日本屈指のホラー小説作家、朝松健先生の『崑央の女王』というのを読みました。
実は朝松健先生の著書を読んだのは本書が初めてなんです。アクション・ホラー小説とかにはあんまり縁がなかったもので。
崑央と書いて“クン・ヤン”と読みます。お察しの通りクトゥルーものです。
“クン・ヤン”といえばアメリカ中西部の地底に広がる広大な地底世界であることは、プナトニック写本などでもほのめかされております。
この地底世界がまさか中国大陸の地底にまで及んでいたなどとは!!
物語の舞台は東京の大都市にそびえ立つハイテク・タワービルの上階。
そこに中国から夏王朝後期(今から4千年前の神話的古代王朝)~殷王朝初期時代の美少女のミイラが持ち込まれ、そのミイラのDNAを解析し、この太古の生命体の謎に迫るといった話なんですが、そのDNAの塩基配列が40億もの情報を持つひとつの魔道書に見立てるこの発想にまず唸らされました。DNAが一種のネクロノミコン的役割を果たしているんですね。
まぁ本書には明智呈三が著したとされる『秘教古伝』という日本版ネクロノミコンみたいな書物が出てきますが、現在熟読中の朝松クトゥルー作品『肝盗村鬼譚』でもこの書物が登場します。
それと支那の伝説的な古代王朝の神話などを持ち出して、旧支配者の存在をほのめかすところなんかが凄く斬新でしたね!
「人類が誕生する以前、この地球(アジア)は何種類かの知的異性物によって分割、統治されていた・・・
すなわち、龍族、祝融族、土狼族、風牛族、星辰族である。このうち、龍族の末裔が漢民族。土狼族の末裔が満州民族。風牛族の末裔がチベット民族となった。
火を象徴する祝融族は黄帝(旧神?)に反旗を翻したので、地底に封じ込まれた。この大空洞のことを崑央という。対して星辰族は天の彼方に放逐されたのだという。」
こういった神話的仮説を読むとクトゥルー信者なら血湧き肉踊っちゃいますよね~。
まぁ本書ではこの崑央伝説は満州民族(清朝)が発信元とされてますが、今の中国共産党が中華思想に取り入れかねない荒唐無稽な説ですな。
ただ終盤は岩明均の漫画『寄生獣』の世界。食欲失せそうなくらい肉塊飛び交うスプラッター・ホラー・アクション小説と化しておりました。まぁこれが本来の朝松健ワールドなんでしょうね~。
旧日本軍をナチスばりの徹底した絶対悪に仕立てた自虐史観的な設定はちょい鼻につきますが、主人公の時空を超えた他者との精神交錯なども盛り込まれた、誠に構成力豊かな極東クトゥルー小説だと思いましたね。
実写化するとショボくなりそうなので、大友克洋先生あたりに是非アニメーション化してほしいですね!
現在は絶版(発禁?焚書?)となってるようですが、ミスカトニック大学付属図書館、或いはブックオフの100円コーナーでたまに見かけますんで探してみて下され。
今日の1曲:『人体ジグソーパズル』/ CARCASS
朝松健は、日本を代表するラヴクラフト・チルドレンのひとりですね。
創元推理文庫のラヴクラフト・トリビュート?本「神秘界」などにも作品を載せていますよ!
お持ちでなければ、お貸ししますが・・・
朝松先生の描くクトゥルー作品はことごとく絶版状態ですよね。それほどまでに人類に悪影響を及ぼしかねない内容なんでしょうか?
『神秘界』是非よみたいですね!!
一応関西圏の古本屋で探してみます。なかったらお言葉にあまさせてもらおうかな~。
>なかったらお言葉にあまさせてもらおうかな~。
ご遠慮せずに、言ってくださいね。
即、お送りしますので。
その時はよろしくお願いします。