エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

聖書の言葉 : イエスが見る εἶδεν 不思議

2017-01-19 02:20:33 | 聖書の言葉から

 

 

 

 
酒と薬には、飲まれてはなりません
   人を大事にすることで学ぶべきものはない、との誤解   人を大事にする時でさえ、交換して得することしか考えない。愚か者。 p4の第2パラグラフ。  ......
 

 『新約聖書』にある、4つのイエス・キリストの物語の中で、一番古いものは、「マルコによる福音書」と呼ばれるものです。イエスが、伝道を始めて最初にしたのが、12人の弟子を集める、ということでした。その最初が、2人の兄弟を弟子にすることでした。それが、シモンとアンデレの兄弟です。第1章16-20節にあります。前田護郎先生の翻訳では次の通りです。

16ガリラヤ湖畔を行かれると、シモンとその兄弟アンデレが湖で網を打っているのが、お目にとまった。彼らは漁夫であった。17イエスはいわれた、「さあ、ついて来なさい。あなた方を人間の漁夫にしてあげよう」と。18彼らはただちに網を捨てて従った。19少し進むとゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとが、これも舟で網を整えているのがお目にとまった。20そこですぐお招きになると、父ゼベダイを雇人(やといにん)ごとに船に残して、彼らはイエスの後について行った

 16節に「お目にとまった」とありますね。これは、イエスのしたことなので「敬語」に翻訳していますが、「見る」ということですね。原文では、 εἶδεν エイデン の直説法、三人称単数 είδον エイドン が使われています。

 イエスが最初にしたことは何でしょうか?

 それは、シモンとアンデレ兄弟に近づいて、2人を見る、ということでしたでしょ。これが全ての始まりでした。シモンとアンデレは漁師さんでした。当時は蔑まれた職業でした。イエスは、目の前で漁をしている2人を見て、単にやっていることを見ただけではありません。魚を取っている2人を見て、将来2人がキリスト教を伝える姿を見通していたのです。それは、イエスが「さあ、ついて来なさい。あなた方を人間の漁夫にしてあげよう」と言っていることからも分かりますでしょ。そして、イエスが見通したことが、現実に、出来事になりましたでしょ。蔑まれた職業である漁師の仕事を見たら、「卑しいことをしている」とは見ても、まさか「キリスト教を伝える仕事をするようになる」と見通せた人は、イエスの他には誰もいなかったことに注意する必要がありますね。シモンとアンデレでさえ、自分らがそうなるなどとは、夢にも思っていなかった…

 こんな「透視」、「未来予測」ができるのは、イエス・キリストだからだ、と思われる人も少なくないでしょうね。でも、毎日毎日、サイコセラピーをしていますでしょ。同じような経験に恵まれることがありますよ。発達トラウマ障害(DTD)のために、うつ病になったり、摂食障害になったり、解離が酷かったり…。その子ども達が、元気に生きている姿を垣間見せたり、「光」の下で生きたいと願っていることを示したり、生きる目標を見つけている自分を思い描いたり…

 そういう時に、思い出す訳ですよ。人間の心、良心は、共に見通すこと、  συνείδησις シュネーデシスだということを。そして、このσυνείδησιςこそが、 συν=「共に」+είδον=「見通す」ことであることも。イエスが弟子に近づいて、未来を見通して、それを言葉にしてハッキリと示したことには、サイコセラピー、いいえ、真の人格教育のひな形がある、と私は考えます。 

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