ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

オペラ・オルフェウス

2010-03-02 21:27:54 | Music
    

 NHKハイビジョンにて「華麗なるメトロポリタン・オペラ(5夜連続)」という企画のもと、その第1回目が3月1日、午後10時45分~翌0時27分に放映されたオペラが『オルフェウス:クリストフ・ヴィリバルト・グルック作』でした。 日本で歴史上初めて上演されたオペラがこのグルックの「オルフェウスとエウリディーチェ」だったそうです。勿論今回観たものは2009年のものですから、指揮、演出、出演者も当然異なるものではありますが。

指揮:ジェイムズ・レヴァイン 
演出・振付:マーク・モリス
出演:ステファニー・ブライス(オルフェウス)
   ダニエル・ドゥ・ニース(エウリディーチェ)
上映時間:1時間45分



 ギリシャ神話の「オルフェウスとエウリディーチェ」では、オルフェウスは毒蛇にかまれて死んだ妻エウリディーチェを捜し求めて、ついに妻を取り戻すために冥界に入った。彼の弾く竪琴の音色に、ステュクスの渡し守カローンも、冥界の番犬ケルベロスもおとなしくなり、冥界の人々も聴き入った。そしてオルフェウスは冥界の王ハーデースとその妃ペルセポネに会い、竪琴を奏でてエウリュディケーの生還を願い出る。ペルセポネに説得されたハーデースは「冥界から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはならない。」という条件を付け、2人を冥界から出すことにする。目の前に光が見え、冥界からあと少しで抜け出すというところで、不安に駆られたオルフェウスは後ろを振り向いて、それが最後の妻との別れとなった。

 ・・・・・・という神話しか知らなかったわたくしめは、このオペラにびっくりしました。アメリカの代表的振付家であるマーク・モリスによる振付と演出になると、これは悲劇ではなく、ハッピーエンドの物語となりました。ここでは「冥界の王ハーデース」よりも「アモール」が重要な役割を果たし、一旦冥界に戻されたエウリディーチェを再び生還させて、2人を冥界から出る手助けをします。そして「愛」を歌い上げるというのが最後の第3幕でした。


 この2人の下界への過程について「田口義弘訳」の「オルフォイスのソネット・第一部・26」の注解のなかに、このグルックオペラの特性が書かれていました。そこでは、妻の「エウリディーチェ」を冥界から地上に連れ帰る時に「オルフェイウス」が約束させられたことは「ふりかえってはいけない。」というのが神話の通常の筋書きです。しかしグルックのオペラのなかでは、妻は「何故、ふりかえって私の姿を見ようとしないのか?」と執拗にたずねるシーンがあると書かれていました。これによって劇的緊張が高まる効果を出しているとも。このオペラを観る限りにおいては、その先のハッピーエンドが待っていたとは・・・。

 このリルケのソネット集のなかでは「オルフォイスのソネット・第二部・13」だけに、「つねにエウリディーチェのなかに死んで在れ」という1行がありますが。


 さらにしかも衣装はすべて現代のものとなり、その代わりとも言うように冥界の人物の衣装に工夫を凝らしているのは、逆転劇のようでありました。オペラとしては時間も短いものでした。ここに冥界の人物たちの詳細があります。お暇な方はどーぞ。楽しいですよん♪

 「エウリディーチェ」の衣装だけは、この絵画を参考にしたのか?大変似ています。

   

 オルフェウスを演じたのはメゾソプラノの女性です。男装した女性をオペラの世界では「ズボン役」と言います。「ズボン役」は以前は「カストラート=17~18世紀のイタリアで盛行した男性去勢歌手。音域は広く女性の音域まで出せる。)」という方々の役割ではありましたが、現代では「ズボン役」に変わりました。おまけの話ですが、「フィガロの結婚」のケルビーノ、「ばらの騎士」のオクタヴィアンなども「ズボン役」です。


 《おまけ》
 このオペラのなかでオルフェウスが持っていた楽器は竪琴ではなくてギターでした。なんだかこの絵画も思い出しました。

   

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