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■ 伝正寺温泉 「桜井館」 〔 Pick Up温泉 〕



伝正寺温泉 「桜井館」
住 所 :茨城県桜川市真壁町桜井1074-26 (旧 真壁郡真壁町)
電 話 :0296-55-2131
時 間 :10:00~16:00 / 不定休
料 金 :500円
オフィシャルHP
紹介ページ (MAPPLE 観光ガイド)
紹介ページ (るるぶ.com)

芥川龍之介や室生犀星も投宿している慶応三年創業のこの老舗宿は、筑波山の北側にひっそりとある鄙びの佇まい。
「伝正寺」というのは、目の前にある曹洞宗の古刹に由来するもの。
この寺は「どっこい真壁の伝正寺」という言葉で有名だそうで、ちょっと興味が湧いたのでWebで調べてみましたが、意味も由来も曖昧模糊としています。
これは伝正寺由来の漢詩
「一上山弄風光 帰来応天目道場 放身覚了無一物 咄是真壁平四郎」
によるものとされています。

真壁の殿様時幹の家来、真壁平四郎は、雪の日に時幹の草履を胸元で暖めていたにもかかわらず、暖かい草履を履いた時幹は、「わが草履を尻の下に敷いていた」と平四郎を責め立てました。
平四郎は真壁を離れ、一念発起し宋に渡って出家後、修行を積んで帰国、亀山天皇から「法身国師」の号を送られ松島瑞巌寺を開くほどの高僧となりました。
高僧となった平四郎が真壁に帰ると、時幹はかつての非礼を詫び、照明寺を建立寄進してこれがのちに伝正寺となりました。
”咄是”というのは、”えっ!”という感嘆詞らしく、”この偉いお坊様があの平四郎?!”というほどの意味ではないかとされています。

本来は「どっこい真壁の平四郎」だったものが、語呂がいいためか、いつしか「どっこい真壁の伝正寺」に変化したようなのです。
『その手は桑名の焼き蛤』や『恐れ入谷の鬼子母神』などとおなじく、江戸っ子がしゃれっ気まじりでつかったのかもしれません。


【写真 上(左)】 玄関
【写真 下(右)】 玄関の酒樽

場所は県道41つくば益子線と県道7石岡下館線が交わる「真壁署前」交差点から県道41を北上して2つ目の「伝正寺入口」信号を右折し、道なりに1.5kmほど走って山道にさしかかった右手。(正面が伝正寺)
ゆったりとした玄関は、老舗宿としての歴史を感じさせます。
玄関には真壁の銘酒、「公明」「花の井」「正気」の酒樽が積まれていました。
ものごしやわらかな女将さんはとても親切で、湯上がりにお茶を出してくださいました。


【写真 上(左)】 浴場入口
【写真 下(右)】 女湯

かなり年季の入った館内、階段を降りていくと男女別の浴室があります。
男湯は、石造り3人の浴槽がひとつ。
これはHPによると「日本三大名石の真壁の御影石のお風呂」だそうです。
青味がかって斑のはっきりとした浴槽石は、たしかにふつうのみかげ石とは違う質感がありました。
(真壁石(真壁小目石/常陸小御影)は関東を代表する花崗岩石材で、この宿のまわりにも石材工場がいくつかあります。)


【写真 上(左)】 蓋がしてあります
【写真 下(右)】 真壁石の浴槽

窓はないですが、天井は高く壁に筑波連峰の絵図があって、なんとなく年季の入った銭湯のような雰囲気が秀。
浴槽には保温用の木のフタがしてあり、自分で外して入ります。


【写真 上(左)】 筑波山
【写真 下(右)】 洗い場

浴槽は溜め湯式で、熱湯と水の塩ビパイプのコックで投入量を加減でき、しばらく投入しているとオーバーフローが始まります。
槽内注排湯はないので非循環でしょう。
カラン4、シャワー・シャンプー・ドライヤーあり。祝日11時で独占でした。


【写真 上(左)】 男湯の浴槽
【写真 下(右)】 カラン

お湯は無色透明無味無臭ですが、やさしい湯ざわりがあってあたたまります。
総鉄イオン=35mg/kgとかなり濃い鉄泉のようですが、お湯からはなぜか鉄の気配は感じられず。でも、浴室のところどころは鉄分で赤く変色しています。
明治23年時点では5本の源泉があり、鉄分が少ないものもあるので(下記)、現在でも何本か使い回ししているのかも?


【写真 上(左)】 内湯
【写真 下(右)】 鉄分で変色した内床

このときはまだ青くて、ガシガシの鉄泉を期待していたので正直あまりインパクトは感じられませんでしたが、いま入るとなにか感じるものがあるような気もします。
昔日にタイムスリップしたような体験ができる貴重なお宿なので、「どっこい真壁の伝正寺」の語源辿りをかねて、再訪してみたい1湯です。

単純鉄(2)泉(炭酸水素塩型) 11.6℃、pH=6.1、5L/min自然湧出、成分総計=0.2739g/kg、Na^+=13mg/kg (18.60mval%)、Mg^2+=5.7 (15.40)、Ca^2+=9.2 (15.00)、総鉄イオン=35 (40.80)、Mn^2+=6.3、Cl^-=11 (10.20)、HCO_3^-=160 (86.18)、陽イオン計=70.89 (3.06mval)、陰イオン計=176.1 (3.04mval) <H7.1.19分析>

〔 参考:明治23年の鉱泉分析報告(=廊下に掲示)から抜粋 〕
第一号泉/微黄色ニシテ弱アルカリ性の反應ヲ呈シ多量ノ鉄及ヒ炭酸塩ヲ含有ス
第二号泉/白濁半透明ニシテ中性の反應ヲ呈シ鉄ノ痕跡ヲ認ム
第三号泉/梢ヤ白濁ヲ帯ヒ中性反應ヲ呈シ最モ多量ノ炭酸塩ヲ含有スルモ鉄ヲ存セス
第四号泉/透明無色ニシテ中性反應ヲ呈シ微量ノ炭酸塩ヲ含有スルモ鉄ヲ存セス
第五号泉/透明無色ニシテ多量ナル黒褐色ノ沈殿ヲ生シ炭酸塩及ヒ鉄ノ少量ヲ含有ス

〔 HP掲載 〕
掛け流しで循環式ではありません。

■ブランドグルメ
〔 真壁の清酒 〕
江戸時代、笠間藩の陣屋があり商業地として栄えた真壁は、良質の米と真壁石に代表される花崗岩層を通って湧き出る筑波山系の伏流水に恵まれ、酒どころとして知られてきました。
「花の井」(西岡本店)、「公明」(村井醸造)、 「正気」(軽部酒造店)が主要銘柄で、茨城県で開発された酒造好適米『ひたち錦』をつかった酒も醸されています。

〔 2010/11/01内容補強のうえ再UP (2003/11/04レポ (2003/11入湯)) 〕

E140.7.15.337N36.16.12.292
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