オヤジが突如、成瀬巳喜男監督の映画『浮雲』について熱く語りだしたので、ふとフィンランドのアキ・カウリスマキ監督の“負け犬三部作”のひとつ『過去のない男』について柄にもなく書きたくなった。
ケーブル映画チャンネルでたまたま観ていて、今まで観たこともない不可思議な感覚になんかハマってしまった作品なんです。
薄寂れたヘルシンキの貧民街で淡々とストーリーが展開していくのですが、「感情どこいったんやねん!」といいたくなるほど登場人物が無表情。
そして主人公をはじめ、とにかく口数が少ない。
この街の連中ときたら皆覇気がなく、無愛想なんだが、妙に人情味に溢れてるんだなこれが。
日本の田舎にもいそうやん。無愛想なんだが妙に親切なおばあちゃんとか。そういう素朴感がたまらんというか。
負け犬三部作つっても、ここに登場する主人公の男は暴漢にボコられ半殺しの目に遭い身ぐるみ剥ぎ取られて記憶喪失になるものの、全然負け犬なんかとちがいます。
負け犬どころか、どん底生活の中ちゃんと職探ししたり、彼女作ったり、なぜかバンドをプロデュースしたりします。
犬といえば有名な食人鬼の名前をつけられた犬コロがいい味だしてます。
恋愛シーンひとつにしても大げさでない微妙な演出の中から様々な心情が読み取れ、それがなんかクセになるという、本当に不思議な魅力を持った映画である。
要は、イケメンやらアイドルが出演しなくても、余命何ヶ月かの命でなくても、どっかの中心で愛を叫ばなくったって愛溢れる素晴らしい作品が作れるってことですよ。
「絶対泣きます!」とか宣伝してるCMの映画みたいな押し付けがましさは微塵もございません。
ヨーロッパの作品だからといってなにも映画マニア向けとか、堅苦しい内容とかでは全然なくて、寡黙でクスリとも笑わない主人公が、出くわす人々にサラリと言葉を交わし淡々と人生を立て直していく姿を見てる内に、自然とこの主人公の魅力に惹かれていっちまうんです。
救世軍(慈善活動団体)に仕事紹介してもらったクセに、余裕でサボりながらそのボランティアンのひとりをベタなやり方で口説くというこのおっさんのふてぶてしさもなんだか笑えてきます。
とにかく、この度の大不況で将来の展望が見えない今現在、とても心に沁み、なんだか可笑しくて、そして心温まる一本であるかと。
それと、やっぱ私は音楽のステキな映画に惹かれるのかもしれない。
『ピストルオペラ』とか『ダンサー・イン・ザ・ダーク』など、音楽が映画を生かし映画が音楽を生かすっていう、そういう作品。
とにかく救世軍おかかえバンドの演る曲がいちいち渋いんですよ。主人公が(雑用係の分際で)ロック色を取りいれてはどうかと助言してからはさらにカッコよくなる。
ここでは猿の惑星に出てきそうな容貌の女チーフまでもがステキな歌声の持ち主で、特にラストに彼女が披露するワルツナンバーは強烈な哀愁感が漂っている。
車内食堂のシーンでBGMにクレイジーケンバンドの「ハワイの夜」が流れるんですが、その時主人公が無表情で食ってるものがにぎり鮨であるところもさりげなくユニークである。
このアキ監督、実は小津安次郎や成瀬巳喜男監督などの日本映画ファンで、負け犬三部作のひとつ『浮き雲』は成瀬監督の『浮雲』のタイトルを拝借したものであるとのこと。
オススメ度:★★★★★
今日の1曲:『悪魔に追われて』/ Marko Haavisto & Poutahaukat
ケーブル映画チャンネルでたまたま観ていて、今まで観たこともない不可思議な感覚になんかハマってしまった作品なんです。
薄寂れたヘルシンキの貧民街で淡々とストーリーが展開していくのですが、「感情どこいったんやねん!」といいたくなるほど登場人物が無表情。
そして主人公をはじめ、とにかく口数が少ない。
この街の連中ときたら皆覇気がなく、無愛想なんだが、妙に人情味に溢れてるんだなこれが。
日本の田舎にもいそうやん。無愛想なんだが妙に親切なおばあちゃんとか。そういう素朴感がたまらんというか。
負け犬三部作つっても、ここに登場する主人公の男は暴漢にボコられ半殺しの目に遭い身ぐるみ剥ぎ取られて記憶喪失になるものの、全然負け犬なんかとちがいます。
負け犬どころか、どん底生活の中ちゃんと職探ししたり、彼女作ったり、なぜかバンドをプロデュースしたりします。
犬といえば有名な食人鬼の名前をつけられた犬コロがいい味だしてます。
恋愛シーンひとつにしても大げさでない微妙な演出の中から様々な心情が読み取れ、それがなんかクセになるという、本当に不思議な魅力を持った映画である。
要は、イケメンやらアイドルが出演しなくても、余命何ヶ月かの命でなくても、どっかの中心で愛を叫ばなくったって愛溢れる素晴らしい作品が作れるってことですよ。
「絶対泣きます!」とか宣伝してるCMの映画みたいな押し付けがましさは微塵もございません。
ヨーロッパの作品だからといってなにも映画マニア向けとか、堅苦しい内容とかでは全然なくて、寡黙でクスリとも笑わない主人公が、出くわす人々にサラリと言葉を交わし淡々と人生を立て直していく姿を見てる内に、自然とこの主人公の魅力に惹かれていっちまうんです。
救世軍(慈善活動団体)に仕事紹介してもらったクセに、余裕でサボりながらそのボランティアンのひとりをベタなやり方で口説くというこのおっさんのふてぶてしさもなんだか笑えてきます。
とにかく、この度の大不況で将来の展望が見えない今現在、とても心に沁み、なんだか可笑しくて、そして心温まる一本であるかと。
それと、やっぱ私は音楽のステキな映画に惹かれるのかもしれない。
『ピストルオペラ』とか『ダンサー・イン・ザ・ダーク』など、音楽が映画を生かし映画が音楽を生かすっていう、そういう作品。
とにかく救世軍おかかえバンドの演る曲がいちいち渋いんですよ。主人公が(雑用係の分際で)ロック色を取りいれてはどうかと助言してからはさらにカッコよくなる。
ここでは猿の惑星に出てきそうな容貌の女チーフまでもがステキな歌声の持ち主で、特にラストに彼女が披露するワルツナンバーは強烈な哀愁感が漂っている。
車内食堂のシーンでBGMにクレイジーケンバンドの「ハワイの夜」が流れるんですが、その時主人公が無表情で食ってるものがにぎり鮨であるところもさりげなくユニークである。
このアキ監督、実は小津安次郎や成瀬巳喜男監督などの日本映画ファンで、負け犬三部作のひとつ『浮き雲』は成瀬監督の『浮雲』のタイトルを拝借したものであるとのこと。
オススメ度:★★★★★
今日の1曲:『悪魔に追われて』/ Marko Haavisto & Poutahaukat