谷弘兒の著作『快傑蜃氣樓』にも、『薔薇と拳銃』と同様、数々の怪奇と幻想を極めた短編が収録されている。
本編を読み終わった次のページに、早くも私の不埒な好奇心を震わす、あの神性の御名を冠したタイトルが目に飛び込んできた!
『Nyogtha(ニョーグサ)』である。
やはりディープな作家さんですぜ、谷先生は・・・・
クトゥルー神話を題材にマンガを描く作家多しといえど、ありふれたニャルラトホテプやディープ・ワンズなどではなく、本格的に、そしてここまで幻想的に「Nyogtha」を描いたマンガ家など今までにいただろうか!?
とにかく目のつけどころがすごい!
”Nyogtha”とは・・・・・・・
日本の書物では「ニョグサ」、あるいは「ニョグタ」と表記されることが多く、個人的にはニョグ・ニョグ太などというキャラクターを妄想したりしてる。
”ニョグタ”は、黒い無定形の塊として顕れるツァトゥグァ、あるいはウボ=サスラが生んだグレート・オールド・ワン。
ヨスの大洞窟の地下深くか、あるいはアークツルスを回る暗黒世界に棲んでいるといわれている。
虹色に煌めく黒々としたゼラチン状の不定型の存在で、”ありえべからざるもの”と呼ばれることが多い。
かつて<古のもの>が、ニュージーランドの洞窟にこの存在を封じ込めたという説もある。
『エイボンの書』によると、かつて黒魔術師アヴァルザウントが、ハイパーボリア東部のウスノール地方にあるカモルバ修道院に隣接する墓地にある霊廟を密かに改築し、自れの死後、弟子たちに自れの屍体をその中の地下墓室に安置するよう手配した。
その地下墓室には、秘密の出入り口が設けられており、その出入り口の後ろには、巨大で悪意ある強力な存在が棲んでいる地球の下の暗い深淵へと下りていく階段があり、その存在は“グレート・オールド・ワン”と呼ばれている。
それらの陰気な深淵の悪意ある居住者の中に”ニョグタ”という恐ろしい神性がいて、アヴァルザウントは生前口に出せないような淫らな儀式を執り行ってよくこの神性を礼拝していた。
黒魔術の力により地下墓室の中で復活したアヴァルザウントは、ニョグタの手下である食屍鬼どもの助けをかりて地上に這い出し、自れの弟子どもやカモルバ修道院の修道士どもの生き血を貪ったという。
また、セイレムの街に存在するいわゆる「魔女地区」に関する報告では、”魔女の隠れ処”といわれる切妻屋根の部屋の最初の住人アビゲイル=プリンという魔女が、自れの死後、この部屋に訪れた者を、彼女が暗黒の洞穴から度々呼びだした不死の恐るべき存在の力を通じて、意識と物質を隔てる深淵に架橋すること、その者の精神にとり憑くことを可能ならしめるべく、魔術的な仕掛けを施した秘密の地下室にて待ち続けているという。
この魔女が呼びだした存在こそがニョグサだという。
”ニョグサ”については、ケスター文庫に所蔵されるアラブの狂詩人アブドゥル・アルハザードが著した恐るべき禁断の『ネクロノミコン』に、こう記されている。
「彼の存在(もの)、世には”闇に棲む者”、旧支配者の朋の一人にして”ニョグサ”と呼ばるるもの、若しくは「在りうべからざる存在」として知れり。
彼の存在、しかるるべき秘密の洞窟または、他の裂け目あらば、そこよりこの地表に呼びい出すを得ん。
あるいはシリアの地にて、あるいはレンのぬばたまの塔の下には、その姿を目にしたる魔導師あり。
韃靼はタルタンの峡谷より彼の存在荒ぶる姿を顕現し、偉大なる汗(フビライ・ハン)の幕舎のただ中に恐怖と破壊をもたらしたると。
そを鎮めんがためには、エジプト十字架、ヴァク=ヴィラの呪文、あるいはティクゥオン霊液において他の術なし。
これによりてのみ、彼の存在自れの棲み処たる隠秘の蒸気立ちこむ暗黒の洞穴に再び追い返さんを得んか?」
このセイレムの魔女に関しては、カーソン著の小説『狂える暗黒神』を参照されたし。
それにしても、谷弘兒の筆によるクトゥルー短編作『ニョーグサ』、いやはやこれも絶品である!
