親子であっても、社会的立場に上下の差がある場合、パレーシアを用いるためには、パレーシアの権利が必要になるのでしたね。
もう一つのパレーシアの関わりは、クリュテムネトスとエレクトラの間に描かれています。クリュテムネトスはエレクトラがものをはっきり言っても、裁かないと約束しました。それはちょうど、『バッカス」の中で、ペンテウスが召使にとった態度と同じです。しかし、『エレクトラ』ではパレーシアの関わりは、壊されました。クリュテムネトスがそれを壊したのではありません。それを壊したのはエレクトラ自身です。エレクトラは、母親に、自由に話しても裁かない、という約束を取り付けましたし、クリュテムネトスもそのような約束をしました。しかも、クリュテムネトス自身、自分が告白したことで、裁かれることになるとも知らずに。というのも、数分後に、クリュテムネトスは子供たち、オレステスとエレクトラとに殺されてしまいます。このようにして、パレーシアの関わりは壊されます。パレーシアの特権が当然と思われた人の演技が過ぎることもなく、パレーシアの権利を当然視した人が、その人によって、有利な立場で、パレーシアを求めることになりました。パレーシアの関わりは、クリュテムネトスにとっては、破壊的な罠になったのでした。
パレーシアの関わりが罠に使われることもあるのですね。
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