ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

百人一首我流解釈 41~45

2023-06-06 09:52:55 | Poem

41

恋すてふ わが名はまだき立ちにけり

人しれずこそ 思ひそめしか  (壬生忠見 生没年不詳)

 

わたくしが恋をしているという噂がすでにたっているのですね。

密かに思いはじめたばかりですのに……。

 

42

契りきな かたみに袖をしぼりつつ

末の松山 浪こさじとは  (清原元輔 九〇八~九九〇)

 

「末の松山」は海岸近くにあっても、波が越えることはないと言われています。

お互いに涙を流しながら、約束しましたよね。心変わりはないと……。

 

43

逢ひみての のちの心にくらぶれば

昔はものを思はざりけり   (権中納言敦忠  九〇六~九四三)

 

こういうのって、今の時代と変わらないのね。契りを結べば熱が冷める??

 

44

逢うことの 絶えてしなくばなかなかに

人をも身をも 恨みざらまし (清原元輔 九〇八~九九〇)

 

「恋心」って、時代が変わっても何も変わっていないのね。

それを「歌」にすることで、さらに熱を帯びていくようです。

 

45

あはれともいふべき人は 思ほえで

身のいたづらに なりぬべきかな (謙徳公 九二四~九七二)

 

私をなぐさめて下さる人いないようです。虚しく死んでしまうのでしょう。

(私的つぶやき・・・・・・恋歌ばかりで疲れました。)


百人一首我流解釈 34~40

2023-06-04 15:54:05 | Poem

 

34

誰もかも知る人にせむ 高砂の

松も昔の 友ならなくに (藤原興風・ふじわらおきかぜ・生没年不詳)

 

興風は、歌の学門書を書いた「藤原浜成」の曾孫である。貫之や躬恒(みつね)などと

才能を競い合った。さらに琴の名手でもあった。

 

35

人はいさ 心も知らず ふるさとは

花ぞ昔の 香ににほいける (紀貫之 八六八~九四五)

 

「花」はここでは「梅の花」を指す。その花に会いに来たのだが、迎えた者がつれない。

(多分、女性)。けれども花は変わりなく美しい。その花のように迎えてほしい。

 

36

夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを

雲のいづこに 月やどるらむ (清原深養父・きよはらふかやぶ・生没年不詳)

 

作者は、清少納言の曾祖父にあたる。官位は上がらず、貫之と親しかった。

晩年は、京都の北に「補陀落寺」という寺を建てて住んでいたらしい。

夏の夜は短く、月は出る間もなく、雲のどこかに隠れているのだろうか?

 

37

白露に風の吹きしく秋の野は

つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける (文屋朝康・生没年不詳)

 

「つらぬきとめぬ玉」とは、「糸や紐で繋いでいない玉」と言う意味。

「ばらばらになった玉」ということらしい。白露の様子をこのように表現したか‼

 

38

忘らるる身をば思はず誓ひてし

人の命の惜しくもあるかな (右近・生没年不詳)

 

これは、恐い歌でありますね。多くの貴公子との恋に生きたけれど、誓いを守れぬ恋人に「ばちがあたりますよ。」とおっしゃっています。

 

39

浅茅生の小野のしのはらしのぶれど

あまりてなどか 人の恋しき  (参議 等 880~951)

 

最初の「5・7」は「忍ぶ」を呼び出すための助詞である。切ないな……。

 

40

しのぶれど色に出でにけりわが恋は

ものや思ふと 人の問ふまで   (平兼盛 ?~990)

 

それにしても「恋歌」が多いなぁ。兼盛は官位は低かったが、平安時代を代表する歌人である。


百人一首我流解釈 31~33

2023-06-04 11:01:35 | Poem

31

朝ぼらけ 有明の月と みるまでに

吉野の里に 降れる白雪 (坂上是則・さかのうえのこれのり・生没年不詳)

 

明け方に、月の光が地上を照らしているのかと思うほどに、吉野の里は一面の雪である。

 

32

山川(やまがは)に 風のかけたる しがらみは

流れもあへぬ 紅葉なりけり

(春道列樹・はるみちのつらき・生年未詳・遠喜二〇年・九二〇年没)

 

「しがらみ」とは、水の流れをせき止めるために、川に杭を打ち込んだもの。

農業用水を引く設備であるが、ここでは人ではなく、風が仕掛けたと言っている。

おそらく、思いをせき止められたのではないか? 柵。これを「しがらみ」と読むらしい。

 

33

久方の光のどけき春の日にしず心なく花の散るらむ 

(紀友則・九〇五年頃没・享年六〇歳くらい。)

 

紀友則は、貫之の従兄である。古今集の撰者の棟梁であった。

しかし古今集の完成をみないまま他界している。


百人一首我流解釈 28~30

2023-06-01 00:30:21 | Poem

28

山里は 冬ぞさびしさまさりける

人目も草もかれぬと思へば (源宗千朝臣・みなもとむねゆきあそん(?~939)

 

山里の暮らしは寂しいものです。冬の寂しさはひときわ辛いものです。

訪問して下さる方もいない。草木も枯れます。

 

29

心あてに 折らばや折らむ 初霜の

置きまどはせる 白菊の花  (凡河内躬恒 おおしこうちのみつね 生没年末詳)

 

初霜がおりた庭では、どこに白菊の花があるのか?

当てずっぽうに折ってみようか。

 

30

有明の つれなく見えし 別れより

あかつきばかり 憂きものはなし (壬生忠岑・みぶのただみね)

 

別れの朝の辛さも知らず、有明の月が空にかかる。

その朝以来、あかつきほど辛いものはない。


百人一首我流解釈 25~27

2023-05-27 21:42:35 | Poem

25

名にし負(を)はば 逢(相)坂山のさねかづら

人にしられで くるよしもがな  (三条右大臣 873~932)

 

「さねかづら」の「ね」は「寝」。「かづら」はからみつくもの。

かなり濃厚な表現になっている。逢うことの難しさが歌われている。

 

26

小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば

今ひとたびの みゆき待たなむ  (貞信公 880~949)

 

「みゆき」は漢字で書くと「行幸」つまり天皇のお出かけ。

その日まで、小倉山のもみじよ、散らずにいておくれ。

 

27

みかの原 わきて流るる いづみ川 

いつ見きとてか 恋しかるらむ   (中納言兼輔 877~933)

 

記憶に遠い方を何度も思い出そうとしているのは何故?

「恋しい」という言葉すら遠いものと思えてならないのに

湧き出る泉のように胸の奥で音を立てています。