2010年2月19日、高知地方裁判所へ「穴内保育所休止処分取消」の訴訟をおこしました。原告は穴内保育所の保護者9名です。「存続を求める会」など地域住民も原告になることはできないかと弁護士に相談したのですが、今回は支援活動に全力をあげることになりました。
画像:高知地方裁判所前で原告団と支援者
画像:記者会見場
以下の青文字の文書「安芸市穴内保育所休止処分取消訴訟(主張の骨子)」は穴内保育所休止処分取消訴訟弁護団が記者会見場で配布したものを許可を頂いて転載・引用させていただいたものです。
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安芸市穴内保育所休止処分取消訴訟(主張の骨子)
平成22年2月19日
穴内保育所休止処分取消訴訟弁護団
団長 弁護士 谷脇 和仁
弁護士 稲田 知江子
同 河端 武史
同 皿田 幸憲
同 高宮 大輔
同 津田 久敬
同 中島 香織
事務局長 弁護士 岸 敦子
弁護士 鎌田 毅
第1 訴訟に至る経緯
H16 安芸市が市内の保育所の統廃合及び民営化の方針を
検討。
同年から穴内地区の保護者らに対する同方針の説明
を開始。
H19.10.5 穴内保育所を廃止とする旨の条例改正案を市議会で
否決。
H20 安芸市、入所希望者が継続して20名以上の入所児童
がいれば穴内保育所を継続していく方針の説明を
開始。
H20.11.28 保護者会による21名の入所希望者名簿の提出を受
け、安芸市において戸別訪問を行い入所意思を
確認したところ、継続して20名以上の入所が見込
まれることから、平成21年度の継続を決定。
ただし、平成21年4月における入所児童数は17名
となった。
H21.7.16 安芸市は平成21年度における第一回目の協議におい
て、今後も継続して20名の入所見込みがないことか
ら、平成22年度の休止することを説明。
以来、保護者や住民らは数回安芸市に対して穴内保育所
の存続を求めた協議や、署名・請願活動等の様々な活動
を行ったが、市の方針は変更されず(平成21年11月に
安芸市議会へ提出した署名は5598通。22年1月末現在の
安芸市の総人口は20008名)。
H21.10.25 安芸市、保護者や住民に対する説明会において、
穴内保育所の休止方針を説明。2日後に配布された市
広報において休止を決定したことを掲載。
H21.11.18 穴内保育所を平成22年4月1日から平成23年3月31日
まで休止する旨の告示。
H21.12.22 市議会において、穴内保育所の存続を求める請願の
可決及び市長に対する問責決議可決。
H21.9.14、H21.12.5及びH22.1.16
原告ら保護者、入所希望者22名(9月14日は21名)の
入所申込書を安芸市へ提出ないし送付したが、
安芸市は穴内保育所の休止が決定していることを理由
に受領拒否ないし内容を検討せずに返却
(行政手続法7条違反)。
H22.2.19 本件訴訟等提起。
第2 保育所休止処分の違法性
当弁護団としては、以下の点において、安芸市が今回行った穴内保育所を休止する旨の処分は安芸市に許された裁量を逸脱するものであり、違法であると考えます。
1 本件休止処分が実質上条例の可決が必要な廃止処分であること
保育所は、通所する児童やその保護者だけでなく地域に
とっても重要な公共施設なので、保育所を廃止するためには
地方自治法第244条の2第1項の規定により、市議会による
議決が必要とされています。
本件休止処分は、
①安芸市が平成16年から継続して検討してきたものは、
穴内保育所の廃止であること。
②廃止の議案が否決された後で提案されたものであること。
③安芸市は「3~4年間の入所児童数の推移を見て再開を検討
する」と言っている(安芸市平成21年11月広報)にもかかわ
らず、本件の処分は1年間に限定されていること。
④保育所は、一旦休止してしまえば入所希望者が増加する見
込みがほとんどないにもかかわらず、安芸市は「入所児童数が
継続的に20名を上回るようになれば再開を検討」するとの説明
を行っている(安芸市平成21年11月広報)こと。
などから、実質的には廃止処分であり、市議会による議決が必
要と考えられます。
にもかかわらず、本件では市議会での議決を経ておらず、
