エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

癒しの匂い  あばら家暮らしのエリクソン

2015-10-15 03:09:40 | ヴァン・デ・コーク教授の「トラウマからの

 

 男も中年になれば、臭いのことを気にする方も多いのかもしれませんね。「加齢臭」などと言う、昔はなかった言葉も盛んに言われたりしますしね。でも、あんまり気にしすぎるのもどうでしょう。日本人は基本、そんなに臭いませんからね。それはいろんな民族の人と関われば、自ずから分かります。黒人で、カカオのような臭いの人がいるんですね。そうすると、教室位の、割と広い部屋でも、その人のカカオのような、甘い感じですが、強烈な臭いがすぐに充満しますから、匂い慣れしてない日本人は、ずくにでも逃げ出したい、と感じる人が多いかもしれませんからね。

 先ほど、ヴァン・デ・コーク教授のThe body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『虐待されたら、意識できなくても、身体は覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』の第13章 Healing from trauma : Owing your self 「トラウマから癒されること :本当の自分を生きること」を翻訳して、愛着障害の治療法を紹介していると、言ってましたよね。でも、愛着障害のことを猛烈な勢いで本にしている岡田尊司(たかし)さんは、そういう治療法が愛着障害の子どもたちを癒すとは言いません。もっと手前のことが物を言うという訳ですね。私は、それは、匂いだ、と感じています。

 その、岡田尊司さん。エリック・エリクソンのことに触れている本が何冊かあるんですね。多くの著名人の心の傾向を分析するのが得意な岡田尊司さんですから、エリック・エリクソンに関心を持つのも、ある意味当然です。エリクソンの詳しい伝記、Lawrence J, Friedman, 1999, Identity 's architect : a biograpy of Erik Erikson,  Harverd University Press. も当然読んでいることでしょう。岡田尊司さんの『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』(光文社新書 540)pp.250-254に、エリクソンのことが出てきます。エリクソンは、英語も満足に話せないのに、アメリカに移住して、ボストン郊外のあばら家に住んでいました。アメリカでは精神分析は医者がするものとされていましたから、大学も出てないエリクソンは、なかなか精神分析家と認められませんでした。でも、他の人がお手上げだったケースを、次から次に治療していきました。岡田尊司さんは、その中でも難しかったであろう、失感情語症のマーサ・テイラーのケースに触れています。原著ではpp.114-119に、エリクソンが、このマーサ・テイラーを、精神分析のやり方としては、型破りなやり方で治療したことが出てきます。岡田尊司さんは、エリクソンがマーサを治療できたのは、エリクソンがマーサと同じ愛着障害に悩み、それを克服していたからだ、といいます。私も同感ですね。なぜなら、エリクソン自身も、「私の仕事においては、宗教的・政治的指導者、すなわち、マルティン・ルターとモハンダス・ガンディー(1958; 1969)の人生と、2人の人生の中で抜き差しならなかったいくつかの時期を、研究することだけです。この2人は、自分がうまく折り合いがつけられずに困っていたことを、同じ時代を生きた人々の人生に役立てるために、みんなが分かる言葉にして見せた人たちです。」(自分の悩みを、人様のために役立てる生き方)と言うくらいですからね。岡田尊司さんは、「エリクソンが彼女に与えた、無防備とも言える親密さ、あけすけさが、マーサが抱えていた愛着不安をやわらげ、リラッスクして自分の問題を語り、それを受け入れるのを容易にしたのではなかろうか。」(p.252 -253)と言っていますね。

 私は、臨床が上手な人には、独特の匂いがすると、つねづね感じてます。ですから、河合隼雄先生や伊藤良子先生等の有名人じゃなくても、上手な人は、独特の匂いを感じますもんね。クライアントや子どもは、私どもよりもはるかに、その匂いに敏感です。ですから、その匂いのする人をすぐに見分けます。その匂いは、自分の心理的課題を乗り越えて、悦んで生きてることから、自ずから立ち現れる匂いです。

 

 

 

 癒しの匂いは、プリメーラの匂いみたい

 

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