この時空を捻じ曲げるかのような歪んだ画力!!
そして、幻想怪奇極まりないこの狂った構成力・・・・
谷先生は、ニョグサを「底深き妄想の沼にひそむ存在」と定義し、このショゴスもどきな神性を、もう一段高めた存在にしている。
舞台は谷ワールドではお馴染み、ある種の人々が憎しみをこめて「墓場(ネクロポリス)」と呼ぶ幻想都市の一角、「極楽横丁」。
哀れな老婆が番をする石造りの房室の鉄格子の間から洩れ聞こえる悲痛の叫び・・・・・
記憶のはるか彼方から聞こえてくるあの悲痛な叫び・・・・
それを耳にしたとたん、男はその叫び声に苛まれ、意識を失い、悪夢的な異世界へと迷い込む・・・・
そしてついに!!ありえべからざるもの、“ニョーグサ”と対峙する。
その存在は、以前より男の脳ズイの中に棲んでいたのだろうか・・・・?
男の不埒な妄想から分泌される不浄なアドレナリンを培養として肥え太ってきたのか・・・
谷先生はダテに蛸の触手を描いているのではない。
そこにはちゃんとした恐るべき邪悪な精神プラグ的機能が備わっていたのだ。
ニョーグサの精神が男の中に流れ込み、その肉体をも支配していく!!
・・・ニョグサ・・・・クヤルナク・・・・
「助けて~~~!!金田ぁぁぁ~~~!!」って、これちょっと鉄雄入ってるな。
最後に、念のため、私が所蔵する禁断の文献に掲載されていたニョグサを暗黒の洞穴に追い返すための、“ヴァク=ヴィラの呪文”と思われる文言を以下に記し、万全の備えをひいておくこととしよう。
ヤ・ナ・カディシュトゥ、ニルグリ・・・ステルプスナクナァー ニョグサ・・・・
グルナク フレゲトール・・・・
アンタガッタ・ドッコサ・・・・ニョグサ・・・・ニョグドコサ・・・・
ただ、ニョグサが谷先生が描いたような、男の精神分裂による妄想から生まれた産物のような存在ならば、この呪文もさして助けにはならず、ドグラ・マグラな無限ループ地獄に陥るほかないのかもしれない。
The Thing That Shoud Not be・・・・・
本編を読み終わった次のページに、早くも私の不埒な好奇心を震わす、あの神性の御名を冠したタイトルが目に飛び込んできた!
『Nyogtha(ニョーグサ)』である。
やはりディープな作家さんですぜ、谷先生は・・・・
クトゥルー神話を題材にマンガを描く作家多しといえど、ありふれたニャルラトホテプやディープ・ワンズなどではなく、本格的に、そしてここまで幻想的に「Nyogtha」を描いたマンガ家など今までにいただろうか!?
とにかく目のつけどころがすごい!
”Nyogtha”とは・・・・・・・
日本の書物では「ニョグサ」、あるいは「ニョグタ」と表記されることが多く、個人的にはニョグ・ニョグ太などというキャラクターを妄想したりしてる。
”ニョグタ”は、黒い無定形の塊として顕れるツァトゥグァ、あるいはウボ=サスラが生んだグレート・オールド・ワン。
ヨスの大洞窟の地下深くか、あるいはアークツルスを回る暗黒世界に棲んでいるといわれている。
虹色に煌めく黒々としたゼラチン状の不定型の存在で、”ありえべからざるもの”と呼ばれることが多い。
かつて<古のもの>が、ニュージーランドの洞窟にこの存在を封じ込めたという説もある。
『エイボンの書』によると、かつて黒魔術師アヴァルザウントが、ハイパーボリア東部のウスノール地方にあるカモルバ修道院に隣接する墓地にある霊廟を密かに改築し、自れの死後、弟子たちに自れの屍体をその中の地下墓室に安置するよう手配した。
その地下墓室には、秘密の出入り口が設けられており、その出入り口の後ろには、巨大で悪意ある強力な存在が棲んでいる地球の下の暗い深淵へと下りていく階段があり、その存在は“グレート・オールド・ワン”と呼ばれている。
それらの陰気な深淵の悪意ある居住者の中に”ニョグタ”という恐ろしい神性がいて、アヴァルザウントは生前口に出せないような淫らな儀式を執り行ってよくこの神性を礼拝していた。