地方自治法244条の1第1項の規定の適用を免れるために行った
ものとして、違法であると考えます。
2 住民らの理解を十分に得るための手続きを怠っていること
このように、安芸市による穴内保育所の休止処分が実質的に
廃止処分であるか、もしくは廃止に等しい処分であることから
すれば、安芸市は穴内保育所の休所にあたって保護者等から
十分に説明および意見聴取の機会を設けるべきでした(児童
福祉法33条の4、平成6年9月27日・厚生省令第62号2条1項、
2項、8条および9条)。
しかし、平成22年度に穴内保育所を継続するかどうかについ
て、保護者等に対して意見を聴取する機会を与えていません。
説明も不十分です。
平成21年7月16日以降に開催された安芸市と保護者らとの
協議では、安芸市が穴内保育所の休止を前提とした、赤野保育
所へ統合した際の手続きに関する協議を求めるものに終始して
おり、保護者や地域住民に対して意見聴取や十分な説明の
機会が設けられていません。
また、添付平成21年7月13日付「穴内保育所の今後について」
記載のとおり、安芸市が保護者らに説明会の開催日時及び
場所を通知するのは説明会開催日のわずか3、4日前で、
開催告知文には上述の厚生省令に定める「予定される処置又
は保育の実施等の解除の内容及び理由」の記載がないばかり
か、「説明等の期日において意見を述べ、又は説明等の期日
への出頭に代えて意見書が提出できる旨」の教示もされていま
せん。
以上のように、本件において安芸市が行った穴内保育所を
休止する処分は保護者らに対する意見聴取の機会を行ったもの
とはいえず、この点においても違法であると考えます。
第3 執行停止の申し立てについて
保育所休止処分取消訴訟を提起したとしても、判決がでるま
では、平成22年4月1日から穴内保育所を休止する旨の処分の
効力が存続しており、児童らが穴内保育所に通所することは
不可能です。
また、一般的な保育所の統廃合においては、数年をかけて
保護者や地域住民と協議を行ったうえ、6月や9月の議会で次
年度からの廃止条例を可決し、統廃合を行う際に児童や保護者
に過度の負担がかからないよう、問題点を十分に検討して
次年度からの保育の開始に備えます。
ところが、安芸市が保護者らとの協議を開始したのは本年
1月からで、現在までで行われた協議は2回のみで、書面で決定
内容が伝えられているのは通所バスの運行スケジュールだけ
です。
以下のような事項については十分な検討がなされていると
は言えず、このまま4月1日を迎えれば、児童や保護者に対し
て重大な損害が発生するおそれがあります。
●児童を通所バスに乗せる保護者と保育士との連絡方法
(服薬が必要な場合や毎日の児童の様子などを把握できな
いおそれ)
●4月は保育士にとって人事異動や、新たに受け持つことにな
る個々の児童の状態の把握を行わなければならないなど、
通常でも多忙な時期ですが、一度に14名もの新規入所児童
を受け入れることになるので、十分に個々の児童の状態を
把握して保育を行うことができるのか不安
●赤野保育所への通所時の安全確保対策(荷物の運搬など、
様々な作業を行う中で児童の乗降車時に誰が、どのように
児童の安全を確保していくか、という対策)についての検討
とその結果についての説明がほとんどされていないこと
●バスは主に国道55号線を通るため、毎日の通所中の事故や
渋滞による遅刻が懸念されること→保護者にとっても、児童
を送る時にバスが時間どおり来ない場合、子どもを車の行き
かう場所に放置するわけにいかないので、仕事に遅刻してし
まう可能性がある。
●車が行き交う場所で10名以上の子どもの乗降車をすることの
危険回避策が検討されていないこと
そこで、判決が出されるまでの間休止処分の効力等を停止する
旨の決定(処分の執行停止。行政事件訴訟法第25条第2項)を
求め、児童らが平成22年4月1日以降も穴内保育所へ通所でき
るよう、取消訴訟に加えて、休止処分の執行停止の申し立て
を行いました。
*******************************************************
大きく、強力な弁護団が結成されました。
訴訟での主張の骨子をみると、改めて安芸市のあまりの無茶に驚きます。議会制民主主義のいろはも知らないのではないかと不安になります。
