十・海内南経・P.135」平凡社ライブラリー)
本当だろうか。「楚辞」にこうある。
「靈蛇呑象 厥大何如
(書き下し)靈蛇(れいだ)の象(ぞう)を呑(の)む、厥(そ)の大(だい)は何如(いかん)
(現代語訳)神秘な蛇が象を呑むというが、その蛇の大きさはどれほどなのか」(「楚辞・天問 第三・P.195」岩波文庫)
ところで、南方熊楠と柳田國男との間で最後まで決着が付かなかった「山人(さんじん)論争」。一連の議論の中で熊楠はただ単に似ているからといって「山男(やまおとこ)」とはまったく異なるものの一つに関し、「山海経」に言及しつつ「狒々(ひひ)」を上げている。
「《青(衍文)》獣がいる、人面、名は猩猩(しょうじょう)。西南に巴国がある。大皞は咸(かん)鳥を生み、咸鳥は乗釐(じょうり)を生み、乗釐は後照を生んだ。後照は巴の人の先祖である。国がある、名は流黄辛(りゅうこうしん)氏、この国の広さ方三百里、塵(ほこり)が立つにぎわいである。巴遂(はすい)山あり、澠(じょう)水がここより流れる。また朱巻(しゅけん)の国あり。黒い蛇あり、青い首、象を食う。南方に贛(かん)巨の国の人あり、人面で長い〔臂〕唇、黒い身(からだ)で毛あり、踵(かがと)は反(そ)りかえり、人の笑うを見るとかれもまた笑う」(「山海経・第十八・海内経・P.174」平凡社ライブラリー)
一方、柳田は「狒々(ひひ)」について「妖怪談義」の中で論じている。「狒々」がただちに妖怪だというわけではなく、古くから「狒々」と見なされてきた類種は、「猴神(さるがみ)」伝説に至るまで実は恐ろしく広い範囲に渡って収集された目撃談や噂話までを含んでおり、そう一概に単純化して結論付けるわけにはいかないという意味を込めて述べている。
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