黒魔術の力により地下墓室の中で復活したアヴァルザウントは、ニョグタの手下である食屍鬼どもの助けをかりて地上に這い出し、自れの弟子どもやカモルバ修道院の修道士どもの生き血を貪ったという。
また、セイレムの街に存在するいわゆる「魔女地区」に関する報告では、”魔女の隠れ処”といわれる切妻屋根の部屋の最初の住人アビゲイル=プリンという魔女が、自れの死後、この部屋に訪れた者を、彼女が暗黒の洞穴から度々呼びだした不死の恐るべき存在の力を通じて、意識と物質を隔てる深淵に架橋すること、その者の精神にとり憑くことを可能ならしめるべく、魔術的な仕掛けを施した秘密の地下室にて待ち続けているという。
この魔女が呼びだした存在こそがニョグサだという。
”ニョグサ”については、ケスター文庫に所蔵されるアラブの狂詩人アブドゥル・アルハザードが著した恐るべき禁断の『ネクロノミコン』に、こう記されている。
「彼の存在(もの)、世には”闇に棲む者”、旧支配者の朋の一人にして”ニョグサ”と呼ばるるもの、若しくは「在りうべからざる存在」として知れり。
彼の存在、しかるるべき秘密の洞窟または、他の裂け目あらば、そこよりこの地表に呼びい出すを得ん。
あるいはシリアの地にて、あるいはレンのぬばたまの塔の下には、その姿を目にしたる魔導師あり。
韃靼はタルタンの峡谷より彼の存在荒ぶる姿を顕現し、偉大なる汗(フビライ・ハン)の幕舎のただ中に恐怖と破壊をもたらしたると。
そを鎮めんがためには、エジプト十字架、ヴァク=ヴィラの呪文、あるいはティクゥオン霊液において他の術なし。
これによりてのみ、彼の存在自れの棲み処たる隠秘の蒸気立ちこむ暗黒の洞穴に再び追い返さんを得んか?」
このセイレムの魔女に関しては、カーソン著の小説『狂える暗黒神』を参照されたし。
それにしても、谷弘兒の筆によるクトゥルー短編作『ニョーグサ』、いやはやこれも絶品である!
この時空を捻じ曲げるかのような歪んだ画力!!
そして、幻想怪奇極まりないこの狂った構成力・・・・
谷先生は、ニョグサを「底深き妄想の沼にひそむ存在」と定義し、このショゴスもどきな神性を、もう一段高めた存在にしている。
舞台は谷ワールドではお馴染み、ある種の人々が憎しみをこめて「墓場(ネクロポリス)」と呼ぶ幻想都市の一角、「極楽横丁」。
哀れな老婆が番をする石造りの房室の鉄格子の間から洩れ聞こえる悲痛の叫び・・・・・
記憶のはるか彼方から聞こえてくるあの悲痛な叫び・・・・
それを耳にしたとたん、男はその叫び声に苛まれ、意識を失い、悪夢的な異世界へと迷い込む・・・・
そしてついに!!ありえべからざるもの、“ニョーグサ”と対峙する。
その存在は、以前より男の脳ズイの中に棲んでいたのだろうか・・・・?
男の不埒な妄想から分泌される不浄なアドレナリンを培養として肥え太ってきたのか・・・
谷先生はダテに蛸の触手を描いているのではない。
そこにはちゃんとした恐るべき邪悪な精神プラグ的機能が備わっていたのだ。
ニョーグサの精神が男の中に流れ込み、その肉体をも支配していく!!
・・・ニョグサ・・・・クヤルナク・・・・
「助けて~~~!!金田ぁぁぁ~~~!!」って、これちょっと鉄雄入ってるな。
最後に、念のため、私が所蔵する禁断の文献に掲載されていたニョグサを暗黒の洞穴に追い返すための、“ヴァク=ヴィラの呪文”と思われる文言を以下に記し、万全の備えをひいておくこととしよう。
ヤ・ナ・カディシュトゥ、ニルグリ・・・ステルプスナクナァー ニョグサ・・・・
グルナク フレゲトール・・・・
アンタガッタ・ドッコサ・・・・ニョグサ・・・・ニョグドコサ・・・・
ただ、ニョグサが谷先生が描いたような、男の精神分裂による妄想から生まれた産物のような存在ならば、この呪文もさして助けにはならず、ドグラ・マグラな無限ループ地獄に陥るほかないのかもしれない。
The Thing That Shoud Not be・・・・・
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