市議会の良識をもつ議員もあまりのことに怒りをとおりこしてあきれているようですが、3月議会で頑張ってもらいたいです。
画像:高知地方裁判所前で原告団と支援者
画像:記者会見場
以下の青文字の文書「安芸市穴内保育所休止処分取消訴訟(主張の骨子)」は穴内保育所休止処分取消訴訟弁護団が記者会見場で配布したものを許可を頂いて転載・引用させていただいたものです。
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安芸市穴内保育所休止処分取消訴訟(主張の骨子)
平成22年2月19日
穴内保育所休止処分取消訴訟弁護団
団長 弁護士 谷脇 和仁
弁護士 稲田 知江子
同 河端 武史
同 皿田 幸憲
同 高宮 大輔
同 津田 久敬
同 中島 香織
事務局長 弁護士 岸 敦子
弁護士 鎌田 毅
第1 訴訟に至る経緯
H16 安芸市が市内の保育所の統廃合及び民営化の方針を
検討。
同年から穴内地区の保護者らに対する同方針の説明
を開始。
H19.10.5 穴内保育所を廃止とする旨の条例改正案を市議会で
否決。
H20 安芸市、入所希望者が継続して20名以上の入所児童
がいれば穴内保育所を継続していく方針の説明を
開始。
H20.11.28 保護者会による21名の入所希望者名簿の提出を受
け、安芸市において戸別訪問を行い入所意思を
確認したところ、継続して20名以上の入所が見込
まれることから、平成21年度の継続を決定。
ただし、平成21年4月における入所児童数は17名
となった。
H21.7.16 安芸市は平成21年度における第一回目の協議におい
て、今後も継続して20名の入所見込みがないことか
ら、平成22年度の休止することを説明。
以来、保護者や住民らは数回安芸市に対して穴内保育所
の存続を求めた協議や、署名・請願活動等の様々な活動
を行ったが、市の方針は変更されず(平成21年11月に
安芸市議会へ提出した署名は5598通。22年1月末現在の
安芸市の総人口は20008名)。
H21.10.25 安芸市、保護者や住民に対する説明会において、
穴内保育所の休止方針を説明。2日後に配布された市
広報において休止を決定したことを掲載。
H21.11.18 穴内保育所を平成22年4月1日から平成23年3月31日
まで休止する旨の告示。
H21.12.22 市議会において、穴内保育所の存続を求める請願の
可決及び市長に対する問責決議可決。
H21.9.14、H21.12.5及びH22.1.16
原告ら保護者、入所希望者22名(9月14日は21名)の
入所申込書を安芸市へ提出ないし送付したが、
安芸市は穴内保育所の休止が決定していることを理由
に受領拒否ないし内容を検討せずに返却
(行政手続法7条違反)。
H22.2.19 本件訴訟等提起。
第2 保育所休止処分の違法性
当弁護団としては、以下の点において、安芸市が今回行った穴内保育所を休止する旨の処分は安芸市に許された裁量を逸脱するものであり、違法であると考えます。
1 本件休止処分が実質上条例の可決が必要な廃止処分であること
保育所は、通所する児童やその保護者だけでなく地域に
とっても重要な公共施設なので、保育所を廃止するためには
地方自治法第244条の2第1項の規定により、市議会による
議決が必要とされています。
本件休止処分は、
①安芸市が平成16年から継続して検討してきたものは、
穴内保育所の廃止であること。
②廃止の議案が否決された後で提案されたものであること。
③安芸市は「3~4年間の入所児童数の推移を見て再開を検討
する」と言っている(安芸市平成21年11月広報)にもかかわ
らず、本件の処分は1年間に限定されていること。
④保育所は、一旦休止してしまえば入所希望者が増加する見
込みがほとんどないにもかかわらず、安芸市は「入所児童数が
継続的に20名を上回るようになれば再開を検討」するとの説明
を行っている(安芸市平成21年11月広報)こと。
などから、実質的には廃止処分であり、市議会による議決が必
要と考えられます。
にもかかわらず、本件では市議会での議決を経ておらず、
地方自治法244条の1第1項の規定の適用を免れるために行った
ものとして、違法であると考えます。
2 住民らの理解を十分に得るための手続きを怠っていること
