世界は雲の姿にも似て
すばやく変化しようとも、
すべての完成された存在は
最古のものに帰属する。
変化と変遷を超え
さらに悠遠に さらに自由に
なおもあなたの始原の歌は生き続ける、
竪琴をもつ神よ。
苦悩は知られていない。
愛は学び取られていない、
そして死において私たちを遠ざけるものは
ヴェールを除かれていない。
ただ平原のうえを流れる歌のみが
聖化し そして賛美する。
(田口義弘訳)
人間の内面は取替えのきかないものばかりだ。どのように時代が変化し、文明のみが進化や進歩を遂げたとしても。「愛は学び取られていない」というわけだ。そして美しい音楽や言葉は、必ず「最古のものに帰属する」ということでしょう。リルケの詩のなかにこのような1節があります。
失うというのも私たちのものであり、忘却でさえ
変容における持続の国でなおも形姿をもっているからだ
このソネット全体が、「変容における持続の国」ではないか?そして「オルフォイス」への賞賛は続くのだった。これはすでに「神」への呼びかけに近い。