AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

蠅兒と幻想

2019年03月03日 | ルルイエ異本
さて、最近ようやく存在を認知した谷弘兒のマンガについて、3回にも渡ってお送りしているワケでございますが・・・
まぁそれだけ彼の作品にハマったってことです。

で、今回は青林堂から刊行された『薔薇と拳銃』の単行本に収録されていたその他の5編もの短編マンガについて。
私が思うに、谷弘兒の画の真骨頂は、実は短編にあるのではないかと。

中編『薔薇と拳銃』では、諸星大二郎と漫☆画太郎を足したような、グチャグチャとしたコミカルでちょっと雑い画風だったのに対し、短編では実にアーティスティックで怪奇と幻想を極めた芸術作といっていいほどのクオリティを誇っている。

これだけの想像力と画力を備えていながら、諸星大二郎や丸尾末広ほどメジャーにならず、マイナー作家の地位に留まっているのが不思議でならない。
まぁたしかにポップさはないし、扱っているテーマが偏りすぎているかもしれないが。


谷氏は時折、『薔薇と拳銃』に出てくる主人公の名であった「陰溝蠅兒(かげみぞようじ)」を作者名として名乗ることもあったみたいだ。
そこがまた、彼をマイナーで謎めいた作家に仕立て上げたのかもしれない。
“蠅”というアイテムがとてもお気に入りのようだ。


『夜の蛇使いあるいは眼を盗む男』





『盲時計』の幻惑的な画も秀逸。これも最終的に眼を盗む話。





『怪人・蠅男/妖夢の愛液』は、本書収録の短編の中で一番の傑作といってよいだろう。





暗黒惑星”ヒィアーデス”に漂う無定形の精神体を主人公とした幻想物語で、もうこの設定だけでクトゥルー愛読者にはたまらない!




かの水木しげるもビッグコミック創刊号掲載の物語で扱っていた妖夢の花「アルラウネ」が中盤でからんでくる。
夢のなかで女体と怪植物とが絡み合う幻想的でエロティックな画は秀逸。

で、中編『薔薇と拳銃』に女城主あるいは魔女として登場したキルケが、この物語では心霊生理学者キルケ博士として再登場。
やはり彼女は時空を超越した存在なのかもしれない。





本書ラストを飾るのは、企画モノ『摩天楼の影』。
ずばりH.P.ラヴクラフト本人が登場する本格派クトゥルー神話もの。




これは、1987年に刊行された『別冊幻想文学2 クトゥルー倶楽部』に谷氏が新たに書き下ろしたもので、20世紀のニューヨークを舞台に、HPLとウィルバー・ウェイトリーとの邂逅を描いた、なんとも異界的で眩夢的なコズミックワールドが展開している。




HPLが、人間と異界からの存在との混血児ウィルバーの取引と導きにより、驚異的な宇宙恐怖の深淵を垣間見るに至るその有様が、谷氏の邪神がかった圧倒的な画力によって見事に描き出されている。




幻想の摩天楼から、非ユークリッド幾何学様式の石造都市へと・・・



水木しげるの『地底の足音』、諸星大二郎の『栞と紙魚子』シリーズ、魔夜峰央の『アスタロト外伝』、室山まゆみの『とびきり特選あさりちゃん(気分はホラー)』、田邊剛の『魔犬』・・・・etcと、様々なマンガ家によるクトゥルー神話ものの稀覯書を入手しては目を通してきたが、谷弘兒氏の怪奇性と幻想性溢れる異次元の画は、これまでで最高峰にあたるといっていい。

まさに理想的な形で、クトゥルー神話のヴィジュアル化を成し得た類稀なる作家であると。


先週、希少な『薔薇と拳銃』を発掘した日の夜、真っ先にニンギジッダ通信(Twitter)に谷氏の画を添付しつぶやいたところ、クトゥルー好きの方々からかなりの反響があって、その中には暗黒神話の権威であられる東雅夫先生(『クトゥルー神話辞典』等を編纂)などからも反応をいただいた。


谷氏の近年の仕事としては、外国人作家の幻想小説(いずれも絶版)の表紙絵を2、3作手掛けられたということが判っている。
もしまだ御存命で創作活動できる状態であるなら、関係者は是非もっとクトゥルー神話に関する画を谷氏に依頼してほしいと、切に願うばかりである。


ヨグ・ソトホース・・・・・

 


今日の1曲:『Beelzebub』/ Bill Bruford

コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 薔薇と拳銃 | トップ | ポリリズム »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
>ジョニーAさん (あましん)
2019-03-09 17:32:03
ご訪問ありがとうございます。

ヤフーブログが閉鎖なんですって!
まぁSNS普及の世の中、最近ブログなんてシコシコ書いてる人口の数は減少の一途をたどっている感もありますが。

私はツイッターやFBなどのSNSも一応登録してはいるんですが、どうも肌に合わなくて・・・
知り合いとかにフォローとか友達とかになられたら書けなくなることがいっぱい出てくるので・・・・
なのでそういう干渉の少ないブログが自分には一番合っている気がするのでずっと続けてます。
まぁ一種の自慰行為でもありますんで。

gooブログもいつか閉鎖されるんじゃないかとヒヤヒヤしておりますが、今んところ大丈夫なようです。
ただ、数年前メール機能が有料になってしまいました。

使い勝手は他のブログに比べるとあまりいい気はしないんですが、gooに慣れてしまって引っ越しとかやり方よく知らないんで面倒くさいのでずっと居座っております。
動画とか貼り付けるときは、goo専用の変換ツールを使わないと貼り付けられないという面倒くささはありますかねぇ。
まぁYOUTUBEに一発共有ボタン装備されてますんで。

そのくらいですかね。まぁgooの使い勝手は標準ってところです。

あまりお役に立てませんですみません。
引っ越しされましたら、またお知らせください。
返信する
失礼しました (ジョニーA)
2019-03-08 07:44:08
あましんさんはずっとヤフーブログだと勘違いしておりました。
失礼しました。上記コメは無視してください。
gooブログって、使いやすいですか~?
返信する
こんばんは (ジョニーA)
2019-03-08 07:35:22
マイブログに、トラバ&リンク&引用、貼らせてもらいました。
不都合あればお知らせください(削除いたします!)
ヤフブロ12月消滅について、どの時期に、どういう方法で、
どこに移すか、など参考にさせていただきたいので、
またたびたびお邪魔すると思います。
なにとぞ宜しく、お願いいたしまっす!
返信する

コメントを投稿

ルルイエ異本」カテゴリの最新記事