このように、安芸市による穴内保育所の休止処分が実質的に
廃止処分であるか、もしくは廃止に等しい処分であることから
すれば、安芸市は穴内保育所の休所にあたって保護者等から
十分に説明および意見聴取の機会を設けるべきでした(児童
福祉法33条の4、平成6年9月27日・厚生省令第62号2条1項、
2項、8条および9条)。
しかし、平成22年度に穴内保育所を継続するかどうかについ
て、保護者等に対して意見を聴取する機会を与えていません。
説明も不十分です。
平成21年7月16日以降に開催された安芸市と保護者らとの
協議では、安芸市が穴内保育所の休止を前提とした、赤野保育
所へ統合した際の手続きに関する協議を求めるものに終始して
おり、保護者や地域住民に対して意見聴取や十分な説明の
機会が設けられていません。
また、添付平成21年7月13日付「穴内保育所の今後について」
記載のとおり、安芸市が保護者らに説明会の開催日時及び
場所を通知するのは説明会開催日のわずか3、4日前で、
開催告知文には上述の厚生省令に定める「予定される処置又
は保育の実施等の解除の内容及び理由」の記載がないばかり
か、「説明等の期日において意見を述べ、又は説明等の期日
への出頭に代えて意見書が提出できる旨」の教示もされていま
せん。
以上のように、本件において安芸市が行った穴内保育所を
休止する処分は保護者らに対する意見聴取の機会を行ったもの
とはいえず、この点においても違法であると考えます。
第3 執行停止の申し立てについて
保育所休止処分取消訴訟を提起したとしても、判決がでるま
では、平成22年4月1日から穴内保育所を休止する旨の処分の
効力が存続しており、児童らが穴内保育所に通所することは
不可能です。
また、一般的な保育所の統廃合においては、数年をかけて
保護者や地域住民と協議を行ったうえ、6月や9月の議会で次
年度からの廃止条例を可決し、統廃合を行う際に児童や保護者
に過度の負担がかからないよう、問題点を十分に検討して
次年度からの保育の開始に備えます。
ところが、安芸市が保護者らとの協議を開始したのは本年
1月からで、現在までで行われた協議は2回のみで、書面で決定
内容が伝えられているのは通所バスの運行スケジュールだけ
です。
以下のような事項については十分な検討がなされていると
は言えず、このまま4月1日を迎えれば、児童や保護者に対し
て重大な損害が発生するおそれがあります。
●児童を通所バスに乗せる保護者と保育士との連絡方法
(服薬が必要な場合や毎日の児童の様子などを把握できな
いおそれ)
●4月は保育士にとって人事異動や、新たに受け持つことにな
る個々の児童の状態の把握を行わなければならないなど、
通常でも多忙な時期ですが、一度に14名もの新規入所児童
を受け入れることになるので、十分に個々の児童の状態を
把握して保育を行うことができるのか不安
●赤野保育所への通所時の安全確保対策(荷物の運搬など、
様々な作業を行う中で児童の乗降車時に誰が、どのように
児童の安全を確保していくか、という対策)についての検討
とその結果についての説明がほとんどされていないこと
●バスは主に国道55号線を通るため、毎日の通所中の事故や
渋滞による遅刻が懸念されること→保護者にとっても、児童
を送る時にバスが時間どおり来ない場合、子どもを車の行き
かう場所に放置するわけにいかないので、仕事に遅刻してし
まう可能性がある。
●車が行き交う場所で10名以上の子どもの乗降車をすることの
危険回避策が検討されていないこと
そこで、判決が出されるまでの間休止処分の効力等を停止する
旨の決定(処分の執行停止。行政事件訴訟法第25条第2項)を
求め、児童らが平成22年4月1日以降も穴内保育所へ通所でき
るよう、取消訴訟に加えて、休止処分の執行停止の申し立て
を行いました。
*******************************************************
大きく、強力な弁護団が結成されました。
訴訟での主張の骨子をみると、改めて安芸市のあまりの無茶に驚きます。議会制民主主義のいろはも知らないのではないかと不安になります。
市議会の良識をもつ議員もあまりのことに怒りをとおりこしてあきれているようですが、3月議会で頑張ってもらいたいです。