エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

インターメッツォ:「弱い時にこそ強い」を深層心理学的に言うと…

2016-09-20 06:40:23 | 間奏曲

 

 

 
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  『新約聖書』のパウロの手紙の中に「弱い時にこそ強い」(第Ⅱコリント 12:10)と言う言葉があります。ふつうは、そんな馬鹿な話はない、と退けられますね。お金がある、地位がある、権力がある…などと言う「強い」時にこそ、「強い」のであって、金もない、地位もない、権力もない…などと言う「弱い」時に、「強い」はずがない! それが世の通念というやつでしょう。でもね、深層心理学では、真逆です。

 それを教えてくれている1つが、ユング著作第9巻の1(Collected Works of C.G. Jung, Volume 9 (Part 1): Archetypes and the Collective Unconscious)『諸元型(いくつかの最初の型)と集合的無意識』pp.3-41、Archetypes of the Collective Unconscious 「集合的無意識の諸元型」です。

 

 

 

 

 

 自分自身に出逢うことは、非常に不愉快なことなので、出来るだけ避けて通りたいものなんですね。それは、否定的なことは全て、人のせいにしていれば、できますからね。でもね、自分自身の影を見ることが出来て、自分の影について知ることが出来れば、課題は少しは解決したことになりますよ。…しかし、この課題は、恐ろしいほど困難なんですね。なぜならば、この課題は全人格を賭けなくてはならないばかりではなくて、「自分はなんてチッポケなんだ」ということを思い知らされるだけじゃなくて、同時に、「誰も助けてくれないし、自分では手も足も出ない」ということも、思い知らされるからなんです。…「誰も助けてくれないし、自分ではどうしようもない」、と認めることによって、人は、関係に誠実で、ウソとゴマカシがなくて、しかも、現実に従うことができます。…すると、助けになる考えや直感に気付けるようになれますし、以前には気付かなかった考えに気付くこともできます

 

 

 

 

 

 すぐに人のせいにしたり、嘲ったりする人に限って、忙しそうにして、用もないのに、ダラダラと仕事をしている場合がありますね。「忙」の漢字が教えてくれているように、自分自身の心に向き合う時間を、無意識裡になくしていっている訳です。自分の影に向き合うのが嫌なもんだから、都合の悪いことは全部、人のせいにして、自分は内省する時間もないほど、忙しいフリをしている…

 でも、それだと結局、その人は生きているのに死んでいるのと同じです

 昨日のユングの引用インターメッツォ: 人生の目的  :「何でこんな目に合わなくっちゃいけないの?」の中に、隠されている輝く目的と叡智にも通じますが、自分の影という弱さと向き合っていく時にこそ、助けになる考えや直感に気付けるようになれますし、以前には気付かなかった考えに気付くこともできます、ということが生じます。

 それを知るだけでも、少しは役立つでしょう。でも、きてみたら、「本当のことだ」と心から実感することができますから、涙ができるほど、嬉しくなりますよ。

 

 

 

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