竹下直彦さんのプロフィールと講演要旨
プロフィール
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名前:竹下直彦(たけした なおひこ)
所属:独立行政法人水産大学校 生物生産学科 資源増殖学講座 准教授
生年月日:1963年10月12日
出生地:佐賀県
研究に関連する自己紹介:西日本に生息する淡水カジカ科魚類やサケ科魚類の生態研究を行っている.特に回遊や成長などに興味を持ち,潜水観察や標識放流法を用いたフィールド調査をメインに,飼育実験を併用して研究を続けている.
著書:
「川と海を回遊する淡水魚─生活史と進化─」1994.東海大学出版会
「福岡県レッドデータブック2001,福岡県の希少野生生物」2001.福岡県環境部自然環境課
「希少淡水魚類の現在と未来─積極的保全のシナリオ─」2005.信山社
「魚類環境生態学入門─渓流から深海まで、魚と棲みかのインターアクション─」2006.東海大学出版会
「干潟の海に生きる魚たち─有明海の豊かさと危機─」2009.東海大学出版会
「カジカ類の世界─適応と進化─」2011(印刷中).東海大学出版会
いずれも共著
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講演要旨
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宮崎県のコアマモ場におけるアカメ若齢魚の出現と成長
竹下直彦(水産大学校生物生産学科)
アカメLates japonicusは,環境省レッドデータブックで絶滅危惧IB類(EN)にランクされる日本固有種で,主に高知県と宮崎県の河口域から沿岸域に生息する.宮崎県北部に位置する河川の河口から約2㎞上流に位置するコアマモ場において,1998年5月~2003年3月の毎月,大潮の干潮時にアカメ若齢魚の生態調査を行った.地曳網(曳網面積約40m2,目合2㎜)を用いて採集したアカメの全長,体長,体重を測定し,原則として全長50㎜以上の個体には背鰭棘条・軟条切除による個体識別標識を施し,年齢査定のために胸鰭内側の鱗を約5枚採取した後,採集地点に放流した.
標識個体数は1998年群83個体,1999年群18個体,2001年群52個体,2002年群202個体で,再捕個体数は順に47個体(57%),8個体(44%),16個体(46%),127個体(63%)であり,最高9回再捕された.これら標識-再捕個体のデータを基に,季節別に日間成長率(全長)および日間増重率を計算した.24℃以上の高水温期には,アカメ当歳魚の成長は極めて速く,約1ヵ月で全長50-80㎜,1.5-7gのものが85-145㎜,6.0-40gに達し,日間成長率は1.4-2.6%,日間増重率は3.8-5.8%であった.一方16℃を下回る低水温期には,ほとんど成長せず,日間成長率,日間増重率ともにマイナスの値を示す個体は小型のものに多かった.これらの結果より,アカメ当歳魚は,毎年8-10月に本調査地点のコアマモ場に全長14-140㎜で出現し,翌年の8-11月には160-280㎜に成長した後,そこを離れると考えられた.
さらに,飼育実験によりアカメ若齢魚の摂餌と成長に及ぼす水温と塩分の影響を調べ,上述のフィールドにおける夏季の河川進入とその高成長,冬季の採集個体数の減少と低成長について考察する.
プロフィール
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名前:竹下直彦(たけした なおひこ)
所属:独立行政法人水産大学校 生物生産学科 資源増殖学講座 准教授
生年月日:1963年10月12日
出生地:佐賀県
研究に関連する自己紹介:西日本に生息する淡水カジカ科魚類やサケ科魚類の生態研究を行っている.特に回遊や成長などに興味を持ち,潜水観察や標識放流法を用いたフィールド調査をメインに,飼育実験を併用して研究を続けている.
著書:
「川と海を回遊する淡水魚─生活史と進化─」1994.東海大学出版会
「福岡県レッドデータブック2001,福岡県の希少野生生物」2001.福岡県環境部自然環境課
「希少淡水魚類の現在と未来─積極的保全のシナリオ─」2005.信山社
「魚類環境生態学入門─渓流から深海まで、魚と棲みかのインターアクション─」2006.東海大学出版会
「干潟の海に生きる魚たち─有明海の豊かさと危機─」2009.東海大学出版会
「カジカ類の世界─適応と進化─」2011(印刷中).東海大学出版会
いずれも共著
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講演要旨
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宮崎県のコアマモ場におけるアカメ若齢魚の出現と成長
竹下直彦(水産大学校生物生産学科)
アカメLates japonicusは,環境省レッドデータブックで絶滅危惧IB類(EN)にランクされる日本固有種で,主に高知県と宮崎県の河口域から沿岸域に生息する.宮崎県北部に位置する河川の河口から約2㎞上流に位置するコアマモ場において,1998年5月~2003年3月の毎月,大潮の干潮時にアカメ若齢魚の生態調査を行った.地曳網(曳網面積約40m2,目合2㎜)を用いて採集したアカメの全長,体長,体重を測定し,原則として全長50㎜以上の個体には背鰭棘条・軟条切除による個体識別標識を施し,年齢査定のために胸鰭内側の鱗を約5枚採取した後,採集地点に放流した.
標識個体数は1998年群83個体,1999年群18個体,2001年群52個体,2002年群202個体で,再捕個体数は順に47個体(57%),8個体(44%),16個体(46%),127個体(63%)であり,最高9回再捕された.これら標識-再捕個体のデータを基に,季節別に日間成長率(全長)および日間増重率を計算した.24℃以上の高水温期には,アカメ当歳魚の成長は極めて速く,約1ヵ月で全長50-80㎜,1.5-7gのものが85-145㎜,6.0-40gに達し,日間成長率は1.4-2.6%,日間増重率は3.8-5.8%であった.一方16℃を下回る低水温期には,ほとんど成長せず,日間成長率,日間増重率ともにマイナスの値を示す個体は小型のものに多かった.これらの結果より,アカメ当歳魚は,毎年8-10月に本調査地点のコアマモ場に全長14-140㎜で出現し,翌年の8-11月には160-280㎜に成長した後,そこを離れると考えられた.
さらに,飼育実験によりアカメ若齢魚の摂餌と成長に及ぼす水温と塩分の影響を調べ,上述のフィールドにおける夏季の河川進入とその高成長,冬季の採集個体数の減少と低成長について考察する.